── 鉄道事故を止めろ!超能力カメラマン奮闘。
〈読切小説〉
農協で広報を担当している内木は、特殊能力の持ち主。ときどき、被写体の未来を写してしまうのだ。しかも写るのは事故や災害ばかり。
今回、内木が撮影してしまったのは鉄道事故だった。高校生たちの乗った電車が脱線する──。その未来を回避すべくあらゆる手段を考えるが、ことごとく失敗。ついに内木は強硬手段に出る。
果たして、彼は脱線事故を止めることができるのか? そして事故の本当の原因はなんなのか? 運命に翻弄される男と、その活躍を描くサスペンス・パニック・ミステリ。
前置きは抜きにしよう。
その時、俺は電車内にいた。
二両編成のワンマンカーである。さっき出発したばかりの原井駅で、大勢の高校生と共に乗り込んだ。
列車は南へ向かう。奥羽根本線上り──。こののどかなローカル線こそが、我が原井市を縦断する主要鉄道路線だ。
目的地はないが、目的はあった。俺はこの電車をなんとしても止めたい──いや、止めなければならない。もはや手段を選んでいる余裕もない。
吊革に掴まりながら、腕時計を見る。原井駅を出て五分が経過した。今日は発着に遅れが出ており、通常より十分ずれての出発となった。
俺のいる位置は、一両目の後方である。本当はもっと前方、できれば運転席の真後ろに行きたかった。だが人が多すぎた。他の乗客に押され、後ろの入り口から入らざるを得なかった。
平日の朝である。学生服の少年少女がひしめき合っていた。イヤホンを着けて勉強している者、寝ている者、読書している者、吊革に掴まりおしゃべりに興じている者、所在なさげに窓の外を眺めている者──。彼らの多くは、あと三十分ほどで着くY駅で降りるつもりだろう。Y市には我が県の主要な高校が揃っている。
なんの変哲もない風景。だがこの日常は、あと二十五分で破られる運命にある。Y駅の直前の新町踏切で、「それ」が起きることを俺は知っている。
空いている方の手を懐に入れ、そこにある巨大な鋏の感触を確かめた。運転士が電車を止めようとしないなら、これを使うつもりだ。何がなんでも止めさせてやる……。
吊革から手を離し、運転席に向かって歩き始める。だが、その時背後から肩を掴まれた。
「何やってるんです。内木さん」
驚いて振り向く。そこにいたのは佐野亮平だった。数日前に取材した少年だ。
そう、数日前──。
2
数日前のことだ。
終業後、寺村早香に声をかけられた。勤務先である原井市農協の同僚だ。管理部で俺は広報担当、彼女は財務経理担当。仕事はまるきり違うがシマは同じという関係だ。
「最近どうしたの。変よ」
俺は、便所の前の休憩所にいた。愛飲のデミタスとポールモールで一服していたところだった。
「いつも通りのつもりだけどな」
「そうかしら。顔色は悪い、隈はある、今日は髭も剃り忘れてるわよ」
一週間くらい便秘なんだ、とでも答えてごまかそうかと思った。だがその「思った」一瞬の間が良くなかった。早香はすぐに勘付いて睨んできた。
※サンプルはここまでです。続いてインタビューをご覧ください。
・名前:きうり
・ウェブサイト(ブログ):『文藝yaminave』(ただし更新停滞中)
http://yaminave.blogspot.jp/
・ツイッターアカウント:@q_ridaisensei
https://twitter.com/q_ridaisensei/
・代表作:『イタコに首ったけ!』『光速文芸部』『学園祭』
いずれも青春ミステリ小説。Amazonその他ストアで電子書籍として販売中です。
一応シリーズものとして書いていて、「次は鉄道事故を題材にしよう」と前から決めていました。自分の体験も少し入っています。
海堂尊(かいどう・たける)作品と、漫画『め組の大吾』。
ミステリ好きの方、シンプルな娯楽小説が好きな方、それ以外の方もどうぞ。
一週間程度。
ブログとツイッターが主です。『月刊群雛』執筆陣の皆さんの活動を見て、自分ももっと真面目に宣伝せねばと危機感を抱いています。
体力と休みが欲しいです。
思うところがあり、綾辻行人(あやつじ・ゆきと)の「館シリーズ」を読み返しています。
体力と時間の許す限り、「囲碁青春小説」と事故災害ルポの作成、『イタコに首ったけ!』の推敲、新作の執筆を行っていきます。
頑張ります。
NPO法人日本独立作家同盟は、文筆や漫画などの作品を、自らの力で電子書籍などのパッケージにして世に送り出している、インディーズ作家の活動を応援する団体です。伝統的な出版手法である、出版社から取次を経て書店に書籍を並べる商業出版「以外」の手段、すなわち、セルフパブリッシング(自己出版)によって自らの作品を世に送り出す・送り出そうとしている方々をサポート対象としています。
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2015年8月21日 発行 初版
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