── 隣に引っ越して来たのはワケアリ美女!
〈読切小説〉
西暦2072年、厳しい寒さが東京を襲った冬のある日。
バイトが終わった後、大学生の「僕」が住むボロアパートに謎めいた二人組の男が訪ねてきた。彼らは名前も名乗らず、しきりに僕の部屋の隣の住民のことを訊ねてきた。
でも僕は隣の住民のことなんて何も知らない。
彼らを振り切って部屋に入ってしばらくすると、深夜なのに突然「隣人」が薄い壁越しに声をかけてきた。
「隣に引っ越してきた者です」
実際に会うと、とんでもない美女の杏さん。
でもあの二人組の男の正体は……?
何故杏さんは深夜にこそこそと行動しているんだろう……?
西暦2072年の冬は、厳しい寒さが東京を襲った。
僕は大学の帰りにバイト先であるコンビニに行き、深夜遅くまで働いてくたくたに疲れてアパートに帰った。築75年の木造ボロアパート。僕が生まれる前にあったという首都直下大震災にも、よくぞ耐えたと思う。
だけど「冷え」が芯から込み上げてくるのが、このアパートの難点なんだよなあ……。ヒートインナーを着ていても、それを着けられない顔や手には相当な寒さが染み込むんだ。分厚いマスクや手袋を着けたって、異常気象がもたらすこの凍えるような寒さからはなかなか逃れられない。
かと言って部屋の暖房を長く強く点けていると高くつくし。
うんざりしながらアパートの入口の旧式のアルミ製ボックスタイプの郵便受けを見ると、ふと僕の隣の部屋の郵便受けが気になった。確か隣は空室のはずなのに……。新聞やらスーパーやら不動産やらのチラシに混じって、一通の手紙が入っている。気になってボックスの隙間から覗くと、その手紙にはきちんとこのアパートの僕の隣の部屋の住所が書かれていて、その下の名前は……ちょっと暗くて分からない。
気になってスマホのLEDライトで照らそうとした時、ふとすぐ背後で人の気配を感じた。ぎょっとなって思わず振り返ると、二人のマスク姿の背の高い男がすぐ近くに立っていた。
今までまったく気配に気づかなかったのに……。
「ど、どなたでしょう?」
「202号室の住民とはお知り合いですか?」
中年と思われる男が低い声でそう訊ねてきた。僕の部屋が201号室だから、202号室はすぐ隣のついさっき調べていた郵便受けの部屋のことだ。
「いえ……隣の人は一回も見かけたことありません。ずっと空室だと思っていましたが」
「じゃあどうして隣の郵便受けを覗いてた!?」
もう一人の若いと思われる男が突然大声を上げたので、ビビった。
どうしてそんな詰問するような口調なんだ?
そもそもこいつらは何者なんだ?
色んな疑問が浮かんだけれど、
「もしかして警察の方ですか?」
思い切って訊ねてみた。でもちょっと声が震えているのは、二人の男がでかい上に目つきも鋭かったからだ。
「そうではありません」
最初の男は一転して少し穏やかな口調になった。
「ではどちら様で?」
「本当にお隣の方を知らないんですね?」
「知りません。会ったこともありません」
「何か隠していませんか?」
※この作品のサンプルはここまでです。続いてインタビューをご覧ください。
夕凪なくも(ゆうなぎ・なくも)
奈良県奈良市出身。
小学生時代に江戸川乱歩の作品に感銘を受け小説創作を始める。特に当時ポプラ社から出ていた乱歩の少年探偵シリーズ全46巻を、図書館で少しずつ借りて愛読。
早稲田大学第一文学部、千葉大学大学院で文学やフランス現代思想などを学び、その後も働きながら創作活動を続ける。
2015年9月、E★エブリスタ「超・妄想コンテスト 水場の恐怖」で準大賞受賞。
執筆歴は長いですが、未だに大きな賞を取れていないのが悩みです。
AmazonのKindleストアで小説を幾つか販売中。
・SF『if』『パニック』
ブレイン・ストリーミングという謎の装置が登場する物語の、第一弾、第二弾作。
・SF『計算する知性』
将棋電王戦に刺激を受けて書いた、コンピュータと将棋の物語。
・最新短編集『ショート・ストーリーズ vol.001』
エブリスタ「超・妄想コンテスト」に参加した作品を集めた、ショート・ストーリー集!
お題「水場の恐怖」で準大賞を受賞した「サメ」他、現在エブリスタでは非公開の作品ばかりを、加筆修正の上五編収録。
『月刊群雛』2015年11月号に寄稿した作品も、早くも収録。
まだ読んでいない方は、是非読んでみてください!
もう幾つか読んだという方も、電子書籍愛蔵版ということで、よろしくです!
ちなみに表紙はうちの本棚です(笑)
◆Twitter:
https://twitter.com/sazamekunami01
◆ブログ:なくもんか(T_T)
http://sazamekunami.blog.jp/
※TwitterのIDの末尾が今までの「1」から新しく「01」へと微妙に変わったので、ご注意ください!
やや季節外れではありますが、「引っ越し」や「隣人」をテーマに何か一編書いてみようと思いました。また前回『月刊群雛』2015年11月号に寄稿した『99%の真実と、1%の嘘』はどちらかと言うと現実味のあるホラーだったので、今回は全く違うテイストのものを書いてみたいと考えていました。
影響を受けた、というほど強くはありませんが、2015年4月辺りから深夜にテレビで放送していた『プラスティック・メモリーズ』というアニメは少し意識しました。このアニメは着眼点が鋭く、発想もオリジナリティがあり、すごく面白かったです。
設定やプロット作成のメモ書きに2時間ほど(僕が呼ぶ「メモ書き」については、僕のTwitter2015年11月4日、ブログ2015年11月5日に実際の写真を載せています。是非一度ご覧になってください)、執筆には3、4時間ほどで一気に書き上げました。
その後に時間の許す限り修正や推敲を行っています。
Twitterとブログ、時々Google+です。
『計算する知性』で、あり得ないミス(誤字)が今さらながら見つかったので、今後は気を付けたいです。単純な推敲のミスでした。
あと大きな賞を取りたいです。
『月刊群雛』に時々小説を寄稿しつつ、一方でエブリスタでも時々小説を公開したいです。
勿論『月刊群雛』の掲載枠が取れたら……の話ですが。
また僕の最新電子書籍『ショート・ストーリーズ vol.001』は、既にvol.001と銘打ってしまっているので、vol.002以降も出せるよう、コツコツと地道に短編を書き溜めていきたいです。
新短編集、ついに出ました!
僕の電子書籍のお買い上げや、Kindleオーナーライブラリーで借りていただくことが、大きな応援であることに変わりはありません。エブリスタで応援してくださったり、レビューをくださることも、とてもありがたいです。応援してくださっている方々にお応えするためにも、もう一段も二段も上の書き手を目指して頑張ります。
年末年始はじっくり本を読もう!『月刊群雛』はインディーズ作家を応援するマガジン。掲載作家は毎号一般公募、巧拙問わず・ジャンル不問・参加は早い者勝ちの、ちょっと変わった電子雑誌です。
2016年01月号のゲストコラムは、マンガビジネス請負人・菊池健が語る『トキワ荘プロジェクトのこれまでとこれから』です! ほか、珠玉の十篇とインタビューを収録。制作裏話や今後の活動予定もしっかりお届けします。
お求めはこちらのリンク先から!
http://www.gunsu.jp/2015/12/GunSu-201601.html
NPO法人日本独立作家同盟は、文筆や漫画などの作品を、自らの力で電子書籍などのパッケージにして世に送り出している、インディーズ作家の活動を応援する団体です。伝統的な出版手法である、出版社から取次を経て書店に書籍を並べる商業出版「以外」の手段、すなわち、セルフパブリッシング(自己出版)によって自らの作品を世に送り出す・送り出そうとしている方々をサポート対象としています。
当法人の活動目的は、誰もが情報発信者になれる時代における、作家や作品の知名度向上(Promotion)、作品の品質向上(Quality)、作家と読者のコミュニケーション活性化(Communication)などを促進することにより、多種多様な出版文化の振興に貢献することです。情報交換や交流などを目的としたコミュニティの運営、インディーズ作家を応援するマガジン『月刊群雛』の発行、ウェブメディア『群雛ポータル』によるセルフパブリッシング関連の情報発信、勉強会やセミナーの運営などの事業を行っています。詳細は、公式サイトの[法人概要]をご覧ください。
◆NPO法人日本独立作家同盟公式サイト:
http://www.allianceindependentauthors.jp/
2015年12月22日 発行 初版
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