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栄枯盛衰、生者必滅。バレンタイン・チョコ陰謀時代もついに過ぎ去ろうとしている、とある年の2月14日。おばあさんは一人。デパートの地下に降りるとデンマーク王室御用達のチョコレートをひと箱、買うとモノレールに乗って、※※※※墓地へと向かった。
「はい、おじいさん、チョコをどうぞ。義理ですけど」
クラスメイトのB君から本をもらった。
「お手軽チョコレシピ集」という本だった。
私はチョコケーキを焼いた。
ケーキを箱に入れ、
可愛いラッピングもして。
A君に贈った。
グッジョブ、B君。
ありがとう。
もし間違ってチョコをもらったら。
部屋の真ん中に置いて、
ぼくは踊るだろう。
ホー、ホー、と叫びつつ。
また微笑んでくれた春の女神に
感謝するだろう。
そのあとは恭しく神棚にあげ
一年間、保存する。
我に新しき春を告げる板チョコを。
プリーズ。
チョコと一緒にミニバラもらった。
窓枠の所に置かれた花は可憐だ。
彼女は言った。
「枯らしたら、承知しないからね」
切り花の方が良かったかも。
ちょー鈍感な彼をコーヒーショップに誘い、
二人分のホットチョコを注文した。
エヘへと笑ったら、彼も微笑んだ。
なに、このバカっぷる……
という視線を感じるのは気のせいだ。
なんにしても私は気にしない。
夕暮れ。
空に高くのびてゆく飛行機雲を見た。
南の青空を背に銀色に輝く翼。
でももうぼくは憧れない。
異国の街も海も星も。
となりには春めいた君がいて。
握りしめた手があるからね。
……チョコレイトありがとう。
朝のコーヒー屋で。
ホイップののったホットチョコを飲む二人を見た。
二人の体は有意に近い。
ふと視線があって微笑む、二人。
ぼくは新聞に目を落とす。
殺伐とした世界が広がっている。
うれしいね。
ぼくはブラック党だよ。

勇気を出して私がチョコ贈った時のことだ。
いきなり彼はしゃがみこんだ。
うずくまった彼は身を硬くした小動物のよう。
「大丈夫?」と声をかけたら、
そのままゴロゴロと転がっていった。
凄いショック。
三日ほど寝込んでしまった。
彼は言った。
「ねえ。ぼくらは恋人。
だろ?ならマイ・バレンタイン。
秘密の名で呼びあっても良いと思うのだ。
キティーちゃんとか。
雪兎ちゃんとか。苺ちゃんとか」
彼女は考えた。
考えて答えた。
「では。2月の最終魔王って呼んで」
「だから男から贈っても別にいいのよ、
だってバレンタインなんだから。
君も男なら自ら道を拓きたまえ」
と言われたのだった。姉に。
そうかもしれない、とも思い
ぼくはクラスの女の子に贈った。
チョコを。結果は微妙。
人気者にはなったけど、
ぼくはかなり落ち込んだ。
姉の大笑いがムカつく。
彼女からチョコをもらった。
こちらから先手をうって商品券を渡し
「これでお願いします!」って頼んだのだ。
彼女は約束を守った。
「はい、八百チョコ」と手渡された。
八百長チョコで八百チョコか。
こいつはうまいや!
といつつ食べた。
ドアを開けると彼女が立っていた。
褐色メイクをきめ、
フラの衣装でウクレレを手にしている。
ニッコリ笑うと彼女は歌いだした。
「♪わたしはねー、チョコレイトー、
甘くておいしいーのー♪」
ぼくはがっくり膝をつき、うなだれた。
なんか負けた気がする。
彼女はシャイな子だ。
好きな子がいても
約18.5mの遠くから眺めるだけ。
私は親友として彼女を応援してあげる事にした。
手をひっぱりチョコも買ってきた。
後は手渡すだけだ。
無理矢理、背中を押した。
そうしたら。
シャイな彼女は彼めがけ
チョコを投げた。
直球だ。
18.5m向こうで彼が倒れた。
チョコを買いに行った日。
片方の手袋を落とした。
落としたのは右で、
ポケットに残ったのは左だった。
数日後、左の手袋も消えた。
きっと、自らの半身を求め
旅に出たのだろう。
吹雪の中で倒れた。
もう駄目だと思ったが。
暖炉の前で目を覚ました。
老婆がいて鍋をかき回していた。
僕が目覚めた事に気づくと。
その液体をコップに入れて持ってきた。
ホットチョコだった。
老婆は僕に手渡す前にカレンダーを見て、
ちょっと考え言った。
「深い意味はないぞ」
……分かってます!
ともかく。
この惑星で恋愛を成立させたいなら。
三つの性を揃えなきゃだ。
胸のふくらんだ二本脚と、
脚の間がふくらんだ二本脚と、
背中に翼のはえた
空にぷかぷか浮かんでいるヤツ。
この本は2011年。2月12日から13日にかけて集中的に編まれた。元になったテキストは主にツイッターでつぶやかれたもので。まとめたのは2度目である。表紙と挿絵は、あるえ(aruerula)様の手による。ありがとう!
2016年、1月20日。
かなりひこくま
2017年1月20日 発行 初版
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