── それは急にやってくる
〈読切小説〉
オムニバス的な内容になっています。登場人物は全部で五人。それぞれの体験を見てどう思うかは、読者様の自由です。
朝、何気なく見ているニュース。そこに流れる凄惨な事件や事故を見て、嫌悪を抱いたり、いつものことだと流したりするのは、人それぞれだと思います。しかし、その中のほとんどの人間がこう思うでしょう。
「自分とは無関係だ」と。
もちろんそれは事実でしょう。しかし、いつ、どこで不幸な事件事故に巻き込まれるかわからないというのも事実です。
この小説は、その漫然とした心に問いかけるものとなっています。お楽しみください。
どこかのマンションで殺人事件があったらしい。朝のニュースを見て知った。
しかし、遠く離れた行ったこともない県の話なので、大して気にも留めなかった。俺はいつも通り、今日も仕事に向かった。
仕事に行き昼休みになると、親しい先輩に今日は金曜だから飲みに行こうと誘われたことでテンションが上がった。その時にはもう事件のことは忘れていた。
いつもの業務、いつもの部長の愚痴などを聞きながら日中を過ごす。
そして迎えた酒の席。乾杯をし、疲れた身体にビールを煽る。炭酸と苦味が喉を駆け巡り、夏で火照った身体に潤いをもたらす。
これですよこれ! このためにきつい仕事を頑張っているんですよ。
そこからは部長の愚痴を言い合ったり、好きなお笑い芸人のマネなんかしたりして盛り上がった。
しばらくすると、席にしんみりとした空気が流れ始めた。盛り上がった後は、自分の会社の業績や世間に対する怒りが哀れみへと変わる。そんな重い空気の中、先輩はこんなことを口にした。
「そういえば、マンションで殺人事件があったって話があったな」
一瞬何のことかわからなかったが、今朝のニュースのことだとすぐ気づいた。
「確かピッキングをして、さらにはチェーンも切って中に入ったんだっけな。恐ろしいものだ」
「先輩ビビってるんですか?」
無差別殺人だとでも思ってるのだろうか。確か被害者は玄関で殺されたんだっけ。本当にそれが無差別だとしたら、これほど恐ろしいことはない。
しかし、ピッキングのみならず、チェーンを切ってまで入ったということは、殺されたやつが恨まれていたことに他ならない。真っ当に生きていれば、そんな事件に巻き込まれるわけがない。
「ビビってはいないさ。ただ、無差別だとしたら恐ろしい事件だと思ってな」
「いや、わざわざいろんな道具を用意して入ったんですよ。その部屋の男を殺したくてやったんでしょう」
殺された人間も一人しかいない。それから警察につかまるまで何も行動していないのだから、その男を狙ったのは間違いないだろう。
「何はともあれ、物騒な事件だ」
それに関しては同意だ。
事件について色々と話したが、結局は話のタネぐらいにしかなり得ない。そこからはまたすっぱりと忘れて時間いっぱいまで盛り上がった。
「もう十時だな。そろそろ帰るか」
「明日は土曜日ですよ。もっと飲みましょうよ」
「明日仙台に行かなきゃいけないんだよ。飲み足りないなら一人で行ってくれ。ここは俺が奢るから」
「ありがとうございます!」
深々と頭を下げ、その恩に感謝した。会計が終わって一緒に店を出ると、雨が降っていた。いや、降っているという表現では物足りない、一粒一粒を地面にたたきつけるような雨だった。
※サンプルはここまでです。続いてインタビューをご覧ください。
初瀬明生(はせ・あきお)と申します。現在いくつかの自作を電子書籍で公開しています。ブログのトップ記事に、作品集、およびリンク先があります。
◆ブログ:『初瀬明生の創作部屋~Making Story~』
http://meiousei9past.blog.fc2.com/
◆Twitter:
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◆Google+:
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現在、Kindleストアや楽天Kobo電子書籍ストアを中心に、自作の小説を出版させていただいています。
今回は常時無料で配布している作品をご紹介します。無料ですので、気になる方はぜひダウンロードを!
・『止まない霧』 ジャンル 日常
http://yamanaikiri.tumblr.com/
・『Fと成りうる者』 ジャンル ホラー
http://fnariuru.tumblr.com/
・『寵愛の館 上巻』 ジャンル 館モノミステリー
http://tyouaino.tumblr.com/
『Fと成りうる者』は、本作『あなたとは関係のない世界』をお気に召した方には特にオススメです。
作品の宣伝ページは、ろすさんのでんでんランディングページを利用させていただきました。
◆『でんでんランディングページ』紹介サイト
http://lp.denshochan.com/
元々小説投稿サイトで同タイトルの掌編を公開していたのですが、それがどうも短すぎて消化不良でした。そこで思い切ってリメイク、というよりは結末も話の流れもほぼ別物に作り替えました。
阿刀田高(あとうだ・たかし)さんの『迷路』です。
特にターゲットはありません。強いて言うなら、ニュースを漫然と見ている人に。
一、二週間ほど。
主にTwitterやブログです。あとはGoogle+でも宣伝しています。
アイディアを思いつき、書き進めるうちにまた新しいアイディアを思いつく。そうして付け加えをしていき、整合性がどんどん取れなくなっていくことが多いのが悩みのタネです。
今までプロの方を挙げていましたが、今回は自分と同じようにセルフパブリッシングで活躍している方を一部だけ。
広橋悠(ひろはし・ゆう)さん、藤崎ほつま(ふじさき・ほつま)さん、王木亡一朗(おうき・ぼういちろう)さんの三人です。
もう少し小説の方は、定番のものだけではなく冒険をしたいです。普通ではないファンタジー系を書ければなと思います。
NPO法人日本独立作家同盟は、文筆や漫画などの作品を、自らの力で電子書籍などのパッケージにして世に送り出している、インディーズ作家の活動を応援する団体です。伝統的な出版手法である、出版社から取次を経て書店に書籍を並べる商業出版「以外」の手段、すなわち、セルフパブリッシング(自己出版)によって自らの作品を世に送り出す・送り出そうとしている方々をサポート対象としています。
当法人の活動目的は、誰もが情報発信者になれる時代における、作家や作品の知名度向上(Promotion)、作品の品質向上(Quality)、作家と読者のコミュニケーション活性化(Communication)などを促進することにより、多種多様な出版文化の振興に貢献することです。情報交換や交流などを目的としたコミュニティの運営、インディーズ作家を応援するマガジン『月刊群雛』の発行、ウェブメディア『群雛ポータル』によるセルフパブリッシング関連の情報発信、勉強会やセミナーの運営などの事業を行っています。詳細は、公式サイトの[法人概要]をご覧ください。
◆NPO法人日本独立作家同盟公式サイト:
http://www.allianceindependentauthors.jp/
2015年7月25日 発行 初版
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