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目が覚めたケムポは人のいない星を歩き始めました。
虫や魚や動物はいるけれど心を通わすことはなく、季節が巡れば消え去ってしまいます。
幾度もの冬を越えたある日空から誰かが訪ねてきました。それは綺麗なサンタの娘でした。
熊のぬいぐるみペッコリを女の子に返すために旅立ったケムポは、
野菜型の宇宙船で大きな羊のいる星に不時着します。強い風が吹きすさぶ星です。
そこで出会った羊から託されたヒマワリをウサギに渡すためケムポは歩き始めました。
ユキダルマ達が暮らす星で一人太陽を見上げ手をふるユキダルマがいました。
村の者達からは変わり者扱いされ村のはずれで暮らしていました。
ある日ゆらゆらと太陽が落ちてきて、ユキダルマは走ります。
次にペッコリとケムポが辿り着いたのは見渡す限り荒野の、けれども点々とお墓のある、
おそらくかつて栄えていたであろう静かな静かな星でした。
幻のような夢のような、しかし居心地の良い物とは少し違う景色が浮かんできました。
ある星の空に浮かぶ島には翼を持つ人々がいて樹になる実を採って暮らしていました。
ところがある日、巨大なロボットが翼を持つ者達の目の前に現れました。
翼を持つ者達を魚の口に押し込んだ二人のロボットは、
背中に映るカウントダウンが終わるまで島を散歩しました。
やがてその寿命の数字がゼロになる時、大きな爆発を起こして島を消し去りました。
飛べない少年とケムポは爆発と共に落ちてきた木の上で大きな果実をほおばりました。
そして少年は凶暴な羊へと姿を変え島の爆破を企てたであろう魚に乗った者に挑みます。
ある時代、どこかの星に小さな木が育ちました。
そこになる果実を食べると天使は空を飛びウサギは賢くなりました。
そしてもっと食べると天使は怪物のような羊になりウサギは沢山の発明をしました。
果実には特別な力があるようです。やがてそれぞれの種族は実を奪い合い争いました。
翼を持つウサギ少年が目を覚ますとそこは誰も生きていない荒野でした。
あの木は天使たちが宇宙へ運び去ってしまい、少年をかばって母は死んだようです。
果実を巡る争いは終わり誰もいなくなった静かな静かな星を飛び回る少年は、
一人でみんなの墓を作り、そしてかろうじて生きていたロボットを見つけました。
木を運び去った天使たちは隣の星で暮らし始めました。
一方、翼を持つウサギ少年は生き残ったロボットたちを修理して、
ほかに誰もいない荒廃した世界を穏やかに暮らしました。
果実を巡る争いのない日々をともに暮らしました。
羊になった天使と翼を持つ少年との戦いを遠くに見上げていたケムポは、
サンタのおじさんに見つかりあの娘のところへ連れられて行きました。
その一方、魚の口から脱出した天使たちと、果実を探すサンタ達との争いが
また始まってしまいました。
争いの種をなくすためにきたはずのウサギ少年はもう、くたくたになっていました。
賢いウサギにも空飛ぶ羊にもつよいロボットにもなれなかった少年は
生まれた時から仕組まれていた秒読みの中、最後の力をふりしぼって立ち上がりました。


















ペッコリとケムポ
作 スギモトダイキ
ARTIST DATA BASE連載作品
全十二話 終わり
あとがき
最後まで読んでいただきありがとうございました。
コトバのない実験的な作品を12話にわたり連載させていただいたことを感謝しています。
ひとりぼっちだった宇宙人が忘れ物を女の子に届けるための旅を描きました。
そして賢いウサギにも空飛ぶ羊にも強いロボットにもなれない少年の、どこにも属せない中で選んだ人生を描きました。それぞれが掲げる正義のもとにも誰も正しくはなく愚かで、気が付けば奪い合ってそこに巻き込まれてしまう者がいて、分からないことを分からないまま物語にしてしまったけれど、大人の作った様々な線引きを関係なしに温かい瞬間はいくつか在った、ただそれだけの物語だったかもしれません。友達が大事にしていたくまのぬいぐるみを返しに来ることができてよかった、そういうことがまたいくつかあるといいなあ。そう思いながら苦くて甘いコーヒーをのんでいる近頃です。それではまたどこかで会いましょう。新しい何かを作ります。
スギモトダイキ
2017年2月1日 発行 初版
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