── 家族、学校、そして、ヒューマノイド。
〈小説〉
とある日。私はいつもの中庭で、学校に馴染めず落ち込み佇んでいた。そこへ、保健室の先生ともう一人見知らぬ女性がやってきて話があると言った。保健室に着くと先生は「リオナとこうして会う機会を探っていた」と話す。もう一人の女性はヒューマノイド「ノルン」だった。
先生とノルンは文部科学省が発足したSNS「RestNet」に参加してみないかと私に尋ねる。
「RestNet」は『インターネット上での安息地』という意味で名付けられたSNS。
学校に馴染めない生徒達の『安息地』として立ち上げられた。
チャットやBBSを通じて、私の毎日は少しずつ楽しくなってきた。ノルンのようなヒューマノイドと人間との共存について思いを巡らせながら日々を過ごすが──。
いつだったか忘れてしまったけれど、テレビで観た住宅メーカーのCM。
電球色を纏った大きなシーリングライトの下で、まだ小さな兄妹が向かいに座っている両親と笑いあって、団欒というものを楽しんでいる。
私はこのCMが大嫌い。その光景は「家」に居ながら一度も目にした事のないものであったから。
いつもと変わらない毎日。中庭にあるベンチに座って俯いている。
いつからか好んで食べるようになったチョコレートも、最近では喉を通らない程に灰色の毎日で、楽しさなんて何処かへ置き忘れた。
「大丈夫? 具合でも悪いの?」
突然声をかけられて顔を上げるとそこには、白衣をラフに着こなした長身の女性と、その後ろにもう一人の女性。白衣を着ている人は確か保健室の先生だけど、もう一人は誰なのか分からない。
先生と一緒にいる女性は、私を見るなり先生に呼びかけて、手にしているタブレット端末を見せる。
「ん? ああ、この子ね。分かった」
二人は画面をスライドさせたり時折頷いたり、何かのデータを打ち込む様な仕草をしている。
「はじめまして、だよね。霜月リオナさん」
「あっ、はい……そうです」
「あー、そんなに怖がらないで。取って食べたりなんてしないから。これからちょっとだけお話、いいかな?」
「は、はい……」
「ここで話すっていうのもなんだし、保健室に行きましょ。お茶くらい出すわよ」
二人の後を追って歩く。その間、保健室の先生は、私が手にしている端末についてなど、矢継ぎ早に質問する。
とんとん、と先生とは反対側から肩を優しく叩かれる感覚。
「ごめんね。あの先生、お喋り好きなの。リオナさんがそういうの苦手な事は、二人とも知っているから安心して」
彼女は私の左耳にそっと手を当てて、先生に聞こえないくらいの声量で話すと、左手で抱えていたタブレット端末を持ち直した。
※この作品のサンプルはここまでです。続いて作品情報&著者情報をご覧ください。
浅野佑暉(あさの・ゆうき)と申します。標準枠では初参加となります。
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以前に某新人賞に投稿、落選した作品を世に出そうと思ったのがきっかけです。
もしこのような未来が来たら、と想像して色々な思いを膨らませて読んで頂けたら嬉しいです。
元々の原型は一週間くらいかかったような気がします。
そこから標準枠に合わせる為、文章を削るなどの作業に3時間くらいかかりました。
ほんの少しでも楽しんで頂けたのであれば幸いです。率直なご意見を頂けたらとても嬉しいです。
ゲストコラムはジャーナリスト・まつもとあつしによる、ウェブ小説の現状分析『ウェブコミュニティは「共創」と「競争」で物語を紡ぐ』。クリエイターがプロデューサーとしても読者と向き合わねばならない時代です!
このほか、磨きあげた六篇の投稿作品を収録した「インディーズ作家と読者を繋げるマガジン」2016年06月号をお届け。雨の多い季節は読書が捗ります!
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2016年6月9日 発行 初版
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