── 夏のかけらは、まばゆい木漏れ日になった
〈連載小説・最終回〉
家具屋で打ち合わせを終えたふたりは、店の男の車で街に向かった。
そしてレギャン通りで家具屋の男と別れると、達也と綾香はパドマ通りに向けて歩き出す。カフェでひとときを過ごし、街の通りを歩いてレギャン・ビーチにたどり着く。もう、夕暮れ時だった。ふたりは周辺を散策しながら語り合う。
夕食を共にし、まるで恋人のように酒場でも楽しむふたり。そして達也は綾香に対する思いを告げ、彼女の宿泊しているホテルまで同行する。ホテルの部屋で、綾香は達也に対して自身の事情を語っていく。
運転している家具屋の男は、助手席にいる綾香と短い会話を交わしている。ときおり、男ははにかむような笑みを浮かべ、車の揺れに合わせて何度もうなずくしぐさを見せた。
車窓から見える風景は、のどかな佇まいを感じさせる。放牧された茶色っぽい牛たち。日本では珍しい茅葺の家。雑草の生い茂る広い空き地。その向こう側に点在する古ぼけた平屋建ての建物。生活の匂いがしてくる。何だか懐かしい気分になり、心が和んでいく気がした。
レギャン通りで家具屋の男と別れると、パドマ通りに向かった。
しばらく歩いていると、喉に渇きを覚えた。通りのカフェがおしゃれな感じだったので、達也は綾香を誘い、店の中に入った。
そのカフェは、吹抜けの高い天井になっていた。いわゆる、バリ・スタイルといわれている天井形式で、日本でも古い民家などで見られるものであった。
天井の板張りには、大きな白い羽の電動ファンが取付けられていて、ゆったりとした速度で回転している。床はチークのフローリング材が貼られ、テーブルの天板は緑色の大理石だった。
「石田さん、食事は?」
「別に、どちらでもいいよ。おなかが空いているの?」
「少し、入れたいって感じ」
「僕は、ホテルの朝食バイキングでたくさん食べたから、そんなに空いてないけど」
「サンドイッチとアボカドジュースでも頼もうと思うの」
「うん。僕はアイス・ティでいいよ」
「せっかくだから、アボカドジュース飲んでみたら?」
「えっ、よくわからないな。アボカドって」
「まろやかな味がして、とてもおいしいのよ。バリのカフェなら、どこにでもあるくらいの定番なのに」
綾香は不満げな表情を見せると、近づいてきた店員に、サンドイッチとアボカドジュース、そしてアイス・ティを注文した。
「家具屋さんの子供、かわいい子だったな」
「そうね。あの家族を見ていると、うらやましくなるわ。バリの人たちは、家族をとても大切にするのよ」
「仲がいい感じだったな」
「物質的には日本のほうが豊かだけど、孤独じゃないような気がするの」
「僕も、そう、思ったよ」
「バリの人たちはとても信仰心があって、支えあって生きている。男の人は、祭りがあると仕事を休んで参加する。仕事よりも宗教的な用事が優先されるの。だから、物作りの納期が曖昧なの。オーダーメイドで注文して納期を決めても、できていないことが多くて……。初めて注文したとき理由がわからなくて、現地スタッフに怒ってばかりいたけど。ここで生活してみると、とても理解できたの。それからは、納期を大目に見るようになったわ。日本の慣習では考えられないけど、きっと、生きる意味が違うのね」
※この作品のサンプルはここまでです。続いて作品情報&著者情報をご覧ください。
幸田 玲(こうだ・れい)です。
自営業の傍ら、小説を書いています。生業とインディーズ作家の活動で、兼業を目指しています。
公開している掌編小説を自ら脚本化してボイスドラマのプロデュースを行い、YouTube動画で公開しています。また、この小説『夏のかけら』のイメージソングの作詞を担当して、コラボ作品をニコニコ動画・YouTube動画で公開しました。
◆寄稿先 :『小説家になろう』
http://mypage.syosetu.com/134346/
◆Twitter :(@bestplanning)
https://twitter.com/bestplanning
◆Google+ :
http://plus.google.com/115744212482287321693/
◆【大貫りちゃ】『なつのかけら』イメージソング
https://www.youtube.com/watch?v=TsOw1BzccWk
http://www.nicovideo.jp/watch/sm27977202
色々な年代層の男女の皆様に読んでいただきたいと願っています。
性別、年代別、生育環境によって、受け止め方や感じ方は様々だと思っていますが。
ツイッター・グーグルプラス等で、定期的に宣伝活動をしています。
また、ボイスドラマ、イメージソングのコラボ等で、作品の話題づくりをしています。
注目している作家のひとりに、連城三紀彦(れんじょう・みきひこ)氏がいます。
抒情性の溢れた美しい文章によって構築された恋愛小説は、男女の機微に触れるようなミステリアスな味がして、ときにうっとりとして、なぜか竹久夢二(たけひさ・ゆめじ)を思い浮かべることがあります。
2013年に死去された氏ですが、60冊以上の著作があるにも関わらず、現在は品切れ、絶版となっている作品が多いということが、とても残念です。
1月公開予定だったPV動画、小説『夏のかけら』のイメージソングは、新進気鋭の絵師のマスもふさんと、人気漫画家の方とコラボ活動もされている歌姫の大貫りちゃさんを迎えて、無事、予定通り公開することができました。
読者様の心を揺さぶることができるような物語を描きたいと願い、精進してまいりますので、よろしくお願い致します。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
また、今回で『夏のかけら』の最終回を迎えることができましたのも、ひとえに、『月刊群雛』の制作チーム様の多大な尽力の賜物だと感謝し、厚く御礼を申し上げます。
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2016年2月9日 発行 初版
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