── 誰にも知られてはいけない、あたしだけの秘密
〈小説・サンプル版〉
どこにでもいる主婦。ただ彼女には一つだけ決して知られてはいけない秘密があった。
「日本人女性の二百人に一人はAV嬢の経験あり。これはもう、アダルト業界では当たり前のようにいわれている〝常識〟です」
そんな現代において、もしかしたら身近に起こり得る事件かもしれない。
◆『月刊群雛』2016年04月号掲載
http://www.gunsu.jp/2016/03/GunSu-201604.html
あたしは元AV嬢です。旦那の佳彦さんはまだその事実を知りません。
旦那との夜の営みは週に一回くらい。若い頃の自分と比較すると少ないけど、今はそれで満足しています。子供はまだ居ません。
あたしは身長百六十センチの二十六歳、バスト八十八センチのFカップ、黒くて長いストレートの髪と、黒くて大きな瞳、長い睫毛と並行眉、スッと通った鼻とほっそりした顔の輪郭、ウエストは細くくびれ、丸く引き締まったお尻と、カモシカのように長い脚。
ハタチの頃、大学の学費を稼ぐために自分の恵まれた容姿を活かして夜はキャバクラでバイトしてました。
新宿歌舞伎町にあるキャバクラQは、壁も天井もゴールドで統一された内装でガラスのシャンデリアが下がり、黒いソファーと黒いテーブル、紅い絨毯。まるでこの世とは異なる別世界のようでした。
きらびやかなドレスを身に纏った夜の蝶が舞い、一晩にドンペリが何本も空けられることもありました。
「キミ、こういう仕事に興味ない?」
そう話しかけてきたピンクの豚のような、小太りで頭の禿げ上がった男性。黒いスーツと赤いシャツと黒いネクタイ、高級腕時計をしてワニ皮の靴を履いた目つきの鋭い男性に名刺を渡されました。
「株式会社ルピナス映像?」
「聞いたことないかな? うち、結構大手なんだけど」
「すみません……」
「キミ、AVに出てみない? ギャラも弾むよ!」
キャバクラでAVにスカウトされました。
その当時、奨学金を月八万、四年で三百六十万借りることになり、利子も入れて四百八十万を卒業してから全額返済するまで二十年かかります。なので四十歳過ぎまでかかっちゃう……
デビュー作、一本二百万円という金額にクラッときました。もうキャバクラの仕事をしなくても、そのぶん家で勉強したり、女子会や合コンやカラオケに行ける。
顔バレしないように、黒くてストレートでロングの髪を金髪ウェーブのウィッグで覆い、つけまを二重につけて、眉を脱色して金髪にして、目には青いカラコン、真っ赤なルージュを引き、別人にカモフラージュしました。
若気の至りとか、奨学金を返済したかったとか、どんな言い訳をしても結局、あたしがバカでした。
AV男優は思ったよりスマートで優しくて、男性経験の少ない私を絶頂へ導いてくれました。つい、その快感が忘れられず、奨学金を返すまでに五本のAVに出演しました。それ以上は顔バレが怖くてAVの仕事を続けることは出来ずに引退しました。
※この作品のサンプルはここまでです。続いてインタビューをご覧ください。
愛とエロスを探求し続ける放浪の旅人。
酒とクルマと女のこと以外なにも考えてない。
前世はきっとイタリア人。
プロフィール画像は『ジュエルセイバーFREE』のフリー画像を利用しています。
http://www.jewel-s.jp/
『Oracle182 儚月響のホームページ』
http://oracle182.x.fc2.com/
『群雛』に投稿するにあたり、自分が普段書いてるのは十八禁の官能小説であり、新たにプロットをたてる必要に迫られ、書き溜めたプロットの中から使えそうなものを選び出して決めました。
武蔵野美術大学出身の映画監督・城定秀夫(じょうじょう・ひでお)さん。
『ホームレスが中学生』や『ガチバン』や『タナトス』など独特な叙情性溢れる映像と巧みな脚本によって通を唸らせるシャシンを撮る人。
この小説を書くにあたって念頭に置いたのは「他者との差別化」であり、群雛の同じ号に掲載される他の小説よりも目立つテーマを選びました。
頭の中でモヤモヤ考えていたのが6時間くらい、パソコンに向かって文字を打ち始めたのが深夜0時から朝5時くらい。
だと思いますけど、今となっては記憶はアヤフヤです。
Twitterでしょうか。
制作する上で困るような要因は一つずつ排除していったので、今はありません。
カズオ・イシグロ。アマゾンCEOのジェフ・ベゾスが『日の名残り』を何度も読み返してるというインタビューを読んで興味を持ちました。
http://wired.jp/2012/05/24/jeff-bezos-interview-2012/4/
あまり目標は決めず、ここ二年間はほぼ毎日、小説を書いて過ごしてきました。それをこれからも続けられたらいいな、と思います。
はじめまして。至らぬ点も多いと思いますが、よろしくお願いします。
漢字と仲よくする方法や組版の校正、気になりませんか? 『月刊群雛』2016年04月号のゲストはプロ校正者・大西寿男によるインディーズ作家必読の好評コラム『セルフパブリッシングのための校正術』第2回「活字の声を聴く」!
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http://www.gunsu.jp/2016/03/GunSu-201604.html
2016年4月13日14 発行 初版
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