── ファッションで、私は認められるんだ。
〈小説〉
オーストリアにある、シュレージエン地方。ある日、プロイセンによって奪われてしまう。
オーストリアはフランスと手を組み、奪還する計画を立てた。
その保険として、オーストリアはマリー・アントワネットを差し出し、ルイ十五世の息子、ルイ・オーギュストと結婚をさせた。
母であり、女帝と言われた、マリア・テレジアの指示によって。
フランスのヴェルサイユ宮殿は、マリー・アントワネットを歓迎する。だがすぐに、ルイ十五世の愛人、バリー夫人と敵対。それを遠巻きに見て楽しむ、フランス貴族達。
指定されたドレスを着ない。夫は子作りをしない。
マリー・アントワネットは、周りから認められず、人気は落ちていく。
そんなある日、自分の事を悪評するビラに、こんな文章が載っていた。
「貴族の女は夜、マリー・アントワネットになる」
ヴェルサイユ宮殿に、はびこる古いしきたりをなくし、自分で考案したファッションで、再び人気を得ようと、立ち上がった。
シャルルへ。この部屋の中にも、陽の光が入ってきました。もう外は、朝を迎えているのでしょう。
さっき書いた、あなたへ送る手紙を読み返しました。当時の心境がよみがえります。同時に、まだ伝えたい事が沢山あり、もう一通書く事に決めました。
あの頃は、今に比べたらなんと幸せな日々だったか。
天国にいる母、マリア・テレジアは、死刑宣告された私、マリー・アントワネットをどう思っているのでしょう。
やはり私には、荷が重すぎたと思っているのでしょうか。
私が一歳の時、祖国オーストリアが、プロイセンからシュレージエン地方を奪還するため、犬猿の仲だったフランスと、手を組む事になりました。
その保険として、ルイ十五世の息子、ルイ・オーギュストと、私が結婚する事になったのです。マリア・テレジアの指示でした。
十四歳の時、オーストリアのハプスブルク家を代表して、ヴェルサイユ宮殿に入りました。そして、フランス貴族の方々の前で、堂々とフランス語で挨拶をしました。みなさん、温かい拍手で迎えてくれたのです。
ですが、それは芝居だと、後になって気づきました。
グランコールを着ないだけで怒られました。
ルイ十五世には、バリー夫人という愛人がいます。マリア・テレジアから、ルイ十五世に好かれるようにと言われましたので、ライバルだと決めました。
それを知ったフランス貴族達は、遠巻きに私とバリー夫人の対決を見て、楽しんでいました。まるで見せ物になったようで、悲しい気持ちになりました。
それに、ルイ十五世がバリー夫人を溺愛しているのです。私の方を向いてくれないのです。
夫のルイ・オーギュストは、子作りをしてくれません。跡継ぎが産まれないと、この国に認められないというのに。
悪い事が重なり、私の人気は急落していきました。
現実から逃れようと、パリにある酒場や劇場、賭博場に足を運ぶようになりました。平民達はまだ、私を歓迎してくれます。
ですが、ここもヴェルサイユ宮殿と同じ。私の前ではいい顔をしますが、いなくなると、悪評のビラを書いては街中にまくのです。
それはパリだけではなく、ヴェルサイユ宮殿にも。私を嫌う貴族が、見せびらかすために、わざわざ持ってくるのです。
ですが、そのビラの一つに目が留まりました。
「貴族の女は夜、マリー・アントワネットになる」
フランスの貴族には、オーストリアの軽装なドレスが新鮮に見えたそうです。
私は閃きました。
※この作品のサンプルはここまでです。続いて作品情報&著者情報をご覧ください。
どうも、芦火屋与太郎(あしかや・よたろう)です。
代表作は、『親分はガリバルディ』。群雛文庫から『夢を継ぐ』です。今はこの二作品しかありません。これから少しずつ増やしていこうと思います。
お待たせしました。というか、半年以上も空けてしまい、申し訳ございませんでした。
2015年、12月30日。鷹野編集長は、「群雛はこれから、切磋琢磨し、みんなでさらなる高みを目指す。次のステージへ進みます」
と、宣言されました。
この時点で、第一話は2016年01月号
に載せてもらいました。
第二話も投稿していました。ですが、「次のステージ」に進むには、レベルの低い内容でした。
そこから、パソコンとにらめっこする日々。
どこを直して、どこを工夫すれば、より良い作品に仕上がるのかと、考えながら執筆していました。
気づけば半年も経っていました。自分としては、「次のステージ」に進めたと思えるまでに、仕上がった作品だと思います。
藤本ひとみさんです。今回参考のマリー・アントワネットの人物像などに、参考にさせてもらいました。
他にも、マリア・テレジアや、ヨーロッパで活躍した歴史上の人物を、小説にしています。お薦めです!
月刊群雛は、08月号をもって休刊となりました。あと一話あるのですが、それは別の場所で、発表できればと思います。制作チームのみなさん、お疲れさまでした。そして、本当にありがとうございました。また会う日まで!
真夏の暑い夜に怖い話でゾッとしよう! 今月号のテーマ「怖」作品は表紙イラストを含め四点、自由テーマ作品が四点。「インディーズ作家と読者を繋げるマガジン」2016年08月号も、磨きあげた珠玉の作品をお届け!
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2016年8月14日 発行 初版
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