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私より先に
カレンダーをめくる
見えない透明な
手がある
私より先に
冬の陽射しに
黄色い指紋をつけていく
ものがいる
私より先に
穴ぐらに潜り込んで
冬眠しようとしている
奴がいる
誰だ
最後に
鉄塔が眠りについた
ラジオ体操のメロディーが
高圧線からかすかに漏れていた
まっさかさまに夜は来
すべての音と光を明け渡して
鳥は石になり
山はあきらめた
チェーンソーに貼り付いた木屑が
霧となって土を満たした
風が
家々の表札をひきはがしていった
名前のない暴君を
誰一人として見なかった
あるいは、それが
私たちが望んだこととして
朝になれば
はき忘れた靴のように
村は
一度だけ匂いの拳をあげるのだ
テレビの向こうに他人を見る
本に書いてある通りに行動する
インターネットの言葉をそのまま信用し
隣に座る異性にさえ
流行歌のような
上澄みの言葉を投げて
私たちは いつも
本当の私たちから
置いてきぼりをくらったようだ
乳母車を押す
母親の愚痴を誰が聞くのか
公園をしめだされた
ホームレスの老人を誰が思うのか
金のない若者の
古本に引いたアンダーラインを
誰が読むのか
そんなところに
隠れていた「本当」の欠片を見つけて
けれど
見つけたことに畏れさえする
わたしたちの
かなしみ
さびしくないか
自分に不似合いな場所で
生きることが
けれど 似合いの場所など
どこにもないことが
いたたまれなくないか
帰りたくないか
恥ずかしくないか
この世がこの世でしかないこと
見ているものが
見ているものでしかないことが
口惜しくないか
道がどこまでも
たとえばエベレストの頂までも
続いていることが
いまいましくないか
いつまでも子どものように
他人にじゃれついて生きていくつもりか
おそろしくないか
情けなくないか
器からは大きな水のかたまりが
あふれ続ける
ぼくらは それを
夕焼けをかかえて
見つめ続けるしかできないのだ
さびしくないか
象が海をブン投げてきた
棒が歩いている
原爆忌目も鼻も口もない花が降る
ホームレスの脇をキャミソール
手のひらを上に 違う空から落ちてくるもの
二十かぞえたら木が鬼を放つ
やがて静脈にも雪の夜
なんにもない 花ためすひとのうしろがわ
アダムとイブ七十億の落下傘
走れ波を刺す一直線の殺意
鯨の背消えて口ずさむ孤島
望まぬ朝のいつものザラザラ
返せ、返せ、返せ、立ち上がる浪の腕が
夕焼けの国の車輪がまわる
叱られてその天使空のまんなかで芋を植える
悲鳴 月あかり 夜蝉の解体
廃村にすっぱだかの鳥が飛ぶ
貝歩くことごとく他人の海
鉄塔が叫ぶラジオ体操第一用意!
あきらめろ冬は真顔で腕をとるぞ
雪まんまんけだものの佇つ版画展
飛ぶ夢を見たかたとえば今倒れゆく醤油さし
(がけ下に突き落としてみたい)誰の声?
忘れられた頃に発行する「午前」の第5号。
今回は俳句も載せました。
最近思うのです。
知らないこと、間違った知識やイメージで捉えていたことに気づくのが、
年を取れば取るほど、多くなっていくような。。。。
無知を恥じる気持ちは忘れたくないですね。
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2017年3月22日 発行 初版
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