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真・火花Ⅱ

NEO社



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真・火花Ⅱ
                      NEO又吉直樹


 何があっても他人のふんどしで相撲をとることだけは決してしない。これだけは絶対に絶対に。何があってもだ。

「二匹目の泥鰌であるあなたが、今更何をおっしゃるのです? 」
 気の弱そうな税理士風の男がそう言った。

「…シケイン? 」
「言ってねーし。」

 シケイン(chicane)とは、モータースポーツや市街地などおいて、通行速度を減速するために設置される構造物である。日本語の古い文献ではシケーンと記述されることもある。

「ウィキペディア丸コピですか? 」
「ああ。その方が楽だろ? 」

 文章を書くことが大嫌いだった。

 コンビを組んで五年目の夏、その後深刻な喧嘩に発展するやり取りの、その始まりの瞬間を、カメラは捉えていた。

「これ、カメラちゃうやろ。」
「カメラだって言ってるだろ。」
「そない言われても…これ、どこにフィルム入れる場所あんねん。」
「いい加減にしろよ! 」

 ふり返ると、ずぶ濡れのタイガーウッズが、スニーカーとして立っていた。
「履いてくれ。」

「この星の一等賞になりたいの。卓球で。オレは。」
 便器が言った。

 サイボーグと化したストロング金剛に沸き立つ会場。
「バイオマンじゃん。」

「あのさ、今更こんなこと言うのも嫌なんだけどさ、現実からネタを引用してくるのは出来るだけやめた方がいいんじゃない? 作品の賞味期限を短くしちゃうよ。」
「そういう問題じゃねえだろ。悪いけど全く面白くねえよ。さっきから。」

外人「やれやれ、クレージーな気、出テルネ、ココ。」

 そいつが一番クレイジーだった。

 本名:ビデオテープ 戒名:布施博
 オレの目、小さいだろ? どこ行ったのかなぁオレ。オレを探して下さい。
「その台詞、ピンポンでもあったね。」

「あなたは? 」

「…そう、私は …YEN・SHOP 武富士 …サイレントで。」

「イロモネア挑戦中だったんですか!? 」

「何にせよ、知ってる人にしか分からないことを説明なしに放り出すことこそ親切じゃ。」

「そうでしょうか? 大昔には巨人、大鵬、卵焼きなどと言っていたといいますが… 」

「それを言うなら、奴隷、レイプ、お茶漬けじゃ。」

「出でよ、ポリ公! 」

 この人のアタマの中ってどうなってるんだろう?

 訳もなく誰かを傷つけることが面白いという感覚がわたしにはないので、いわゆるいじめっ子の気持ちが全く分からない。

「あの子のお父さんがまためっちゃ怖い人らしいわ。あの子のマンション行ったことあるいう人に聞いたんやけど、壁にでっかい液晶テレビが縦長に備え付けられてんねんて。そこにfacetimeの画面が出んねんて。どうやってるか知らんけど。そんでもってそこにお父さんの顔が出んねんて。あかんやろ? そんなもん、ちょっとしたデギン・ザビやで… 」

 育ってきた環境の影響だろうか。

 もし狂った親に育てられたということならわたしも負けてない気がするのだが…

 シャルロット・ゲンズブールが、監督で夫でもあるイヴァン・アタルに言った。

「うちのことだけ見るっちゃ! 」

 アタルつながりだった。

 この日、二人は解散した

                  真・火花Ⅱ(完)

真・火花Ⅱ

2015年10月11日 発行 初版

著  者:NEO又吉直樹
発  行:NEO社

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UNO千代

初めまして。 薄い本をいっぱい出したいです。

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