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無題、前
改賊版
改賊版・八十七年十三月三十七日
四畳半井戸底 騒音実録集
切れ出す雲間、翳る青
無題、後
短詩集「交錯点」
うす汚れた路地裏にうずくまり
喉奥をえづきながら抉る
うつくしい言葉を吐き出す為
***
計れずに置いた思いを詰め込んで
冷え切った裸足のままに引き返す
孵らずのこころは海へ棄て入れて
***
這いつくばって血眼で
砕ける音を浮かべては、息絶える虫に微笑みを
待ちぼうけている車輪の下
***
水色したアイス棒に黒く蟻がいて
無邪気にそれ踏む悪童がいて
きつく照り付ける日が傾いて
夕刊の端っこで乾涸びた赤子を知る
当たり前の夏の跡
***
あの娼婦に少し踵の高い靴を
少年に綺麗な海の写真と少しばかりの金を
俺には安いナツメグで
***
もつれた中指と絡まった舌
息は千切れて、思考などとうに奪われた
ふらついた脚、乾いた目、熱病が連れ去った十二才の夢
***
誰を忘れて生きてきた
逃げ果せど近き夕刻は
指から溢れ、遮れぬ夢
***
腐りきった感情を
いつまでも咀嚼しながら
待っている、声なき未明
***
あの星の溶け残り
石畳に隠れ潜む影
憐れむばかりの遺失物
***
風はふわりと昨日の手を引いて
切り捨ての枯れ葉は水盤で淋しく踊り、沈む
カラカラと、破傷風の季節
***
ちょうどいい入れものだけが見当たらず
相容れられずに立ち尽くす
わたしがひとり、またふたり
***
やがて満ちて
溺れ耽るまで
かなしみの淵で微睡んでいる
***
夕暮れ時を待ち焦がれ
月のブランコ、宙返り
悲し紛れに星結ぶ
刻一刻と明くる音
***
深さも知れぬ眠り淵
気まぐれに脚沈めても
歩けど頼りなき浅瀬
深水で夢見る夢もなく
いつも途中で止める脚
***
ぬかるんだ目をして
線路の錆の物語を思案する
項垂れ廻る周遊列車
***
鳴らない汽笛を待っている
ベンチの上に置き捨ての傘
空しく近づく取り壊し予定
***
青鈍と銀の河川
焼け残ったガラスの義眼
轢死の車輪は黒かった
***
ガラス越しの景色は
ガラス越しのままだと結局
どこまでも、無声映画の空白で
***
焼け爛れの胃の中から
綺麗な言葉を拾い上げる
切り捨てられた言葉達
溶ける事すら叶わずに

硝子障子には映らない
明けていくのは空ばかり
かなしい酔いの通り雨
###
もう要らなくなったレコードが
まだ、捨てられずにいる
みんな埃を吐いている
###
みえない春はくるくる舞って
微熱のような薫り落つ
春日侵酔
たゆたう季節に憂くかすみ
願うばかりは早世です
春日狂喪
だけど愛する者がいない
消えゆく愛する者がいない
死んだ時には、死んだ時には……
春日早世
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宿酔めが
走っているぞ!
逃げ行く曲がった正論、曲面に水が留っていられぬように
手摺りを頼りに歩くのは、重力が蹂躙しやがるので
……まったく、二日酔いめが
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まるで遠き何年に幾度となく沈む太陽が
めいめいに身をひしませて見えたのです
厭な気持ちを抱えて僕の
伸びゆく影は、知らぬよ、とカラガラ
だけどそれらはみな深く
泣き疲れた跡がありました
###
自由律の神経を研ぎ澄ます事がどうも楽しくて
まるで牙をみせる獣のように、ムキになってしまう
つまらない人生をいかにつまらなくするか
その氷を削るような無意味さに、その溶けゆく小片に
僕はつまり中毒を視ているのです
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霞みを食んでいるように身細き彼女は
肺を病んでいました
それがどうしてか、心細さを掻き消すまでのしたたかさとなり
彼女の影にまでその色を落としていました
百合と硝子を混ぜて創った
その肺臓はどこまでも
泣き腫らした緋色に暈けていました
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空中ブランコ、綱渡り
夜空に宇宙遊泳るらるらと
私はただひとつの落下
とある生命独りのパレード
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落下傘奴のノスタルヂア
私の気分は空中ブランコ
ゆあーんゆよーんゆやゆよん
しかし醒めない
かなしい酔ひだ
何を根拠に、明日の朝を信じられる!
血を流す以上の無意味はいったいどこにある
僕は血を吐き吐き歩く
危ない足取りで、
ゆあーん、ゆよーん、と
###
ドブから覗く石つぶて
踏み潰された花弁さえ
美しく見えるこの両目
「汚れつちまつた」引き換えに
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バットの空箱はどこにも無くて
仕方が無しに小石蹴る
乾いた音は、乾いた冬を横切って
###
この空白をいつまでも
揺蕩っていたいのに
規則的に夜は落下していく
ああ、やや無情
###
おまえの産み落とした全て
漂白の膿に振れるあまり、掛け違えた指でなぞる事も出来ない
おまえの無口に項垂れの日々を
背を向ける優しさにと食い違い
私はおまえにこの身を落とす
辿れない途絶え
その内でうねる拍動を隠しながら
答えは合わせ鏡の位相
したたかに砕けるまで
###
春は病のようだった
現実は悪夢の有り様で
ねむりは空白だった
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弱者への愛とは
気づけない無邪気な殺意であり
嘲笑なんです
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金網越しに一日中
過ぎ行く電車を眺めては
轢死した女の形を考えている
つまはじきものの男の悪癖
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ああ僕の魂はなんだって
こんな風にどろついているのだろう
ああだから今日は飯は要らないよ
薬だけは喰うけれど
飯は食べられる気分じゃない
こんなどろついた魂は
きっと棄てる場所さえもらえない
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梟泣いた
つまはじかれて夜の番い
よだかもいないビロードの中
###
死んだものはもう
確かめる術を委ねることしか
冷え切った、冷え切った月だけが
天鵝絨を留める銀の釦のようでした
ああ生きながらえて、なんになりましょう
これ以上けだものには、なりたくないのです
###
澄んだ夜に笹舟を池に浮べて滑らせる
沈むのは狡くも託した想いのせいか
少し乱れた水盤の月
###
寒さに凍える振りをして
白くなる
命を全て吐けたなら
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真っ黒に塗りつぶした
日に伸びる影
地面に広がる黒と俺の真後ろワラウ影
###
首を絞めるものがありました
それは誰かの指先でも縄でもなく
光にあわせ細やかに濃度を変えていく
今は頼りなく薄暗い、わたしの影でした
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淋しい人格がありまして
月を食べ食べ思い馳せ
映せぬ姿、真っ白夜中にふわふわ浮かぶ
ああなんて身勝手な幻影!
夢に行方知れずのキミ
キミの指先が、
ああ……
淋しい人格がありまして
飛ばせぬ意識がありまして
淋しい人格が
…………。
###
桜の樹の下には死体が埋まっている
本の冒頭が頭から離れなくて
誰もいない公園に寄り、桜を見る
いくつものブルーシート、横倒しで中身のこぼれた缶ビール
下ではない、埋まってもいない
それでも本当だ、桜は死人を惹き寄せる
自分の掌を、不完全な死体を
ぼんやりと眺めた
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わだかまる孤独が
いつか身を割って
わたしは
唯ひとつのぬけがらとなる
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身を切るような淋しさに
淡く咲いている、一片の肉が
#(それではすこし駅店まで、煙草とインキを買ひにいつてきます)##

迷子さがしは時間切れ
君もお前も僕も私も
---
今日まで、あらゆる正義の下地は積み立てられた犠牲の上に成り立ち、手始めと並べられたビルの墓碑がある
なんにもないじゃあ死ぬしかないのさ
なにがあっても死ぬしかないのさ
このまま黙れ、この先トマレ
思考を捧げ
思考を捧げ思考を捧げ思考を捧げ
後天性労働者
---
雨柳
首から落ちる
寒椿
知ったことかと真っ赤にわらう
大口覗けばカラッポだ
---
擦り減って
廃れる魂
売れ残り
廃品回収、焼却炉
腐っても肉、腐ってもヒト
---
煮ても焼いてもツラヨゴシ
捌いてみたなら嘘臭い
ねんねんころりと何遍目
覚えてないない虚ろにねむれ
いい子よいい子、肥やしにおなり
---
太陽は撃ち落とされて
群がった人の山だかり
我先にと気がふれた様に口にする
嫌になるほど喰った神
甘ったるさに灼けた胸でも、唾液は落ちて喉が鳴る
次の朝日を貪りたくて
---
これ幸いと手を叩く
吐けども吐けども死ねないテレビ
殺人、強盗、万引き、と
弾圧好きへのフルコース
右手にキーボード、左は携帯
ゴシップ膝に掛けたなら、運ばれますは大モニター
さあさあどうぞ好きなだけ
さあさあどうぞ好きなだけ
---
言葉に水銀含ませる
頭蓋を満たすホルマリン
正義面してのさばる性器
本能に喰われる理性の奴隷
失せろ 失せろ
---
うんざりだ 重心崩れた その揺らぎ
不可侵領域掻き混ぜ笑う
うわついた脚を無くしてそのまま終われ
それでも笑っていられるさ
壊れたラジオの猿真似で
---
曇天鈍行、低空飛行
雨天決行、欠席裁判
晴天中止、晴天中止、晴天中止、晴天中止
晴天、中止
執行せよ
くたばるまで、執行を永続せよ
---
溜め込んだ灰汁と吸殻の灰皿
テキトウに埋めた将来の夢
路上にのさばる酔っ払いのゲロ
媚び纏わりつく愛だなんだの安い歌
それらはまったく同列です
---
溢れ出しそう
赤い言葉に口を塞ぐ
錆びた喉を裂いて
散り行く鉄の花弁が
輪郭を沿う
カタチをつくりあげる
つたつた
古ぼけた数え唄の絵画
影踏みに躊躇う脚を
そっと引き摺り
落とす
---
目を開けて飲み込む
3965秒の一瞬の現実を
まばたきによって消去されゆく幸福を
広がり狭まる、薄膜の景色は
呼吸困難に溺れた、現実
---
寝ようと布団に突っ伏すと
いっせいに臓器達の声が
心臓のスピーカーから血管を通って
鼓膜に叩きつけられる
臓器達はギラギラしながら
鉛漬けのわたしの魂に
立ち退きを求めている
真夜中の轟音と叫声
耳奥で叫び散らす
そんな真夜中のライブ
死ねと言うわりに、ライブ
---
来るもの拒まず去るもの追わず
右と左を鏡に合わせ
青いランプを眺める夜深
縋りつく藁で縄を編む
鏡と向き合い尋問ごっこ
嫌いな言葉を選んで食べて
明日も多分生きるだけ
くだらないまま消化したい
---
記憶は殺してくれないらしい
毎晩喉を鳴らしては
淵まで連れ行くくせに
せせら笑って、いつでもそこで
薄膜の現実へと突き放す
---
浄罪と
引き換えの錠剤
過去と未来
どこかで掛け違えた今
ただ無くしてある空白
---
ただぼんやりとある身体
秒読み置き去り頭が嗤う
これがお前の生まれた意味か
明日も変われず引き摺る生か
手違いによって生まれた所為か?
---
らりるれ肋骨つがいの祈り
理由か嘘か咀嚼して
手を汚さずにはいられない
---
気をつけ歩け
綱渡り
角膜はいつも曇り空
---
風なびき
ひび割れの頭蓋こぼれて、廃魚の脳
草に埋もれし廃線の上
---
生きてりゃ息してゼータクで
死んだらそれもメイワクで
お母さん、うまれる時点で面倒でした
--(なにが--や、このキxxx!)-
、、、
解けてしまった赤い糸で僕はあやとりをする
、、、
解けばおしまい
約束はない
ゆびきり、それだけ
、、、
夏もあっけなく沈んでしまいまして
朝を嫌うように蝉は死にまして
蒸発したい君と僕
「夏はきらい」と言って待つ
干乾びたくて、また来年
、、、
すべて痛み止めのような夢だった
終わる事ばかり見ていたわけじゃなく
ただ信じるのが面倒だっただけ
アスファルトの夕暮れを蹴り上げて笑った
君になにも異常なんてない
、、、
気が紛れるまで遊ぼうか
花が散ったら落ちようか
、、、
立ち止まって愛慕うので
どうかそのまま
振り向かないでいてください
、、、
柿の実の想いは熟れて腐るだけ
朝の光に見つかる前に
廃るこの身を散らしたい
隣でないてる烏と共に
、、、
暁に独り歌うは泣き烏
朝の光に身を焦がす
胸を焦がせど止まぬは鼓動
、、、
ゴミの日に
太陽への慕情を
路地裏の赤錆びた焼却炉へ棄てている
暗く澱んだ夜の影
、、、
甘いだけの季節は当たり前に解かれて
やるせない思いだけ気怠い焼却炉
遠い約束はいらないよ なんて、ただの言い訳
、、、
味もしない思いを噛んで
誰を忘れるの
吐き出せずに、誰を願うの
、、、
なにがあっても千切れぬように
思い込みなら傷もない
ひとりで結ぶ、あやとりのひも
、、、
塗れば色
つければ欲と似た情け
どうしようも無いお前と私
、、、
伸ばした手の先、いつも君がいて
もぎ取った太陽を分け合いたいけれど
消えるのが怖いから、いつも触れられない
、、、
言葉の消えていく意味を雨だと云うのなら
手にしたこの全ても、なんて意味もない陽炎
例え話に言葉も見えず、うつむけば
計り知れた浅ましさ
笑って抜ける一抹の風
、、、
もうすぐ空が落ちてくる
嬉しいような感情で繋いだ右手震えだす
潰れてひとつになりたいな
、、、
誓い合うということ
足枷をつけるということ
どちらも同じく愛というもの
、、、
愛の定義を一通り
読み耽った日はいつも
傷を作って眠りに就く
、、、
こわれそうな足場で背中合わせ
傷つけあわないようにひざを抱えて
繋いだかなしさを笑いあう
、、、
溢れないよう気をつけて
ぼんやり雨に打たれてる
気付かれたく無い涙の匂い
、、、
おそろう想いおぼろげに
冷たい指を絡めあう
分け合う熱と孤独癖
、、、
星を数える振りして泣いた
三日月の端に腰掛けて
当たり前がまだ淋しくて
、、、
さよなら
いつか終わったあとで
また会えますように
ああ、さよなら
だけど行き先はもうとっくに
失ったままで
、、、
あなたはそこに座っている
あなたはそこで笑っている
あなたはそこがいいのだと言う
切れかけた、振り子時計の音だけあって、螺子を巻くため立ち上がる
あなたの顔を盗み見て、かなしい記憶を思い出す
あなたの名も知らぬ僕がいる
檻もなき獄のこころに
無様にも溺れもがいて
いつも思うのは、かなしい眠りの海へ沈み込む
そんなゆめ
願いはうねりへ千切れていった
荒れて波打つこころへと、もう会うことなど無いように
願いはむなしく純粋に
ああまた呑み込まれていってしまった
***
渡したかった言葉はもう、こわれてしまった
だから好きなように組み立てて、パズルみたいに遊んで
伝えたかった言葉が完成しなくても仕方ないことだけど
かなしくなってしまうんだ
***
昔話のようで この今も
こんな日に似合う歌ももう終わって
かなしみさえ消えてしまった
晴天に祈るふりで浴びるほどに焦がれていた
それもこれも、もう昔話のようで
***
プールサイド 聞いていた声
雨の日のためのブルーシート
なくすものしか、持ち合わせていないから
***
痛みを
抱えきれないから
引き摺って歩く
そばから
後ろは消えるので
それを辿れる人はいない
だから引き返す道はない
どこへ行けども標識は
前倣えと示して嗤う
帰りの電車はどこにもない
ただ延々と廻って止まる
ぽたぽたと誰かを落としては
***
水道管、曲がった鏡
複眼でなぞる嘆願
つめたい土、つめたい土
***
めぐりめぐって無言はがなる
刻み込むまま時計の針
心張り付けて、動けない空
***
懐疑、への懐疑
頭の中の尋問室
ひとりでにかたむく、空の天秤
***
こびりついた嗤う音
いくらめくれど
脱皮出来ぬ肌
***
仰向けで豆電球に手を翳し
薄っぺらな現実をゆらゆらと揺蕩っている
壁伝い悪夢の記憶が滴る夜に
***
白はずるい、と黒が言う
黒はいいね、と白は言う
灰はぼうっと、それを聞いてる
暖炉の燃えかすは白く、25時
***
ありふれた夜の寂寞に
かじかんだ血管
溶かしゆくぬるい血流
***
朝を朝とするために
星は消える、月も白む、太陽はのぼる
忙しなく何もかもが動き出す時間
渡せないコーヒーを淹れる
***
焼け落ちた心の散らばった
横たわってみる夜明け前
拾い集める腕は無い
廃棄される誰かの声
ある、朝
冷たい床に這いつくばって
紛れ途切れに息をする
惨めさを換気するように
***
日々とは交錯を裸眼に
与えては酷使させる
口の中で噛み潰した
逃げ道まで踏み外せたら
落ちるだけの夢
***
希望があって、絶望もあって
いつも天秤は希望を賛美する
ふたつの重さは同じだというのに
***
腫れ上がる正論
ライターで炙った針で
突こうとしたらぽたりと落ちた
残りは後追い我先に
ばたばたと流れ出す
情報漏洩の膿
逃げ場無くして傷口拡げ
***
いらないものはゴミ箱へ行かせりゃいいって
テレビが言ってた
いらないんだから当たり前だってさ えっらそうに誰かも言ってた
だとしたら、今この雑踏の何割がいらないものだろう
***
おだやかに、雨
傘をさしたらどこへ行こう
おだやかな気持ちで
こんなに軽い
羽根のような身体が
怖くなるから
どうか、おだやかなまま
しとしと
ざぁざぁ
ぐしゃり
ぴちゃぴちゃ
***
見えない未来には、緑があふれて
子供のはしゃぐ声が、おだやかに流れていく
描くだけの未来なら、みんな口を無くせるから
知らなくていいこと、きっとあるでしょう
例えば緑がすべて病んだ土に根ざしていること
***
安心して、おやすみなさい
食べるだけ食べて、吐けるだけ吐いて
あとは当たり前に帰るだけ
当たり前になるために
かなしみは明日までに片付けておくから
それが割り振られた役割なんだ
おやすみなさい
***
むすんでひらいて、指にはただ期限切れの憂愁だけ
ここにはそれだけで、明日もただしくそれだけで
振り向いたなら、きっと答え合わせ
昨日なんてどこにもない
***
一片の風も鳴かないひだまりに
今にも消えそうな、先ともつかない昔が見えました
寄るふちもなくうなだれの、頭を打つもない真昼日に
「はやく来てください縦の交錯点です」「無知を振り回してそれを真実だとのたまう詩なんていう馬鹿げた真実を喚く既知外がいるんです」「みんな生活で手一杯なんです詩なんて酔狂に耽っているのは頭がおかしいのだけです」「詩の音が煩くてこれじゃ生活なんて出来ません」「ええ、交錯点です」(*1)
>>>>>>>
■
壁に、顔がある
おかしなことではあるが、だ
壁とは否定であったはずで
手をやれば
そこには灰色を滲ませた厚く冷たい壁
おまえだけは拒絶そのものと、思い込みたかった
高架下の壁には今日も
顔がある
不思議なことではある、けれど
誰のものともわからない顔が
壁にある
■
複雑骨折のこうもり傘をひらいて
穴のだらけのブルーシートを靡かせ
青痣に枯れ混ざる、空は暮れなずむ
晴れ日の影と肺の苦しさ
車輪の跡にある、だれかの標本
他人の希望はいつも私のインク壺を割っていく
■
遠吠える鉄の風、壊れない哀れと吹き荒ぶ
突き刺さる白い日は、いつもの通りに
崩れた軌道と、うずくまる無能を射る
容赦もなく
暮れてゆく群青は沈む、この痣と枯れ混ざる
左目からあなたは、もう流れはしないのか!
俺の脳を1980にくれてやれ
俺の脳を1980に埋めてくれ
■
息絶えた夏の絵画に
空洞の顔がある
白い日は反復する、また墜落する
■
がらんどう叩き売っても
見向きもしねえそんな心です
演じる安心誰のために 胃液すら事切れた
連ねるのは安心
■
明けない夜を、夜の一番深い場所を、そこで全ての鶏を殺して、時計を壊して、明けない夜の底で、深い其処で暮らそう、だから一緒に脚を失くそう、融けるように耽溺しよう
(融けるには、質量が無さすぎる)
お前は私の血管、死ぬまでの他人、お前は私の縄、切るも断つも私の自由、お前は服従、私の機関のひとつに過ぎない、お前は私の支配、だから、逃がしてくれるな
(脱獄のためだけの牢なのか)
空白、私の壁、焼け跡とレインコート、雨が降り、私は空白に濡れそぼる、立ち尽くしながら、壁は無言を穿き、冷徹に脱皮する朝、万物の蟲、口々はそれらすべてを、
不在と云う
嗤う
人影が創る、暗喩もないような、正義
(正義と犠牲は双子のようだ)
><><><><
耐えられません耐えられませんもう「これ以上」という語には最早耐えられません完璧とのたまう卑しさの焼き金が刺青のように身を這いまわるせいで焦げていく皮膚や体毛からのぼる卵の腐った臭いは腐りきれないなどと錯覚しているわたしの腐臭ではないとどうして言い切ることが出来るのでしょうかそうですわたしとはひとつの有限なものでしかないのです
耐えら、
垂直であるためには、地面から垂直であるためには這い蹲りの影でさえ一寸の狂いも許されてはならない演技を
全うせよ己という己の役割を全うせよ放課後の昇降口というシナリオを
(演じなければならないという欺瞞)
割り振られた役柄が犠牲者であるためには徹底して犠牲者でなければならないという、
共用の幻想
(犠牲の概念とは、それすらも或いは……)
■
傘をさしていると
上を見なくなるので
傘はささない
産み落とすという語感は何故か醜いが
殺めるという能動の音は、どこかうつくしい
脳髄に到らなければそれは皮肉だ
(学生が飛び降りたあのひどい雨の日を)
(いつまで記憶していられるのだろうか)
轢死の花が散乱している
明日も待てず通り過ぎていく
<<<<<<<
「はい」
耐えられません(答えられません/応えられません/堪えられません)
もう耐えられません悶えられません戻ることは出来ませんもう、
「そうです」「詩の交錯点です」(*0)
ここにいるからといって、
何もゆるされるものはないのです。
独りで背負ったとして、
ゆるされることは何もないのです。
2015年12月12日 発行 初版
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