── 千尋は二年前、夏のかけらになった
〈連載小説・第4回〉
祖母の家の店舗リフォームの計画図が確定して、工事の着工日が決まった。着工初日の数日前から緊張していた達也は、初日に遅刻してしまい、大工の親方の武田清から叱責を受けることになる。解体工事は予定通り始められ、4人の職人と現場監督の達也。そして雑用を引き受けている綾香の6人が工事現場に入り、慌ただしい解体作業が進められていく。そして職人たち、達也、綾香の改装工事の奮闘が描かれていく中で、綾香の身の上話が語られていくことになる。
工事の着工日は、快晴だった。
午前八時半に、ワゴン車で工事現場の通りを通過したとき、既にワンボックス車が、現場の前に駐車していた。
現場の玄関先で、四人の作業服姿の職人がたばこを吸っている。
大工の親方、武田清、猛兄弟。そして手伝いの若い男の二人だった。
達也は、現場近くの空き地に駐車して、急いで現場に向かった。
「監督、遅いなぁ。十分遅刻だよ」
声を掛けてきたのは、大工の親方、武田清だった。時代遅れのパンチパーマに、四角ばった浅黒い顔立ち。職業柄、がっちりした体格をしている。笑うと、大きな目玉の目尻のしわが鮮明に浮き出て、四十五歳よりも老けた容貌だ。
「ごめん。車が混んでいて」
「何、言ってんだよぉ。初日から遅れんなって。やる気、あんのか」
清は一瞬、達也に鋭い視線を向けた。
大工の親方として、仕事に対する緊張感が漲っていた。
達也は、恥ずかしくて居たたまれない気持ちになって、清に軽く頭を下げた。
昨夜、工事初日のことを考えると寝付きが悪くなり、深夜まで眠りにつけなかった。一時間ほど眠っては目覚める、を繰り返したので、寝過ごしてしまったのは事実だった。
達也は急いで鍵を玄関戸に差し込み、住宅の中に入って行った。
その後に、頭にタオルをバンダナ風に巻き、防じんマスクをつけた四人組がどかどかと続いた。
室内の一部をブルーシートで養生してから、親方の清が指示を出し、解体作業は始まった。
しばらくして、玄関口から綾香が家屋を覗き込んだ。Tシャツにデニム姿で、頭にはチノコットンのキャップを被っている。
「遅くなって、すみません」
「おはようございます」
達也が言葉を返すと、綾香は口元に笑みを浮かべ、親しみを感じるまなざしを向けた。
「こんな恰好でも、良かったですか?」
「汚れても良い服装なら、いいですよ」
職人たちは、ふたりのやり取りを眼中に置かないそぶりで、ガタ、ゴト、音を立てさせて、黙々と作業に勤しんでいた。
それでも職人たちを意識して、達也は、綾香との会話の声を小さくすることを心掛けた。
「おい、猛。空き地のトラック、もってこいやぁ。ワンボックスの前に着けろ!」
清は不意に、首に巻いていたタオルで顔を拭いながら言った。
一階の間仕切の壁とガラス戸は壊され、畳は表に出された。そして、二トントラックに積み込まれていく。
※サンプルはここまでです。続いてインタビューをご覧ください。
はじめまして、幸田 玲(こうだ・れい)と申します。
自営業の傍ら、小説を書いています。生業とインディーズ作家の活動で、兼業を目指しています。
公開している掌編小説の中から取り上げた作品を自ら脚本化し、業界の方の協力で二本のボイスドラマの制作を行い、YouTube動画で公開しています。また、連載中の小説『夏のかけら』のイメージソングをニコニコ動画・YouTube動画で公開しました。
◆寄稿先 :『小説家になろう』
http://mypage.syosetu.com/134346/
◆Twitter :(@bestplanning)
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◆Google+ :
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◆『なつのかけら』イメージソング
https://www.youtube.com/watch?v=F74WUS96n9M
http://www.nicovideo.jp/watch/sm27403295
色々な年代層の男女の皆様に読んでいただきたいと思っています。
性別、年代層によって、受け止め方や感じ方は様々だと思いますけど。
ツイッターで、定期的な宣伝活動をしています。
注目している作家のひとりに、松本清張(まつもと・せいちょう)氏がいます。
松本清張氏は「主題によって小説形式を決定し、表現の方法を考える」ことを念頭に置きながら、作品を描いていった小説家だと言われています。退屈だと思えるような、ただ単に風俗だけを描いている小説とは違い、氏の小説には、主題に迫る作風を感じ取ることができ、感銘を覚えます。
生業とインディーズ作家の活動で兼業作家を目指していきます。また欲張りですが、多方面の方とのコラボ活動やボイスドラマのプロデュースもしていきたいと考えています。
・『竜馬がゆく』1~8巻 司馬遼太郎(しば・りょうたろう)
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竜馬の人物像が、時代背景に溶け込んで活き活きと描かれている。
・『眼の壁』 松本清張
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秀逸なミステリー長編小説。
・『蝉しぐれ』 藤沢周平(ふじさわ・しゅうへい)
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秀逸な時代小説。
読者様の心を揺さぶることができるような物語を描きたいと願い、精進してまいりますので、よろしくお願い致します。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
NPO法人日本独立作家同盟は、文筆や漫画などの作品を、自らの力で電子書籍などのパッケージにして世に送り出している、インディーズ作家の活動を応援する団体です。伝統的な出版手法である、出版社から取次を経て書店に書籍を並べる商業出版「以外」の手段、すなわち、セルフパブリッシング(自己出版)によって自らの作品を世に送り出す・送り出そうとしている方々をサポート対象としています。
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2015年11月20日 発行 初版
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