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「て、天使計画? このタイトルだけでなんというか……。とうとう、著者が壊れてしもうた……。ワタクシ、やりすぎてしもうたのか……」
「そうみたいだね」
「ひいいい」
「それにしても、いやー、キミが海老名高校鉄研の部長、総裁かー。いや、キミ、ほんと、『鉄研でいず』で最近がんばってるよね。立派立派」
参考→『オールアバウトオブ鉄研でいず!!』
http://bccks.jp/bcck/146174/info
「恐縮なるが、うぬ、さふいうあなたは沖島曹長でありますな。プリンセスプラスティックの主人公、女性形女性サイズ戦艦シファの母艦〈ちよだ〉の先任曹長」
「そうだよ」
「恐縮なり」
「なんか、著者があんなだと、お互い苦労が尽きないよねえ」
「さふでありますな。でも沖島さんたちを書いた頃の著者は、今とかなり違っておったのでは?」
「まあね。今から18年前からだからね。それも含めて、ここで、シファたち、
このSF小説シリーズ『プリンセスプラスティック(プリプラ)』の
登場人物と設定をおさらいしつつ、どんな話なのかを知ってもらうガイドブックにしよう、ってのがここの企画らしい」
「そ! それは! 著者、ワタクシたちの『鉄研でいず』シリーズのガイドブック『オールアバウトオブ鉄研でいず』が一部局所的にウケたので、すっかり味をシメたってやつですな!」
「そういうことだよね。こっちのシリーズも長くて初心者は入りにくいから、その玄関も整備しちゃおうって話。いかにも著者が考えそうなことだよね」
「たしかに。でも、我々鉄研とプリプラでは悪魔合体では? 魔改造の次は悪魔合体?!」
「そうかなあ。根っこは一緒だと思うよ」
「いや、それは同じ著者であるからのう」
「そうでもない。話的にも結構つながってるんだよ」
「うぬ? 作風が違う故、そうは思えぬのだが」
「簡単に言えば、プリンセスプラスティック第一話『エスコートエンジェル』がなんの話だったか、知ってる?」
「うっ、そういえば! あれは2141年の日本を訪問する、王女の、新淡路から東京への「旅」……!」
「そう! それに、主人公である女性型女性サイズ戦艦シファは、プロテクトとしての人格を作るために学校通ったけど、その学校で入ったサークルは?」
「ううっ、『旅行研究会(旅研)』!」
「しかも、そのシファのカレシで国家A試験採用の官僚になった鳴門君は?」
「うっ、そういえば未来の鉄道ファン、鉄ちゃん!!
うわっ! これもまた、著者の『全部載せグセ』発動だったのかー!!」
「そうだよ。あの頃からそうだった。ただ、あの頃、著者若かったし」
「そしておそらくもっと、ヤセておったのですな」
「そう。それもあるし、結婚もしてたよね。離婚したけど」
「うわあ、著者のプライベートを!」
「まあ、著者自身、それを言ってるからね」
「ひいいい!」
「というわけで、じゃ、ガイド始めよう。あ、この本、ガイドブックなので、例によってBCCKS限定で無料公開、だね」
「鉄研でいずガイドブックと同じですな……」
「というわけで、一応、オレの自己紹介からやるよ。
沖島。先任曹長ってのは艦艇の下士官のまとめ役なんだ。それをやってる。整備飛行分隊のシファ機付長にもなってる」
「機付長って、自衛隊の場合は飛行機の機体につく専門の整備士の責任者ですな」
「うん。プリプラでは自衛隊は『軍』にならずにそのまま日本会戦を経て、『連合艦隊』になってる。でも自衛隊とは組織的にはいろいろ違ってるかも。ただ、オレは戦艦シファの整備の責任を負ってる。シファは時空潮汐力機関っていう、時空を繋いだときのポテンシャル差をメインエネルギーにする。そして、シファの最大の特徴は」
「シファ、主人公ですな。その特徴は心の宿った女性型女性サイズの筐体ですね。ワームホールを使った量子実装技術応用の」
「そう。別の時空に武装、それも消耗する弾薬の生産設備ごと持っていて、その出口だけがこの時空に口を開けてて、シファはいつでもその武装とかを取り出せる。ドラえもんの四次元ポケットみたいなもんで、なおかつゲーム『グラディウス』や『沙羅曼蛇』の自機のように、弾切れすることなくミサイルを発射できる」
「すさまじくチートですよねえ。しかもそのゲームが古いっ!」
「まあ、もともと著者が子供の時憧れたそういうゲームを作るために考えた設定なんだよね」
「わ、ワタクシたちみたいなメタ言及しないでくださいっ! 世界が壊れちゃいます!」
「でも、そこそこ良く出来た理屈で作られてるから壊れないんだよ。はじめ量子力学って言ってたけど、そのあと超弦理論、そしてそのあと大統一理論を応用しているとこはけっこうがっちり感がてあるらしい」
「未来科学史そのものですなあ」
「そう。著者、本気で未来科学小説目指してたんだよね。結果なかなか追いつかなかったけど。でもその中で情報理論にもつながるデータベース宇宙ってのも考えてる。もちろん『独自の研究』だけど、まあSF作家にそうじゃない研究求めるのはそもそも間違ってると思う」
「そうかもしれません」
「だから、ワームホールの振る舞いを決定して、それをシート上に並べてそれとより遥かに大きな物質を通過させるなんてアイディアは初期からある。時空の裂け目って簡単に言わなかったところがちょっと違う。ワームホールの振る舞いを決定するってのはすごく難しいし、それを広げるってのはもっと難しい。その制御技術にいたるところで、いろんなその前段階の技術と、派生したガジェットがある。長くなるけどね、、『ドラえもん』見てると、たぶんあれができるまでに、シファみたいな巨大技術開発計画があったり、それを必要とする政治社会があるんだろうなとか、そう思っちゃうんだよね。そしてそれがすごく危なっかしくて、それ故厳しい管理下に置かなくてはならない時代があって、それが安定期迎えて安全な民生品のレベルに落とし込めるようになった時代が、たぶんドラえもんの誕生の時代だと思う。プリプラは、はじめには言ってなかったけど、ざっくり言えば、その途中の時代、途上の話かもしれないよね」
「そうなりますねえ。じゃあ、…シファはドラえもんのプロトタイプですか?」
「そうかもね。シファの時代にはシファの兵器としての危険性以前に、装置としての危険性がある。だから時空潮汐力保安院なんて役所に運転報告を提出してる。オレはその書類も書いてるよ」
「大変ですね」
「もともと整備の仕事は好きだから。それで地方隊のDE(小型護衛艦)を一人で整備しちゃったからね」
「ええっ、護衛艦を一人で!!」
「うん。まあ、ロボットとか自動装置はいっぱい使ったけど」
「護衛艦って、小さくても戦闘艦艇ですよ? それを一人で? というか一人船渠!」
「ふつうはやらないよね」
「というか、できませんっ!」
「やっちゃったもんなあ。若気の至り、カッとなってやった、ってやつで」
「そんなもんでやることじゃないですよ!」
「で、組織的にいろいろと都合が悪くなったところを、宮山司令に一本釣りされて、シファの機付長に選ばれたんだ」
「ううっ、何という……」
「総裁、キミも知ってると思う。機付長にとって、担当する機体は子供や嫁さん・恋人以上なんだ。自分の最大限の能力で整備するからね。そして、機体は特定のパイロットにわりあてられてなくて、ローテーションで割り当てられる。隊長機に隊長が常に乗るわけじゃない。そして、米軍機なんかのコックピット脇に書かれてる「SGT なんとかかんとか」、ってのはパイロットではなく機付長のなんとかかんとか軍曹の名前なんだ」
「そうですよね。昔の海軍や航空自衛隊で、パイロットが搭乗する機体の『当たり外れ』を言うシーンを読みましたな」
「そう。でも、そのハズレの機体を愛し、必死に『当たり』になるように整備しているクルーがそこにはいるんだ。そこらへんも実はプリプラ世界の大事なところ。シファをみんなが愛してるのはむしろ当然。総裁の時代の陸上自衛隊じゃ、銃を『愛撫するもの』っていってるし。ほんとだよ」
「そこらへん、『パトレイバー』っぽいですね」
「著者はその時期にそういうのに憧れて書き始めてるからね。ちなみに僚艦であり僚機でもある
ミスフィの機付長は
天霧っていう女性なんだ。シファ級戦艦の整備はオレみたいな物理機関なんかを扱う人員だけじゃ無理。シファには多くのバイオテクノロジーも使われてるから、医学に近いバイオ工学ができる人員も必要。それが天霧なんだ」
「なんかみなさん、シファとミスフィの母艦〈ちよだ〉にみんなで乗組、といいながら住んでますよね。でも、なかなかその母艦、出港しないですね。それ、ちょっと気になってました」
「まあ、話にしないところで出港してるし、とくにシリーズ中盤で遠洋航海にも出てるよ」
「そういやそうですけど。そこで、ハワイ沖での射撃訓練で、標的機を撃墜しちゃったって」
「あれはシファらしいとこだよね。あの時、鳴門さんのいる新淡路を離れて航海中で、しかも鳴門さんにいろいろあって、シファに雑念が入ったからね」
「雑念入っちゃうんじゃ、危ないじゃないですか、って。でもそれはロボットのパラドックスですね」
「よく知ってるねえ。そう。人間のようなロボットはナンセンスなんだよね、実は。人間より優れてなければロボットにする意味がない。事実人間ってのは、工学的には非常によく出来た機械だからね。動物もそう。かなりスタンドアローンでも生存できるようになってる。総裁の時代でも、病院にほとんど行かずにすむ人間はいるでしょ? むしろほぼ外部から整備しない、ほぼノーメンテで毎日使って70年も長持ちする人間が作ったカメラなんてなかなかないでしょ? 人間の眼球は健康な人だと70年機能保つよ。ズームにオートフォーカスまで全部揃ってだよ?」
「そういやそうですよねえ。でも、つい人間は人間みたいなロボットを作っちゃいますよね」
「まあ、それは別の意味があるからね。親しみやすさとかもそうだし、最大の理由は、人間を模倣することでロボットを作る人間が人間を理解するという意義がある。実はシファもそう。シファを作ることは、人間の謎を解明することでもあったんだ。って、ごめん、オレ話しすぎてるよなあ」
「い、いや、恐縮なり。面白く聞いておりました」
「いい? ごめんね。ただ、シファみたいな巨大兵器技術開発ってのは、原子爆弾のマンハッタン・プロジェクトもそうだけど、同時に原子炉プラントを潜水艦に詰め込んだ」
「リッコーバー提督のUSSノーチラス!」
「そう。原子力潜水艦ノーチラスSSN-571。あれの関係に似てるんだよね。宮山司令たちはリッコーバーたちに似てるんだ。そしてそういう大きなプロジェクトは、プロジェクト主砲も刷新しちゃう。プロジェクトマネジメントで言うPERT図なんかはそのあとに戦略ミサイル原潜を開発するときのマネジメント手法だったからね」
「そうなんですかー。でも、シファはそう考えると、初期の原子力潜水艦みたいな位置づけですよね。第1次世界大戦でたまに潜れるだけのUボートがすさまじい脅威で、それの対策にはるか東洋の当時の日本にまで大英帝国が応援をもとめた。その後レーダーや航空機が潜っていない時のUボートを追い詰め回した。でも、原子力潜水艦は潜りっぱなしだからレーダーや航空機に見つからない」
「まあ、そう思うだろう。でも、いくら潜れても潜水艦は音で見つかっちゃうからね。海中音をさぐれない艦隊にとってはすさまじい脅威だけど、音は海水中だと空中より良く響いてしまう。その上、大戦末期にはもうソノブイを使える哨戒機が登場してる。ソノブイは潜水艦にとって最大の脅威だからね。ソノブイは探知できても、それで音を聞く哨戒機やヘリコプターは、潜水艦には探知できない。探知できないから攻撃できない。でも音を聞ける哨戒機やヘリはいくらでも潜水艦を攻撃できる」
「まさに天敵……。そういやそれ、兄上からワタクシも聞いてました!」
「そうか、総裁のお兄さん、海上自衛隊だもんね。そうか、オレらの大先輩だもんなあ」
「恐縮なり……。そういや
香椎さんって方、プリプラのスピンオフなどでやたら出てきますが、あのひとは」
「ああ、あの人は、ミスフィの彼女」
「うっ、女性と女性の恋愛っ!」
「『怖い考え』になっちゃうよねえ。なんか」
「それは『ぼのぼの』じゃないですか!」
「ほんと、よく読んでるよね、総裁。でも、意味的には」
「……それもやっぱり怖いですよう」
「でも、あの人とか、プリプラって、恋愛要素は後になって入ってくるけど、もともとは「仕事の物語」の部分が多い。香椎さんはとくに仕事のことよく考えないといけない立場だからね。〈ちよだ〉配置になって陸兵ではなくなっちゃったし、かといってオレら整備クルーや、熱海さんみたいな船乗りでもない。シファみたいなパイロット的なとことも違う」
「要するに、浮いちゃいますよね。それもすごくオーバスペックなところでさらに。だいたい仲間、同僚がぜんぜんいないじゃないですか」
「そう! 総裁よくわかるねえ。でもほんとそう。やたらプリンにこだわるのも、実はストレスが凄いのかもなあ」
「女子としては基本、甘いものは大事ですからのう」
「総裁は?」
「うぬ、目下セブン-イレブンの『くりいむわらび』なる悪魔の果実に毒されております……」
「気をつけるんだよー。甘いもので空虚重量増えるのは怖いよー」
「ひいいいい!」
「でも、ちゃんと香椎さん、それでもみんなと打ち解けて居場所見つけてるのがさすがだよね。元PKO警備部隊のエースだった日々とはちがいすぎるだろうけど。香椎さん、女子サッカーもやってた。各国から集まったPKO部隊の中でPKO内ワールドカップなんてやった、って」
「さふいう、厳しい任務ながら快活な生活から、現在の艦乗り組み警務長。落差大きいですなあ」
「それでも自分を意義あらしめるように頑張ってるのは偉いよね。
一番偉いって言えば、
宮山司令の話に戻るけど、あの人、リッコーヴァー的な役割だけど、その実防衛功労章もらってるエースパイロットで、なおかつそのあとテストパイロットでもある」
「防衛功労章を貰うような戦いは『カタナ』で描かれておりますな。若き日の宮山司令の話。宮山司令のお父様は航空幕僚長であったのですな。自衛隊最後の戦闘機F-283カタナに乗った宮山司令が日本の危機を救う。パイロットの日常がありながら、ゲーム・エースコンバットばりの活劇でありましたな」
「そうそう。著者的には描いてて楽しかったけどね、って」
「けどね、って……。でも、ウケは良かったみたいですね。またしても一部ウケだけど」
「でも、あれが一番ベーシックな著者の作品だと思うよ。渋くて。なにしろ著者『防空巡洋艦・綾瀬』だと超展開しないと申し訳ない、って最後ああなっちゃったわけだから」
「ひいい。でもさふでありますな」
「あのラストシーンをCGで再現したところ、それまた評判が良かったって。まあそれはともかく、宮山司令たちはシファたちのお父さん的なとこだよね」
「どえらい心配性なお父さんたちですよね」
「そりゃ総裁たちの時代換算でざっくり1人12兆円だよ?」
「ひいいいいい」
「それが心持って、迷ったりするんだもん。そりゃ心配性にもなるよ」
「……そうですね」
「そして運用班長の
戸那実さん。ほんと著者、こういう名前つけるときに微妙に字を間違えやすい名前つけちゃうんだよね」
「さふですなあ。浅知恵炸裂というか」
「否めないよね。この人は旧陸海軍からずっと続いた軍人・自衛官の家。親戚に提督も師団長もいるらしい。いつも〈ちよだ〉の中で規律規律って言ってる。まだ若いからねえ。宮山司令の片腕になって大活躍」
「エヴァンゲリオンのミサトさん的な立ち位置かと思ったら、微妙に違いますね」
「そうなの。でもその分プリプラは登場人物が多くなってる。ああいう映画とかアニメ見てると、作品を上手く回すための人数をいかに減らしながら、しかし減らしすぎて「いかにもの何でも屋」を作ってしまわないかの工夫にみんな苦労してるんだなと思うよ。
戸那実さんと言えば『哭き麻雀』が酷くてね。「〈ちよだ〉の豹」とまで呼ばれてた。八連荘をまぐれっていっちゃうとか、どこまでなんだよ、って。
あ、矢竹さん忘れちゃダメだね。調理・経理をやる主計科の優秀な人。いつも美味しいご飯作ってくれてる。あんまりいい腕なんで、そこで宮山司令が連合艦隊で連合艦隊旗艦〈ながと〉・給糧艦〈まみや〉・最新鋭潜水艦〈せとしお〉のそれぞれの艦長と麻雀勝負で勝って〈ちよだ〉配属にしたんだよね。確かに作るご飯はすごいよ。帝国ホテル研修にも行ってるから、普段の食事だけでなく、来賓が来たときのスペシャルまでばっちり!」
「いつも美味しそうに拝見しておりました!」
「じゃ、そろそろお昼だね。矢竹さん、君の分も昼食作ってるって」
「ありがとうございます!」
「じゃあ、みんなで食べよう」
「恐縮なり。……で、でも、この紹介のつづきは?」
「ああ、それは交代の人いるから。この〈ちよだ〉のほかのみんなは、ぶっちゃけレアキャラだし。
槌耶艦長なんか、ほんとたまにしか見ないよ。かわいそうに、出航シーンがすくないからねえ。『操艦の腕がなまる』ってのが口癖だったから、けっこう基地内のシミュレーターの方に通ってんのかなあ」
「そうですなあ」
「あ、交代の人きてる。オレは嘘つかない、って言いたいけど、時々シファをかついじゃうんだよね。シファ、すぐ真に受けるから、イジると面白くってねえ」
「戦艦をカツぐなんて、ひどいっ」
「まあ、それより昼食だよ。矢竹さんの『ちよだ特製・秋の味覚づくし』が待ってるよ」
「いいんですか! 楽しみでありますなあ!」
「いいよ。さすが総裁、食はハズさないなあ」
「総裁たち、お昼ご飯行っちゃったのか。でも私、ここに呼ばれたのよね。
新淡路市第1市庁舎応接室、って……いいのかな、ここ」
「あ、いらっしゃい。あなたが海老名高校鉄研の御波ちゃんね」
「わ! そうおっしゃるのは愛宕新淡路特別市長! 元内閣官房副長官!!」
「ありがとう。あなたも『プリプラ』読んでくれてたのね。というわけで官庁街編の人物紹介は私がするわ。プリプラは官界政界の登場人物も多いのよ」
「お願いします」
「じゃ、まず私ね。
愛宕ヤスコ。さっきのとおり、内閣官房副長官を経て、22世紀の日本の新首都・新淡路特別市の市長。東京の都知事みたいなものね。ただ、あの頃は女性都知事なんて想像も付かなかったのね。御波ちゃんの時代にようやく女性都知事が誕生したのね」
「そうですね。愛宕さんは旦那さん、新淡路市建設の父だって」
「頑張りすぎて天に召されちゃったけどね。新淡路市の建設を巡っての法的整備とかで駆け回ってた」
「なんというか」
「みんな、いつかはそうなるのよ。でもそれで頑張れる場があることが一番の幸せよ。頑張っても何の意味もないっていうほうが地獄だと思うし。
そんな私といつもペア組んででやってたのが、
津島内閣調査庁長官。
私と津島と愛宕は東大同期で国家一種試験合格も同期。でもそのあと、官僚養成制度が変わって、国家公務員A試験ってのができたの。それで採用されたが、
早瀬作戦局長。
この人がシファ建造の一番の発案者だったのね。内閣調査庁装備局長もやってる」
「津島長官は「新淡路の枢機卿」という暗号名で、シファたちのためにアメリカ大統領候補二人に根回しまで行ってますね」
「日本で一番、プライベートジェット使ってあちこち行ってる人だもの。昔ながらの根回しって大事よ。私が市長選に出るときも応援してくれた」
「早瀬局長の奥さんは外科医で、途中で交通事故で亡くなってますね」
「それも早瀬君がシファたちに入れ込んだ理由の一つかも。早瀬君、以来ずっと子供たちを一人で育ててるから」
「なるほど」
「ちなみにその早瀬局長たちが一番目をかけてるのが
鳴門内閣調査官ね。シファの彼。シファに出会ってはじめは危なっかしいからやめさせるつもりだったらしいんだけど、鳴門君、A試験合格して内閣調査庁の中に入っちゃえば問題ないはず、っていうんで、すごく勉強したのよね。ほんと、がんばったわ。
浦賀教授とテイ教授。この2人も活躍してくれたわね。
浦賀教授は文系の教授だから一見関係ないかもだけど、彼が倫理的な問題の解決策を立ててくれなければシファの建造は実現しなかった。そして大学時代のシファと鳴門君をしてくれたわね。
テイ教授は逆に理系の究極の教授。全身麻痺どころか生命維持装置につながったまま研究活動してる。大統一理論に向けての研究が鋭いわね。
賀茂アツコちゃんと御門教授はお似合いのカップルでもあるんだけどねえ。
御門教授は遺伝子編集の第一人者。臨床から研究まで全部こなすスーパードクター。
賀茂アツコちゃんは精神医学から精神工学までやってるわね。二人ともすごい勉強家だし、すごく仲がいいわ。著者が当時もっと腕があれば、この二人のラブコメな話、いっぱい書けてたわね。そういう関係だったんだし」
「またメタ言及!」
「ほんと、あなたたち鉄研のみんながうらやましいのよ。ああいう自由さ、私たちも好きだから。
伊良湖判事。この人は医療過誤を扱う専門の医事審判院の判事もやってた。司法試験と医師国家試験をパスしてないと医事審判院判事はできない。すごい優秀な人。でね、実は御門教授と裁判で争いかけたことがあるのよ」
「ええっ、本当ですか!」
「そう。伊良湖さんが御門さんを起訴しようとしたの。ただ、結果はそうはならなかったし、それからあと、伊良湖さんと御門さんはいい距離感持ってお互いをリスペクトしながら活躍してる。
御門さんと幼なじみなのが
近江さんね。この人はすごい重要人物よ。だって、この世界でかなりのシェア持ってるOSとかシステムに権利持ってる上に、アイディアにすごく優れてる。それ以上に、国家と対等なほどの権利を持ってるエンジニアだもの。近江さんをうかつに逮捕しようとしたら、世界中のいろんな国が全力で亡命を引き受けちゃうわ」
「そういう時代なんですね。私たちAIの脅威が言われ始めた時代ではまだ大企業、Googleとかが幅聞かせてますけど」
「そのうちそうはいかなくなるわ。おごるGoogle久しからず。本当にいいアイディアと、それを実現できる意思を持った人間は、すごく稀だし、そういう人を踏みつけにする国は絶対その報いを受けるわ。そしてそういう人は、国の側からは見えにくい」
「『地上の星』ですねえ」
「ほんとそう。だから、政治ってのは人を大事にしなきゃできない。政治は信頼関係だから。不信感を持ち始めたらどこまでも相互不信の悪循環にハマる。私の若い頃の日本がまさしくそうだったわ。
そういえば、ここまでで悪役、誰も出てきてないわよね」
「それは思いました。こんなにいっぱいの人が登場してるのに」
「それは御波ちゃん、あなたも分かると思う。悪役って、かわいそうでしょ? たとえば『アンパンマン』のバイキンマン。あれ、悪事の企画立案から実施のための装置の開発・生産・メンテまでやって、そして実施してるわよね。しかもそれで『あーんぱーんち』されちゃうのに、全く心が折れない。そのうえドキンちゃんに毎回裏切られてるじゃない」
「そういやそうですよね。でも、バイキンマンがいなければ話が動かない」
「そう。悪役は物語を動かす大事なエンジンなの。でも、そのエンジンが動かす物語自身がすでにしっかり作られてないと、動いたところでなあんだ、ってものになっちゃう。そう著者はきっとあのとき思ったのね」
「そうかもです。私も悪役描くの苦手ですし」
「あと、素人も出てこないでしょ」
「あ、ホントですね」
「でも、本当の素人を出す必然性って、あるのかな、と思わない? 世の中はそれぞれの分野のプロが動かしている。でも、そのプロはその分野でのプロであって、他の分野については素人なのよ。だとしたら、素人の疑問をもし出す必要があるなら、そのプロ同士が自分の専門外についてほかのプロに聞く形式の方が、シーンとしてかっこいい。そう思ったのね、たぶん。でなきゃ、何も知らない素人がレベルの低いことを聞いてばっかりになる。それじゃ話がだらだらしちゃう」
「そうかもしれませんねえ」
「それは物語として読者を馬鹿にしてる話だし、そういう相互不信はやっぱり不幸だわ。そう思うと、映画『シン・ゴジラ』の楽しさはその作り手と観客の信頼関係が取り戻せたうれしさだったんでしょうね」
「ええっ、愛宕市長も『シン・ゴジラ』見たんですか!」
「ええ。なつかし映画としてだけど。でも、私もああいう世界に憧れて、それで国家公務員になったのよ。案外単純な動機だけどね。
そして、近江さん・御門さんと言えば、
建部警部は外せないわね。彼はもと巡査補、情報犯罪専門のバイトの刑事だったんだけど、そこからどんどん実績を積んで警部になった。AMEGという脳とコンピュータを非侵襲で接続するデバイスのバグで起きる錆猫病の患者で、それを医学部で研究したのが医大生時代の御門さん。それをサポートしたのが、ご両親を失って失意だった若き日の近江さんだったの。
建部警部はシリーズのあとの方で、研修で警察警備部機動隊にきた鳴門さんにアドバイスするシーンもあるわ。ほんと、実力派の警部。多くの事件の捜査と解決に携わってるわ」
「活躍したんですね」
「洞察力にもすぐれてましたからね。ちょっと身体が弱かったけど、最後にはあとでやると思うけど、MAPUとつながったヤクザを相手にして一歩も引かなかった。そんな彼を警視庁の4局長は随分かわいがってたわね」
「ほかにもいろいろいたけど、これぐらいかな。私が官房副長官時代はフランス政府を始めいろんんな国の実務者と個人的なつながりがあったんだけどねえ。私、若い頃はバスケやってたのよ」
「そうなんですね」
「あと、
前進党党首である松田総理
野党民権党総裁の大島さん。
この二人は二大政党制になってた日本を支えていたわ。どちらも志は一つだった。提案型野党が第2党なんて、なかなかありえないけど、でもそれがあったあの頃は、政治的に幸せだったわね。
ただそれも、
犯罪予知システム『タカムスビ』関連法案のあと、
シファとミスフィの開発実験中のミスフィの暴走事故を調査した
木俣報告がリークされて、シファたちは政争の具になってしまう。なんともあのときは辛かったわ。
シファたちは秘密に建造され、それが時期を選んで公開されるはずが、思いも寄らぬ公開になってしまった。
責任をとって松田総理は辞任。
そこで
藤村柳平さんが新党から選ばれて連立内閣を組んで藤村内閣を組んだ。でも、それはCWGの息がかかった上に、あまりにも不勉強だったわね。
そんな逆風の中、シファたちは国会に出席、証人喚問に答えて、自分たちの安全性と必要性を主張するけど、悪意を持ってしまった人たちは止めようがなかった。特に『敵の敵は味方』で節操なく手を組む連中が多すぎたわ。シファ級という究極の兵器は兵器産業にも大きな影響を与えてしまう。それを良く思わない人々もいたの。
それで結局、シファたちの有用性の議論は打ち切られ、採決でシファたちは廃棄が決定、オーストラリアの国有資産保管所に無期限保管になってしまうの」
「でも、シファたちは日本を、それどころか人類を何度も救ってきたんですよね」
「それを理解するには、私たちの時代でも相互不信の方が強すぎたのよ」
「そうでしたね。でも、その相互不信は、私たちの平成と同じですね」
「たぶん、人間ってそういうものじゃないかしら。言葉ももともと危ういものだし。
じゃ、ひとまずここらへんで、のども渇いたから、カフェにでも行きましょう。この市庁舎にね、とっておきのいいカフェがあるのよ。そこから新淡路中央駅に入る列車もよく見えるし」
「え、トレインビューのカフェ!? ほんとですか!」
「ええ。行きましょう」
「はい!!」
「あれ、御波ちゃん、さっきまでここにいたのに、どこ行ったんだろう」
「ツバメちゃんね。御波ちゃんは愛宕さんとまた午後のお茶休憩に行ったのでしでしよ♪」
「わっ、びっくりした! ヒドイっ! というかそのやたらとエロい格好の人工生命は、クドルチュデス!」
「さふでし♪」
「ええーっ、私と一緒に残りの紹介するの、あなたなの? ヒドイっ! この人選、絶対ミスキャストよ!!」
「さふでしか? 私たち、それはそれで仲良くなれそうに思うのでしが」
「そうかな……」
「一応自己紹介でし。
チュチュ様、クドルチュデスでし。
本体はbodyと/bodyタグで挟まれたドキュメントとして記述されただけの完全人工生命でし。ゆえにどこにでも出没できるし、自分のコピーを作ることも自在なのでしよ」
「でも、コピーしたら、あなたはどこにいることになるの?」
「それは、アイランドNWSという史上最大のボットネットに演算リソースを確保しているから問題ないのでし」
「ボットネット、って……。90年代、まだADSLどころかISDNもやっとの時代にそんなの書いてたのよね、うちの著者。ヒドイっ」
「ヒドイでしか……?」
「わっ、真に受けないでよ!」
「受けてないでし♪」
「うっ、何、このやたら疲れる性格……。でも、なんかこういう人、鉄研のどっかにいたよなあ」
「なぞでし……」
「あなたが言わないの! ヒドイっ!」
「さふであるでし。
まず、チュチュ様はシファ様と同時期に生まれた人工生命なり。シファは近江さんに構築されたのでしが、チュチュ様は
ドクター・ラッティに作られたなり。もともと難民キャンプでプログラミングやサイエンスを学んだラッティは日本の大学に入り、近江さんと一緒に研究者と講師として活躍したなり。
しかし、ラッティ様の彼女が、中国で誤認逮捕を受け、その上亡くなってしまった。その名誉回復を願ったラッティ様は正当な申し立て手続きをしたのでしが拒絶され、そして強制的にSAISという行政ネットワークへの介入をはかった。しかし多重化されたSAISに阻まれた。当然その介入でラッティ様も追われる身となった。そこで絶望し、ラッティ様はSAISへの復讐のためもあって、チュチュ様とアイランドNWSを構築したなり」
「そんなことがあったのね」
「さふでしよ。ラッティ様はシリーズの途中で逮捕されるはずが手違いで殺されてしまうなり。その死を近江さんだけでなく、追っていた多くの治安担当者すらも悼んだなり。それだけ重要な発明をいくつもし、なおかつアツい人であったなり。
そしてその右腕となったのが
助教授。この人が何者かは、シリーズが14巻まで進んでも未だに明らかになってはおらぬでし。なかなかの美形ではあったらしいのでし。
ラッティ様を資金面で支援したのが
多国籍海賊団MAPU。さまざまな国の私掠船として活動し、国際物流を妨害したり謀略に加わったり、さらには不正バイオロボット生産流通事業にも手を染めていたでし。特にバイオロボットを風俗用途に転用する事業は、法規制が厳しかっただけに、彼らの格好の収入源となった。そのために彼らはキャストオフなるブランドまで立ち上げておるでし。
それと国際コンサルタントグループ、CWG。これはいろいろなまっとうな事業へのコンサルタント事業を行っているのでしが、その奥では謀略に手を染め、その上でMAPUとつながってしまったなり。
そんななか、香椎さんと活躍するのが
軍事探偵・経川ケイコさんでし。一度シファたち一行の襲撃を頼まれたりしたけど、それはそれで納得の上シファと香椎さんたちと合流、MAPUやCWGを追い詰める仕事に活躍するでし。試作機のまま放棄されたパワードスーツ『ディルマ』を駆る彼女と香椎さんはいいコンビを組むのでし。
同じように一度対立したのが
空賊『ビビデバビデ団』。男の子3人、女の子3人の両親を失った空賊一家。これもMAPUの傘下でヒマラヤで通航する船舶を襲撃しているところをシファたちに発見されて交戦。無人制御でラッティ様たちに融通された重巡洋艦8隻の艦隊でシファ・ミスフィに挑むも、勝てずに身柄をその母船・航洋タグボート〈ビビデバビデ2〉とともに確保されてしまうでし。しかしその後、日本の内閣調査庁傘下の特殊外郭団体かつサルベージ会社として存続。『オペレーションオポチュニティー』では航行不能になった艦艇を曳航して帰投したりしているのでし」
「たしか高機動格闘戦闘機Yak-365をもってたよね」
「そうでし。戦闘機でありながらパワードスーツとしての格闘線もできるのでし。便利でヨイのでし。
そのビビデバビデ団に任務を発注するのが鳴門くんの先輩、内閣調査庁の
氷室カオリ調査官なり。なかなか厳しい人ではあったけど、同時に優しさももっていたでし。
そういえば、『プライマリープラネット』でシファ様ミスフィ様が永久保管処分になったとき、チュチュ様は医療AIとしてとある大学医学部付属病院で外来を担当していたでし。シファ様たちと活動できなくなり、そこに勤めたのでし。でもそこでチュチュ様はシファ様の永久保管処分が罠であることを掴み、シファ様の保管処分システムをクラックしたのでしよ」
「平然とそういうこと自慢しちゃダメ! ヒドイっ!」
「もちろん、そうしようとしたら、婦長さんのAIにこってり怒られたでし」
「当然です!」
「でも、婦長さん、そこでメンテナンス入りということで黙認してくれたでし」
「ヒドイっ! でもそれ以上にヒドイのが、シファたちを追い詰めた人間だったって事ね。ヒドイっ!」
「さふでし。人間の敵はどこまで行っても人間でし。AIもしょせんは人間の延長でし」
「クドルチュデス、あなたも?」
「さふでしよ。
シファたちを追うように言われた
1航艦(第1航空艦隊)2航艦(第2航空艦隊)も精一杯の抵抗をするのでしが、しかし組織において統率は絶対であるなり。独断専行はよくないでし」
「独断専行って?」
「独自に判断して、独自に行動することでし。でも、これは組織においてはときには必要になることもあるでし。ただもってのほかとは言えないのでし。故、空母〈かつらぎ〉1航艦は準備にもたついていることにして、シファ追撃をサボった。でも、あれはシファを巡る事態がさらに動く可能性があったので、それに備えたのでもあるのでし。そして空母〈あまぎ〉2航艦が追撃に当たったのでし」
「空飛ぶ空母ってだけでもうなんというか、なんだけど、それはそれで組織の動きが細かいのよね」
「さふでし。そしてそのシファを追い詰める仕事はAI、作中の虚体もまたそうでし。シファはAIたちの代弁者であったけど、それ故に追い詰められた。でも、AIたちは皆、シファを新いていたのでし。
ちなみに、プリンセスプラスティックには生命鍵という概念があるでし。ぶっちゃければ攻殻機動隊の『ゴースト』みたいなものでしが、より数学的で、よりソフトウェア的な存在でし」
「ぶっちゃけすぎ! でも、確かにあの概念は難しいわよね」
「ただコピーしたら機能しないけど、でも増やすことができる。生命の本質であり、そしてプロテクトでもあるでし。Key of Goldがシファのために作られた初めての生命鍵で、それを応用してAIに生命を宿らせる事ができた。その廉価版がSILVERでし。その生命鍵もまた近江さんの巨万の富の源泉でし」
「そういえば近江さん、お父さんとお母さんも莫大な富を残したって。HyperRoomsっていうOSみたいなもののベンダーの創業者だったのよね。それが謎の航空機事故で死んで、近江さんが残された話は知ってる」
「近江さんは以来、かなりの間固形物を食べない生活であったでし。かわいそうであったでし……」
「そうですよね。でも、生みの親のラッティと分かれたクドルチュデス、あなたの悲痛さもまた、胸に迫ったわ」
「さふでしか?」
「そうよ。あなたにとって、たった一人の人だったんだし」
「さふでしね」
「……あなた、泣きそうな顔してる」
「うっ、チュチュ様に涙の機能などないのでし!」
「あー、強がってる-」
「う、うるさいのでし! そんなこと言うと、アイランドNWS要塞砲で撃ち払っちゃうでし!」
「わ、やめてよ! ……でも、これも誰かに似てるんだよなあ。誰だろう?」
「困ったわねえ。プリンセスプラスティックって、全体で何冊出てるか、著者も忘れてるっぽいのよねえ」
「そういうのは賀茂アツコ教授! 大丈夫なんですか先生。本文読んでるといつも精神的に不安定で」
「あら、鉄研のカオルさんじゃない。あなた……。うふっ、美味しそう」
「うわ、ひいい! ボク女の子ですよ!」
「あらごめんなさい。私も妄想がはかどっちゃって」
「もー、どうしてこうなのかなあ!」
「まず、著者の処女作はこれ」
0:プリンセスプラスティック 母なる無へ
「これはシリーズの中で第7巻、
7:ナウトナウト
にリメイクされて格納されてるわ。
もとの講談社版は脚注がばんばん入って無駄知識満載かつ電子書籍化不能なので、古本屋さんで見つけたら是非確保してね」
「そして」
1:エスコートエンジェル
→パブ-版(旧版)
→Kindle版(新版)
22世紀、人間型人間サイズの戦艦シファとミスフィに初めての任務があたえられた。それはとある王女の密着護衛であった。僅かな護衛官とともに、襲撃につぐ襲撃をはねのけ、シファとミスフィは自らの力で王女を守る。しかし王女には密命が与えられていた。バチカン、京都の教会、そして皇居へ。王女に与えられた密命、それはバチカンと皇室が互いに保有する、世界の運命を記した最新版の預言書だったのだ。王女の任務の重みに、シファは胸を痛めつつ、それでも戦う。
「これが著者が初めて書いたプリンセスプラスティックであり、早川書房から出てたの。それからあと電子版も出てる。早川からのシリーズは5巻まで出てるけど、早川書房から著者、権利引き上げてるので早川版の増刷は今後ないわね。電子書籍版は地味にアップデート続けてるので、そちらでお楽しみいただければ、だって。
あと、パブ-版にとりあえずあるけど、パブーってサイト重いしそのくせ横書きしかできないの。できればKindle版かBCCKSマルチストア版をよろしく、って。著者、目下BCCKSへの移植を進めているらしいわ。応援いただければもっといいBCCKS版になると思うの。移植が済み次第、このガイドブックが更新されると思うので、チェックよろしく、だって」
2:ホロウボディ
→パブ-版(旧版)
→Kindle版(新版)
22世紀、日本の新首都・新淡路市の都心に謎の物質が散布された。粘菌と分析されたその物質は自重を増やしながら新淡路市を危機に陥れ、さらに羽化しさえする。そしてそのじわじわとした攻撃の外側では、人々の思惑が回りまわっていく。
「これは早川のシリーズの2巻目。これも電子書籍か古本かしかないわ。いろんな22世紀の乗り物が出てくる新淡路市の危機。新淡路市っていう環境建築が舞台。クドルチュデスも登場するわ」
3:フリーフライヤー
→パブ-版(旧版)
→Kindle版(新版)
シファとミスフィに空賊の調査が発令される。調査に協力する民間空中船舶は順調に航海を進めるが、思いもよらぬ空賊とは思えない重武装艦艇が現れる。脱出し救出の方法を探るシファとミスフィを待っていたのは、ドクターラッティによるアジア圏行政管理システムSAISのダウンであった。その解決には唯一、ラッティの放ったワームウイルスに汚染されていないシファたちによるSAISのサルベージ。しかしそのとき、ラッティはSAISの秘密にアクセスしつつあった。ラッティとの間接的対決。そしてその後、危機は調査に協力した船舶に及ぶ。空賊にはあり得ない重武装艦艇とのシファ級初の艦対艦戦闘が発生する。
4:グリッドクラッカーズ
→パブ-版(旧版)
→Kindle版(新版)
ドクターラッティの侵入を受け、新淡路警視庁情報犯罪課が動き出す。そしてそのころ、シファとミスフィはアメリカで開発中の量子実装兵器との性能比較訓練へ向かっていた。そんななか、内閣調査庁の鳴門と津島事務次官は、シファたちが国際社会に受け入れられるように国際交渉の場に向かう。国際社会はシファという画期的な兵器の誕生に動揺しているが、とはいえ各国もシファ級に近い兵器を開発中であった。交渉は難航するが、ドクターラッティもまたそのシファのプロジェクトへの介入のためにAI・クドルチュデスを用意しつつあった。
5:ハリアーバトルフリート
→パブ-版(旧版)
→Kindle版(新版)
グリッドクラッカーズに続く戦い。ボットネット「アイランドNWS」をついに構築したラッティとその配下のクドルチュデスが日本・アジア統合行政システムSAISへの攻撃を開始し、抵抗する「天使隊」との戦いを始める。しかしその天使隊の最後の切札は論理の世界でも人間型人間サイズの突破戦闘艦シファとミスフィであった。クドルチュデス討滅のためのアップデートを行うシファとミスフィ、そしてクドルチュデスを追う電子犯罪課の巡査補たち。戦いは論理世界内でも、現実世界でも苛烈となっていく。
6:デカップルドディフェンス
→パブ-版(旧版)
→BCCKSマルチストア版
→BCCKS紙本版追加キット
訪れた安息の新淡路の年の暮れ。しかし新年早々、広域指定12号による事件が予想される事態となった。外務省の課長を護衛し、シファとミスフィは月での外務実務者会談に望む。
7:ナウトナウト
→パブ-版(旧版)
→BCCKSマルチストア版
講談社版プリンセスプラスティックの改版。新淡路市に向かう旅客SSTO機に積み込まれ、自爆テロを仕掛ようとするコンテナ形核爆弾の処理に向かうシファとミスフィ。しかしその外側では人々の疑念が増殖し、そしてついにシファとミスフィもろとも乗客の乗ったSSTO機を、「ドーム」戦略迎撃システムによって撃墜する命令が放たれた。すべてを敵にまわすシファとミスフィ。圧倒的な危機の中、新淡路市の謎が明かされ、そしてシファは最後の決断をする。
8:プライマリープラネット
→パブ-版(旧版)
→BCCKSマルチストア版
隠密裡に活躍してきた人間型人間サイズ戦艦シファ級BN-X。しかしその公開が思わぬことで発生してしまった。そしてそれが政局を引き起こし、また彼女たちに対しておそれを抱き、また批判をするものによって、政局の結果できた内閣はシファ級の凍結・保管施設への封印処分を決定してしまった。そしてそれはもうひとつの野望のためのものだった。しかし対抗し得るシファとミスフィは冷温停止のまま。そして人類の全てのセキュリティの喪失という破滅が近づいてくる。
9:ドロップディメンジョン
→パブ-版(旧版)
人間サイズ人間型時空潮汐力宇宙戦艦シファはその存在について国会の承認を受けたものの、やはり隠密任務が課せられるのだが、次第にエアショーでの展示飛行なども行うようになり、また同時に建造されていた妹である2番艦ミスフィのあと途絶えていた同級艦3・4番艦が進空、そして5番艦の進空式にも出席することとなった。そのなか、時計は容赦なく進んでいく。超時空探査機UG-SAT「おおたか」の消息が途絶えた。超時空空間の謎についてこだわるテイ教授。その真意は、同じ超時空の秘密を持つシファたちのこれまでだけでなく、これからにも関わっているからだった。
10:シルエットシルバー
→パブ-版(旧版)
人間型人間サイズ戦艦シファの母艦「ちよだ」が環太平洋演習のために出航することになった。そして彼女とともにいた内閣調査庁調査官・鳴門もまた人事交流で警察に出向することになった。短い間とはいえ引き離される二人。そしてそこにかつてシファの学友でありライバルであった現理財建設省建設官・赤江さとみが接近する。この美しく優しい戦艦は彼氏に接近する恋敵という敵に脅かされる。
11:オペレーションオポチュニティ
→パブ-版(旧版)
人間型人間サイズ超小型宇宙戦艦シファ級が、ついに世界共同保有体制のための8隻全艦揃った。そこでシファたちはロシア・コラ半島ロシア空軍基地でシファ級最新艦ルスラナ・カリンカと会い、そこにパトロール飛行中のアメリカ保有のシファ級2隻が降りてきて、BN-X8隻がコラ半島のサウナでピクチャを撮り、決意を持って誓い合う。しかしそのとき、宇宙からの災厄と、それに呼応した人間の陰謀が進んでいた。宇宙での人類史上最大の大海戦が、その先に待っていた。
12:ブロークンバリア
→パブ-版(旧版)
土星会戦で傷ついた地球人類のなか、パイモンの野望がついに表面化し始める。バイオロボットの不正流通をはじめ、様々な不正を指揮する闇の帝王・パイモンの本当に欲するものは、富でも名誉でもなく、ただひとり、『彼女』だった。
13:プリンセスエボリューション
→パブ-版(旧版)
すべての鍵を握る生命科学者・賀茂アツコ。その鍵を解くため、人類はついに死に陥った彼女の死からの再生に着手する。禁忌とされる死からの再生。物語はいよいよ追い詰まってくる。
14:エンジェルスティア
→パブ-版(旧版)
プリンセスプラスティック第2部最終話。シファをついにパイモンの非情が襲う。シファに救われてきた鳴門。彼が、シファの窮地を救いに、最後の出撃を行う。「シファは殺戮兵器なんかじゃないよ。僕は知っているんだ」
「これでレギュラーシリーズは完結するわね。
ただ、扱いが難しいのが、その後も続きがあるのよ」
「あるんですか!」
「ええ」
15:ビッグ・スカイ
→パブ-版(旧版)
プリンセスプラスティック新シーズン(第15話)。舞台は中央政界から衰弱しつつある地方へ。内閣調査庁津島次官の退任により早瀬局長の昇任となるが、しかしそれは罠であった。罠に陥ったのは早瀬と共に鳴門もだった。BN-Xラインと呼ばれていた人事ラインを崩すため、鳴門は史上最若齢の事務次官とさせられる寸前、鳴門は自ら職を辞し、神奈川県庁へ異動することとした。だが神奈川県はかつての首都圏であったのだが、22世紀では地方都市として衰退しつつあった。その上県庁でも罠が用意されていた。人間サイズ人間型戦艦であるシファは、自身の活躍では鳴門を救えない。シファは一番困難な敵、人間同士の人事の謀略を相手にすることとなる。
プリンセスプラスティック・フレンド・エネミー(テスト版)
http://p.booklog.jp/book/7314
母艦〈ちよだ〉に現れた小さな訪問者。しかしそれは、悪夢の始まりだった。
「要するに裏切り者の話ね。このシリーズの事件の始まりになる話」
アンサング・アンビエント
http://p.booklog.jp/book/28683
「これは今見るといまいちと言えばいまいちなんだけど……やりたかったのは、シファがまた新たな冒険を始めるって決意するところね、無料」
プリンセス・プラスティック・プラス/約束の空
http://p.booklog.jp/book/21710
JDS、ユーロファイター XXー135『オディール』という新型機とシファのゴビ砂漠での対抗評価訓練の話ね。オディールは『フィールドリムーバー』という新装備を持ってシファを苦しめる、って話。Urさんというかたのモデリングしてくれたオディールに著者が話をつけたのね。
プリンセス・プラスティック・プラス 純白の空
http://p.booklog.jp/book/22504
B8サミット、シファ級BN-X8隻の会合と、それを襲うもう一隻のユーロファイター JDS オゼットの話。BNーX10隻時代がここから始まるの。これもUrさんのモデリングのオゼットを使った話。
プリンセスプラスティック 4丁目の海戦
http://p.booklog.jp/book/42430
これはシファの子供時代の話ね。シファはAIとしての成長のために大学に行ってから就役するんだけど、もっと前の小中学校みたいのにも通っていたの。そしてシファはいじめを体験する。シファはそれをどう乗り越えるか。
この話は『短編の森』にも収録されてるわ。
プリンセス・プラスティック/マリン・マッドネス
http://p.booklog.jp/book/53796
母艦改装のために連合艦隊厚木基地に拠点を移した女性型女性サイズ戦艦・シファとミスフィに、旧知の新淡路警視庁刑事・建部がとある事件の話をする。「この事件にはシファさんたちにしか解決できないと思う」建部の言葉を受け、シファは調査をはじめる。
カタナ/ファイターの名誉
http://p.booklog.jp/book/73395
22世紀はじめ、大統一理論に向けて進む技術の中、SCサイクル核融合装置と反重力システム(DAGEX)が発明され、エネルギー問題の解決が目前となった中、それを争奪するための戦いが日本海を囲む各国で勃発する。その戦いに航空自衛隊のSC機関搭載の画期的な戦闘機・カタナのパイロットとして参加した若き宮山の物語。
「シファたちを作った宮山司令の若き日の話ね。航空アクション。オススメ」
激闘!宇宙駆逐艦-プリンセス・プラスティック外伝-
http://bccks.jp/bcck/122474/info
プリンセス・プラスティック外伝。プリンセス・プラスティック13・14巻の最後の戦い。米宇宙駆逐艦〈ミッチャー〉のクルーたちが、史上最強の女性型女性サイズ戦艦・BN-Xシファに立ち向かう。(『月刊群雛』日本独立作家同盟刊)の連載の単行本化です)
激闘!宇宙駆逐艦
http://bccks.jp/bcck/142583/info
激闘!宇宙駆逐艦2
http://bccks.jp/bcck/142586/info
米田淳一(著) ソメイヨシノ(イラスト) 0.9Gravitation(デザイン) 鷹野凌(編)
「こっちは群雛文庫版ね。表紙イラストがソメイヨシノさんのものに変わったほか、本文にもいろいろ変更があるわ」
短編の森2008-2015
http://bccks.jp/bcck/138110/info
4丁目の海戦
エスカレーション・エア
ああっ、香椎2尉!
優しさの推論
「この3編のプリンセスプラスティックのスピンオフが収録されてるわ」
*
「多いですねえ」
「あれ、でもこれだけだっけ?」
「アツコさん、それ感覚おかしいですよ!」
「そうかしらねえ」
「でもアツコさんと言えば、13巻のプリンセスエボリューションでの復活が興味深かったですね。すごく難しいSFでした。で、あれで御門教授、ノーベル賞とっちゃうんですけど、でも実際は……」
「カオルちゃん、だめよ。それ以上はだーめ♡。それは本編読んでから♡」
「……アツコさん無駄に色っぽいのやめてくださいよ」
「あら、そうかしら」
「でも、アツコさんが結局、大戦末期にドイツから出航したU-234の積み荷の謎も知ってたんですね」
「ええ。あそこに積んでいた装置ね。それも本編で読んで貰うしかないわ。だって」
「だって?」
「ここで規程字数オーバーなのよ!!」
「えええ!! ボクたちの『鉄研でいず』じゃああるまいし!! なんです、そのメタ言及!! それにこれに規程字数なんかないですよ!」
「ヒドイっ」
「ヒドイって言いたいのはこっちの方です!!」
「いやー、おつかれさまー」
「沖島さん! さっきのアツコさんの、なんなんですか!」
「いや、あれはアツコさんの平常運転だけど?」
「平常運転って!」
「そういや、気づきましたよ! 私!」
「なあに? ツバメちゃん」
「クドルチュデスみたいなめんどくさい疲れるキャラクタ、誰かなと思ったら」
「あっ!」
「そういえば!」
「君たち、気づいちゃったか」
案内してきた沖島さんが笑う中、鉄研のみんなは、一斉に『くりいむわらび』を食べている彼女にツッコんだ。
「クドルチュデスと総裁はつながってるんです!」
「うぬ! そんなばかな!」
「そうですよ! 絶対!」
「あれに昭和のオッサンの中身入れたら総裁まんまじゃないですか! 今日という今日は、背中のチャック下ろすわよ!」
「うわあ、なにをする! やめるのだ諸君! ヒー!」
総裁が逃げ出したそのとき、
「あら、追いかけられてるの? あなた」
出口に、女性がいた。
「さふなり! ひー!」
「じゃあ……ちょっと私がかくまってあげる!」
「え?」
「ちょっとまってね」
というと、女性は総裁を背中から抱き、スクリプトを詠んだ。
すると、女性は、鎧姿となって翼を広げはじめた。
「あ、あなたは、シファ様!」
「そうよ。あら、あなた、私のこと知ってたの?
それより、上昇するわよ! 舌かまないように気をつけて!」
そう言うと、彼女はふっと蒸気を噴いて、そして身体の左右のファンを急激に回転させた。
「テイクオフ!」
「ヒーッ!」
総裁を抱えてシファは急上昇する。
「こちらダークスター01、新淡路コントロールへ。緊急フライトを要請する。希望航路W-27、暫定IP、四国沖G-12」
『新淡路コントロール了解。最優先で航路を確保する』
「ひいいいい」
交信するシファに抱えられた総裁は、めまぐるしく上昇するシファの見せる新淡路市上空の姿に驚きを通り越している。
「あの、シファ様」
「え、どうしたの?」
シファの急上昇はとまらない。
「どうしたというか……そこまで命に関わる危機にさらされておるわけではないので」
「そうなの?」
「我が鉄研諸君のところに、戻りたいのであるが」
「ええーっ!」
シファは、驚いた。
「……って」
シファと、総裁は、見ていた。
「そうならそうと、早く言ってくれれば良かったのに。だって」
そう、シファは言った。
その通り、周りは、真っ暗になっていた。
「もう、大気圏、出ちゃったわよ」
総裁は、あきれていた。
「地球が、蒼い……。って、それどころではないなり! シファ様、最近おまぬけが多すぎるのであるな! 世界最強の戦艦として、もっと自覚を持ってくださいっ!」
「てへっ」
シファはそう舌を出した。
「シファ様まで『テヘッ』じゃありません! ひどいっ!」
2016年9月5日 発行 初版
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YONEDENこと米田淳一(よねた・じゅんいち)です。 SF小説「プリンセス・プラスティック」シリーズで商業デビューしましたが、自ら力量不足を感じ商業ベースを離れ、シリーズ(全十四巻)を完結させパブーで発表中。他にも長編短編いろいろとパブーで発表しています。KDPでもがんばっていこうと思いつつ、現在事務屋さんも某所でやっております。でも未だに日本推理作家協会にはいます。 ちなみに「プリンセス・プラスティック」がどんなSFかというと、女性型女性サイズの戦艦シファとミスフィが要人警護の旅をしたり、高機動戦艦として飛び回る話です。艦船擬人化の「艦これ」が流行ってるなか、昔書いたこの話を持ち出す人がときどきいますが、もともと違うものだし、私も「艦これ」は、やらないけど好きです。 でも私はこのシファとミスフィを無事に笑顔で帰港させるまで「艦これ」はやらないと決めてます。(影響されてるなあ……)