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シケイン

シケイン

シケイン出版



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シケイン
                      シケイン


「ボーボボが15年前だぞ。もう何もやることなんか残ってねえよ。」
 相方はそう言ってマルボロを取り出し、火をつけた。

「超能力なんてどうかな? 」
「え? 」

 本当はもう何も、脳内に一滴の雫もない、カラッカラの状態で、やけくそになって言ってみた一言だった。

「バイオマンじゃん。」
「いや、バイオニック・ジェミーだろ。」

 15年どころか40年程前にアメリカで製作されたSFテレビドラマのタイトルを言い間違えたのか、それとも本当にバイオマンのことを言いたかったのかは分からない。でもバイオマンに超能力なんか出てこなかったはずだ。

「スーパーヒーローに変身出来るって時点でそれは一つの超越的な力な訳だから、それを超能力て呼んだっておかしくはないんじゃないかな? 」
「おかしいだろ。超能力イコールバイオマンって認識ないだろ普通。」
「そうかな? 」
「第一、無数にあるヒーロー物のシリーズの中で、何でバイオマンなんだ? 」

 我々のネタ作りはいつもこういう所が分かれ目となる。普通はコンビのどちらか一方が書き、もう一方はボケまたはツッコミとして演者に徹することが多いのだが、うちらの場合はこうして取っ掛かりを二人で話し合いながら肉付けしていくのだ。
 この作業で、まず120%の確率で言い争いになる。

「誰かがすぐにネットで調べて、18話に超能力少女のエピソードあるとか言ってくるのがオチだよ。そんなことどうでもいいのに。」

 二人の間に気まずい空気が流れる。少なくともオレは、さっきから何の話をしているのか、全く分かっていない。

「全部嘘だろ? 」
「え? 」
「嘘なんだろ? 」
 眼光するどく相方が言った。
「相方相方って、じゃあどっちがどっちなんだよさっきから。」

 こいつが言ってることはハッキリ分かる。服の色や喋り方で、役割分担をきっちりやろうよ。こいつの言いたいこととは多分そういうことだ。

「ちげーよ。」

 血走った目をこすりこすり、相方は言う。

「何処で誰が何をどうしているかも分からない物を読まされて、意味が分かる訳ないだろ? 」

「だから、それはオレの台詞なんだよ。多分。」

 …悪玉コレステロールに幸あれ。

「とにかくオレは、つまんない奴が中原昌也を過小評価して奴の行く道を阻んだみたいなこと、もう繰り返して欲しくはないんだよ。」

 シケた面しやがって。

「今、シケって言わなかった? 」
 全身が熱い。

 これがオトコを刺激する情報マガジンなのか…

「ああ、R25休刊したんだってね。」
「…お前、オレの心の声が聞こえるのか? 」
 
 何故それを?

「だって今、R25って。」

「お前も聞こえてんじゃん。」

 超能力ネタが一つ出来た。

「極度に分かりにくい。し、別に面白くない。」

 それをジャッジするのはお前じゃないよって何度言えば気が済むのだろう。

「じゃ誰なの? 」
「浜ちゃん。相楽晴子といい感じになってる頃の。」

 懐かしい…

 二人が解散を決意する一ヶ月前のことだった。

                   真・火花Ⅲ(完)

シケイン

2015年10月12日 発行 初版

著  者:シケイン
発  行:シケイン出版

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UNO千代

初めまして。 薄い本をいっぱい出したいです。

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