作品概要

　慧と瑞樹、二人は高校時代からの付き合いで、今は恋人同士。教師をしていた瑞樹の民間宇宙企業「グリッタースペース」への転職をきっかけに、瑞樹は広報部、慧は宇宙飛行士候補生として採用され、ずっと一緒に生き、歩んだ二人の道も初めて分かれる。周囲の応援、優しさで足掻きながらも必死で慧は宇宙へと飛び出した。いつも慧の傍に居た瑞樹と二人、過去を思い出しながらこれからも自分達の決めた道を歩んで行こうとする。

井の頭cherry blossom
～restart～The Blue Marble 第６話

　なりたい物は沢山あった。
　誰だってそうだろう。
　でも、それを現実にしようなんて何歳まで考えてたんだろう？
　その選択幅はいつの間にかどんどん削られ、やがて現実的な物へと変化していく。
　与えられた環境は素晴らしかったし、やりがいがあった。
　それでも、心のどこかで、子供の俺が「忘れないで」と必死に叫んでいた。
　俺は残酷にもそれに耳を傾けず蓋をしてしまった。
　でも、大事な人に、大切な人にきっかけを与えられた。
　俺は躊躇したが、子供の俺が頑張ってその蓋をこじ開けたんだ。
　いい歳した大人が夢を思い出すなんて凄くカッコ悪かったけど、駆け足をして足掻く事に決めた。
　夢は一つ叶えた。でも、人間って欲張りだよな。一つ叶えたら、また次、その次ってなる。
　そう言えばこんなに瑞樹と会えなかったのは、いつ以来だろうか？
　確か大学時代に東南アジア方面へ、短期のボランティアか一ヶ月近いバックパッカー旅行をした時以来か。
　あの頃は海外からわざわざ瑞樹にメールをする事も億劫で、気が向いた時に絵葉書や手紙に近況を綴って送る位だったかもしれない。確か再会したのは九月に入ってからじゃないかと古い記憶を辿った。当時は、夏休みは短過ぎる、と思いながら過ごしたんだろうか？　大小様々な目標を立てて、実行して。瞬きすら出来ない程に、息が詰まる思いをしたりしたのだろうか。
　俺の次の夢ってなんだろうな……。
　とにかく今はゆっくり休みたい。
　何も考えずに。
　大事な人の傍に居て、大事な話、面白い話……色々な事を語りたいんだ。
　人生は永遠に続けばいいのだけど、残念ながら限られている。
　だから後悔しない生き方をこれからも探したい。
　そう、死んだ後も来世まで忘れないでいる様な強い生き方を。

　夏休みは短い。昔からそう感じていた。
　今でもまだ休みは始まったばかりだというのに、そんなフレーズが瑞樹の頭の奥で何度も繰り返されていた。
　朝からやっているアニメ番組の再放送、祖父母の家のリビングで毎年観ていた。家の縁側から香る夏の朝の風。扇風機の回る音に混ざった飛行機やヘリコプターの雑音。一人でゆっくり泳ぎたいのに誰かしらと出くわす市民プール。泊まりに来た従兄達と手持ち花火で遊ぶ。そんなありふれた昔の夏の映像を、未だに覚えている。やりたい事や計画している事は山程あるのにそれを全て達成した事はまだ一度もない。七月の終わりから八月末までの三十日と少し。あんなに長い夏休みは、社会人になった今は二度と訪れないが、夏になればやりたい事が出てくるのは今も何ら変わっていなかった。

※サンプルはここまでです。続いてインタビューをご覧ください。

くみさんインタビュー

── まず簡単に自己紹介をお願いします

　くみと申します。
　オリジナル作品はこの『井の頭cherry blossom』シリーズが初めてになります。
　『月刊群雛』には２０１４年０４月号に既刊サンプル、０５月号に読み切り短編の第二部『restart』を掲載しています。本作『The Blue Marble』は０８月号、１０月号、１２月号、２０１５年０２月号、０６月号と連載を重ね、いよいよ今回の０８月号が最終話となりました。
　現代詩フォーラム様、うたのわ様、うたの日様のサイトに春山久美（はるやま・くみ）名義で短編小説や短歌を投稿しています。
　Twitterでの短歌ネプリ企画などでは御劔瑞樹（みつるぎ・みずき）名義でも参加しています。
　性別越境アンソロジー 「兼ネル」に『御伽噺のお姫様』という題名で寄稿しています。
　史文庫発行の歴史アンソロジー『もっとあたらしい歴史教科書：世界史Ｃ』に『secret』というＢＬ短編小説を寄稿しています。
　Twitterの短歌ネプリ企画（主催者様 @spicadrop）『絶望短歌』『くだもの短歌』『ベジタンカ』（主催者様 @you_natskey）『月巡り』（主催者様 @hanahanesong）に参加中です。ゆるふわ短歌会、女子限定短歌サークル花羽にも所属。サークル誌『花羽』は文学フリマなどイベントでの販売も予定しています。

◆Twitter：
https://twitter.com/blackopal07/
https://twitter.com/bllove801/
◆pixiv：
http://www.pixiv.net/member.php?id=7615544
◆現代詩フォーラム：
http://po-m.com/forum/myframe.php?hid=10258
◆うたのわ：
http://utanowa.net/user/view/2562/
◆うたの日：
http://utanohi.web.fc2.com/
◆ゆるふわ短歌会：
http://yurufuwatanka.hateblo.jp/
◆花羽
https://twitter.com/hanahanesong/

── この作品を制作したきっかけを教えてください

　ＢＬ作品と言うと、まず最初に思い浮かべられがちなのが、恋愛の縺もつれやアダルト要素の強いものというイメージです。恋愛だけではなく、ほんの少しだけ外の世界に目を向けた恋愛小説があってもよいのではないかと思い、宇宙をテーマにして書こうと思いました。最終回ではお互い独り立ちをした二人が過去を振り返り、これからどうするのかゆっくりと考えていく話になっています。
　宇宙から帰還した慧、慧を待っていた瑞樹の間には、心の余裕が表れているので、その辺りを感じ取ってもらえればなと思っています。

── この作品の制作にあたって影響を受けた作家や作品を教えてください

・橋本紡（はしもと・つむぐ）さん『流れ星が消えないうちに』『九つの、物語』
・水野麻里（みずの・まり）さん『姉妹の旋律』
　【音楽】
・Clarity（Zedd）
・Good Time（Owl City & Carly Rae Jepsen）
・Starships（Nicki Minaj）
・Don't Wake Me Up（Chris Brown）
・Feel This Moment ft. Christina Aguilera（Pitbull）
・Let it Go（Idina Menzel）

── この作品のターゲットはどんな人ですか

　従来のＢＬ作品に飽きてしまった方、ＢＬって何だろう？　どんな内容なのだろうと興味を少しでも持っている方に読んで欲しいです。

── この作品の制作にはどれくらい時間がかかりましたか

　今回は、久々の恋愛物が中心の話になりましたので、三週間程度で書き終えました。

◆JAXA
http://www.jaxa.jp/
◆sorae.jp
http://www.sorae.jp/
◆KUSUMOTO 宇宙版：
http://www.geocities.jp/kusumotokeiji/indexuni.html
◆三菱電機 コラム 読む宇宙旅行：
http://www.mitsubishielectric.co.jp/me/dspace/column/
◆日本宇宙少年団横浜分団
http://www.yacyokohama.org/

　この他、宇宙関連の資料は、ＪＡＸＡ調布航空宇宙センターや筑波宇宙センターの一般公開、宇宙ミュージアム「ＴｅＮＱ（テンキュー）」、２０１４年８月に幕張で行われた宇宙博の見学などで撮影した写真や資料なども参考にしています。

── 作品の宣伝はどのような手段を用いていますか

　やはり、多くの人が使用しているTwitterやpixivなどで告知をしています。

── 作品を制作する上で困っていることは何ですか

　今回は、これまでの宇宙関連から離れ普通の恋愛要素を含む話が中心でしたので、瑞樹と慧の恋愛のゴールとは何だろうとかなり考えさせられました。

── 注目している作家またはお気に入り作品を教えてください

　橋本紡さん、江國香織（えくに・かおり）さん、藤本ひとみ（ふじもと・ひとみ）さん、高田郁（たかだ・かおる）さん。
　その他、Twitter上で見つけたＢＬ短歌や散文、ツイノベルなども沢山お気に入り作品があります。

── 今後の活動予定や目標を教えてください

　瑞樹と慧シリーズについてはこの宇宙編で連載は一応完結となりますが、日常を綴った短編集なども出したいですし、次に連載を書くとしたら派生キャラクターで地球に重点を置いた話にしてみようかと思っています。
　その他、今まで書き溜めてきた短編や短歌などを集めた作品を発表できればと思っています。
　『LOVE DRIVER』というサークルでも活動しています。
　二次創作なども含めてTwitterかpixivの方を見て頂けると情報が素早く分かるかと思います。

── 最後に、読者へ向けて一言お願いします

　ＢＬと聞くと人によっては読む前に少し躊躇してしまうジャンルかもしれませんが、この作品をきっかけに新しいＢＬの形が少しづつ認知されていければなと思います。
　そしてこの話の登場人物でもある瑞樹と慧を少しでも可愛がって下さると嬉しいです。

ＮＰＯ法人日本独立作家同盟とは

　ＮＰＯ法人日本独立作家同盟は、文筆や漫画などの作品を、自らの力で電子書籍などのパッケージにして世に送り出している、インディーズ作家の活動を応援する団体です。伝統的な出版手法である、出版社から取次を経て書店に書籍を並べる商業出版「以外」の手段、すなわち、セルフパブリッシング（自己出版）によって自らの作品を世に送り出す・送り出そうとしている方々をサポート対象としています。

　当法人の活動目的は、誰もが情報発信者になれる時代における、作家や作品の知名度向上（Promotion）、作品の品質向上（Quality）、作家と読者のコミュニケーション活性化（Communication）などを促進することにより、多種多様な出版文化の振興に貢献することです。情報交換や交流などを目的としたコミュニティの運営、インディーズ作家を応援するマガジン『月刊群雛』の発行、ウェブメディア『群雛ポータル』によるセルフパブリッシング関連の情報発信、勉強会やセミナーの運営などの事業を行っています。詳細は、公式サイトの［法人概要］をご覧ください。

◆ＮＰＯ法人日本独立作家同盟公式サイト：
http://www.allianceindependentauthors.jp/