── ウサ耳の彼女は、君を待っている。
〈小説〉
部員一名のおれの部室のドアの前にダンボールが置いてあり、そのダンボールの中にはバニーガールが入っていた。おれは他の連中に見つからないように、バニーを部室の中に連れ込んだのだった!
うだるような暑さの中。額の汗を腕で拭きながら、学校本館の渡り廊下を歩いて部室棟へ行くと、我が部室の前にダンボールが置かれていた。その大きなダンボールは上部が開いている。そして、ダンボールの中には可愛らしいバニーガールが入っていた。網タイツにレオタード。ウサ耳にしっぽ。顔はアイドルグループにいてもおかしくないレベル。
バニーガールは首から、
「私は捨て兎です。拾って下さい」
と書かれた木製プレートを下げていた。おれの所属する『ヘゴブロック同好会』のドアの目の前でダンボールに詰まったバニーガール。艶めかしい。夏の見せた幻影か。
幻影……、バニーガールはしゃべりだす。祈るようなポーズで。
「私はバニーガールさんなのです。誰も拾ってくれないのです。私のをいっぱいいっぱい使って下さるとうれしいので……んげふぅッ」
おれは思わず鳩尾にパンチを入れて、卑猥なことをしゃべり出しそうなその口を強制的に黙らせた。新手の刺客とみて良いな?
「ふぅ……」
刺客を仕留めたおれは、額の汗を拭く。暑くて目眩がする。
しかし、これはまずいぜ。紳士的なおれはともかく、他の男子生徒、即ち野獣先輩どもの手にこのバニーが渡ると極めてデンジャーだ。ふむ。おれが手厚く保護しよう。
そう決めたおれは、バニーガールファッションの小娘をダンボールから拾い上げ、我が部室に招き入れることにした。
「あなたはブロック遊び大好きさんなのですね!」
絶対に引かれて冷たい目で見られると思ったら、意外にヘゴブロックに食いついてきたこの小娘。当然と言えば当然か。ヘゴブロックは、頑張れば大体の物は再現出来てしまう高性能の、魔法のブロック型玩具なのだから。そこら辺のプラモデルになんぞ負けん。
ヘゴブロック同好会、部室。
部員はおれ一名で運営している。
ふふん。一人で運営してるなんてすげぇだろ。
クーラーの音がブウウウゥゥゥンと響く。
そんな我が部室内では、無理矢理連れ込んだ(と言うと語弊がある)バニーガールがヘゴブロックに首ったけになっていた。
バニーが前屈みになって、おれがつくったティラノサウルスのブロックに見入る。
見ているバニーの方を向くと、目のやり場に困ってしまい、おれは挙動不審に目を泳がせた。
前屈みの時の胸元を見たら何やら見えてしまいそうだし、屈んだ後ろ姿に目を移すと、バニーのしっぽがちょこんとはえてる、強調されたお尻を見ることになる。
正直言って、ドキドキする。
目を泳がせながらも、目をそらすことが、おれには出来ない。
うちの学校全体を考えても、このおかしなバニーガールの美人さは群を抜いてトップクラスだった。アイドルみたいなツラしてんだもん。
いや。
そもそもこいつ、うちの学校の生徒なのか?
※この作品のサンプルはここまでです。続いて作品情報&著者情報をご覧ください。
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サイエンスフィクションの作品をつくろうと思ったんです。考えていたら『DAICON4』(だいこんふぉー)というショートフィルムにぶち当たりまして。それはバニーガールが大活躍するSFアニメなんです。「SFといえばバニーガールなのか。逆にバニーガールを出せばSFなのではないか」という謎の仮説に取り憑かれ、気づけば完成していたのがこの作品です。
本文中に梶井基次郎(かじい・もとじろう)の『檸檬』の話を出したのですが、梶井の『城のある町にて』は、大正十三年八月に『スケッチ』されたといわれています。また、件の『檸檬』にしても夏の香りがふんだんにする作品です。梶井の『スケッチ』は、季節を香りごと閉じ込めて、生きる証としたように思います。文学同人活動をするなら、切っても切り離せない存在が梶井基次郎であり、また彼の病との戦いの中スケッチされた青春は、僕の創作の根底にあります。短編、掌編を書くなら絶対に読むべき作家ですよ。僕は大好きです!
僕の欲望がストレートに反映された作品になったと思いますので、作者の心理面を読むという、オーソドックスな読書をする人にもうってつけです。ライトノベルが好きな方にも。
一カ月かかってます。途中ぎっくり腰になり、弱音を吐いていましたが、どうにか書けました。
noteです。読んで下さっている方が多いので。
肩こり、腰痛、眼精疲労で困っています。それらに効くビタミン剤などを摂取して、症状を緩和させようとしています。が、飲み薬なのですぐに効き始めるというわけでもなく。歯がゆい日々を送っているところです。
なもり先生の『ゆるゆり』を読んでいる時間が至福です。
noteのショートショートフェスティバルというものに参加し、先日、そこでつくった同人誌が届きました。僕もそこで二作品、書いてるんです。noteのタグ検索で『#第一回noteSSF』を辿れば、全作品読めますよー、って、それ僕の宣伝というわけではないですけどね。
https://note.mu/hashtag/%E7%AC%AC1%E5%9B%9EnoteSSF
小説を読む、とは受動的なものではありません。読むという行為はとても能動的なものです。とても、パフォーマティヴ。だから、本を読むことに誇りを持とうと僕は考えているし、みなさんも誇りを持っていいんです。たとえ今読んだ作品が僕の『バニーさんコンプレックス』という、作者の欲望が垣間見える作品であったとしても。
ゲストコラムは作家・倉下忠憲による『「月くら」計画から考えるセルフパブリッシング戦略』。毎月一冊新刊をセルフパブリッシングし続けた中で得られた貴重なデータを公開! セルフパブリッシャー必読です!
今回から新たな企画として、テーマを設定して投稿作品を募集しています。今号のテーマ「夏」の作品は表紙イラストを含め三点、自由テーマ作品が三点。「インディーズ作家と読者を繋げるマガジン」2016年07月号も、磨きあげた珠玉の作品をお届け!
お求めはこちらのリンク先から!
http://www.gunsu.jp/2016/06/GunSu-201607.html
2016年7月4日 発行 初版
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