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ホイさんの、ふしぎにおいしいパオズのおみせ
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この本はタチヨミ版です。
昔、大陸のある国にひとりの皇帝がいた。
若く見目良く文武に長けた彼はまた希代の美食家でもあり、その食卓は東西の珍味や甘味、旨いものの皿で並び立てられた。
ことに気に入っているのは肉包子という料理だ。
獣の肉を細かく刻んで脂と野菜を合わせ、麦を挽き潰した粉を練った薄皮で包み蒸したそれは、なければ夜も日も明けぬ好物だった。
しかし彼にはひとつだけ、どうしても我慢がならないことがあった。
肉包子は用心して食べないと、口に運ぶ前に皮が破れて美味しい肉汁がこぼれ出てしまうのである。
皇帝は宮廷の料理人を集めて申し渡した。
「皮が破れない肉包子を作った者には褒美に黄金百斤を取らす。但し、余が皿から口に運ぶまでに破れてしまった場合には首をはねる」
料理人達は色めき立った。黄金百斤と言えば、自分たちの給金の十年分に値する。
結婚したての皿洗いの若者ホイは、とてもこの百斤が欲しかった。金百斤あれば、新妻のために新しい着物が買える。年老いた親に居心地の良い家だって買ってやれるのだ。
「師兄がた、どうしたら破れぬ皮が作れるのでしょうね?」
先輩の料理人達は鼻で嗤った。
「皿洗いふぜいが何を言う。おまえはさっさと市場へ行って芋と豆を仕入れてくるんだ」
「裏庭にある青菜の束を昼までに全部洗っておけ」
ホイは兄弟子達の言いつけにならい、十里の道を重い荷物を担いで行き戻り、手の切れるような冷たい水で青菜の山を洗った。
かたや料理人達は、働くホイを差し置いて我こそは肉包子の破れない皮をと考えていた。
タチヨミ版はここまでとなります。
2017年2月5日 発行 初版
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