── 千尋は二年前、夏のかけらになった
〈連載小説・第1回〉
ある日、石田達也の携帯電話に、バー・エリックの店長、山中虎太郎から連絡があった。
虎太郎から、仕事の件で会わせたい人がいる。月曜の夜に来てほしいと告げられる。達也と虎太郎は親友で、高校時代のクラスメイトだった。達也は月曜の夜、虎太郎の店が入っている駅前の雑居ビルを訪れた。その店で田所綾香という若い女性を紹介される。綾香から住宅の改装の話を聞き、工事の見積書を依頼された。後日、打ち合わせのために綾香と会った場所は、駅前の商店街にある「アジアン・カフェ」という名の喫茶店だった。
真夏のひとときは、ヒグラシの愁いを誘う声が充たした。
折り重なった白いかけらを箸で摘まんでみる。すると、かけらはくずれ落ちてしまう。
いくら摘まんでみても、掴み取ることはできない。
今年もヒグラシの鳴き声は響き、記憶が巡ってくる。
千尋は二年前、夏のかけらになった。
石田達也の携帯電話に、バー・エリックの店長、山中虎太郎から連絡があった。
虎太郎は達也の親友で、高校時代のクラスメイトだった。
「月曜の七時ごろ、俺の店に来いよ。改装の件で会わせたい人がいるんだ」
「だれ?」
「若い女だ。詳しいことは、会ってから話すよ」
わずかなやり取りの終わりに、待っているからな、と言い残して、虎太郎は通話を切った。
月曜の夜は雨が降っていた。
ビニール傘を差していた達也は、駅前の雑居ビルの中に入って、傘をたたんだ。通路の先に目を凝らすと、階段が見える。目指す店は、二階にあった。
通路を挟んで、飲食店の出入り口の扉が並んでいる。バー・エリックは、奥に構えていた。達也が虎太郎と会うのは、一カ月半ぶりになる。
表札が張られた木製の扉を開けると、ダウンライトに照らされた店内は、薄暗い。
だが、十席あるカウンターと奥のバック棚は、間接照明の照り返しで、くっきりしている。
バック棚に並ぶ酒瓶は、間接照明の鮮明な赤色に染まっている。赤い色合いは、虎太郎の好みだった。
カウンターの中にいる虎太郎は、達也に視線を向けると目を細め、口元をほころばせた。
達也は、入り口の脇にある傘立てにビニール傘を差し込み、カウンターに近づいた。
「久しぶりだな」
「あぁ」
達也は生返事をして、カウンターの丸椅子に腰を据えた。
細身の虎太郎が着用している白いドレスシャツは、第一ボタンをはずしている。小麦色の肌は襟元まであらわになっていて、金のネックレスが、胸元に彩りをそえていた。
※サンプルはここまでです。続いてインタビューをご覧ください。
はじめまして、幸田 玲(こうだ・れい)と申します。
自営業の傍ら、小説を書いています。生業とインディーズ作家の活動で、兼業を目指していきます。
ボイスドラマにも関心を寄せていますので、公開している掌編小説の中から取り上げた作品を、自ら脚本化し、業界の方の協力で二本のボイスドラマを制作して、公開しています。
◆寄稿先 :『小説家になろう』
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色々な年代層の男女の読者様に読んでいただきたいと思っています。
性別、年代層によって、受け止め方は様々だと思いますけど。
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松本清張(まつもと・せいちょう)氏、司馬遼太郎(しば・りょうたろう)氏、山崎豊子(やまさき・とよこ)氏、池波正太郎(いけなみ・しょうたろう)氏、山本周五郎(やまもと・しゅうごろう)氏、乃南アサ(のなみ・あさ)氏、宮部みゆき(みやべ・みゆき)氏、連城三紀彦(れんじょう・みきひこ)氏、桐野夏生(きりの・なつお)氏、唯川恵(ゆいかわ・けい)氏、その他の作家で、心躍る作品に注目します。
いずれ、電子書籍の販売を開始して、インディーズ作家の活動で兼業を目指す予定です。また、今後もボイスドラマのプロデュースをしていきたいと考えています。
読者様の心を揺さぶることができるような、物語を描きたいと思っています。
精進してまいりますので、よろしくお願い致します。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
NPO法人日本独立作家同盟は、文筆や漫画などの作品を、自らの力で電子書籍などのパッケージにして世に送り出している、インディーズ作家の活動を応援する団体です。伝統的な出版手法である、出版社から取次を経て書店に書籍を並べる商業出版「以外」の手段、すなわち、セルフパブリッシング(自己出版)によって自らの作品を世に送り出す・送り出そうとしている方々をサポート対象としています。
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2015年8月21日 発行 初版
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