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UNO千代インタビュー3

UNO千代 編

UNO千代出版



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【UNO千代インタビュー・3】

 UNO千代書房で取り扱いのある著作の作者に、UNO千代自らがインタビューを行うという企画。3回目です。
 早いものでUNO千代書房をBCCKS上に開設させて頂いて丸一月が経ちました。
 今回は、それを記念してという訳ではありませんが、現在UNO千代書房上で、唯一連載(?)という形で展開している作品『SIKEINⅡ』、その最新作が2本連続公開されたということで、シケインさん、前回収録分の未掲載インタビューをお届けします。

 ラストにはスペシャルサプライズもあります! ではどうぞ。

UNO千代(以下・U)「改めて、よろしくお願いします。」
シケイン氏(以下・シ)「どうも。」

U「先ほどは赤瀬川さんを交えて、怒涛の鼎談でしたね。」
シ「状況をお伝えすると、軽食を取って、また一人づつインタビュー再開という感じですよね。赤瀬川さんから(この時点で赤瀬川氏は帰宅・赤瀬川氏のパートは後日公開予定)。」
U「(スケジュール的に)タイトですみません。」
シ「いやいや。こういうのも全部新鮮で楽しいですよ。素人ですから。ごっこですからね(笑)。」
U「ごっこって言わないで下さいよ。」
シ「すみません。…でもお千代さん、ってやっぱり呼びますね。」
U「はい。」
シ「お千代さんはどうしてこんなことをしてるんですか? 」
U「こんなこと? UNO千代書房のことですか? 」
シ「そうです。」
U「趣味です。」
シ「んー…というか、趣旨というか、目的とかあるんですか? 」
U「ちょっと待ってください。このシリーズは私が皆さんにお話を伺うということでやっているので、シケインさんが質問するのはちょっと… 」
シ「あ、すみません。でも、気になってるんですよね。そういえば聞いたことなかったなと思って。モチベーションにも関わるじゃないですか? 一言だけいいですかね? この本屋さん、何をしようとしているんですか? 」
U「いや、何か目的があるとかっていうんじゃないんですよ。ぶっちゃけてしまうと動機は凄く個人的です。一言でいうと… 色々享受するだけっていうのに飽きてしまったんじゃないですかね。」
シ「というと? 」
U「小説でも映画でも何でもいいですけど、世界中に大量の作品があって、見たとか読んだとかって感想が無数に、それこそブログやらツイッターやらFBやらで上がってますけど、そして自分もそういうの書いて楽しんでたんですけど、もう何か、それでは燃えなくなってですね… 」
シ「燃えない(笑)。」
U「そうなんです。それで、ただ読むのに飽き足らなくなったから、今度は自分でも何か産み出せればいいんですけど、私自身は何も創作することが出来ないので、じゃあどうするかってなった時に、好きな物を自分で探してきて紹介する、発信するってことをしようと思ったんですよ。」
シ「そこまでは結構普通な動機だけど、問題はその、取り扱う作品とか作家のチョイスですよね。何でこんな、本当に誰にも知られていないマイナーな素人、しかもお世辞にも作品が優れている訳でもない人々の、それも短編のみに絞ってるんですか? 」
U「いやー、シケインさん、御自分のことはまだしも、皆さんを入れて優れてない人々とかいうの止めてもらっていいですか? そんなこと全然ないと少なくとも私は思ってるからこそ、声をかけさせてもらってるんです。」
シ「失礼しました。」
U「…いや、だって、知られていないからこそ私がやる意味があると思いませんか? 誰も知らないわけじゃないですか? まあ、自分の行動範囲の中で拾えた、まだデビューとかされてない方の物だけって縛ってるからなんですけど、少なくとも私には響いた作品なので、紹介したいと思うのは自然な流れかなという感じです。私の中では。」
シ「なるほど。」
U「何か作品もそうなんですけど、人なんですよ。すごい稀有な出会いって言うか、先ほど帰られましたけど、赤瀬川さんとかも本当に、個性が凄いじゃないですか? 」
シ「確かに、不思議な方ですよね。」
U「で、文章読ませてもらうと、大体当たるんですね。私のツボに。」
シ「うーん、確かに傾向があるっていうか、バラエティがあるようで、何か似てるといえば似ている作品を集めていらっしゃる気はしますよね。」
U「それは、私の趣味で一本刺ししているからです(笑)。でもシケインさんも幾つか作風があるじゃないですか? 最初の『シケイン』タイプの物と、『SIKEINⅡ』のシリーズでは何か全然違うことをやろうとしているっていうか、これは一人の書き手の方の中でも結構違いがあることの証明だと思うんですけど… そんなにラインナップ似てますかね? 」
シ「うーん… 表紙が一緒だからかなあ… 」
U「まあそれは、デザイナーとか雇う予算もなくてですね… 申し訳ないです。」
シ「いえ、シンプルで僕は好きです(笑)。」

U「話、戻りますけど、『SIKEINⅡ』シリーズ、まずストーリーがあって、キャラクターがいる世界を書いてらっしゃって、これはそれまでのシケイン作品しか知らない私としては意外な展開だったんです。」
シ「それはでも、お千代さんに対して意外性を演出したいがためだけに始めたからですね(笑)。」
U「そうなんですか!? 」
シ「はい。しかももっと言うと続き物にしたのもそうです。続くんかい! みたいな(笑)。」
U「確かに驚きましたけど(笑)。」
シ「だって僕には物語を書きたい動機なんてまるでなかったですもん。そこが普通の小説を読んでいて一番疑問に感じていた部分でもありますし。なんでこの人たちは、こんなお話を書こうと思ったんだろう? こういうお話でなくちゃいけなかったんだろうって。」
U「『疑問に感じていた』ってことは過去形ですけど、何か御自分の中で変化があったんですか? 」
シ「そうですね。…あの、キャラクターが勝手に動き出すってよく言うじゃないですか? 」
U「ええ。」
シ「少し前に作家の方がラジオでそれを全否定して小馬鹿にしてて、で僕もそれをある種の共感を持って聴いてたんですけど、その辺は今はハッキリと考え方が変わりました。」
U「それはやっぱり、『SIKEINⅡ』を書くことによってですか? 」
シ「そうですね。」
U「どんな風に変わったんですか? 」
シ「何かその作家の方は、作者が全部コントロールしてるのを良しとされてるというか、実際自分が考えてるわけだから、その現実を無視するのはおかしいでしょ? っていうスタンスだったんですけど、実際、キャラの設定をある程度決めてやると、必然性が勝手に立ってくるというか、まるでそこに本当に人格が立ち上がったかのように、登場人物にこっちが振り回されるっていう感覚を僕も味わったんですよ。そしてそうなってくると、もうこのキャラクターたちのために、この世界を成就させてやらなきゃならないみたいな感じが出てきて、それがまた結構気持ちいいんです(笑)。」

U「世界観が楽しい感じですよね。」
シ「でもお千代さん的に乗ってないのは実は僕、知ってますよ(笑)。」
U「そんなことないですよ! 」
シ「だって、頑張ってる感あるでしょ? 頑張って書いてる感じが。そういうのあなた一番嫌いじゃないですか? 」
U「本当にそんなことないですって。え、そんなこと考えながらやってらっしゃるんですか? 」
シ「いや、最初は僕もパロディベースで始めたんですね。まともに読んだ事ないくせに、ラノベとか、何なら「物語」全般ですよ。相手は。今思うとクソ恐ろしいですけど。」
U「なるほど。斜に構えてらした? 」
シ「はい。物語があったらいいんでしょ、みたいな。で、キャラが活躍してればいいんでしょ、って。でも良く良く考えたら、それって凄い、ちゃんと成立させようとすると難しくて、色んな執筆上のルールが本来何でそうなっているのかが嫌でも見えてきちゃうんですね。人称のこととか。」
U「そうですよね。」
シ「だけど、こちとらストリートでコピー本だったじゃないですか?(笑)だから、あくまでまともにやるんじゃなくて、模倣の中で、自分で読んでて成立してればOKって所でやろうと言いつつも、まあ、結果頑張ってしまってるんですよ。2回目は特に。それってお千代さんのやろうとしてることと反発してませんか? 」
U「全然そんなことないです。…というか、真剣にやられてることは何であれ美しいですよ。」
シ「うわぁ… …そっか。はい。すみません。でもなあ… 」
U「どうかしました? 」
シ「…僕は最悪、泳がされてるDQNでもいいと思ってるんで。お千代さんのためなら(笑)。なので、もうしばらくつきあってやってください。」
U「いや、本当にそんなことないですって。面白いですよ、普通に。」
シ「もういんです。そこは。次、何の話します? 」
U「いやいや、よくないですよ。シケインさん、もっと人を信用しません? そのままでもいいっていうならいいとは思いますよ。というのは、私はどんな人が、どんな心持で書いていようと、またどんな内容だろうと、傑作は傑作だと思ってるんですね。で、その傑作が傑作たるゆえんは、作者が持ってる全てを反映しているからだと思うんです。だから作者がいい奴か悪い奴か、人を信用している奴か、信用していない奴かは関係ないといえばないわけですが、でも単純にシケインさん、見るからに今、辛そうですよ? 」

シ「…そう。辛いんです。」
U「辛いのはやめた方がよくないですか? シケインさんが真性のMっていうなら話はまた違ってきますけど(笑)。」
シ「ああ、僕はSMは苦手です。根本的に理解出来ないですね。」
U「あれ、また何か違う扉を開けてしまいましたか?(笑)。」
シ「はい(笑)。…多分、SMは知性の産物だって思ってる人が多いと思うんですよね。生き物が本来持ってるはずの生存本能と相容れない物だから。でも、僕にとっては苦痛でしかないです。自分の苦痛も嫌だし、苦痛に喘いでいる人を見るなんて最悪ですね。」
U「それは、そういう人と知り合ったら一度ブッキングしますね(笑)。完全な異文化交流が実現しそうです。」
シ「そうですね。興味はあります。僕が全く気付いていない何かがそこにはあるのかも知れないです。でも、喧嘩になりそうで怖いです(笑)。」


U「最新作『豊かな文章』について聞かせて下さい。(この時点では公開前)」
シ「はい、あれは… 」
U「一つのアンサーですよね? 大貫さんの『bccks』 に対する。」
シ「そうですね。ちょっとあれに触発されて。」
U「そうか、『bccks』 については、どう触れるべきなのか、私もまだよく考えてませんでしたね。ネタバレとか(笑)。」
シ「そうですよね。発想の産物であることは確かです。大貫さんて、まだお若いんでしたっけ? 」
U「二十歳か、21っておっしゃってました。学生さんです。」
シ「21! そっかー… なので、いきなりマウント取られたんで、何かちょっかい出してやれって感じなんですけど、これ、読まれた方には申し訳ないんですけど、本当に、やろうとしていたことがどれくらい出来たかっていうと、キツいかなあって部分があって。でもその辺自分に厳しく行こう、「今、お前はまだここだぞ」っていう戒めとして晒して行こうっていうのが正直ありました。」
U「また、後ろ向きですね。」
シ「読んでて恥ずかしくなかったですか? 」
U「いやぁ… そんなことないですよ。」
シ「優しいのか厳しいのか… 辛いです(笑)。」
U「いや、本当に。私にも娘がいるので。」
シ「そうなんですか?! 」
U「ええ。」
シ「おいくつですか? 」
U「今4歳です。」
シ「うわぁ… なおさらじゃないですか… 」
U「でも、ある種似ているシチュエーションにいる友人とかを思い出しましたね。そして、前向きになれるいいラストじゃないですか。」
シ「本当にすみませんでした。」

U「やっぱり書き手としては、性別を越えたいっていう願望とかがあったりするんですか? 」
シ「ああ、それは実はテーマの一つにあったんです。性別って言うか、別人になるっていう。その距離が自分と遠い方がいいから、性別も越えるって感じで。友近さんでもバカリズムさんでもいいんですが、架空の人物に成りすますの、何かクリエイティブだぞみたいなノリって最近巷にないですか? あれ、なんなんだろうっていう思いがあって。」
U「また危険球投げそうになってきましたね(笑)。…でもそうですよね。アートとしては結構前からある表現ですもんね。」
シ「そうなんですよね。古くはシンディ・シャーマンとか…ソフィー・カルとかでしょ? 」
U「…アートお詳しいんですか? 」
シ「そんなに明るいわけではないんですけど、たまたまそれは学生時代に興味を持ってて、で、何でその時に興味を持ったんだろうっていう動機の方に今、引き寄せられてる感じですね。」
U「そうなんですね。…これは結構意外な話が聞けた気がします。」

シ「いや、恐れ多いですけどね。インタビューって、立派なこと言ったもん勝ちってとこありません? どんなにショボいことしかしてなくても、インタビューっていうフィルターを通しちゃうと、誰でもそれなりの人物に見えちゃうっていう(笑)。」
U「なので誰も彼もがインタビューを受ける機会を持つわけではないと思うんですけど、ネット上にはそういうサービスも既にありますよね。」
シ「え、インタビューを受けられるっていう? 」
U「あります。誰でもインタビュアーになれて、インタビューを受ける対象にもなるっていう。」
シ「恐ろしいですねぇ。」
U「恐ろしくない感じでやられてますよ。思うにその、インタビューの持つ特別な感じをフラットにしようっていう方向性な気はしますね。」
シ「そうですか。…何か、意気揚々と喋ってたけど、これ、出るんですよね。」
U「出ますよ。」
シ「まあいいか、ほとんど誰にも読まれないわけだし。」
U「ちょっと(笑)。またそういうこと言うの止めてもらえますか? 」
シ「何か、本当に素直に喋っちゃったんで、これ、遺言にしたいくらいですね(笑)。」
U「遺言ですか(笑)。でも素直が一番いいですよ。ひねたっていいこと何もないと思います。ただそう正面切って言うと、逆に思いっきり身構えられる所はあるかも知れないんで、難しいんですけどね。」
シ「そうですよね。」

U「これからの御予定は? 」
シ「とりあえず『SIKEIN』シリーズは書き溜めてます。(11月10日に第三・四話 配本)あとは未定です。仕事もあるので。」
U「そうだ、八百屋さんですもんね。何処の八百屋さんかは教えてもらえませんか? 」
シ「いやー… でもこれを見て下さった方が、近所でも何処でも、八百屋さんを見る度に『あの人、もしかしてシケイン?… 』とか思ってくれるかも知れないことがあれば面白いですね。ないでしょうけど(笑)。」
U「確かにちょっと面白いですね。そのこと自体が作品っぽいです。」
シ「それ、ネタになりそうですね。」
U「いつでもお待ちしてます(笑)。」
シ「宜しくお願いします(笑)。」

            2015年 10月29日 
             UNO千代自宅件オフィスにて収録







【特別付録】・aya 単独インタビュー!

 さて、冒頭で告知しましたスペシャル・サプライズです! 
 何と、あのayaさんに、ご登場頂ける運びとなりました!

 先日、パスワード付き配本にayaさん自ら緊急停止がかけられて以来の単独インタビュー、というより、直にお会いすること自体が初めてというとても緊張感のある邂逅だったのですが、はたして、現場はどのような物になったのでしょうか? ではどうぞ!

UNO千代(以下・U)「初めまして。宜しくお願い致します。」
ayaさん(以下・a)「初めまして。」

U「いやー。色々とすみませんでした。」
a「…え、いや、そんな。」
U「とにかく先程事前に色々少しお話を伺えて、私、本当にちょっと体が軽くなりました(笑)。」
a「あー、そんな、何か、すいませんでした。逆に。気を使わせてしまって。」
U「いや、でもこちらもよくないですよね。憶測だけで色々言ってしまって(『UNO千代インタビュー2』参照)。」
a「確かに細かいことは全く説明させてもらってませんでしたもんね。出せない、だけ言っといて。それはちょっと説明不足でした。こちらこそ本当にすみません。」
U「全然ですよ。前作が出せなくなった経緯とかはご紹介しても差し支えないですか? 」
a「そうですね。あの、作品のモデルになった子の了解がね、ちょっと取れなくなってしまったというか、まあ、ネットに上げるのは止めて欲しいってことになって。大丈夫とは言ってくれてたんですけどね。直前になってそういう話になったので。」
U「そういうことだったんですね。確かにそのモデルの方にはいらぬ心痛を強いてしまったようで、本当に申し訳なかったんですけども、でも公開前に意思を伝えてくださって本当に良かったと思います。こちらとしてもうちの試みでどなたにも不愉快な思いはして欲しくないもんですから。」
a「いや、わたしの確認不足で。本当すみません。」
U「今回、2010年の作品『天使』をご提供頂きましたけど、こちらはどういった作品なんですか? 」
a「これは… 話としてはわたしの身近に起こったことや聞いた話などを色々ミックスして紡いだ… まあ、半フィクション、みたいな物なんですけど… 物です、はい。」
U「かなり特徴的な文体ですけど… 」
a「あ、ここそういえばちょっと… んーと、普段は別にこういう文体で書いてなかったんですけど、あるブログの文体に相当影響を受けて、この文体だったら言いたいこと言える! って思って書いたらすぐに書けちゃったんです。で、そのブログの更新が2013年の暮れで止まってて、寂しいなっていうのと、何か思い出して拙作を引っ張り出してみたら、結構ここのサイト(UNO千代書房)にあってるんじゃないかなーと思って、出させて頂きました。」

U「たしかに前作というか、『AV親バレ大作戦』はまた作風違いましたもんね? 」
a「いや… でもそのブログがちょっと本当に凄いんですよね。一時期凄いネットでも話題になって、書籍化の話も散々舞い込んだみたいなんですけど、全部ご本人がつっぱねたらしいんです。だから、ちょっと今思い当たったんですけど、これ… まずかったですかね? 」
U「えーと、それはひとまず置いておきましょうか(笑)。」
a「すみません。でも、わたしの書いた物なんて、本家を汚してるというか、汚すことさえも無理みたいな、本当、掠りもしないような、本当に輝きを持った言葉の群れがそこにはあって、ちょっと、本当の生きた言葉の迫力に呑まれてしまって、それで、便乗してしまいました(笑)。」
U「何かあったら謝っておきます(笑)。幸いにしてこちらは凄くマイナーな存在なので。」
a「ごめんなさい。」

U「女性の、何というか、実は社会的に強いられてる部分みたいなものに、割とテーマがあるのかなあと思ったのですが、どうですか? 」
a「それ… たまたまお見せした2作は、確かにそうかも知れませんね。」
U「どちらも根底には激しい怒りを感じました。」
a「そうなんですよね。今のムードだと、何かネガティブなところから物を言うんじゃなくて、前向きに捉えるところから伝えていこうというか、そうじゃないと通りのよいメッセージにならないんだから、うじうじするだけ損みたいな空気をちょっと感じるんですけど、嫌なんです(笑)。そういうのが。」
U「激しいですね(笑)。」
a「そう。それって恵まれてる人の言い分だよって思いません? 」
U「うーん。そうかも知れませんよね。」

a「暗黙の奴隷制の上に胡坐をかいている封建社会みたいな物で、そんな物ないことにされている上で幸福な人だけが幸福を築けて、そうじゃない人は砂を噛む思いをしながら生きなきゃいけないなんて、堪らなくないですか? 」
U「それは本当にそう思います。」
a「ね、そうでしょ? 『天使』でいうと、ヒナの父親ですよね。これは実際にわたしがモチーフにした話では色々違うんです。子供のこととか。それと、テレビで見たアイドル志望の女の子の話と、さっきのブログのテイストを混ぜた感じですね。」
U「その、モチーフというのは… 」
a「知り合いの仕事先の人の話を聞いたんですけどね。でもこの手の話はいくらでもあるじゃないですか? 今や年間65万件の離婚があるっていいますしね。」
U「そうですね。」
a「ただ当事者だったら複雑で何も言えないですよね。多分事実はそんなに単純じゃないんだろうし。でもでも、実は単純なことかも知れない。それがみんなの遠慮とか、社会的常識とか、誰も傷つかないようにっていう配慮のために、逆に一番傷ついている人に、滅茶苦茶付加をかけてるのかも知れない社会的な構造とかが本当に嫌で。だったら創作の中では何言ったっていいだろって。イングロリアス・バスターズって映画、ご覧になりました? 」
U「ああ、はい。」
a「そういうことなんですよ(笑)。」
U「なるほどですね(笑)。」

a「でもこういう話もあんまりしない方がいいかも知れないですね。65万件ですもん。どこに石が当たるか、もはや分かんないです。」
U「ですね。あと、いいですか、私が一番びっくりしてるのは、そんなayaさんが男性ってことなんですよね。これは別に、言っても大丈夫なんですよね? 」
a「あー、全然構いませんよ。」
U「男性であるayaさんが、敢えて女性の立場に立って理不尽だなって思うことに対して強い怒りを感じるっていうのは、ご自分ではどうしてだと思われますか? 」
a「いや、そこを冷静に分析したことないんですけど、何か、海外だともっと酷い事ってありますよね? 例えば不倫した女性の方だけが皆から石を投げられて死刑になる国があったり。そこまで行くと皆酷いってわかるけど、でもその国にいる人にとってはそれが当たり前だと思ってるから、何の疑問もなくやっちゃうわけじゃないですか? 置き換えると、程度の差はあれどこの国にも実はそういうことがあって、でも日本の場合、石を投げるまで原始的なことじゃないからたちが悪くて、当事者も悪いことだって重々知ってるけど、面倒くさいから本当の解決を避けてるだけのような気がするんですよ。」
U「どういうことですか? 」
a「そこを直視すると、自分の自由が制限されちゃうのが分かってるから、意識的に自分の享楽を優先してるんですよ。わたしから見ると。それは、自分が正義だと思って考え方の違う人にリンチを加えてる人間と比べて、改善の余地っていう点から考えると、より絶望の根が深い気がするんです。」

U「つまり、実は悪いことだと分かってやってるから、その人自身が変わりようがないってことですね? 」
a「そうですね。」
U「こう言ってはなんですが、すっごい、びっくりするほど正論側ですよね? 」
a「だから… ハイカルチャーには成り得ないんでしょうね。屈折が美徳とされてるというか、世の中で道徳的に正しいとされてることの息苦しさからの脱出とか、視点を変えるとか、頭がいい人のための物ばかりが有難がられる風潮があるから。というか、元々そっちがマイノリティーだったのに、いつの間にか逆転してるんですよ。」
U「そうですか? 」
a「単なるわたしの印象ですけどね。」

U「お仕事はAVライターをされてるということですが。」
a「ごめんなさい。それ、詐称しました(笑)。」
U「え、そうなんですか? 」
a「作品が作品だったんで、何か勢いで、というか冗談のつもりが上手く伝わらなかったみたいなんで、もうそのまま行っちゃえみたいな(笑)。すみませんでした。」
U「いえ、では実際は何を? 」
a「某社勤務です。スーツを着なくてもいい職種くらいまでで勘弁して下さい。」
U「そうなんですね。何業界くらいまでは聞けますか? 」
a「んー。割かし皆勘がいいので、こういうとこ見てても全然おかしくない業界なんで、これ以上はすいません。」
U「知られたらマズい部分てなんですか? 」
a「いや、全体的にですね。こんな感じのことしてたら、まず即OUTだと思います。仕事的に。クオリティの基準が違うので、わたしが信じてるところの物を全否定されかねないので(笑)。そしてそうなったらその時は干されますから。」
U「そこまでですか?! 」
a「まあ、考え過ぎかもしれないですけどね。」
U「そうであって欲しいです。今後、執筆の御予定は? 」
a「今は丁度、何も出来ない感じですね。結構忙しくさせてもらってます。」
U「そうですか。残念ですが、また何かお蔵だし作品でもよいので、良いのがあったら教えて下さい。」
a「是非。」
U「今日はありがとうございました。」
a「ありがとうございました。」

            2015年 11月9日 
             UNO千代自宅件オフィスにて収録

UNO千代インタビュー3

2015年11月12日 発行 初版

著  者:UNO千代 編
発  行:UNO千代出版

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UNO千代

初めまして。 薄い本をいっぱい出したいです。

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