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読売新聞社が主催する「全国小・中学校作文コンクール」は、皆様のご支援により、66回の歴史を重ねることができました。
本コンクールは、戦後の復興途上にあった１９５１年（昭和26年）、子どもたちの考え方やものの見方、感じたことを文章で表現してもらうことを目的に創設されました。テーマや枚数に制限を設けず、自由に書いてもらうことを特徴に、今回も国内外から３万１８４１編の応募がありました。これほど多くの作品をお寄せいただいたことに感謝申し上げます。
各都道府県と海外部門に分けての審査、さらに２度にわたる中央審査を経て、文部科学大臣賞をはじめ各部門の優秀作品を決定いたしました。この作品集に収められたどの作品からも、作者のひたむきな思いが伝わってきます。今年の作品は、身近な出来事から、オバマ米大統領の広島訪問や熊本地震などニュースで大きく取り上げられた題材まで、幅広いテーマから数多くの作品が寄せられました。
自分の体験や思いを、自分だけの言葉で書き残しておくことは、小、中学生の皆さんにとって、きっと「宝物」になることでしょう。本コンクールの応募者が、今後も、書きたいという気持ち、伝えたいという気持ちを持ち続け、新たなテーマに挑戦していくことを願っています。読売新聞社は、紙面と紙書籍版、電子書籍版での作品集で、多くの方に受賞者の力作を読んでいただきたいと考えております。
最後になりましたが、数多くの作品を慎重に審議していただいた審査委員の先生方、ご支援いただいた文部科学省と各都道府県教育委員会、ご協賛いただいた東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社、イーブックイニシアティブジャパン、ご協力いただいた三菱鉛筆の各位に厚く御礼申し上げます。
２０１７年３月
読売新聞社
世界一のゆめにむかって 青森県・八戸市立旭ヶ丘小学校三年 笹谷 野亜 14
大すきなつりのこと 岩手県・住田町立有住小学校三年 篠原 東吾 20
カブトムシの森 宮城県・宮城教育大学附属小学校二年 辻 龍之介 22
国語じてんをとび出して 秋田県・秋田大学教育文化学部附属小学校三年 山本 千陽 26
きょうちゃんが教えてくれたこと 山形県・山形大学附属小学校三年 鈴木 礼雅 30
じいちゃんの家のホタル 福島県・福島市立杉妻小学校三年 池田 志楠 32
言葉を残す、ということ 北海道・札幌市立山鼻小学校五年 棟朝 遥香 38
再スタート 青森県・青森市立千刈小学校六年 小倉 匡敬 46
幸せの種 岩手県・宮古市立崎山小学校五年 前川 郁 56
本当の事 宮城県・仙台市立向陽台小学校六年 柏崎 日向子 74
戦う音楽、闘う音色 秋田県・秋田大学教育文化学部附属小学校六年 山本 千尋 82
大きな壁をのりこえて 山形県・酒田市立黒森小学校六年 佐藤 歩岳 92
未来の子供たちのために私が願うこと 福島県・福島市立福島第三小学校五年 遠藤 萌花 96
石川おじいちゃん 北海道・札幌市立中央中学校三年 岩澤 義悦 102
かけがえのない家族 青森県・青森市立筒井中学校三年 山口 紅葉 106
役割と責任 岩手県・西和賀町立湯田中学校三年 髙橋 雪乃 112
石碑が物語ってくれたこと 宮城県・宮城県仙台二華中学校二年 井崎 英乃 116
祖母の涙 秋田県・秋田大学教育文化学部附属中学校一年 深井 聡輔 122
新しい家族と 山形県・尾花沢市立玉野中学校三年 髙橋 孔哉 132
道の途中 福島県・福島市立蓬萊中学校三年 多熊 結花 136
第66回全国小・中学校作文コンクール 地方審査入選者名 180
第66回全国小・中学校作文コンクール 地方審査委員名 192
※掲載作品は、原文を尊重しながら読売新聞の表記に従って字句など若干の手直しをしています。
梯 久美子（ノンフィクション作家）
石崎 洋司（児童文学作家）
新藤 久典（国立音楽大学教授）
堀 敏子（元東京都荒川区立第三瑞光小学校副校長）
田中 成（元東京都杉並区立西宮中学校長）
中原 國明（元東京学芸大学国語教育学会長）
小学校低学年 ４，８６０点
小学校高学年 ７，５６６点
中学校 １９，４１５点
合計 ３１，８４１点
主催：読売新聞社
後援：文部科学省、各都道府県教育委員会
協賛：ＪＲ東日本、ＪＲ東海、ＪＲ西日本、イーブックイニシアティブジャパン
協力：三菱鉛筆
青森県・八戸市立旭ヶ丘小学校 三年
「けがをしないで帰っておいでよ。」
と、母はぼくの目をじいっと見つめて言った。
「うん、気をつけて行ってくるよ。」
と言って、ぼくと母はこぶしをにぎってグータッチした。
ぼくは、四才のときからモトクロスを始めている。二才のとき、モトクロスをしていた父のヘルメットをおもしろがって毎日のようにかぶっていたと、母から聞いた。家の中でバギーにのって遊んでいたそうだ。そういえばそうだったような………。けれど、ぼくの記おくにはない。四りん車のバギーと電動バイクにのっていた写真はアルバムに入っている。
三才半のときには、二りん車にのれるようになってきた。何回もころんでかすりきずだらけだった。ふらふらしながら、ようやくころばないでのれるようになった。どんどん車りんが大きい自てん車にものれるようになっていった。小学校一年生のときには、ママチャリにものれるようになった。
四才半でレースデビュー。初めてのレースは、一回も走ったことがないコースだった。大雨になったから練習していたコースとはちがうコースにかわったのだ。大雨だから、二人だけの出場だった。ころんだら、二位になってビリになってしまう。そうなったら、かてないなあと弱気になった。思ったとおり、スタート直後にタイヤをすべらせ、てんとうした。スタートしてから五メートルもはなれていない、ゆるいカーブから直線になった地点でころんでしまった。水たまりのどろにはまって、てんとうしてしまった。スタートでおうえんしてくれているかんきゃくに丸見えだ。一位の人には、もう追いつくことができない。はずかしくて大泣きした。おき上がる気もしない。父が走って近づいて来た。
「はやく、おきてのれ。あきらめないでのれ。」
と言われたが、ぼくはもうむりだと思った。小さいときに、あれほど電動バイクにのるのが好きだったのに、何かがちがう。あんなに楽しいと思ったのに、こんなことになるなんて………。仕方なく、ぼくはおきた。ずでんところんで、
「もう、むり。」
と、さけんだ。やめようとした。ぼくを追いこすときにバイク仲間のヒゲン君が、
「いっしょに、のろう。」
と言ってくれたけれど、やる気はしなかった。のれる気がしなかった。
「もう、あきらめるのなら、バイクを他の人に売るよ。」
と、いつもならあまりおこらない父が、こわい声で言った。ぼくは、あわてた。母も父と同じことを言った。それでも、ぼくはバイクにのれなかった。
リタイヤしたのに、両手にかかえきれないほどの景品の食べ物やモトクロスのジャージをもらった。父は、
「いいです、いいですから。もらったらもうしわけありませんから。一位をとった子にあげてください。」
と言ったが、もらうことになった。ぼくは、姉といっしょに景品を車につんだ。ゴールできなかったくやしさよりも、景品をもらえたことの方がうれしかった。そんなぼくに、父は言った。
「モトクロスをつづけるのか。それとも、やめるのか。やめるのならバイクを売るよ。」
にこりともしない。
「やめたいのなら、やめてもいいのよ。自分がどうしたいのか考えてごらん。」
と、母が言った。ぼくは、しばらく考えた。決めた。
「こんどからはさい後まで走るから………。だから、バイクを売らないで。」
と、反省しながらおねがいした。
あれから四年。ぼくはモトクロスの練習に熱中した。五、六才のときは、青森県の大会ではいつもゆうしょうできるようになった。二年になったゴールデンウィークに行われた、岩手県ふじさわ市の東北大会でゆうしょうした。
ぼくは今、三年生になった。泣きむし初レースのぼくとはちがう。土、日曜日には三沢市や五戸町のコースで練習している。かつためにはスピードやラインが決め手になる。とくにコーナーを回るときに、こつがいる。バイクをねかせると、自分が通りたいラインに入れる。インはスピードがダウンする。アウトはアクセル全開で行ける。相手とちがうラインを走る。前の人がアウトのとき、こすためにはインを走る。同じアウトを走ると、たて一れつになって追いこせない。ときには、アウトに行くと思わせておいてインにむりくり入って行く。うまく追いこすことができる。
そしてジャンプもこつがいる。ジャンプをする直前に土がもり上がっている所と、土がもり下がっている所を自分ではんだんする。一周目はバイクをならしながらコースを見る。二周目からはアクセル全開で走る。プロのライダーは高いジャンプをとび、ウィップというバイクをななめにしてひねるわざを使う。ぼくは練習中だ。ＳＵＧＯのコース場で練習していたときに、フィニッシュした後ウィップをしてみた。そしたら、はでにころんだ。バイクごとななめになりながら落ちた。むずかしいジャンプがつづくルンバルンバはうまくいったのに、楽なジャンプでころぶなんて…。
「フィニッシュでころぶなんて、お前おわったな。」
と、父は少しわらいながら言った。
「うん、おわったよ。」
と、ぼくは苦わらいしながら言った。
弘前市の岩木山のふもとで練習していたとき、そうぞうしていなかったことがおきた。六つのジャンプを二こ、二こ、二こ、とんでいた。そのときだった。四こ目をとぼうとしたけれど、かそくが足りなくてとび切れなかった。リアタイヤがひっかかって、次のジャンプ前のへこみで強く頭をたたきつけられた。そこからの記おくはない。ヘルメットをかぶっていたのに、頭がぎんぎんする。母が手当てをしてくれた。
「大じょうぶ、どこがいたいの。」
と、ぼくの目を見てたずねた。タオルをぬらして頭をひやしてくれた。でも頭がじんじんするのが止まらない。けれど、いたいことよりも母がずっと見ていてくれたことが、何よりもうれしかった。練習に行くときに見送ってくれる母。大会で、全力でおうえんしてくれる母。どんなときの母も好きだが、頭をなでてくれる母がとても好きだ。心ぞうのばくばくがおさまってくるからだ。そんなことを思っているうちに、頭がすうっとしてきた。
「明日学校がおわったら、びょういんに行こうね。」
母が言った。
次の日、体育館で遊べる日なのに教室でしずかにしていた。帰った後、びょういんでのうのレントゲンをとった。
「モトクロスをやっているんだって。大じょうぶだよ。がんばってね。」
「ふうっ、よかったね。」
びょういんの先生が言ったのを聞いて、母と父はぼくに言った。
その一週間後、父との練習さい開。ひさしぶりでもアクセル全開。
「そこのジャンプは、インがわからとべ。」
大人でもむずかしいのに、ぼくにチャレンジさせようとする父。きっとかつためにぼくに気合いを入れてくれるのだ。きっとモトクロスの楽しさを教えたいのだ。父の思いは、ぼくにはわかる。モトクロスで世界一位になることが、ぼくと家族のゆめ。アメリカのジェームススチュアートのように、世界で活やくできるライダーになりたい。コーナーをアクセル全開で走れるように目指したい。
ぼくがモトクロスにのれるのは、父のおかげだ。母のサポートのおかげだ。
ぼくのモトクロスをしている写真が、父のけいたいのまちうけ画面になっている。
（指導：下栃棚悦子教諭）
岩手県・住田町立有住小学校 三年
お父さんと、お兄ちゃんと川でつりをしました。今回は、夕方に行ってみました。お父さんから、夕方つりに行く理由を聞きました。夕方になると川に、虫がたくさん出てきます。そうするとヤマメのエサは虫なのでヤマメが出やすくなるそうです。ぼくは、その事を知ってなるほどと思いました。
三人で川原におりました。川原は自分のせぐらいの草が生えていて、つり場に行くのが大へんでした。
しかけは前と同じで毛ばりです。川を見ると、虫がいっぱいいて、ヤマメがあっちこっちではねていました。しかけをなげてみました。ぼくのなげた毛ばりに、ヤマメがジャンプして上からくらいつくのを見ました。ぼくはびっくりしました。小さいヤマメでした。つり上げたら、お父さんが、
「まだ小さいから川へ返そう。」
と言いました。ぼくは、「せっかくつったのに。」と思いました。
あたりがどんどんくらくなってくると、ヤマメのジャンプがはげしくなってきました。なげるたびにつりざおがブルブルとはんのうしました。そのうちドシン！と大きなはんのうがありました。さおの先が大きくしなりました。ぼくは、「来た！」と思って本気でリールをまきました。リールをまくかんしょくは、おもたくて、「これは大ものだ。」と思いました。つり上げてみると二十センチメートルいじょうもあるヤマメでした。こんな大ものをつったことがなかったので、自分でもビックリして、はじめてつった時とはちがううれしさでした。
その後も、しかけをなげるたびにヒットしました。お兄ちゃんも負けずに大ものをつっていました。家にもって帰ったのは九ひきでした。
「夏休みにみんなでバーベキューの時に食べよう。」
と言いました。バーベキューの時が楽しみです。
ぼくは、つりをする時には、つる魚のひみつを調べたらいいと思います。お父さんが「夕方つりに行くぞ。」という意味がよくわかりました。これからは、川のほかの魚や海の魚をつる時には、その魚のひみつをよく調べてからつりに行きたいと思います。ぼくはつりが上手になりたいし、つりのことがもっとすきになりました。
（指導：髙橋順子教諭）
2017年3月 発行 初版
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