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  この本はタチヨミ版です。

 目 次

専業とプロのあいだ 藤井太洋

── 作家が持つべき資産は、次の本を買ってくれる読者なのだ。〈ゲストエッセイ〉

一小路真実は興味がない 晴海まどか

── 興味がないにもワケがある!〈小説・連載最終回〉

作品紹介&著者紹介

エピソード・ゼロ 波野發作

── ズキューンとバキューンのそもそもの物語〈小説〉

作品紹介&著者紹介

こんにちは赤ちゃん かわせひろし

── リトル・ビット・ワンダー〈小説〉

作品紹介&著者紹介

どんな情報も鵜呑みにしないこと 鷹野凌

── インディーズ作家のためのSNS活用術〈編集長コラム〉

Gold 捧げ物集 青海玻洞瑠鯉

── 本当にこの人たち、大好きや。〈詩〉

作品紹介&著者紹介

珈琲 東方健太郎

── コーヒーを傍らに、何気ない日常の一コマを〈小説〉

作品紹介&著者紹介

もう一つのアスタリスク 米田淳一

── 頑なに信じて勇敢に罪を犯した結果は……。〈小説〉

作品紹介&著者紹介

夏のかけら 幸田玲

── 夏のかけらは、まばゆい木漏れ日になった〈小説・連載最終回〉

作品紹介&著者紹介

雪解鬼神図 神谷依緒

── 雪を飲み鬼子は鬼神に生まれ出づ〈表紙イラスト〉

作品紹介&著者紹介

あとがき

── 作家が持つべき資産は、次の本を買ってくれる読者なのだ。

専業とプロのあいだ

藤井太洋

〈ゲストエッセイ〉

専業とプロのあいだ


 専業作家になって四年目の年が明けた。
『Gene Mapper』をセルフパブリッシングしたのが二〇一二年の七月。ソフトウェア開発/販売企業を辞めて『Gene Mapper -full build-』を上梓したのが二〇一三年の四月。それから、二〇一四年の二月に『オービタル・クラウド』、二〇一五年の上半期にKindle連載していた『アンダーグラウンド・マーケット』を単行本で、『ビッグデータ・コネクト』を文庫書き下ろしで出すことができた。
 昨年末で単著は四冊になり、昨年から新潮社の季刊誌yom yomと月刊誌のMac Fanで連載をはじめている。昨年は『オービタル・クラウド』で日本SF大賞と星雲賞の長篇部門へ選んでいただき、プロフィールに「賞」を付け足すこともできた。手が早い方ではないが、印税と原稿料の売上が会社員時代の給与を超えてくれたことで、ようやく専業作家となった実感が湧いてきたところだ。
 二〇一三年に商業デビューした私は、年に八万点もの書籍が市場に投入されながら、売上は電子書籍を含めても二兆円を下回り、ジャンル小説や純文学の初版刷り部数が三千部を下回る「出版不況」下でデビューした作家だ。
 好景気を知らないせいなのだろうが、そんなに悪い時代に作家になったとは考えていない。二〇〇〇年に経営破綻した出版社の再生を経営チームの一員として見ていたのだが、九〇年代後半の出版計画は酷いものだった。それが当の破綻した出版社に限らないこともすぐにわかった。日本の出版物販売額がピークに達した一九九六年の返本率は三六パーセントで、今とほとんど変わらない。旧作が戻ってくる前に新刊を押し込む自転車操業を、現在の三倍の規模で行っていたということだ。そんな時代を懐かしむ業界人の正気を疑ってしまう。
 利益が出るか出ないかぎりぎりのところで挑戦している「不況」下で発表される作品の質が落ちたとも考えられないし、多様性は確実に増えている。電子書籍のおかげで「事実上の絶版」も減っている。
 よい時代だと本気で思っている。しかもなんとか専業で食えるようになったのだ。
 売上の大半を占めるのは印税だが、私の場合、その二〇パーセント弱を電子書籍が占めている。これは商業出版の関係者に言わせれば驚くほどの高率なのだそうで、自分で電子書籍を売らないのかと聞かれることも多いし、契約の時点で出版社から「電子はご自分でやりますか?」と聞かれることも珍しくない。だが、私は自らの意思で電子書籍を出版社へ任せている。
 もしも自分自身で電子書籍を制作して販売すれば、電子書籍からの売上は二倍ほどになるだろう。また、正字や外国語などが極力画像にならないようなEPUBを作るだろうし、組版の品質も向上するに違いない。
 だが私は、出版社とともに作った作品をセルフパブリッシングすることになんの意義も感じない。表紙は新たに作らなければならなくなるし、別の書籍として登録されてしまえばレビューも分断されてしまうだろう。読者はどちらを読めばよいか迷う。双方の販売ページにはっきりと成り立ちを書いてある『Gene Mapper -core-』と『Gene Mapper -full build-』ですらそうなのだ。
 確かに紙の半額ほどで販売すれば売上も増えるが、ディスカウントはセルフパブリッシングでなくてもできるのだ。現に出版社主導の半額セールも増えてきているし、印税も徐々に上がりはじめている。Kindleが日本に参入した二〇一二年から丸三年が経過して、出版社も学んでいるのだ。電子書籍の価格は最適値を求めて徐々に下がっていくことだろう。



  タチヨミ版はここまでとなります。


月刊群雛 (GunSu) 2016年 02月号 ~ インディーズ作家と読者を繋げるマガジン ~

2016年2月2日 発行 初版

著  者:鷹野凌(著・編) 藤井太洋(著) 晴海まどか(著・編) 波野發作(著) かわせひろし(著) 青海玻洞瑠鯉(著) 東方健太郎(著) 米田淳一(著) 幸田玲(著) 神谷依緒(著) 0.9Gravitation(表紙デザイン) 宮比のん(群雛ロゴ) 原田晶文(編) 竹元かつみ(編)
発  行:NPO法人日本独立作家同盟

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NPO法人日本独立作家同盟

 NPO法人日本独立作家同盟は、文筆や漫画などの作品を、自らの力で電子書籍などのパッケージにして世に送り出している、インディーズ作家の活動を応援する団体です。伝統的な出版手法である、出版社から取次を経て書店に書籍を並べる商業出版「以外」の手段、すなわち、セルフパブリッシング(自己出版)によって自らの作品を世に送り出す・送り出そうとしている方々をサポート対象としています。
http://www.allianceindependentauthors.jp/

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