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日本人文社会科学未来館
日本人文社会科学未来館は、最先端
の人文社会科学技術と人をつなぐ、
すべての人にひらかれたヒューマニ
ティーソーシャルサイエンスミュー
ジアムです。さまざまな分野に波及
する先端人文社会科学技術の営みを
「新しい知」と捉え、私たちを豊か
にする文化の一つとして、社会全体
で共有することを目指しています。


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地底マテリアルブック

  デザイン×人文社会科学のダイアローグ

Underground:Materials for Design
Design × Humanities and
Social Sciences Dialogue

日本人文社会科学未来館



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目次
プロローグ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P5

1章 物語 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P8
時間 構造 つかいかた
人文社会学者からのメッセージ
監修:優木まおみ(真・東京大学文学部・大学院人文社会系研究科)

2章 統計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P10
人文社会学者からのメッセージ
監修:藤木直人(マーケター)

3章 詩情 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P14
人文社会学者からのメッセージ
監修:安倍晋三(ボードビリアン)

4章 ユーモア ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P19
人文社会学者からのメッセージ
監修:無頼伝 涯(京極夏彦)

5章 活動記録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P22
監修:宮根誠司(フィクサー)

エピローグ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P27




























































prologue

プロローグ



地球はデッカイゴミ箱だ! (^o^)/

文:井上真央
日本人文社会科学未来館「地底マテリアルブック会議」企画担当








[本書の特徴1]
New single『地底の尺度でマテリアル』

4つの要素を作文・散文・引用にて再策定。あらゆる用途に使えるコピペ必至の例文集。まさに人文知の結晶がマテリアルと化した神秘の書です。

[特徴2]
宝塚(金属)・野田秀樹(布)・新派(木)で分類(比喩)

分類不可能と言われていた物にあらゆる尺度を!補助線さえ引ければ、大概の物が輪郭ぐらいは理解可能になるものです。

[特徴3]
マテリアル 活かすも殺すも 人次第 
(サラリーマン川柳より)

ペットボトルのお茶の側面に印刷されている川柳は誰を癒しているのか? それはエマ・ワトソンではなく平山郁夫です。(日本語が読めるから)

[特徴4]
剽軽者とボードビリアンとの対話から生まれた新素材
=テケレッツ才蔵

謎多き人物がこの世に光臨した時、慌てず、騒がず、まずするべきこと、それは尾行です。あまりやりすぎると書道家になってしまうとも言われており、危険水準はレベル5とされています。








1

物 語

人文社会学者が教えてくれた、3つの物語の融合
「東京物語」+「東京大学物語」+「植物物語」

監修:セロ vs 平愛梨






STORY
とみ「空気枕、ありゃあしたか?」
周吉「ないことないわ、よう見てみい」
絵音「今日もまた 嫌なことばっかり」
紀子「そう、嫌なことばっかり」
  (ゲスの極み乙女。『ラスカ』より)

村上「…なんて考えてる女の子がいたらいいナ。」
笹錦「所詮お前はその程度の男か。」

田中美佐子「素肌を優しく洗うために」
大塚愛「辿りついたのはハーブのブレンド」
田中・大塚「潤いだね。LIONから」

「融合・融合・融合・融合…」

「ブランドルバエ・ブランドルバエ・ブランドルバエ・ブランドルバエ・ブランドルバエ・ブランドルバエ・ブランドルバエ・ブランドルバエ・ブランドルバエ・ブランドルバエ・ブランドルバエ・ブランドルバエ・ブランドルバエ・ブランドルバエ・ブランドルバエ・ブランドルバエ…」

セス「…」









2

統 計

いつの間にかの革命としての72億7552万人
監修:安藤和津(MIYAVI)






STORY
「正直パパも、若い時には父親や母親の言っていることに反発を感じたし、バカにもしていた。それでいて今更、こうしてパパの親たちに言われたようなことそのままお前たちに言うなんて、野暮なことかも知れないとは思ってる。」

多少は更新されてるけど、大きな所は毎回同じ。今日はLINEとかそういう道具立てがいつもと少し違うくらい。

「それでも、根本的な所ではパパが両親に言われてきたことには一抹の真実があると思ってるし、事実、パパが若い頃にちょっとバカにしていたような考え方の大事さ、本当さっていうのを最近は特に噛みしめているからこそ、時々こうして話してるんだ。この話、何度かしてるだろ? 」

何度も。けど、どんな話でしたっけ?

「やっぱり人間の基本単位は家族なんだよ。家族を作り、そこをベースに日々の生活を考えていく。それが一番大事なんだ。正直父親にそう言われた時、パパも反発した。家族なんて、国家が個人を管理するために、納税者として縛り付けるために植えつけたただの概念じゃないか、人間の本来の自由な姿とは程遠いじゃないかってな。」

そんな訳の分かんないこと、わたしら微塵も考えてないよ。

「だが、結婚して子供が出来た時、初めてスタートラインに立てた気がしたよ。それまで一人でいることに自分にも他人にも言い訳しながら生きて来てたから、ママとの結婚でどんなに楽になったか。そういう風には誰も教えてくれないだろ? 」

…何が?

「どんだけ突っ張ったって、流れに逆らって生きるのには、やっぱり覚悟と、並大抵じゃない資質がいるんだよ。お前たちに才能がないと言いたい訳じゃない。だが、大勢が当たり前にやってきたことには、それがこれまで当たり前だった訳がちゃんとあるんだよ。」

何の話なのかまじでよく見えん。

「見染めた相手と一緒になって家庭を築く。そのためには健全な思考回路が必要なんだ。正しい生活パターン、何を成すべきことと考え、何を成さないと決めるのか。つまりは常識って奴だ。」

…つまり俺の言う通りにしてれば結婚出来て幸せになれるとでも言いたいんだろうか? 結婚したって全然そこがゴールとは限らない。今離婚率がどんだけ高いか知ってるよねパパ。年間65万件の離婚が成立しているそうですよ。パパはママと出会えて良かったね。そこが一番の難関なんだよバカ。

「人の道を踏み外すのは本当に簡単だよ。」
人の道は人それぞれだよパパ。
妹の夏奈は変わらぬ表情で、聞いているんだかスルーし続けているんだか分からない。
これでも内心パパが大好きなのだから不思議だ。

「夏奈、お前、AVに出たりしてないだろうな? 」

…は?











3

詩 情

豊かで芳醇な文章の奨励
監修:ストーリーキング





STORY
「それはおかしいって。おかしなこと言い出すなよ」
「いや、マジだから。ネットで『苔、成長』で調べてみ? 自然な状態で成長するには早くても十年以上の歳月を必要とするって出てくるから」

この流れで絶対に戻りたくなかった部室に戻ると、男子3人が何やら熱く語っていた。

「おい、市川、お前、『千と千尋の神隠し』って観たことあるだろ? 」
新井君ごめん。何故だか今は強烈に無視したい。

「笠木がさ、あの映画のラストシーン、冒険の後、千尋たちは現実世界に帰れてないって言っててさ、そんなことあるわけねえって俺は言ってんだよ。だってそれじゃ何の希望もないじゃん? 」

どうでもいい。わたしの荷物どこだっけ。

「いや、帰れてないとは言ってないよ。ただ冒頭で、あのテーマパークの残骸みたいな所に入って行く前に、入口の所に2本の魚の形をした車止めみたいなオブジェがあったの覚えてない? あれが、最後のシーンでもう一回出てくるとき、凄い苔むしちゃってるんだよ」

笠木君が興奮気味に そうまくし立てた。

「それ、確か? 」
春日君も思わずといった感じで乗り出して来た。

「春日、お前小津映画とかワンカットずつ観てるんだろ? 何で気付かねえんだよ? 俺この事実に初見で気付いてずーっと言いまくってんだけど、その度に何故か聞いた人が皆怒り出すというね」
笠木君はいちいち自慢気だ。

「言い方だろ。何かムカつくんだよ」
新井君がそこに気付いて指摘する。

「でさ、コケが成長するのに十年以上かかるだろ? 映画が公開されたのが2001年で、もう千尋は多分現実に帰っていい頃なんだけど、あの頃より今の方が現実が苛烈になってるというこの皮肉ね」
「やかましいわ。オタクが」
新井君と笠木君でまるで漫才をしているみたいだ。

「多分、当時インタビューで宮崎駿がさ、現実に希望はないけど未来に託すみたいなこと言ってたんだよな。だからなのかなって。詳しくは渋谷陽一に聞けばいいと思うんだけど」

「どうやって? 」

「千と千尋っていえばあれ聴いた? 町山さんの」
今度は春日君が話を振ってきた。
「ああ、千尋はソープ嬢ってやつだろ」
「そう」
「どんな内容だったっけ? 」
新井君が尋ねると、春日君が振った話なのに急にまた笠木君がしゃしゃり出てきた。
「それは忘れたけどさ、今AVで千尋そっくりな子がいてさ、そいつの名前がシュナっていうんだけど、シュナと言えば宮崎駿がナウシカ連載開始直後ぐらいに出した文庫の絵本みたいなやつで、『シュナの旅』っていうのがあって、『もののけ姫』の原点とか言われてるんだけど、このAV女優に名前付けた人がそれを意識してたんだとしたら相当じゃね? 意識してないとしたらそれはそれで神降りてると思うし」
「お前さ… 水を得た魚ってこのことだな。よくまあベラベラと… 」

「いやー超楽しいよ。だってまだ少なくとも俺はこのこと周りで聞かないからね。ネットとかで言ったらすげー拡散しそう」
「拡散して何が楽しいんだよ」
「楽しいじゃん。先に気付いてんの」
「そうやってマウントポジションとりたい奴ばっかだから鬱陶しいんだよ。なあ市川? 」

部屋を出るギリギリのところで声をかけられる。
話しながら実はいつもそうやって全員に気遣いしてるんだ新井君は。わたしは思わず振り返って聞いた。

「新井君」
「ん? 」
「由理ちゃんと付き合ってたんですか? 」
「あ? ああ。何だよいきなり? 」

平気な風にしてたけど、一瞬顔がこわばったのがすぐに分かった。
でも認めたのか、かわされたのかは正直分からなかった。
半々だったけど、それ以上何も聞ける自信がなかったので、
わたしはそのまま何も言わずに部室を出た。















ユーモア

笑う犬の死
監修:陰茎




今年、いっぱい人を笑顔にした文章を取り上げるコーナーです。今回は某官僚が友人に送った手紙(手書き)から。

今年6月、日本政府が公式に人文系の学問にNOを突きつけました。まず私は各大学や研究所などの内部の者ではありませんが、それでもこの事態に驚愕すると同時に、少なからぬ問題意識を持っています。すぐに役に立たないからダメ。そもそも役に立たないからダメ。ちょっと待ってください。役に立つって一体どういうことを指すのでしょうか? 下記の文章をマテリアルに、是非多角的に考えてみて下さい。

<手紙抜粋>
…でも確かに、彼らは色々言うんですけど、私から見たら結局何にも生み出してないんですよ。それでいて給料はガッツリ取って行くんです。人並み以上に。自分らの著作で稼ぐならまだいいです。そして私学もまあありだと思います。やりたいっていう人たちからお金をとって勝手にやってるんですから。問題は国公立です。税金で回してる所ですね。本音を言うとこれからの超高齢化社会、もっともっと福祉に予算を回したいんです。今のままだと日本人の介護士のなり手がいなくなってしまいますし、その辺を整備することは急務だと思います。存在論がどうのとか実存がどうのとか、いくら話したってどうにもならないことは先人が既に山程証明してくれてますし、そんな1円も産み出さないことに明け暮れてる役立たずの人間を作るのはもうここらで止めにしないと(言い過ぎでしょうか・笑)、本当に未来人に相当に怒られてしまうと思うのです。何でそんな馬鹿なことさっさと止めさせなかったんだ。何でそんなことにいつまでも金を垂れ流したんだって。君もそう思うでしょう? 震災の後処理だってまだまだ終わっていないのです。歴史研究はまだいいでしょう。でも… 愚かなこととは知りつつ、ここのところは彼らに面と向かってこう言いたい欲望に駆られてしまってます。
「は・た・ら・け・!」(笑)
内緒ですよ。
























5

活 動 記 録

ガソリン+過酸化水素=大爆発 
地底マテリアルブック







朴君は日本の映画界で働きたいと思い、うちの学校の映像芸術学部に留学中ということだった。普通大に限りなく近い体でこうした学部がある学校は、何かいきなり表現の場に飛び込んで行かなければならないような専門系の学校よりある意味敷居が低い感じがするので、クリエイター的な職種に憧れつつ気後れしている若者が、うちにも沢山集まってきている。

何故にこんな毒舌?
朴君の志はそんなに低いものではなさそうだし。

「でも今映画のこと勉強したいなら、どう考えても自分の国にいた方がいいんじゃないの? すごい作品がバンバン作られてるじゃん。」
篠宮先輩がそう言った。先輩をはじめ、新井君も春日君も演劇だけでなく映画にも目がない。彼らによると、韓国は国策として映画製作や映画人の養成に取り組んでいて、ここ何十年と国際的に高い評価を得る作品を生み出す環境が整備されているのだそうだ。そんな中、朴君は何でわざわざ日本で映画を学びたいと思ったのだろう? 
「日本の映画が好きなんです。溝口、小津、黒澤、成瀬、増村や石井輝夫、新しい人では黒沢清や北野武、深田晃司、山戸結希とか好きです。」
多少は独特の癖があるものの、かなりきれいな日本語に驚く。独学らしい。

わたしは映画を見るのは好きだけど、お話以外の裏話的なことを記憶するのが苦手なので、ひたすら皆の会話を聞くのに徹する。というかもう本当に帰らなきゃいけない。いつ切り出して帰れるか、タイミングを窺っている。


朴君がいるので、自然と韓流映画の話になる。先輩によれば、今でこそやれ韓流ドラマだK―POPだ言ってるけど、10数年前までは日本における韓国文化の受容のされ方はまるで違ったんだそうだ。って先輩もわたしと歳そんなに変わんないはずだけど…
実際韓国でもこれまで日本の書籍や音楽、映画などは制限されていて、最初の解放が始まったのが1998年。日本映画が全面解禁されたのは2004年で、10年くらい前のことだったらしい。わたしの感覚では結構前のことだけど、長い歴史からみたらそれはつい最近のことって感じなのだろう。
「冬のソナタ」という韓流ドラマがあって、わたしも中学生のころ見てドハマりしたのだが、あれがすべての始まりだったらしい。
滅茶苦茶ベタな純愛ドラマ。記憶喪失とか、好きになった相手が実は互いに生き別れになった実の兄妹とか、今考えるとありえない内容だし、当時からそんな声もあったらしいけど、それでも多くの日本人がこのドラマのストーリーに心動かされて、何かそれまでの韓国と日本との間のギクシャクがなかった感じにさえなったんだそうだ。それを聞いた時、やっぱりフィクションが世界を変えるんだとわたしは鼻息を荒くした。

さっきも言った通り、中学時代このドラマを見た時は思いっきり感情移入して、もうぼろぼろに泣いた。ただ、ジュンサンやサンヒョクがもっとカッコ良かったらいいのにという不満はあったけど。そのサンヒョクを演じていたパク・ヨンハさんが後日自殺してしまったというニュースを聞いた時、激しくショックを受けた。わたしは、ぺ・ヨンジュンとチェ・ジウが演じた、物語に祝福された恋人たちではなく、永遠にかなわぬ恋に身を焦がし、一時はストーカーのようになりながら、それでも最後は相手を思って身を引いたサンヒョクの存在に一番泣かされたからだ。

とか言ってる場合じゃない! もう10時だよ。どうしよう。
「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフルの2007年のシネマハスラーで、イ・チャンドンのシークレット・サンシャインが年間1位取ったでしょ? あれとポン・ジュノの『殺人の追憶』観たのがきっかけだったな。韓国映画すげえって。」
「そうだったよね。一般には『シュリ』とか『JSA』だろうけどね。」

ヤバい、すごい文科系サークル呑み会モードだぁ! 
あっちでは文学論に花が咲いている。帰れないよ!

「だから何回も言ってっけど、固有名でも何でも分からないことあったら即ググればいいんだよ! 大量に注釈付けたって照らし合わせながら読むの辛いだけっしょ? それを地の文に自然に溶け込まそうなんて野望も、それが書き手としての良心だという信仰もないよ。注釈だらけで世間を驚かせたっていう田中康夫の『なんとなくクリスタル』が35年くらい前の作品なんだからもういいだろ? そもそも注釈だらけで驚く世間って何? 」
「それで思い出したけどあれ、なんだっけ? 作品書くために参照した検索ページのURLが最後に羅列されてるってやつ。」
「『ニッポニア・ニッポン』阿部和重。」
「いや、お前がこないだそう言ってたから図書館で借りたけど、最後にURL一覧なんてなかったぞ。」
「あれ? 重版で落とした? 」
「そういえば版の表記はなかったな。発行とだけ書いてあった。」
「最近の純文それ多いよね。」

「何、二人とも。キモい。」





epilogue

エピローグ

本プロジェクトの企画者が語る、あるべきモノづくり、
新しいマテリアルのつかいかた。

ici concepted by 黒田硫黄

この本は、UNO千代書房より同時配本されている大貫タクヤ著『bccks2』内でその存在意義が明らかにされる実験書籍です。期間限定で公開し、その後は希望者のみ閲覧出来る状態にさせて頂きます。あらかじめご了承下さい。










P.K.Feyerabend
V.G.Sorokin
須藤 凜々花 に

地底マテリアルブック

2015年11月25日 発行 初版

著  者:日本人文社会科学未来館
発  行:日本人文社会科学未来館

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UNO千代

初めまして。 薄い本をいっぱい出したいです。

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