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助詞の連続や抜けの指摘
英文スペルチェック
商標・商品名の指摘
一太郎のファインプレー
名称の確認
同音異義語指摘
文長の指摘
呼応関係の指摘
みなさーん、セルパブがんばってますか? 「ぱぶみ」感じてますか?
え、原稿書いたけど文章が雑だって言われた? 校正がしんどい?
私もそうだから心配ご無用!(ヒドイッ)
そこで今、いいものがあるんですよ!
それが「一太郎」!
ええっ、あのもう廃れたはずの大昔の日本語ワープロソフトが? と思うでしょ?
さにあらず! なんとあの一太郎を原稿の校正ツールとしてだけ使うのです!
Wordにも校正機能あるけど使い物になんないよ、だって?
一太郎の校正はあんなアメリカンな雑なモノじゃありません!
校正作業にはかなり使えます。
人力でやると思えば絶望的になる作業もスイスイですよ!
特に私みたいに注意力足りない人間にとって、一太郎は強い相棒です!
でも一太郎は慣れてないから使いにくそう?
そこは「使わなきゃいい」んです!
使い慣れたエディタなどで書いて、一太郎にコピペしてチェック!
そしてチェック終わったらまた戻す!
そう、校正ツールとしてのみ一太郎を使っちゃうんです。
無理に慣れる必要は全くないのです。
一太郎にEPUB出力機能があるとか、そういうのはあえて期待しない!
過剰に期待しなければいいんです。万事そういうもんです。
というわけで、一太郎の校正の実際をご紹介します。
なお、対象は「一太郎2016」です。他のバージョンについては書きません。というか書けません。
あと、超初心者向けの「ファイルの開き方」「新規ファイルのつくりかた」なんてのは割愛します。それは別のところで調べてください。
この本は最低限Wordとかを使ってセルパブやってるかやりたい人向けに限定します。
なお、一太郎にMac版とかLinux版は現在存在しません。仮想環境でWindowsを入れてその上に入れ込むか、あきらめましょう。
でもこれでガンガン一太郎が流行ったら他OS版も出るかな? それぐらいセルパブが流行ればいいいんですが。
まず一太郎を買ったとして、そこからやっていきます。
インストールとかのやりかたは別に調べてください。基本的に他のアプリとやり方は違いませんから。
あとATOKも入れてしまうかも知れませんが、ATOKの細かい設定も割愛。ATOKの設定と一太郎校正の関係がはっきりしないので、話はむやみに広げません。
これが一太郎の画面です。
真ん中が原稿を入力する部分。
右ペインが校正機能を呼び出すところです。
右ペインはこうなってます。「文書校正:小説」になってますが、これは初期状態では存在しません。私が作った設定です。設定セットを選べるので、文書によって使い分けが可能になってます。
一太郎を買って、校正機能を使おうとすると、校正の設定が選べるようになっています。
しかし! そのままでは正直、小説の校正には使いにくい! というか役に立たない!
というわけで、さくっと設定のセットを新規で作ってカスタマイズ、調教してしまいます。これ大事!
右ペインの校正を呼び出し、矢印のギアボタンを押すと、こんなメニューが出ます。
文書校正の設定を選びます。
こんな感じに真ん中にボックスが表示されます。
*が着いている設定名はプリセット。正直使いにくいので、新規作成しましょう。
新規作成を選ぶとこんなのが出てきます。
元になる校正設定をアレンジするようになってます。
校正設定名を入力して、作ってしまいましょう。
元になる校正設定は何でもいいです。次からうちのよさげな校正設定例を紹介しますので、これに設定を合わせてしまえば、一太郎校正はかなり使いやすくなります。
項目はタブをクリックして選んで設定して、終わったらOKを選びます。
もし途中でOKを押したとしても、
この編集ボタンをおせばまた設定できますので、ビビることはないです。
以下は自分で設定した例です。標準の校正設定でやると要らない指摘が多くなりすぎるのでチェックを色々外してあります。まだ調整については煮詰めたいところですが、これで結構いけます。慣れてくれば各自研究工夫でアレンジしてみてください。
小説なので公用文チェックは外してあります。これ入れちゃうと小説の場合、校正がすごくめんどくさくなります。小説って公用文じゃないし。本質的に違うモノですので。
文体統一はチェックしないにしています。会話文のところで要らない指摘がどっさり出てしまうので。会話文だけ(「」のなかだけ)判定してくれればいいんですが、その設定はないようです。
この字種統一はけっこう必要です。できればここで「二桁数字の場合縦中横にする」なんてのがあればさらによいのですが、今の一太郎にはありません。できれば校正での変更候補にマークアップ用のタグつける指定ができれば嬉しいのですが……。
文の長さチェック。標準だとかなり短いのでこのような数字にしてあります。
非常にテクニカルな話ですが、これはいちおうチェックにしておきます。GoogleIMEとかはたまに変な字を変換で出すので。
以上で設定は終わりです。
では、実際に原稿のチェックをやってみましょう。
例として私のセルパブ著書「抜き身の刃」の初稿を使ってみます。
刊行されてるのはチェック済みのものですが、ここではチェック前の原稿を一太郎に突っ込んでチェックしていきます。
まず原稿を中央ペインにコピペします。うちはGoogleDocumentで原稿を作成していますが、それを全部コピペします。
右ペインはこうなっています。
もし校正の項目がたたまれていたら、クリックすれば拡大されます。
上の文字数が10万字超えてますが、これでも一太郎は大丈夫です。
この10万字を一太郎はざっくりものの数秒でチェックしてくれます。機械力万歳!
表記ゆれチェックを実行してみます。
ここをクリック。
こんなのが出てきます。
当然全部を選びます。でなきゃもったいない。
で、解析が進みます。
解析が終わるとこんな感じにボックスが出ます。
このボックス、大きさ変えられれば便利なのですが、変えられないのであきらめてこれ見ながら作業します。
ゆれの可能性のある言葉ごとに表記一覧に自動的にグループにしてくれます。
表記一覧で選択し、表記のボックス内で書き換えることも出来ます。
また、このダイアログボックスではなく、本文ウインドウでも訂正は可能です。
その場合、この表記ゆれのダイアログボックスが消えてしまいますが、F5キーを押すことでまた表示されます。
この画面では10を全角の「10」か、半角の「10」のどっちにそろえるか選ぶところです。
よくある「プログラマ」と「プログラマー」の音引きのゆれが検出されてるところです。
どっちかに揃える場合、表記一覧で選んで表記のボックスに表示させ、「全て置換」で一気にやってしまうことも出来ます。しかし、ウカツにやると、表記揺れとは違うものも一気に変換してしまいます。
CTRL+Zで戻れますが、間違って変換してしまうとアブナイしあとがめんどいので、できるだけ全て置換は安易に使わないほうが良さそうです。
われわれ/我々の選択です。これは小説の場合、使い分けのこともあるので、よく確認しましょう。
確認した結果がメモに残せればいいのですが、それはできないので一太郎とは別にメモをとるしかなさそうです。
表記ゆれをチェックしていると、誤検出が増えてきます。この「いう」「言う」はゆれですが、ゆれでないものも出てきます。そういうときは仕方ないので自信を持ってスルーしましょう。
表記ゆれのダイアログボックスはこんなに小さい。
同時に表示されている左ペインの表示の情報にはむしろあんまり意味が見いだせないので、ここはJust Systemにちゃんと整理してほしい感じがします。
では、次に、一太郎による文書校正をしてみましょう。
矢印の文書校正のところで設定した文書校正セットを選び、隣の実行ボタンを押します。
進行状況が表示されます。
チェック完了。こんなボックスが出ます。このボックスはただ閉じちゃってOKです。
こんな感じの画面で校正作業状態になります。
真ん中が本文、右側が校正などのウインドウです。
正直、左ペインがあんまり機能してない気がします。アウトラインなどは表示すると便利ですが、校正項目の表示はあまり使えないです。
指摘ヶ所1333箇所! 目眩がしますが、それでもザクザクやっていけますので心を折らずに作業しましょう。
この指摘は固有名詞にふりがなをつけるかどうかの選択です。ここでマークアップ用のタグが入れられればいいのですが、それは一太郎の機能にありません。
固有名詞の場合、辞書登録してしまう方法もあります。ただ、辞書に変な「癖が付く」場合もあるので、辞書登録しない場合は「まとめて無視」のボタンを押します。すると同じ件での指摘が解除されるので、指摘件数がどんどん減っていきます。
助詞の連続が検出されました。こういうのは一太郎はかなり厳しく検出します。
でも、見て小説的におかしくなければ、自信を持ってスルーしましょう。
これもまとめて無視のボタンを押すことが出来ますが、一太郎はそれぞれ別にこの連続などを判定しているようで、それほどまとめて指摘箇所は減りません。
典型的な助詞抜けの指摘ですが、これは会話文のなかでのことです。会話では助詞を省いた喋り方もあるので、そこは確認して無視ボタンを押します。
ここまで一太郎の指摘を無視ばかりしています。しかし、指摘の中には、確かにと思ういいものもあるので、一太郎の指摘は「確認作業のナビゲーション」と思って使うとよいでしょう。
この「規格会議」の「規格」がピンクにハイライトされています。「企画会議」じゃないかと。たしかに普通はそうなんですが、この小説での場合OPEN-QRというOSの規格の会議なので規格会議のママであってます。
しかし、指摘してくれたことで確認できました。無視ボタンを押して次に行きます。
この「の」の連続も、気にならなかったら無視で。
これは一太郎の指摘が正しいところです。「をを」で「を」を二度打ちしてしまいました。
訂正しましょう。本文ウインドウで「を」を削除します。
ハイライトのところを編集すると、一太郎は指摘箇所としてのカウントを減らして、解決したことにします。
指摘数がだいぶ減ってきました。
これも一太郎のファインプレーです。「そのの」で「の」が二度打ちされてます。本文ウインドウで訂正します。
スペルチェックもしてくれます。これは下の訂正候補ボックスに候補が出てるので、「置換」ボタンを押します。そうすると訂正候補にそのまま置き換えられます。
これもまとめて置換が隣にありますが、あんまり信頼しすぎると別のも置き換えてしまいそうで危ないので、まとめてはやらない方がなにかと良さそうです。
商標・商品名も指摘してくれます。
小説の場合はこれでいいことも多いので、まとめて無視します。
また「の」が二度打ちされています。中央ペインで編集して訂正します。
一太郎のファインプレー。「言っているのだ」を「要っているのだ」に誤変換していました。訂正します。
これも誤変換。「席」を「隻」にしていました。訂正しましょう。
でもこれを誤変換という指摘はまだ一太郎はできないようです。でも別の観点から指摘してくれました。
こんな指摘も。防衛庁は2007年1月に防衛省に名称変更してたんですよね。
でもこの小説は2004年の話なので無視ボタンを押します。
とはいえ、こうして校閲的な指摘までしてくれるのはありがたいです。確認作業がはかどります。
「仕事が(早く/速く)上がった」の指摘です。
これは迷うところです。早く仕事が終わったので、ここは早くです。
速く仕事をするとは違うと思います。
こういう難しいところも一太郎は指摘してくれます。
これは一文の長さが設定より長いという指摘です。
特におかしくないとか読みにくくない、あるは演出的に長くしているなら無視しましょう。
この場合はあいだに点を一つ入れて訂正しました。
無意識に長文を書いてしまうことがあるので、機械的にチェックを促してくれるのはいいところです。
「・・たり」の呼応関係の指摘です。
これは話し言葉的にはアリのなので、無視します。
「。。」と読点を2つ打ちすぎています。こんなのが15か所あることがわかりました。
これは指摘通り間違いなので、下の〇の隣のボックスに「。」を入れて、まとめて置換をクリックします。指摘数が一気に15減ります。
これで指摘個所はなくなりました。一太郎での校正はこれで一応終わり!
しかし、一太郎の校正機能はまだ完璧ではないので、さらに素読みして確認したほうがいいと思います。
ちなみに10万字のこの原稿のここまでの一太郎作業時間は約1時間30分!
人力でやるとしたら途方もなく時間がかかるところです。まさにデジタル技術の驚異ってヤツです。
ちなみに、何度も校正していると、とくに表記揺れの誤検出が増えます。どばっと30個ぐらい一緒にグループ化されて、あきらかに「揺れじゃねーよ!」というのが候補になります。これは一太郎の揺れ検出アルゴリズムの癖のようです。
揺れ検出を何度もやるのは意味がないかも知れません。
これだけできてWordをすでに持っている方には7992円!(TVショッピング風味でヒドイっ)
是非導入を検討してみてください。なかなか使えますよ。
ちなみに文書校正の辞書ですが、これ、作品別に使い分けられたらいいなと思ったんですが、調べてみるとなかなか使い分けは難しそうです。DICファイル作るのしんどそうですし。
登録してる辞書の中はみられるんですけどねえ。(なんて単語を登録しているんだ私は)
以上でガイドブックは終です。参考になりましたでしょうか?
せっかくがんばって書いた作品を、単純な校正ミス、ケアレスミスは、いとも簡単にばっさり台無しにしてしまいます。
内容が良くても読者はミスがあると、その時点で「ああ、著者はこういう雑さで書いているんだな」と不快に思ってしまいます。読者は著者が思っている以上にミスに厳しいんですよ。
がんばって書いた力作なんですから、それは気持ちよく読んでもらいたいものですよね。
せっかくのトリック、仕掛け、伏線、そして作品世界に没頭して貰いたい。それは書き手ならみんな、そう思うと思います。
かといって自分で人力で校正するのはめんどいししんどいし、時間もかかります。
それを他人に頼むのも実際には有形無形で費用と負担がかかります。なかには1万文字で1万円なんて話もあります。10万文字で10万円? そんなの払えません……。だって、作品1本だけで10万円ですよ? もう1本書いたら20万円!
だったら一太郎7000円チョイが安く思えてきませんか? 一度買ってしまえば何本やっても出費はもうないんですから!
一太郎をこうやって使うことである程度ミスが低減できれば、それは十分安くて良いことだと思います。
というわけで、一太郎活用で楽しいセルパブ執筆ライフを!
ステキな作品が、これでセルパブでも、もっと増えますように。
<了>
2016年10月29日 発行 初版
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YONEDENこと米田淳一(よねた・じゅんいち)です。 SF小説「プリンセス・プラスティック」シリーズで商業デビューしましたが、自ら力量不足を感じ商業ベースを離れ、シリーズ(全十四巻)を完結させパブーで発表中。他にも長編短編いろいろとパブーで発表しています。セルパブでもがんばっていこうと思いつつ、現在事務屋さんも某所でやっております。でも未だに日本推理作家協会にはいます。 ちなみに「プリンセス・プラスティック」がどんなSFかというと、女性型女性サイズの戦艦シファとミスフィが要人警護の旅をしたり、高機動戦艦として飛び回る話です。艦船擬人化の「艦これ」が流行ってるなか、昔書いたこの話を持ち出す人がときどきいますが、もともと違うものだし、私も「艦これ」は、やらないけど好きです。 でも私はこのシファとミスフィを無事に笑顔で帰港させるまで「艦これ」はやらないと決めてます。(影響されてるなあ……) あと鉄道ファンでもあるので、「鉄研でいず」という女の子だらけの鉄道研究部のシリーズも書いています。よろしくです。