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様々な場所で売ってます。
観光地の絵葉書で、いつでも人気のあるものは海の写真だ。
青い海、夕暮れの海、巨大な波、白砂のリゾートビーチ。観光客が求めるのはこういう類いの絵葉書だ。
でもぼくのところにある一枚の絵葉書は、それらとはちょっと異なる。
暗い灰色の海面から無数のアメク海蛇が鎌首を突き立てて、こちらを睨んでいる。
周囲は青い海なのに、そこだけ海蛇の体色で灰色に変わっている。
絵葉書自体がとても重苦しい雰囲気を漂わせている。
でもぼくの店では結構売れている絵葉書だ。
その写真がこれ。
「絡み付いてくる真っ黒な夜が、怖い怖い。」
柔道着姿の男が笑いながらそう言って、ミュスト平原の絵葉書を一枚買って行った。
それは平原の真夜中の写真だ。中央の白骨樹だけがぼうっと光り、他は真っ暗な絵葉書。
怖いか怖くないかは、人それぞれの感じ方による。
ぼくはこの、永遠に昼間のような空港ターミナルの中にいることの方が怖い。
ともあれ、ミュスト平原の写真がこれ。
月蜘蛛の背に乗って糸をたどり、月から地球までを往復するツアーは一年中人気がある。
なので、その様子を写した絵葉書も安定して売れ続けている。
まるで地球と月の間を定規で銀色の線を引いたかのようだ。
高速船なら15分で着くところを月蜘蛛はノロノロと13時間かけてたどりつく。
ぼくは乗ったことはないが、月蜘蛛は見た目によらずなかなか賢いらしい。
その写真がこれ。
古い地球を包み込むように、エンジェルと呼ばれる白い鳥の群れが見られる。
エンジェルの落としたフンは太陽光を浴びて、地表で白く輝く。
それが地球照の原因となっている。
地球照の写真がこれ。
2016年7月4日 発行 初版
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