───────────────────────
───────────────────────
この本はタチヨミ版です。
ブログから始まったYaYaの面白エッセイシリーズ、今回は私が何より好きなラテンダンスに関連するトピックと、興味ある話題のつきない男と女の話である。
スペインで生活を始めて、最初に付き合ったイギリス人男性のお陰で私はダンスに深く傾倒することになり、今やダンスのない人生は考えられず、とにかく人生最後の日まで踊っていたいと思っているほどである。恋愛はその後別のイギリス人男性と4年間同棲して別れて以降はシングルで、どういうわけかスペインにいるのにスペイン人男性とはプライベートでは縁がなく今日に至っている。それでも周りを見回せば男と女の話にはこと欠くことはなくて、面白トピック満載なので、興味を持って読んでいただけたらうれしい限りである。
2015年11月 幸多 魅瑠
こちらのサルサ社会は男性1人に対し、女性4~5人の割合で圧倒的に男性の数が不足している。だからどんな不恰好で魅力的でない男性でも、サルサさえ踊れれば、全くパ-トナ-に不自由することはない。
マドリッドやバルセロナの大都市だと、南米からの移民が交じって男女比はそれほど差がないけれど、ここアンダルシア地方は、南米移民が数多くいてもどういうわけか、スペイン社会と外国人社会は交じわっていないので、クラブもスペイン系と南米系とに別れているし、スペイン人はだいたい南米系のクラブに行きたがらない。
サルサの発祥はキュ-バだけれど、こちらでのスタイルは大きく分けてキュ-バンとLINEAと呼ばれているロスアンジェルス&ニュ-ヨ-クスタイルがある。どちらかというと、若い人はLINEAを踊る人の方が多い。日本で“お姫様回り”って呼ばれているように、女性は何回ものタ-ンが入り、年配者にはちょっときついからそれも納得だ。私は主にキュ-バンスタイルで、皆で輪になって中の一人が号令を出し、次々相手を変えながら踊っていく、ルエダという踊り方をスペイン人インストラクタ-から習っている。でもこちらにいるキュ-バンの男性と踊ると、微妙にステップもスタイルも違うから正確にはスパニッシュキュ-バンかな。年令層は10代から60代まで幅広く、最近は年配組が増加の傾向にある。私は基本のステップを習得し、普通に女性パ-トが踊れるようになってから、男性パ-トを習い始めた。クラブに踊りに行って、数少ない男性から誘われるのを、指咥えて待ってるのがイヤだったし、男性パ-トを覚えたら、自分が女性で踊るときの悪い部分が自然に修正されたし、何より踊りたい相手を(女性)選び自分が望めば。座る暇もない程立て続けに踊ることもできるから楽しみも倍増した。
とにかく女性パートだろうと男性パ-トだろうと、サルサ踊ってさえいれば超ハッピーな私です。
私がこちらで夢中になっているアンダルシアンサルサ事情については以前書いたけれど、今回 もう少し掘り下げて書いてみたい。私が不満に思っていることや、おかしいと感じていることがいくつかある。
まずは圧倒的な男性数の不足からくる、あまり気分のよくない現状だ。というのも上述の理由によって、サルサが踊れさえすれば、男性はパートナーに困ることはまずない。どんなブ男だろうと、中年出腹だろうと、全然魅力的でなくても踊る相手には不自由しない。女性から誘われるのなんて当たり前で、中にはマナーを無視して、平気で断ったりする輩もいる。そこでダンスフロアだけでなく、リアルライフでも何かもてると錯覚してしまったりするのから困ったものだ。
それと例えば普通のディスコとかに行って、新しい出会いとか知り合いとかが出来るのは、特別珍しいことではないけれど、サルサクラブではそれぞれのグループで固まっていて、個々のグループやそのクラブ仲間が閉鎖的だから、後からの人間は中々そこには入れなくて新しい出会いもない。これは私がこちらで4年間見てきた現状である。これらの現状は、別にここだけに限ったことではなくて、どこのサルサ社会でも共通しているような気がする。サルサ踊れる男性って以外と、おたくっぽい人も多い。
私はただただ踊るのが好きで、そしてできれば極めたいと思ってはいるけれど、サルサ社会に深く入り込んで見えてきた現状は、少なくともあまり気分のよいものではない。サルサ踊れるからって特別のことでもないのに、何か勘違いしているような人たちがいるの残念に思う。自分を表現する一つの手段として、純粋に楽しめれば、それでいいんじゃないのと私は思う。
男性数の圧倒的な不足は脇において今回は、人それぞれの踊り方について書いてみたい。
サルサに関しては「女性が絵で男性が額縁」と喩えられているけれど、ちょっと踊れる男性の中には額縁どころか自分が絵にまでなろうと、全く相手のことを考えないセルフィッシュな踊りをする人がいる。そういう男性だと自分のことしか頭にないから、相手のレベルなどおかまいなし、只々自分の技のみに熱中している。
私が過去に踊った中で、本当にリードが上手な男性は指1本でいとも容易く私をターンさせたものだ。リードに付いていくべき女性の中には、逆に男性をリードしてしまう程の握力と腕力で臨んでくるケースもあるので、そういう相手だと、自然に男性の握る手にも力がこもってしまうから、一概にリードの力が強すぎるといって男性ばかりを責めることはできない。
あとあまり混んでいないフロアで、良く見るシーンだとちょっと踊れるカップルの特に女性は、相手と踊るのを楽しむより、周りの注目がどれだけ集まっているかに注意がいってしまっているタイプ。そこそこ踊れてもあまりにも周りへの意識度が高いと、プロでもあるまいしネと、私にはけっこう見苦しく見えてしまうのだ。
私が気持ちよく見ているのは、男性は相手をうまくリードしながら踊ることを楽しんでいて、女性も相手だけを見て充分に信頼し、その人との数分間のダンスそのものを楽しんでいるのがこちらにも伝わってきて、思わず微笑んでしまうようなカップルだ。私も見習いたい処だけれど、悲しいかなそんな気分で踊らせてくれるお相手は少ない。
ずっと以前に日本で私が勤務していたホテルの外人客用スーベニアショップには、土産用の小物から浴衣まで数多くのアイテムが陳列してあり、お客は入り口から右に流れて長方形の店内を一回りという作りになっていた。店の中ほどに倉庫室に通じる扉があって、扉は等身大の鏡付きだ。店内を見回るお客が止まって見るのに、丁度いい感じで設えてあった。それほど忙しい店でもなかったので、時間が許す限り私が観察した結果だと、老若男女に関わらず、10人中8人は必ず鏡の前で立ち止まり(進行を止めて、体ごと右を向く形になる)自分の姿を点検した。そして誰もが満足して再び、方向転換し、店内検索に戻るのである。誰でも自分が好きで自分の姿に満足しているんだなというのが、そんな人々を見ていた私の正直な感想だ。
なぜ何年も前のこの体験を思い出したかというと、昨日のサルサレッスンからである。私はこちらでサルサの他に、セビジャーナも習ったし今までに教わったダンス教師の数は、現在進行中も含めたら片手では足りない。大抵はどの教室も壁一面が鏡になっていて、レッスンは鏡を前にして、教師を先頭に生徒は後についてステップを踏むウォームアップから始まる。
数年レッスンについていて昨日はじめて気が付いたのが、どの教師にも共通する鏡の前でステップを踏んでいるときの態度だ。性別に関係なく、教師たちは誰もが鏡に映っている自分しか見ていない。それも自分の姿にどちらかと言うとウットリしながら踊っているという表現が一番近い。私はそんな教師たちの後ろでステップ踏みながら、彼らが同じ鏡に映っている生徒たちを全く見ないのを不思議に思っていた。まぁ自分の姿に見惚れるくらいじゃないと、ダンス教師にはなれないのかもしれないけれど。
そんなこんなで思考は巡り、白雪姫の継母の「鏡よ鏡!世界で一番美しいのは誰?」にまで至った訳である。
スペイン人に欠けているものは、一般に謙虚さだと言われているけれど、こちらが褒めたとき謙遜するような謙虚な人も、中にはいる。ただ全般的に見て自分により以上の自信を持っている人(ある意味自信過剰)が、特に女性に多いような気がする。
私の周りのカップルは、圧倒的に女性の方が強い、カカア天下がほとんどだ。親しい友人カップルもそう、時々旦那が「数十年前は、家庭の権力は父親が握っていて、こんなじゃなかったんだよね」と嘆く。
そしてカップルの女性たちより更に強いのが、一人暮しの長いシングル女性群だ。シングル女性同士で話すときなど、どちらも自分の意見を絶対曲げない。話し振りから何から、自分は絶対正しいという頑なな自信に溢れている。そして私は、私は、の(スペイン語でYoという)自分中心の会話が多く、その強さと自己中心さは、決して好ましいとは言えなくともそれはそれで通用してしまっている。
たぶん気ままな一人暮らしで、自由にやりたいことをやって、気を使うべき相手もいないからだろうけれど。誰かと共に暮らしていれば、やはり妥協しなければならないこともあるし、我慢しなければならないこともあるはすだ。そういう自分の思い通りにならないことも学びながら、人間として成長してくのだと私は思う。
そういう観点からすると、上記のシングル女性群は、人間としての成熟度は欠けているように見える。最近やたらとそんな女性たちを周りで見ている私としては彼女たちの強さと自信溢れる態度、少々食傷気味だ。
タチヨミ版はここまでとなります。
2015年11月25日 発行 3
bb_B_00140427
bcck: http://bccks.jp/bcck/00140427/info
user: http://bccks.jp/user/129534
format:#002y
Powered by BCCKS
株式会社BCCKS
〒141-0021
東京都品川区上大崎 1-5-5 201
contact@bccks.jp
http://bccks.jp
サルサとラテンダンスが大好きな本職は指圧マッサージ師でレイキヒーラーです。スペインアンダルシアでの日常生活や人間模様をエッセイシリーズとして書きはじめました。