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 目 次

企画:鞄の中に見知らぬUSBが入っていた。

カナリヤ色キッチン 味玉

問いかけ 尾野十 ※サンプル

遥か彼方の近いもの やっさん ※サンプル

見知らぬUSBと昏い場所 橋爪朝寿 ※サンプル

貴女は超能力を信じますか 二三竣輔 ※サンプル

恋愛倒錯青春奇譚 大久保智一 ※サンプル

花と珈琲 青空つばめ ※サンプル

霧の町にはなんでもある 志野きき ※サンプル

悪友と哲学者の行進曲 第十一話「質問」 二三竣輔

表紙イラスト ハルキ

あとがき

企画:
鞄の中に見知らぬ
USBが入っていた。

企画:鞄の中に見知らぬUSBが入っていた。について

 今回、私たちが立案した新たな企画は、作品の書き出しを同じ一文で揃える、というものです。
 最初、この企画は同じ書き出しだと作品の内容が似通ってしまうのではないのか、という不安がありましたが、実際に執筆者の方々が書いてくださった作品を読んでみたら、そんな心配は杞憂でしかなく、それぞれが、同じ一文から、まったく違う世界を展開していて驚愕しました。
 同じ書き出しから始まる、まったく違う個性を秘めた作品の数々は、少し不思議ですが、きっと皆さんの心を揺さぶることと思います。
 それでは、これから始まるのは「鞄の中に見知らぬUSBが入っていた」から始まる、四作品です。
 是非お楽しみください。


『澪標』二代目編集長 二三竣輔

鞄の中に見知らぬUSBが入っていた

カナリヤ色キッチン

味玉

<新作読み切り・小説>

カナリヤ色キッチン

 鞄の中に見知らぬUSBが入っていた。すっかり夜も更けて、取り組んでいた課題も終わり一息ついていたところにこれである。持ち主がいったい誰なのか、それはUSBに付いているストラップが物語っていた。この寮から歩いて十五分の駅前にある回転寿司チェーン店の店先、百円で回せるガチャガチャの景品だ。プチサイズの皿の上にのったプチサイズのまぐろの寿司と、まぐろと書かれた木の札がぶら下がっている。ちなみに全十二種類で、たまご、いくらの軍艦、サーモン、甘海老のほかシークレットのわらびもちもある。USBの持ち主はこれらをすべてコンプリート済みで、第二弾が設置されるのを心待ちにしている。なぜここまで知っているのかって? 答えは簡単、持ち主である彼女は、私に一番近い場所にいる、ルームメイトだからだ。
 今頃寮内を走り回って探しているに違いないが、せっかくなので中身を見てやろう、私は机の上のノートパソコンに再度向かいUSBを挿した。授業を曜日ごとにまとめているらしい、案外整頓上手だということが読み取れるフォルダ名が並ぶ一番下に、興味深い名前のフォルダがある。料理レシピ。迷いなくそれを開いた。中にはワードのファイルがずらりと並んでいる。ココナッツミルクのタピオカ、クランペット、きつねうどん、ピカタ、フレンチトーストなどなど。メインもデザートも飲み物もごっちゃ混ぜなファイルを目で追って、あいつ料理できたっけと首をかしげていると、背後の扉が大きな音を立てた。
「ねえねえカレン、あたしのUSB見てない……って、あー!」
「うるさいよアンナご近所迷惑」
 どたばたと騒がしく部屋へ飛び込んできたのは、このUSBの持ち主で私のルームメイト、色素の薄い髪と青い瞳が特徴的な木戸川きどかわアンナである。お察しの通り日本人の父とアメリカ人の母を持つハーフで、幼少期はあっちで暮らしていたせいもあってか声が大きくて仕草が大げさ。私? 東郷とうごうカレン、名前はカタカナだけど両親は純血の日本人。生まれも育ちも東京。髪は染めてるしこの名前なので勘違いされがちだけどね。
「もー! 勝手に人のデータを見るのはよくないです! プライバシーの侵害です!」
「なくしたあんたが悪いんでしょ」
「きっと今日昼休み一緒に作業したときに間違えてカレンが持ってっちゃったんです! アンナ悪くない!」
「ねえあんた料理なんてできたっけ?」
「アンタじゃなくてアンナですう」
 むすっと膨れてみせたアンナはどう頑張っても大学生には見えないが、私たち二人は同じ大学の同じ学科に通う同い年で間違いない。足が長くて背が高くてヒールがよく似合って、黙っていれば完璧な美女なのに。喋らなければ美人とはよく言ったものである。
 アンナが残念なのはさておき、私が気にしているのは彼女の料理スキルについてである。この寮では勝手にごはんが出てくるなんてことはなく、料理上手の寮長がいるわけでもない。十人未満で括られたユニットごとに割り当てられた共同キッチンでの自炊が基本である。料理のできない人、材料を買えない人は近所のスーパーの割引お惣菜に助けられていて、私たち二人もそんな感じで日々の食事にはあまり手間をかけないスタイルでやってきた。料理上手の友人や先輩からおかずを恵んでもらうことはあっても自らキッチンに立つことはほぼほぼ皆無である。ちなみに、寮長は若い女の人で、部屋割りや風呂場の掃除を仕事にしている。私とアンナを同じ部屋にしたのももちろん寮長で、おそらく名前の感じが似ているからという安易な理由で一緒にされた。ついでに言うと、隣の部屋の二人は桂木かつらぎさんと山茶花さざんかさん、反対の隣は雪城ゆきしろさんと風町かぜまちさん。
 閑話休題、そんなわけで誰かの手料理に飢えている私は画面に並ぶレシピの数々に目を見張るしかなかった。料理作れるんならなんで作ってくれないんだよ、なんて疑念も浮かんでくる。ときたまおすそ分けしてもらう友人の手料理のクオリティまでとはいかないけど、やっぱり手料理って嬉しいものだ。できることなら心のこもったあったかい料理を食べたい。適当に開いたコンソメスープのファイルには写真付きの丁寧なレシピがのっていた。
「作れるんなら作ろうよ、手伝うし」
「作れないですよ」
「え、じゃあこれなに」
「ちっちゃいとき、ママが大きくなったアンナにと作ってくれたレシピです。いっぱい練習しました、でもだめでした。アンナ、お料理、センスないみたいなんです」
 しゅんとして見せると、アンナは私のノートパソコンの画面を覗き込んでタッチパネルに指をすいすいと滑らせた。コンソメスープのファイルを閉じて、フォルダに一つだけあった写真のファイルを開く。現れた一枚目の写真に私はぎょっとした。
「げ、なにこれ、炭?」
「アンナが初めて一人で作った料理。鳥の照り焼きです」
「鳥照り? 初めてでそれはちょっと難易度高いんじゃ」
「ママがやっていた通り、焼いている途中でおいしくなるダンスを踊りました……焦げたのはたぶんダンスのせいです」
「だろうね! ダンスのせいっていうか目を離したせいだね!」
「ママはいつも踊りながら、歌いながらごはんを作ってくれました。毎日お手伝いしてたから、アンナにもできると思ったのに」
「踊りながら歌いながらは、スクランブルエッグ作るのでも難しいと思うんだけど……あんたのママすごいね」
「はい! ママはすごい人です。強くて、きれいで、お料理が上手で、強くて、かっこよくて、おしゃれで、パパは一度だってママに勝てたことはありません」
「パパ……」
 炭と化した鳥の照り焼きの次も、そのまた次も、永遠と焦げた料理の写真が続いた。隣の部屋の子も料理が下手で、噂では以前噛むたびに味の変わるチャーハンを生みだしたとか。アンナと彼女、いい勝負ができそうだ。
「なんだ、食費浮くと思ったのに」
「失敗続きはモチベーションの低下も体力の浪費も材料代の無駄遣いも引き起こします、やめておいたほうが賢明です」
「あんた時々すごい舌回るよね」
「あ、でもでもっ、一つだけ上手に作れる料理、あるんですよ!」
 すいすいっ、アンナの人差し指がまたパネルの上を滑る。ファイルの最後のほうに、一つだけまともな色の写真があった。グラスになみなみ注がれた、クリーム色のスムージーらしき飲み物と、こんがりきれいに焼けたトーストの写真である。
「アンナの得意料理のバナナジュースです、早起きできたときは、パパとママに作ってあげました。もちろんママのオスミツキですよ」
「へえ、トーストはさすがに焦がさないか」
「そっちじゃなくてバナナジュース! ほんとに美味しいんですよ!」
「いや疑ってはいないけど……」
「そうだ! 今からカレンに作ってあげます!」
「えっ」
 一際声を張ったアンナは、ノートパソコンからUSBを引っこ抜くと私の腕を引いて立ち上がらせた。画面がデスクトップに戻りエラーの小窓が現れる。こんな雑な扱いしてるからすぐスマフォも壊すんだよ、つーかノーパソ変になっちゃったらどうしてくれんの。
「え、今から?」
「思い立ったが吉日ですよー」
「いや、もう就寝時間なっちゃうから、キッチン汚いままだと怒られるから」
「だいじょーぶ! 二人で片づければあっという間ですよ」
 そもそもバナナあんの。昨日こずえに分けてもらいました! 面識あったんだ、つか私手伝う前提なの。二人で踊れば美味しさも二倍ってママが言ってましたよ。いや、絶対やらないからね、やらないからね!
 今思えばこの時が一番ご近所迷惑だっただろう。アンナに連れられて、私は普段は長居しないキッチンに立たされていた。アンナは戸棚の奥深くから見るからに古いミキサーを発掘して材料の準備をしている。遅めの風呂から上がった隣の部屋の子に珍しいねと声をかけられたが、返答に困ってまあねとあいまいに答えた。バナナ三本、砂糖袋ごと、コップに山盛りの氷、牛乳パック、シナモンの粉。準備万端と満足そうに頷くアンナの隣で、私は材料の少なさに目を丸くしていた。これっぽっちかい。
「よーし、アンナの三分クッキング、開始ですよー」
「ほんとに三分で終わりそう」
「まずー、バナナの皮をむきます」
「そっからかい」
 アシスタントさんもお願いしますねとバナナを一本手渡されて、アンナに倣って私もバナナの皮をむいた。バナナの上頭の部分には農薬とかあんまよくない成分が集まっているらしい。私がまだ子どものころ、バナナを食べようとしたところをおばあちゃんに上の部分をむしり取られて呆然としたのを覚えている。アンナはむいたバナナを半分に折ってミキサーにぽいと放った。もちろん上の部分もそのまま。私も半分に折って、上の部分はそのままにミキサーの中に入れた。
「次にー、砂糖を入れます」
「どのくらいですか」
「好きなだけです」
「レシピとは……」
 アンナはスプーン山盛り三杯の白砂糖をミキサーにどばどばと入れた。これ今飲むんだよね、確実に太るっていうか、朝ご飯向きなわけだよね。
「砂糖の次はー、氷です。これも好きなだけ」
「フラペチーノみたいになるの?」
「フラ……? なんですか、それ」
「あー、なんでもない、続けて」
「最後は牛乳でーす。今日は一本全部いれちゃいます」
「ストップストップ待って待って! そんなに飲めないから!」
「えー?」
 遅かった。ぽたぽたとパックの口から滴る牛乳を、私はただ見守ることしかできなかった。すっかり空になった牛乳パックをぽいっとシンクに放ったアンナがミキサーの蓋を手にしてふんぞり返る。
「二人で飲めばすぐなくなっちゃいますよー、そんなつまらないことは置いといて、こっからが一番楽しいところです!」
「ほんとにもう……」
「さ、カレン、蓋をしっかり押さえておいてくださいね」
 呆れて開き直った私は、とりあえずこのバナナジュースをはやく完成させてしまうべく、アンナのアシスタントを全うすることにした。
「ちゃんと押さえましたか? いきますよー」
「はいはい」
 アンナが年季の入ったミキサーのスイッチを押す。刹那、ごいんごいんと重たく大きな音を響かせてミキサーが暴れ出した。もちろん比喩である。しかし、このおんぼろミキサーが中身に刃をたてていく様子をうまく表現するには暴れ出すという言葉が一番だった。
「うるさ! ストップアンナ一旦停止!」
「ノンノン、一度回り出した歯車はそう簡単には止まらないです!」
「いや変なこと言ってないでマジで!」
「あー、ほんとに止まらないです」
「コンセント! コンセント抜いて!」
 私がミキサーを押さえつけている間にアンナがキッチンの壁に走り、コードを引っ張ってコンセントから引き抜いた。またそんな雑な扱いして。やがてミキサーはウィンウィンと妙な余韻を残しながら緩やかに治まった。
「なんてこった、今日一番のご近所迷惑だよ」
「氷入れるとどうしてもうるさくなっちゃうんですよねー。でもっ、おかげでおいしいジュースが完成しましたよー」
「もうわりとどうでもいい早く寝たい」
「もー、そんなこと言わないで、二人で作った初めての料理ですよ」
 そう言ってアンナはミキサーの台座から容器を持ち上げ、コップの淵ギリギリまで中身を注いだ。あーあー、そんなに飲めないってば。
「仕上げにシナモンをちょっとだけ振ります。さあカレン、乾杯しましょう」
「はあ」
「かんぱーい」
「はいかんぱい」
 そろそろと持ち上げたコップをこつんと鳴らして、アンナはぐいっと、私はくいっと、ジュースを一口飲んでみる。空気をたっぷり含んだ牛乳と潰され練られたバナナの果肉で、舌触りはふわふわとした不思議な感じだ。砕かれた氷がふわふわのなかでアクセントになっている。思わず素直な感想が漏れた。
「ん、うまい」
「えっへへー、褒めてもらえて嬉しいです」
「外じゃこんなん絶対飲めないね」
「ママのオリジナルですから、ママとアンナとカレンしか作れないです」
 胸を張ったアンナはぐびぐびと景気よくコップを傾けていく。私も甘いバナナジュースをちびちびと胃に流し込んでいった。ぷはあ、アニメか漫画のように勢いよくコップをテーブルに叩きつけた彼女の鼻の下に白髭ができている。料理を純粋に楽しむアンナの姿、いつも子どもっぽい彼女の、新しい一面を垣間見ることができた。レシピを見せてもらって私がチャレンジしてみるのも悪くないかもしれない。アンナにはその辺で踊ってもらって。
「おなかいっぱいになったからよく眠れそうです」
「待って、まだこんなにあるのに寝るつもりなの」
「あー、アンナもう飲めないです」
「言わんこっちゃない!」
「氷溶けちゃうから朝までとっとくとまずくなっちゃいますよ」
「ほんっとにもう……」
 就寝時間が迫りくる寮内の一角で私はがくりと膝をついた。この後同じユニットの生徒の部屋を訪ねて回り、バナナジュースの消費を手伝ってもらうことになるのであった。

〈了〉

「あなたの絶望はいつですか?」

問いかけ

尾野十

<新作読み切り・小説>

問いかけ

 鞄の中に見知らぬUSBが入っていた。
 雨に濡れた鞄を乾かそうと、筆箱と一緒に転がり出てきた。
 普段USBなんて使わないし、第一私のものとは色が違う。私のは白地に黄緑のラインが入っている。しかし、鞄から出てきたUSBは黒く、ストラップまで黒で、少しつやのある紐だった。
 誰かが鞄を間違えて入れてしまったとは考えにくいし、自分が無意識に入れてしまったとも思えない。
 中身を見れば持ち主の手がかりか何かがあるのではないか、そう思いパソコンに差し込む。
 フォルダは動画ファイルでいっぱいだった。タイトルはどうやら日付のようで、古いものは私が生まれる前からあり、一番新しいものだと三日前のようだ。
 サムネイルも変なものでもないし、試しにいくつか見てみることにした。
 一つ目はどうやら高校生の文化祭の動画のようだ。カメラマンは廊下を歩いているらしく、色とりどりの画用紙で窓や壁が賑やかだ。だが、マイクが壊れているのか、少し音が遠く、くぐもって聞こえる。
 楽しそうに笑っている男子生徒のグループ。照れくさそうにはにかんでいる男女。子供に手を引かれ少し困り顔の女性。すれ違う人は皆カメラを見ていない。
 不意にノイズが混じり、カメラの動きが止まる。映像の真ん中には女子生徒が数人映っている。全員笑顔だ。笑顔だが、見ていて気持ちのいい表情ではないと感じた。なぜだろうか、酷く歪に見えた。
 カメラマンはそのまま女子生徒についていったようだった。久しぶり、覚えてる、など声をかけられるがカメラマンが答えているような音は聞こえない。先を歩いている女子生徒の背中が歪んだように見えた。
 着いた先はトイレだった。着いた途端、急に床がアップで映る。本当に久しぶりだよね、女子生徒の声は水中で聞いているかのように不鮮明だ。
 音だけでなく、映像も水中にいるように滲む。昔使っていた携帯の着信音が聞こえた。
「ごめんなさい」
 はっきりとその言葉が聞こえ、再生が終了した。

サンプルはここまでとなります

『問いかけ』を引き続きお読みになりたい場合は、『澪標』二〇一六年六月号を各電子書籍ストアにてお買い求め下さい。

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すぐ目の前なのに分からない

遥か彼方の近いもの

やっさん

<新作読み切り・小説>

遥か彼方の近いもの

 鞄を開けると見知らぬUSBが入っていた。人差し指ほどの小さいそれは何かに使っていた記憶はあるのだが、それを何に使っていたのか、私には分からなかった。普通に考えればパソコンに差し込むだけだが、もっと別な用途で使っていたような気がしてならなかった。
 思えばこの最近の間、私の中で何とも言えない喪失感があった。思い出そうとしても、そもそもそれ自体がないような不思議な感覚。普段使っている鞄の中に入っていたこれは関係があるのだろうか。
 一応確認のため、このUSBの中身を確認することにした。とりあえずは私の部屋のパソコンに差し込んだ。変なウイルスが入っているのではないか心配はしていたが、そんなものは入っていなかった。中に入っていたのは「あなたはロボット」と「後頭部に差し込む」と書かれたメモだけだった。これだけを見せられても私は何の見当も付かなかった。
「あなたはロボット」はなんのことかは分からなかったが、「後頭部に差し込む」だけは何か気になりはしたので、一応頭をさすってはみたが、特別なものはなく、ただひんやりとしているだけだった。その後も他に入っているデータを確認してみたが、何を指しているのかちんぷんかんぷん、結局分からずじまいで終わってしまった。しばらく考えていると、『こんこん』とドアを叩く音が聞こえた。
「ちょっと頼みたいことがあるんだけど入って良い?」
 ノックの後に聞き覚えのある声が私に聞いてきた。その声は私が物心の着く前から聞いていた馴染み深い声、私はこの声の元で成長し、怒られて慰めて貰った、まあ簡単に言ってしまえば私はこの声が大好きなのだ。
 悩んではいたが特別気にすることでもないので、私はすぐに「大丈夫だよ」と言った。すると「じゃあ入るよ」と、私の言葉も聞かずに私の部屋の中に入っていった。ここまで言えば分かるだろうが、あの声の持ち主は私の母さんだ。周りの皆よりも若くてきれいな母さんはとっても大好きだ。
「あんたちょっとスーパーまで行ってきて色々買ってきてよ、メモなら書いたからさっさと行ってきてちょうだい」
 私の部屋に入るや否や、母さんは私に言い返させる暇すら与えない勢いで私にやって欲しい要件を伝えてきた。母さんが何かを頼む時はいつもこんな感じだ。何かを頼むときは機械に命令するかのように一気に言うし、考える猶予を与えないくらいに、やれあそこを曲がれだの、やれここは近道だ、と言ったようなことをびっしりと書かれたメモも一緒に渡してくる。母さんのことは好きだがそこだけはいただけなかった。
「あら、パソコンを使って何してたの、プログラムでも打ってたの?」
 パソコンに写っていたメモを見て母さんは私に聞いてきた。母さんはプログラムには詳しい方ではあるが、今私が見ているメモみたいな文字はちら見では読めないそうだ。だから今の母さんにはこれは0と1の集合体としか見えていないのだろう。
「違うよ母さん、鞄の中に入っていたUSBの中身を確認していたんだ。何か知らないんだけど気になってさ」
「ふぅん、それでなんて書いてあるの」
「『あなたはロボット』『後頭部に差し込む』と後は色々、でもこの中に書いてあることの意味がちっとも分からないんだ。母さんなら何か分かる?」
 そう聞かれた母さんは、何とも言えない表情を浮かべて「知らない」とだけ言った。この間に間があったのは少し気になったが、まあそんなに深い意味はないのだろう。
「そうかあ、結局分からないのか、まあいいや、お使いに行ってほしいんだっけ、メモは書いてあるんだよね」
「そ、そうそう、ここに書いてあるものを買ってきて」
 分からないものはこれ以上考えても仕方ない、今は母さんに頼まれたお使いをこなす方が先だ。私は一度考えに行き詰ると何も出来なくなってしまう悪い癖があるので、一度そうなったら別のことをするようにしているのだ。大抵のことはそれで解決できる。
「このメモからして今日は肉じゃがだね、じゃあ行ってくるよ」
 私はそう言ってパソコンの電源を切り、さっき確認した鞄とは別のものを持って出かけようとした。なぜ「出かけた」じゃなくて「出かけようとした」と言ったのかと言うと、母さんが私のことを呼び止めたからだ。私が母さんの方を振り向くと、母さんは私のことを抱きしめた。何も言わずにやってくるこの行動、いつも突然なのでちょっとだけ驚いてしまうが、とにかく私はこれが好きだ。
 母さんの抱擁から抜け出して私は今度こそ外へ出て行った。

サンプルはここまでとなります

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神様って信じる?

見知らぬUSBと昏い場所

橋爪朝寿

<新作読み切り・小説>

見知らぬUSBと昏い場所

 鞄の中に見知らぬUSBが入っていた。それは確かに知らないものだったけれど、確かに藤本先輩のものだと思った。理由はきっと、僕が藤本先輩とのつながりを求めたからだろうし、それが確かにそういう事実を引き寄せたのなら、それがどんな結果だろうと素敵なことだろうと思う。
 僕と藤本先輩の共通点は少ない。そのうちの一つとして、僕たちは朝は嫌いだった。眠いし、低血圧だから体がだるくなる。それは藤本先輩も同じで、彼女はいつも窓際の席で机の上に突っ伏していた。
 そう、机の上に突っ伏している印象が強い。授業中は起きてノートを取っているらしいけれど、僕が教室のドアから見て覗いた姿はだいたいそんな感じだった。
 僕は、彼女について多くのことを知らない。藤本麻奈という名前と、帰宅部だということと、それと、あとはなんだろう。とにかく、よくは知らない。
 その日、放課後に図書室に行くと、藤本先輩に会った。彼女はキリスト教文献の棚の前で、旧約聖書をめくっていた。
「先輩」
「あ、松山くん」
 聖書を広げたまま、先輩は柔らかく笑った。少し顔が熱くなるのがわかって、僕も棚から本を取った。キリスト教の教えについての本だった。
「聖書、ですか?」
 あんまり宗教だとかその人の考え方に触れることは好きじゃなかった。聞かれたくないことだってあるだろうし、きっとそういうのは答えづらいことの方が多いものだと思っていた。
「うん。まあ、キリスト教徒じゃないんだけどね」
「はあ」
 図書室を使う人は少ない。本校舎から少し離れた別棟にあるからだろう。冬が近づいて、5時ぐらいでも外が薄暗くなるようになっていた。暖房もついていない図書室は少し寒かった。
 僕たちは学校指定の同じ鞄を床に置いていた。いつその間違いが起こったのかはわからないけれど、僕の鞄の中には、ピンク色USBが入っていた。僕はその中身を見ようとは思わなかった。
「神様って信じます? 先輩」
「信じてるよ」
 即答だった。
「松山くんは? 信じる?」
「信じます」
 とくに迷いもなく答えた。神を否定する理由もなかった。
「きっといるよね、そんな気がするんだ。……帰ろうか」
 薄暗くなった図書室から出て、僕たちは校庭を歩いた。黄土色の地面が夕焼けに染められていた。もうすこし寒くなって空気が澄んだら、星がちらほらと見え始めるだろう。

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さあ、貴女は信じますか

貴女は超能力を信じますか

二三竣輔

<新作読み切り・リレー小説>

企画「リレー小説」について

 今回のリレー小説のテーマは『AT』「ココア」「傘」です。
(前回は「飛行機」「オムライス」『AT』でした)
 今回も大変難しいテーマとなっております。我ながら、このテーマは苦労しました(笑)。
 つながりのないこの三つのテーマをどう組み込むのかが最も悩んだところで、最も力を入れたところでもあります。
 その結果、三つのテーマが果たして、どう盛り込まれているのかは、是非読者の皆様自身に見つけていただきたいと思います。
 次回のテーマは、まだ未定ですが、今回のように執筆者を困らせるような難しいテーマをぶつけてみたいです(笑)。ご期待ください。


『澪標』二代目編集長 二三竣輔

貴女は超能力を信じますか

「貴女は、超能力を信じますか」
 変な傘を持った、変な男が、そう声をかけてきたのは、夕方過ぎの電車の中だった。
 空には、朝から分厚い布団のような雲が覆いかぶさっており、太陽の日差しを隙間なく閉ざしてしまっていた。まるで、空の、さらに向こうにいる神様が、眠たいからと、仕事をさぼり、私達がそのしわ寄せ被っているような気がして、気持ちの悪い、もやもやとしたものが、私の心臓の左奥の方に燻っていた。
 そのせいか、そのせいではないのかは知らないが、その日の仕事ではつまらないミスを連発して、先輩や上司にこっぴどく怒られてしまった。
 怒られていくうちに、私の中の正体不意のもやもやは、一滴ずつ絵の具を垂らしていくように、徐々に黒く染まっていった。
 どうにか仕事を終えて電車に乗った頃には、空はもう暗くなり始めていて、空に居座っていたふてぶてしい布団のような雲は、その色を随分と重たそうなものへと変えていた。
 自分の重さに必死に耐えながらも、空の上から落ちそうになっている雲を、ざまあみろという気持ちで眺めながら、私は車両の一番端の席にゆっくりと腰を下ろした。
 ふう、と息を吐けば、胸の中のもやもやも一緒に口から出てくれるような気がしたが、そんなことはなく、変わらず私の心臓の奥に居座り、私の気分を害し続けている。
 少しだけ湿った電車の中の空気、座席のザラザラとした感触、天井から吊られている健康食品の広告の中では、見たことのない女が不気味なほど屈託のない笑顔を顔に張り付けながら、自分の腹を見せつけている。これを食べれば誰でもこうなる、と主張したいのだろうが、女の腹のくびれ具合は、きっと女の努力の賜物だろうし、私があの味の薄そうな健康食品を食べたところで、あんなくびれが手に入るとはどうしたって思えない。
 押しつけがましい割に、真実味の薄い広告に軽く舌打ちをしてから、私は腕を組んで、目を閉じた。
 どれくらいの時間が経ったのかは分からない。
 ただ、随分と長い時間熟睡していたような気がする。
 隣に人の気配を感じて目を開けてみれば、黒いズボンを履いて、今の季節に合わない黒のロングコートを着た男が、隣の席に座っていた。
 男はバッグなどの手荷物は何も持っていなく、持ち物は、奇妙な柄の傘だけだった。全体は金色の生地でできており、所々紫色のラインで幾何学的な謎の模様が描かれている。その金色の生地の中を、三匹の赤い蛇が器用に幾何学模様を避けながら泳いでいる。本当に奇妙な柄だった。
 こんな柄の傘を持って外を歩ける男の神経を、思わず疑ってしまうほどだ。どこで売っているのか知らないが、こんな傘をよく購入する気になったものだ。
 車両はがらがらでで、そこかしこに座れる席はあるにもかかわらず、男はわざわざ私の隣に座っていた。
 もしかしたら、趣味の悪い傘を見せつけて私の気分を悪くしようという、新手の嫌がらせなのかもしれない。だとしたらなんとはた迷惑なことだろう。
 私は隣の男に聞こえるか聞こえないか、というくらいの微妙な大きさの舌打ちをしてから、席を移動するために立ち上がった。
 声をかけられたのは、その時だった。
「貴女は、超能力を信じますか」
 急に聞こえてきた声が、どこからきたものか、私は咄嗟に判断することができなかった。
 周りには私と奇妙な男がいるだけ。性格にはほかの乗客もいるのだが、私に声をかけられるような距離ではない。もしかしたら、車内アナウンスかと、上を見上げてみるが、とりつけられているスピーカーから二度三度同じ言葉がくりかえされることはない。
「貴女は、超能力を信じますか」
 もう一度、さっきと同じ声が聞こえた。
 声が聞こえた方を見てみれば、さっきまで私が座っていた席の隣で、あの奇妙な男が、愉快そうに微笑んでいた。

サンプルはここまでとなります

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「ボタン一つで告白できるのはゲームだけ」

恋愛倒錯青春奇譚

大久保智一

<新作読み切り・小説>

恋愛倒錯青春奇譚

 春の麗らかな日和が続く今日この頃、さえずるひばりの声はこれからの新学期を何か楽しいものに変えてくれるとも思う高潔な歌声を奏で。そこにそっと吹く余寒の風が、忙しない世の中の喧騒で固まった体のコリを優しくほぐしていく。
 普段であれば、午後1時を過ぎたこの時間は、教室に戻り立派な白いひげを生やした齢60幾つの田中先生の英語でうつつを抜かしているところだろうが、今日に限ってはその田中先生が体調不良で休みのために自習と相成った。ついにあの板垣退助も寄る年波には敵わなかったか。
 そうなれば5月のこの季節、教室でじっと閉じこもっているより校舎の屋上で寝っころがって、自然と溶け込み疲れを癒しているほうが有意義だろう。
 耳にはイヤホンをつけ、音楽プレイヤーからアジカンの最新アルバムを流す。晴れ渡る青空からは時折雲で見え隠れする太陽が全身にその光を当て体を火照らすが、それを春風がちょうどいい具合に冷まし微睡みを促す。
 完璧だ……これほど完璧な午後の過ごし方がほかにあるだろうか。休日なら昼間までノンストップで惰眠をむさぼり朝飯&昼飯を合体させて食べ、録画してある金曜ロードショーを見てだらだらと野球チップスをほおばるというプランもある。
 だが平日朝早くから起きて朝飯着替えと荷物の準備をほぼ同時進行させ、徒歩15分の学校までの道のりを5分で走破し、約4時間に及ぶ授業を戦ったあとであるならば、この全身自然と一体化させるような安息の一時こそ最上といえる。(そもそも昼まで寝るというのも結構疲れる)




 時間の流れすら忘れ、聞こえてくるアジカンもどこか遠くなっていくような気がする。今この世界中のどこかで戦争や略奪が起こっているなんて嘘のようで、平和の二文字が世界を満たしているように思える。
 上空では自衛隊のヘリが飛んでいる。プロペラからくる振動が体に響く。この地域は自衛隊屯所が近いためかよく校舎上空を自衛隊機が通過する。それを見つけるたびに手で銃の形を作り、バーンと撃ち落とすスナイパーごっこをしてよく暇をつぶす。
 ヘリからの振動が遠のき、さっきの轟音とは一変してまたアジカンだけがうっすらと聞こえ始める。もうあと30秒ほどで曲が切り替わるだろうかというところ。エレキギターのソロでカッコよく締めるお気に入りのメロディ―だ。
 しかし、耳につけていたイヤホンは突然外され、お気に入りのギターソロは聞けなかった。代わりに聞こえてきたのは無骨な濁声
「おはよう眠り姫君。どてっ腹に一発くれてやるのを我慢して非常に丁寧に起こしてあげる俺の優しさに感謝してくれたまえ」
 目の前には寝転がる自分を見下ろすような形で一人の男が立っていた。下から見上げると太陽光からの逆光で顔の部分が暗くなっているが声で大体察しはついている。というより腹パンで起こそうとする物騒な輩は俺の知っている限りでは一人しかいない。
「おはよい……轟車丸ごうしゃまるちゃん」
 こわもてのヤクザを彷彿とさせるような顔つきで、かけている眼鏡はキュアデラックのツーポイント。ワックスをつけていないのに紙が逆立つという天性のいかくという特性を持った男。こいつの前ではみんな攻撃力ダウンだろう。
 そんな轟車丸の目つきが吊り上がり、こちらをにらみつけてきた。怒ってる! そういえば昼休みに一緒に飯食べる約束してたのすっかり忘れてた。ひぃぃぃぃ、助けて。
「頼む……名前で呼んでくれ……滝登たきのぼり
 苦虫を噛み潰したような顔をする轟車丸。自分の名字に少し思うところあるのだろう。   
 だが、轟車丸なんて一生に一度巡り合うかどうかの名字を聞かされたら、ニックネームや愛称よりもそちらで呼びたくなってしまう。早い話名字をいじってからかいたくなる。
 というか轟車丸って、どこぞの車メーカーかと勘違いしてしまうほど車率の高いこと。いっそのこと4つの車フォーカーとかあだ名付けたら名字なんか気にすることも無くなるであろうに、クラスが一緒だったら絶対つけてた。
「ほんとにその呼ばれ方嫌いだな……わかったよ、武文たけふみ
 そんなからかいたくなる気持ちを我慢し名字を避けてあげる僕の優しさに感謝してくれたまえよ、フミフミ。

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だとしても、猫相手にコーヒーなんて供えないだろう

花と珈琲

青空つばめ

<新作読み切り・小説>

花と珈琲

 ひらりと桜の花びらが手に持った紙コップのコーヒーに落ちた。酒に落ちるのはなかなか風情があると思うが、コーヒーに落ちるというのは、何というか花びらが泥水に落ちたみたいな感じがして風情なんてかけらも感じられなかった。なので俺はろくに観察もせずに花びらをつまみあげて放り投げた。
「お待たせ」
 後ろから声をかけられた。振り返ると弟の良が紙コップ片手にコンビニから出てきたところだった。
「おごってくれてもよかったのに」
「残念だったな、高校の時は部活やってたからおごったりしてやってたが、さすがに大学生になった奴におごってやるほど俺は甘かないんだ」
 そう返して前を向き直った。良はちぇっとわぞとらしく吐き捨てて俺の横に並んだ。
「千葉でももう桜咲いてんのな」
 良がついさっき俺のコーヒーに花びらを落とした桜の木を見上げて呟いた。桜はコンビニの塀を隔てた隣にある民家に植えられていた。毎年この季節になると大量の花びらをこのコンビニの駐車場に降り注ぐのだ。
「もうこんな季節だなあ」
 しみじみと呟きながら歩を進めた。
 今日は駅の近くにある良が通っていた塾に大学合格の礼を言いに行き、そのまま電車に乗って千葉市内に遊びに行く予定になっている。駅はコンビニの前にある大通りをまっすぐに行ったところにある。
 駅に向かう途中、赤信号で足を止めた時に、良がなにかに気が付いたようであれ? と声を出した。
「どうした?」
「あんなところに花なんて供えてあったっけ」
 いわれるままに良が指で指し示す方向に目をやった。ちょうど道路を渡ったところ、向かい側の歩道にある電柱の陰から色鮮やかな花が顔を覗かせていた。最初は自生しているものにも見えたが、電柱の周りをよく見るとコンクリートで固められていたため、良が言った通り供え物の花なのだろう。
「本当だ。死亡事故でもあったのか」
「さあ、ここで事故があったなんて話聞いたことないや」
 多少車通りの多い道ではあるが、見通しは効くし死亡事故はおろか普通の衝突事故ですら滅多に聞かないような場所だ。
 信号が青に変わって二人で並んで歩きだした。曲がってくる車に注意を払いつつも二人とも視線は電柱の裏の花に向けていた。
 電柱の脇を通り過ぎる際に、その花が500ミリの水が入ったペットボトルに活けられて細いワイヤーのようなもので電柱に括り付けられているものだというのが確認できた。
 さらにさっきまでいた反対側の歩道からは電柱が陰になって完全に隠れていたのだが、その花が活けられたペットボトルと共にコーヒーの入ったペットボトルも一緒にワイヤーで括り付けられていた。
「今の、完全に誰かここで死んでる感じだったよな」
 少し歩いてから良に語りかけてみた。良はそれを聞いてうーん、と少しうなった
「もしかしたら飼い猫が車にはねられて……とかって可能性もあるんじゃない?」
 良は苦し紛れにそう答えを返してきた。一瞬なるほどと納得しそうになったがすぐに花の隣にあったコーヒーを思い出していやいやとかぶりを振った。
「だとしても猫相手にコーヒーなんて供えないだろう」
「あー、確かに。でもここで人が死んだなんて話聞いたことないし、そもそも死亡事故だったら看板出てるはずでしょ。それなのにあそこの辺りに注意喚起する看板なんて見当たらなかったし」
 言われてみてからハッとなって今来た道を振り返った。確かに交差点の辺りに看板なんて一枚も立っていない。
「確かに。言われてみればそうだな」
「でしょ?」
 何十年も前に起きた事故ならいざ知らず、あそこの交差点は俺も良も小学校から高校を卒業するまで通学路として使っていた。しかしあそこにコーヒーはおろか花ですら供えられているのを見たことが無かった。
「なんか、気になるな」
「確かに」
 そう言ったものの、塾に行ったり遊びに行ったりして、しかも帰りに通った時にはすでに片づけられていたこともあり、その花とコーヒーに対する関心は二人とも完全に薄れてしまっていた。

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「君は、こんな小さな町が世界のすべてなの?」

霧の町にはなんでもある

志野きき

<新作三部作・小説>

霧の町にはなんでもある

 霧の町。
 私の育った町がそう呼ばれているのに、深い理由はなかった。
 海に囲まれたこの町は、朝から晩まで海に霧が立ち込めて、ひどい時には海岸や町にまで霧が発生する。
 海岸には様々なものが流れついて、それは海の向こう側で出たごみだったり、瓶に入った手紙だったり、生き物だったりした。
 打ちあげられる生き物のほとんどは魚だけれど、犬や猫、人間もたまに流れてくる。死んでいれば埋葬するし、生きていれば保護して傷を癒す。
 私たちは流れてきたものを拒まないし、肯定もしない。
 なんでもあるし、なにもない町。
 それが私の育った町で、私のすべてだった。


「ゆりのき」
 泉太郎せんたろうの声がした。振り向くとドアの近くに泉太郎が立っていて、私の身支度が整うのを待っているようだった。
 泉太郎の色素の薄い茶髪は生まれつきで、同じ色の瞳はまつ毛が長い。すでに制服を着ていて、濃い青色のブレザーを腕にかけていた。金色にピカピカ輝いたダブルボタンが、少しだけ目につく。シャツの袖口の青とブレザーのそれは同じ色合いで、今日も鮮やかだ。
「まだ冬服なの?」
「夕方は肌寒いって、母さんが」
「そう」
 昨日、夏服にして後悔したことを思い出し、クローゼットから青いセーターを引っ張り出した。学校指定のセーターは、ブレザーを着るには暑い、いまの時期くらいにのみ着用が許可されている。
「セーターなの?」
「ブレザーは暑いもん」
「そっか」
 なにやらブツブツ言っている泉太郎を横目に鞄を持って一階に降りる。さっきから、ご飯の良い匂いがする。
「おはよう、ゆりのきちゃん」
「おはようございます、母さん」
 キッチンでは母さんがお弁当箱を包んでいて、薄いピンクのエプロンが今日も似合っていた。にっこりと笑った笑顔は相変わらず可愛らしくて、十七歳の息子を育てているとは思えないほどだった。
 父さんはもう仕事へ出掛けているのかおらず、台所に青色の茶碗が置いてあった。
「今日のお弁当には唐揚げを入れてみました!」
「ありがとう、母さん」
 母さん、と呼んでいるけれど、この人は私の本当の母親ではない。
 私は十三年前、この町に流れ着いた。
 漂流してきた私はなにも覚えておらず、そんな私を見つけたのが泉太郎だった。
 この町にはいくつかのルールがあり、そのなかのひとつに「町へ漂着した生きた人間に対するルール」がある。
 決して難しいルールではない。要約してしまえば、「流れてきた人には優しくしましょう」なんていう、至極簡単なものだ。
 原則として、町の第一発見者がその人間を自立するまで保護する。大人であれば町に慣れるまで。子どもであれば、高校を卒業するまで。
 もちろん、発見者が子どもだった場合は保護者に許可が必要だし、経済的に厳しい人であれば、放棄することもできる。それには役所に行ってしっかりした届けと審査が必要だけれど、幼い泉太郎はルールに則って、私を保護した。
 この町へ流れ着いた私は、自分の名前も、年齢すらも分からなかった。
 だから私の辺鶴木へつるぎゆりのきという名前は、泉太郎がつけてくれた。学校は泉太郎と同じ学年で通っているけれど、自分が本当に高校二年生なのかも分からない。
 流れ着く人間は必ず「なにか」を忘れていて、それは私のようにすべてだったりするし、名前だけの人や、自分の故郷のこと、あるいは、漠然とした目的だったりした。
 でも、不思議と不安はなかった。それはずっと隣に泉太郎がいてくれるからというのもあるし、町のみんなが優しいからだった。
 前の記憶がない私にとっては、この町が世界の全てだった。
「母さん、行ってきます」
 テーブルに並べられた朝食を平らげて、私と泉太郎は揃って家を出た。

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それは、聞いてはいけない質問。

悪友と哲学者の行進曲
 
第十一話「質問」

二三竣輔

<新作連載作品・小説>

悪友と哲学者の行進曲 あらすじ

 藤堂との邂逅をやり過ごした男は、自分の勤め先である学校へと向かう。
 安心できるはずの学校で、過去の忌まわしい記憶にとりつかれる男だったが、次第に、悪夢は覚めてゆく。

第一話「魔窟」
澪標 二○一五年七月号
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第二話「理由」
澪標 二○一五年八月号
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第三話「受信」
澪標 二○一五年九月号
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第四話「決断」
みおつくし 二〇一五年十月号
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第五話「悪友」
みおつくし 二〇一五年十一月号
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第六話「悪夢」
みおつくし 二〇一五年十二月号
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第七話「隣人」
澪標 二〇一六年一月号
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第八話「視線」
みおつくし 二〇一六年二月号
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第九話「鈍痛」
澪標 二○一六年準備三月号
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第十話「濁流」
澪標 二○一六年四月号
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第十一話「質問」

「どうかしましたか、先生」
 暗く、深い、沼の中に沈んでいた意識が、不意にかけられた声によって、ゆっくりと引き上げられる。
 ぼやけていた視界が、しだいに晴れてゆく。
 目の前の椅子に座っている女子生徒の顔がはっきりと見える頃には、視界も意識もいつものように、クリアな状態に戻っていた。
 なんでこの生徒がここに、と疑問を感じたところで、ああ、そういえば、とその理由を思い出した。
「何をぼう、としているんですか、先生」
「ああ、悪いね。すまない」
「先生が私のこと呼び出したんでしょう」
「そうだったね、すまない」
 怒りながらも不思議そうな表情している彼女は、耳から垂れた黒髪をひどくしなやかな仕草でかけなおした。
「それで、何の用なんですか」
 狭い進路相談室の中で僕と向き合って座っている女子生徒の言葉からは、不信感と、僅かな焦りのようなものを感じる。何か聞かれたらまずいことでもしているのだろう。
 まあ、この年頃の女の子は何かしら隠し事があるものなのだろう。それが大きい秘密だろうと、小さな秘密だろうと、どうだっていいことだ。
「別にたいしたことではないんだがな」
 そう言った後に、僕は一呼吸分、感覚を空けた。
 実際は、今からあの男の名前を出して、あの男の話を聞かなければならないのは、僕にとってとてつもない苦痛で、息が詰まってしまいそうだが、それをどうにかこらえて、ずきずきと痛む喉に力を入れて、声を絞り出した。
「あのさ、君の担任は元木先生だったよね」
「ええ、まあ」
 女子生徒は、かくかくと、ぎこちない動きで何度か頷いた。
「それが、どうしたっていうんですか」
 必死に取り繕って、強気でいようとしているが、それが張りぼてであることは一目瞭然だった。
「いや、ね、最近元木先生の妙な噂をよく聞くから」
 噂、という言葉を出した途端、びくり、と女子生徒の肩が飛び跳ねた。
「君さ、何か知らないかな」
 少しだけ、質問の語気を強くする。
 女子生徒は、重りか何かを頭に乗せられたように、ゆっくりと下を向いてゆく。ついには完全に俯いてしまった。
 何かを詫びるようにも見えるその姿勢は、まだ未熟なその心の脆さを体で表しているかのようで、急にいたたまれなくなった。僕は、その脆さに付け込んで、女子生徒の心を砕こうとしているんじゃないのかと、自分のやろうとしていることに恐怖を感じたからだ。
「知っているね」
 重い沈黙をさらに上から押しつぶすように、言葉を重ねる。
 その瞬間、女子生徒の目から、大粒の涙が溢れ出した。
 ぽたり、ぽたりと、机の上にこぼれてゆく。
 僕はその姿に、妙な既視感を覚えた。いまいち覚えていないが、どこかで、これとよく似たような姿を見た記憶があるのだ。
 僕が、不透明な記憶をがむしゃらに漁っているうちに、女子生徒は、俯けていた顔をゆっくりと上に上げた。
 だんだんと顔が上がるにつれて、その表情が見えてきた。
 縋るような、その表情見た瞬間、僕は、既視感の正体に気が付いた。
 ああ、そうだ。
 彼女は、昔の僕に、似ているんだ。

〈続く〉

表紙イラスト

ハルキ

<新作描き下ろし・イラスト>

あとがき

編集後記

二三竣輔




 最後までお読みいただき、ありがとうございます。
 二三竣輔です。
 近頃、大変暑い日が続いておりますが、皆様、如何お過ごしでしょうか。
 今回、本誌に掲載されている作品は、もうすぐ夏になるということで、皆様に夏の始まりを告げるような作品が多く掲載されています。
 暑い夏を乗り切れるように、涼しげな、爽やかな作品。
 暑い夏を楽しめるように、少しだけ寒気のする話。
 暑い夏を好きになってもらえるように、エネルギッシュな作品。
 それぞれ、個性は違えども、全て夏の到来を実によく捉えた素晴らしい作品だと思っております。
 その中でも、特にご注意いただきたいのは、二種類の企画にのっとった作品でございます。
 前回と同じく、リレー形式でテーマを設けた作品、最初の書き出しを同じ文で統一した作品、もちろん他の作品も素晴らしいですが、最も注目するべきはこの二種類の企画です。
 どちらも執筆者にとっては、書くのが難しいテーマ・一文となっておりますが、それだけに、力を入れて書いたという作品が多く、執筆者の皆さんの渾身の作品であると、胸を張ってお勧めできます。
 本誌は準備号ということで、多くの作品は途中までの公開となっておりますが、気になる作品がありましたら、是非、来月出版される六月号の方をお買い上げください。
 暑くなってまいりましたが、身を尽くす会一同、暑さに負けぬように精進していきたいと思います。
 皆様もどうかお元気で、それでは、またお会いしましょう。


 平成二十八年 残春

二三竣輔

身を尽くす会 作品紹介

◆『澪標』二○一五年四月号 小桜店子(編・著) 二丹菜刹那(著) 尋隆(著) 高町空子(著) 藤井カスカ(著) 篠田らら(著) 青空つばめ(著) 朝霧(著・表紙イラスト) あちゃびげんぼ(著) 吉田勝(表紙撮影)

◆『澪標』二○一五年四月号 ランディングページ
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◆『澪標』二○一五年六月号 小桜店子(編・著) 藤井カスカ(著) 二三竣輔(著) 青空つばめ(著) 二丹菜刹那(著) 古布遊歩(著) 矢木詠子(著) 松葉クラフト(著) 朝霧(イラスト) 逸茂五九郎(著) 篠田らら(著) 櫻野智彰(著) ひよこ鍋(著・表紙イラスト) 咲田芽子(著) 尋隆(著)

◆『澪標』二○一五年六月号 ランディングページ
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◆『澪標』二○一五年七月号 小桜店子(編・著) 青空つばめ(著) 逸茂五九郎(著) 松葉クラフト(著) 篠田らら(著) 南波裕司(著) ZOMA(著) 藤井カスカ(著) 尋隆(著) 二丹菜刹那(著) 高町空子(著) 毒蛇のあけみ(著) 二三竣輔(著) タリーズ(表紙イラスト)

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◆『澪標』二○一五年八月号 小桜店子(編) 朝霧(著) 三角定規(著) 二三竣輔(著) ヨシ(著) 二丹菜刹那(著) 海風音(著) ひよこ鍋(著・表紙イラスト) コスミ・N・タークァン(著) 篠田らら(著) 青空つばめ(著) 藤原翔(著)

◆『澪標』二○一五年八月号 ランディングページ
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◆『澪標』二○一五年九月号 小桜店子(編) 高町空子(著) 二三竣輔(著) 尋隆(著) 二丹菜刹那(著) ひよこ鍋(著) テトラ(著) 朝霧(表紙イラスト) 吉田勝(表紙撮影)

◆『澪標』二○一五年九月号 ランディングページ
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◆『みおつくし』二○一五年十月号 小桜店子(編) 青空つばめ(著) 尋隆(著) 二三竣輔(著) 二丹菜刹那(著) ZOMA(表紙撮影)

◆『みおつくし』二○一五年十月号 ランディングページ
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◆『みおつくし』二○一五年十一月号 小桜店子(編) 二三竣輔(著) 青空つばめ(著) 松葉クラフト(著) 二丹菜刹那(著) 三枝智(表紙撮影)

◆『みおつくし』二○一五年十一月号 ランディングページ
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◆『みおつくし』二○一五年十二月号 小桜店子(編) 尋隆(著・表紙撮影) 二三竣輔(著) ヨシ(著) 二丹菜刹那(著)

◆『みおつくし』二○一五年十二月号 ランディングページ
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◆『澪標』二○一六年一月号 二三竣輔(編・著) 小桜店子(編) 風理(著) 志野きき(著) 肉馬鈴薯(著) コスミ・N・タークァン(著) CO2(イラスト) 大久保智一(著) やっさん(著) 味玉(著) k氏(表紙イラスト) 野秋智(表紙撮影)

◆『澪標』二○一六年一月号 ランディングページ
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◆『みおつくし』二○一六年二月号 二三竣輔(編・著) 小桜店子(編) 野秋智(著) 松葉クラフト(著) 二丹菜刹那(著) タリーズ(表紙イラスト)

◆『みおつくし』二○一六年二月号 ランディングページ
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◆『澪標』二○一六年準備三月号 二三竣輔(編・著) 小桜店子(編) 蘭泥(著) 味玉(著) 志野きき(著) 877(著) 藤井カスカ(著) 橋爪朝寿(著) ハルキ(イラスト) 風理(著) コスミ・N・タークァン(著) やっさん(著) タリーズ(表紙イラスト)

◆『澪標』二○一六年準備三月号 ランディングページ
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◆『澪標』二○一六年四月号 二三竣輔(編・著) 小桜店子(編) 蘭泥(著) 味玉(著) 志野きき(著) 877(著) 藤井カスカ(著) 橋爪朝寿(著) ハルキ(イラスト) 風理(著) コスミ・N・タークァン(著) やっさん(著) タリーズ(表紙イラスト)

◆『澪標』二○一六年準備三月号 ランディングページ
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◆『別冊澪標』七夕号 小桜店子(編) 柊藤花(著) 青空つばめ(著) 藤井カスカ(著・イラスト) 二丹菜刹那(著) 篠田らら(著) 二三竣輔(著) 尋隆(表紙イラスト)

◆『別冊澪標』七夕号 ランディングページ
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◆『別冊澪標』クリスマス号 小桜店子(編) ひよこ鍋(著) 尋隆(著) 二三竣輔(著) 青空つばめ(著) おふぃう(表紙イラスト)

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◆『みおつくし』総集編 小桜店子(編) 二三竣輔(編・著) 青空つばめ(著) 尋隆(著) 松葉クラフト(著) 野秋智(著) タリーズ(表紙イラスト)

◆『みおつくし』総集編 ランディングページ
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◆『春夏秋冬』鈴原鈴(著) 爽燕(著) 藤井カスカ(著) 小桜店子(編・著)

◆『春夏秋冬』ランディングページ
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◆『永久のように長く、一瞬のように短いものだとしても』二丹菜刹那(著) タリーズ(表紙イラスト) 小桜店子(編) 霊魂吐息(編)

◆『永久のように長く、一瞬のように短いものだとしても』ランディングページ
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◆『転・点・天』二三竣輔(著) ひよこ鍋(表紙イラスト) 小桜店子(編)

◆『転・点・天』ランディングページ
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澪標 2016年準備05月号

2015年5月29日 発行 初版

著  者:二三竣輔(編・著) 小桜店子(編) 味玉(著) 尾野十(著) やっさん(著) 橋爪朝寿(著) 大久保智一(著) 青空つばめ(著) 志野きき(著) ハルキ(表紙イラスト)
発  行:身を尽くす会

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身を尽くす会 説明
二三竣輔


身を尽くす会は、電子書籍と同人誌をメインに文章表現作品の製作、販売を行っている団体です。主にアマチュアの方の作品を外部に向けて発信し、将来のプロ作家の発掘と輩出、それによる文学界のより一層の進化、これらを目的とした活動を行っております。

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