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詩集 ことのはのころげ

もらたう

奏人社



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まちには

まちには だれも
 いない

まちには だれも
 いない
  いない

だれも
 いない

わたしのいきが
 したたりよどむ

わたしのいきが
 いきだけが
  よどむ
   したたり よどむ

まちには だれも
 いない いないから
 だれもいない いないから

まちにはだれもいないから
わたしのいきだけがしたたりよどむ

紅く滴り澱み よどみて

まちには だれも
 いない

まちには だれも
 いない

  いないのに
  いない のに

わたしの いき だけが
 したたり よどむ

  よどむ のは

滴る紅い温さが澱み溢れ

 嗤う

かえりには

かえりには
 かえるには
  かわるには
   かたるには
  かたみには
 かたえには
かえる

かえる

かなたへかえる
かなたへかえす

かなたへかえす そのかえりには

 かえりには

貴方への還り
 甦り
  孵る その果てに 世の果てに 夜の果てに

かえりには このいきを
ほそくしろいいきを
 くちびるからくちびるへ

ほそくしろいいきを
 くちびるからくちびるへ
それは

貴方に充ちて満ちて軈て喰い破り

かえりきたる

南方の神がみが

南方の神がみが
いざいざと沼によりて
樹の根元より掘り出し
 喰らう

南方の神がみの
いざいざと騒ぎあいて
硬き骨を砕いて
 喰らう

逞しき顎と鮮やかなる牙の
ごりごりと
骨に刺さり砕きて
 飛散せる

  飛散せる

南方の神がみが
噛みかみては吐き
砕きては吐き
大いなる口を真黒く剥いて
喰らう 喰らう 掘り出したる骨を喰ら
いても喰
らいて
もな


ひとすじの啼泣の
消えむことなく
沼より
立ち上り

南方の
神がみの
息を
奪う

啼泣が
息を奪う
その啼泣が
沼より 深き沼より
立ち上りて神がみの
南方の神がみの
息をば奪いけり

そして沈黙

さてこそ

サテコソ、と貴方がいう
 さてこそ、と私がつなぐ

サテコソアラメ
あわときゆるは

私はわらう
わらうそのこえに
こえにほぐれて
解れ落ちる おちるものを
おちるそのものがあわときゆるは

沫と消ゆるは淡雪の

サテコソ、と貴方はいう
 さてこそ、と私はつなぐ
  つなぐつもりにふりつもる
  ふりつもる
  ふりつもるのは

ふりつもるのは
さてこそ
さてこそあらめ
あわときゆるは
サテコソ

サテコソアラメ アワトキユルハ ハルノアワユキ

私のこうべが右へ左へ
貴方は立ち止まり私を見ている
視ている

魅ているのは私
淡く融けるのは私
どこにもいけず右へ左へただこうべだけを激しく
激しくこうべだけを右へ左へ

さてこそあらめ

あなたの肩甲骨をそっと撫でる指先に
ぬくもりはあわときえいり
つながらず

サテコソさてこそサテコソさてこそサテコソさてこそサテコソさてこそサテコソさてこそサテコソさてこそサテコソさてこそサテコソさてこそサテコソさてこそサテコソさてこそサテコソさてこそサテコソさてこそサテコソさてこそサテコソさてこ

あらじ。

詩集 ことのはのころげ

2016年2月26日 発行 初版

著  者:もらたう
発  行:奏人社

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