── 謎なんか最初からない、アンチミステリ。
〈小説・サンプル版〉
封鎖された町では自警団が結成され、そこで三人の女の子がグループで町内パトロールを行っている。そこではじめて遭遇する殺人事件。警察に任せた方がいいのでは、という意見はどこへやら。ヒートアップしたところに、推理が展開されるのだが。
◆『月刊群雛』2016年05月号掲載
http://www.gunsu.jp/2016/04/GunSu-201605.html
「霧雨煙る夜のロンドン。切り裂きジャックがばっさばっさと人間を切り刻んだ頃がありましたが、この論理パズルを完成させ、事件を解決させた人間はいませんでした」
と、有名未解決事件を想起させてしまうほど、目の前にある死体はバラバラで酷たらしかった。内臓は鴉が食い散らかし飛び散ってる。大きな血の池が出来ていることから、犯人はここで被害者を殺したか切断したと推測出来る。
「公園の草むらに死体と血の池。ここで昨夜、気づかれずに切断を?」
「いや、無理でしょ」
私の隣であくびを噛み殺しながら、美鈴が生意気を言う。
「ねみーですよ」
結局噛み殺し切れず大きなあくび。腕を伸ばし背筋を伸ばす。
「あくびすんな」
私が怒ると、
「川原先輩は怖いですー。こいつ殺したの先輩じゃねーんですか?」
気の抜けた声で応じる。
「人間の脂肪分を舐めちゃ困るわ。チェーンソー使ってもここまでバラバラには出来ない。犯人はどうやって……」
「チェーンソーのチェーンを取り替えながらやったんじゃねーっすかー」
美鈴はものすごくやる気がない。なにを考えているのだろう。昼間からなんで示し合わせたかのように、バラバラ死体とご対面しなくちゃならないのかしら。
先月、この町の治安は最悪なものになり、町が封鎖されてしまった。国の中央の方でなにかあったのが原因のようだけれど、それがなにかは知らされないままだ。治安の悪化に抗するため、スラム街のお姫様・琴音ちゃんの呼びかけで私たちは自警団を結成した。その中で私たちのグループは私と、美鈴、望月の三人で活動している。
自警団のパトロールではいろいろな事件に遭遇する。今回もやっぱり事件に遭遇した。でも、さすがに殺人事件ははじめてだ。しかも、そのはじめての殺人事件がバラバラ殺人だなんて。
私の手のひらに嫌な汗が滲む。
鴉が途中まで引きずって捨てた腸を見下ろす。そして、恐る恐る触ってみる。冷たい。死体が冷えているってことはやっぱり……。
「先輩! 川原先輩! お取り込み中、すまないんですけど、私たちは国家権力じゃねーんですよ。こんなの公僕さんたちに任せて、私たちは、狂いはじめているこの町を、もっとマクロな視点から見る必要があるんじゃねーんでしょうか?」
美鈴は死体のある草むらと私を交互に見る。私は、
「確かにそうね。でも」
と、持論を展開させようとしたが、それを阻まれる。
「でも、とか、だが、とか、しかし、とかは要りません。速やかに撤退しましょう」
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ミステリとSFの交錯したところを目指しました。独立した作品ではあるんですが、僕の今、つくっているサーガの中のひとつに位置づけられる作品なんです、実は。「ヨクナパトーファサーガとか、いいじゃん」みたいなノリでサーガを計画してます。
いわゆる後期クイーン問題に繋がる作品となってしまいました。物語という形式にある「ほつれ」のようなものを、きっと僕はどうしても指向してしまうのでしょうね。しかし、もちろんニューウェーブSFとして読むことも出来ます。
さきほどサーガと書きましたが、その関係で「封鎖された町」という状況設定になっています。そこをうまく「ふーん、そうなんだ」と受け流して、入っていける人には楽しんで戴けると思います。あと、言葉遊び好きなひと。
一週間はかかりました。何故かというと、書けない日があったからです。
noteです、主に。Twitterではずっと愚痴ってます(笑)。
資料を読む時間がないことです。今、小説の再勉強をはじめたので、実作の資料は後回しになってます。
虚淵玄(うろぶち・げん)さん、すごいな、と今更ながら思っています。
これを書いてる段階で、新人賞の締め切りに間に合うかかなりきわどいです。まさに「今、目の前にある目標を失うか否か」という戦いをしています。
きっとまた会うぜ。再び書かせてもらえれば、そしてその時お互い生きてれば、その時は、また。
プロ校正者・大西寿男がインディーズ作家のために書きおろしたコラム『セルフパブリッシングのための校正術』。『月刊群雛』2016年05月号掲載の連載第3回は、いよいよ最終回。テーマは「木も見て森も見る」です。事実関係の確認方法、差別語、著者・編集者・校正者による校正の違いなど、今回も必読!
そのほか、磨きあげた七篇の投稿作品を収録した「インディーズ作家と読者を繋げるマガジン」2016年05月号。さわやかな風にそよぐ木々の緑もまぶしい季節に、読書をしましょう!
お求めはこちらのリンク先から!
http://www.gunsu.jp/2016/04/GunSu-201605.html
2016年5月7日 発行 初版
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