spine
jacket

詩集第2弾「夢喰ひ花仙子」は、花言葉をモチーフとした“恋する花”がテーマとなっています。
悲恋物ばかりですが、お楽しみくださいませ。

───────────────────────



夢喰ひ花仙子

楓仙子

狗尾堂



───────────────────────




  この本はタチヨミ版です。

 目 次

ヘデラベリーの首賭け
悪実の業果
懐疑に歪むラヴァンドラ
金色煌く麝香撫子
恨みにも似た茜火の慕情
桜に濡れる清明の夜
醜悪に降り立つ迷迭香
爪痕に哭く天竺葵の白心
桃始華の雨
悲恋に二度咲く雪中花
楓の色にて解池染む
【各作品のモチーフとなった花と花言葉について】
【おまけ】憎悪に咲く春
【おまけ】未実装の空と海

ヘデラベリーの首賭け

爪を立てて
目を突いて
髪をむしった

苦痛に歪む 君の顔が大好きだったんだ

怯えて震える細い肩も
眼光の失せた彩のない眼差しも
足もとにしがみつく頼りない腕も
すべてが僕の行為で生み出された愛しいもの
僕だけのもの

好きだと言っていたアイビーベリーは
そのつるを伸ばし 君を捕縛する

そんな小さな贈り物に
とびきりの笑顔で罠に堕ちる
警戒心の欠片もない君だから
そばにいてあげないといけないよね

拘禁反応を細やかに記して
細胞レベルまで大切にする

僕の希求を叶えてくれた
優しくて非情な この植物は
僕の血液で生きているんだよ

君が好きだと言ったアイビーベリー
花言葉は“死んでも離れない”

己を恨んで
この蔓枝の中で果てるといい
逃げられるわけはないのだから

悪実の業果

私より
私の真実を探す
君はだれ?
私をどうしたいの?

すべて抱えると言った
強い眼差しに
狼狽えて拒絶した

嘘でしょ
知ってる
そう言って
みんな離れていくこと

私を
私のすべてを
背負うなんて無理

腕を伸ばし
噛みつかせたまま
受け容れる
揺るぎない温度

嘘でしょ
知ってる
そう言って
みんな離れていくこと

もう期待させないで
惨めな思いはしたくないの
愛情なんて恐ろしい刃物
こちらに向けないで

人間が無条件に
初めて愛を享ける
その瞬間
私は誰かに愛される術を
失って生まれてきた

どれだけ業が深いのか
知ることはできないけれど
償う方法もわからないんじゃ
きっと同じことを繰り返すだけなんだろう

だれも信じたくない
傷だらけになってまで
そんなもの要らない

私は愛を
持て余した愛を
溢れんばかりの愛を
ただ与えるだけでいいの

懐疑に歪むラヴァンドラ

汚いけれど、無垢。

強いけれど、弱い。

甘いけれど、鋭利。

温かいけれど、冷酷。

近いけれど、遠い。

愛しいけれど、嫌い。

柔らかいけれど、痛い。



  タチヨミ版はここまでとなります。


夢喰ひ花仙子

2016年12月26日 発行 初版

著  者:楓仙子
発  行:狗尾堂

bb_B_00147958
bcck: http://bccks.jp/bcck/00147958/info
user: http://bccks.jp/user/123968
format:#002t

Powered by BCCKS

株式会社BCCKS
〒141-0021
東京都品川区上大崎 1-5-5 201
contact@bccks.jp
http://bccks.jp

楓仙子

10歳から書き溜めてきた詩作品やショートショートを、電子書籍化する為に活動中。現在は、ゲーム関連の執筆業を営んでおります。

jacket