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空想レストランのメニューです。詩がメニューになっています。ことばのなかからあるようなないような美味しい味が現れます。アグレアブルミュゼさん(ギャラリー・レストラン)ではこのメニューを実際に作ってくださいます。(要予約。アグレアブルミュゼで検索できます。)

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Les poésies de menu

ティト

wonder-poems出版



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茶色い芝生の上

茶色い芝生の上
枯葉集まり
りんごを描いた
北風ひと吹き
みんなさらって
ひこうき雲一本
ストオブの前
あなたの声を
編んでいた

L L L

L L L
Lemon
レモンを3つ
Love
愛を3つ
Lord
君主を3人

戦争か平和か
それは君主のご機嫌次第
試しに海にレモンを投げて
占うのです

お手玉投げたら

お手玉投げたら
小豆嬢ちゃん散らばった
そこへうさぎのお餅跳ねてきた
あとはお気に召すまま

我はお汁粉
我輩は餡パン
私は氷小豆

どんなに悲しくても

どんなに悲しくても
食べるときは
泣いてはいけません
涙の海に
お皿は浮かびフォークも踊り
ゴブレットは深海に沈み
あなたはお皿に追いつけない

中庭を歩き回る十羽の孔雀

中庭を歩き回る十羽の孔雀が
いっせいに鳴くのだから
どんなにあなたが美しくても
川に飛び込みたくなるというものです
ジンジャースウプを飲ませてやってくれ

林を眺めるあなた

文通

T様
「昨日、ふと気晴らしに近くの
千早赤坂村の山麓に入り2時間ばかり
山肌の木が大きく揺れるのを楽しみ
クマタカの幼鳥が梢をかすめるように飛ぶのを
見るなど、至福の時を得ました。」

           2014/12/27 K.N

慌ててスリッパひとつ

慌ててスリッパひとつ、
つっかけて
夜が来た
ちょうど良いところに
まるい器が待っていた
夜はたっぷり縁まで入って
二人は月へ出かけて行った

新年の空降り

新年の
空降り
屋根に転がる氷粒
それから小さな嵐に飛ばされ
鬼ごっこ
庭のオナガは慌ててる

いつの間に

いつの間に
去年は去ってしまったか
いつの間に
今年になってしまったか
いつの間に
あなたはきれいになってしまったか
いつの間に
私のカップは空っぽだ
注いでください
なみなみと

バラの蕾の

バラの蕾の
カップに
注いでもらった
熱い紅茶
畑を歩いて
うさぎと食べる
白いアスパラ
赤いニンジン
サンドイッチ

この風は

この風は
外で吹いているのか
それとも
深い海の底で吹いているのか
世界ににたっぷり
いいもの混ぜてる

転がって

転がって
広がって
泡立って
膨らんで
女の人も
男の人も
子どもも
大人も
イヌも
ネコも
負けてしまう
それは
午後の
プディング

フーフー言って

フーフー言って
お腹をまあるく
するする行って
お耳を舐めて
包まっている

友達が言った

友達が言った
気がついたらうちの前の垣根が
何処かへ吹き飛んで
すっかり見晴らし良くなった
そんなことあるんだね
家に帰ってきたら
うちの垣根も
何処かへ消えていた

新月に

新月に
願い事
考えてたら
願い忘れて
月は行く
今頃どこかで
願いは叶い出す

ヨハンナのりんご

小さいヨハンナ記憶がない
ヨハンナのリンゴ
いつでも最初のリンゴ

小さいヨハンナ芝生の上で
姉さん剥いたリンゴを食べた
あんまり美味しい味なので
ヨハンナ芝生を転がって
ぐるぐるぐるぐる
目が回り
姉さんいなくなっていた



大きいヨハンナ記憶がない
ヨハンナのリンゴ
いつでも最初のリンゴ

100歳のヨハンナ芝生の上で
小さな子どもにリンゴを剥いた
あんまり赤い皮なので
ヨハンナ芝生を転がって
ぐるぐるぐるぐる
皮を剥き
まちじゅうみんなにりんごをあげた


ヨハンナのリンゴ
いつでも最初のリンゴ
赤くて甘い最初のリンゴ
赤くて甘い最初のリンゴ
ヨハンナのリンゴ
ヨハンナのリンゴ

旅行中

旅行中
朝の茶碗の
お茶の向こうに
無限の地図が浮かぶ
何か齧りたがる
口黙らせ
何か知りたがる
眼閉じ
歩き出す
いつか
足跡は地図になる

まだ出かけられないのです

まだ出かけられないのです
わたしのこころは
まだ冬です
梅の蕾は
季節外れの
南風に
口を尖らせ
目を瞑る

バッグの中には

バッグの中には
よく鳴く雲雀
薄荷草
赤い石のついた古い指輪
ゴム跳びのゴム
意気地無しの思い出

バンナヌア

どれも愛おしい
穿けなくなったよそ行きの靴
短くなったTシャツ
言い間違えた言葉
バンナンナ
バナノ
バナーニア
間違いじゃありません
正しい言い方
憶えてください
バンナヌアです

バンナヌア 外伝

波に揺られて一人きり
泣きも笑いもせぬけれど
浜辺であなたに拾われて
正直ホロリと嬉しかった
もちろん
そんんなそぶりは見せません
少し不機嫌
だって長旅カモメと喋りすぎ
喉が渇いてる
あなたの良かったところは
いつまでも青い空のように
曇りない心の明るさ
少しも考え過ぎないところ
その浅い魅力が旅の途中には
丁度良かった
運が良かったと言える

嫌われること恐れ

嫌われること恐れ
人に従ってたら
自分を失っていた
晴れた空
ポケットに入れて
自分を見つけに
出かけよう
どうぞ思う存分
嫌ってください
きっと見慣れぬ味だから
すすめ暗闇の中

ボウルの中に

ボウルの中に
小麦畑
ライ麦畑
オーツ麦畑

ブドウ畑
干したやつ
雌牛のお乳に
ハチミツ
エーデルワイスが
花弁落として
ヨーデルを聴く

鋏がサクサクサク

鋏がサクサクサク
切っていく
サクサクサク
髪に書かれた
手紙も一緒に
切っていく
床に広がる
長い手紙の束

文字がびっしりの頁は

文字がびっしりの頁は
見ただけで
息が詰まる
それにくらべて
広々とした余白と
控え目な文字や線の
白い眺めの頁は

外海のような
風が吹き抜ける
陽の光もきらきらと
風が吹く

高原を縫う道行けば

高原を縫う道行けば
山の声
ゴウゴウと
吹き渡る
今日の会議は
終了と
伝え合う
もう春の用意は出来ました
枯れ草の間に
黄色タンポポ
空色イヌフグリ
紅色ホトケノザ

皐月の空に

皐月の空に
ひとつふたつと
シャボンだま
どれも大事な
時でした
風が吹き
シャボン玉
われて

お柏
どちらにしましょうか
ピンクと


カモメが食べた

カモメが食べた
貝の中から
真珠が一つ
自由になった
白い真珠は
コロコロコロコロ
松の浜辺に
出かけます
初めて見る海
潮の風

mango song

わたしはマンゴー
小さな島で
風に吹かれて
揺れてます

海の歌を聴きながら
みんなで祈る
みんなで実る
とうとがなし
とうとがなし

私に水をくれる人
お礼にいちばん
おいしくなりましょう



わたしはマンゴー
小さな島で
風に吹かれて
揺れてます

人の歌を聴きながら
みんなで祈る
みんなで実る
とうとがなし
とうとがなし

私を雨から守る人
お礼にいちばん
おおきくなりましょう

私を食べたら届きます
私を育てた陽の光
私を育てた潮騒の音
私を育てた慈しみ



※とうとがなしー奄美の言葉


小枝を束ね

小枝を束ね
火をおこす
暗闇を照らし
笑った小枝
ぱちり
と一言
あとは
黙ったまま
空に
ゆらゆら昇っていく
その透明な炎で
悔しい思いを燃やす

冬の海

冬の海
小さな島のように
波に浮かぶ
白い空の下ひとり
雲が流れていく
背中の下を
クラゲが通り過ぎる
頭の上を
カモメが通り過ぎる
波がざぶんと飛びかかる
まぶたの裏に
水色や黄色の
花が開くのを感じて
塩味のスープを
陸の友人に持ち帰る
とれたてのスープに
太陽を浮かべ
新しい年を祝う

ゆらゆら揺れる
灰色の影
ゆらゆら揺れる
いたずら小僧
ゆらゆら揺れる
赤いマントー
ゆらゆら揺れる
ハクチョウの群れ
ゆらゆら揺れる
紐付きのミトン
ゆらゆら揺れる
姿を消した道
ゆらゆら揺れる
音のない音楽
ゆらゆら揺れる
熱いミルクの湯気
ゆらゆら揺れる
空を埋める
今にも消える
喜びのひとひら


Les poésies de menu

2015年8月22日 発行 初版

著  者:ティト
発  行:wonder-poems出版

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ティト

詩人、ポエムアーティスト。各地でピアノ、ギター、クリスタルボール、等の旋律、踊りと共にポエトリーパフォーマンスを行っている。2014年出雲大社にて祝婚歌奉納。

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