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この本はタチヨミ版です。
一章 通夜と葬儀で起こったホロリとする話
葬儀社員も泣けた別れの儀式
笑顔を残して逝った無名老人
感涙した極道弟と亡兄の仲間たち
大親友の通夜で目覚めた葬儀屋魂
愛娘の出棺拒む惑乱社長
父と娘が一緒の野辺の送り
父が来るまで死ねない!
放蕩親父を変えた妻の死
父を手厚く迎えた喪家の人達
遺産目当ての遠い縁者と資産家未亡人
本妻に分骨認めさせた陰の女の執念
涙で濡れた葬儀屋さんの肉親の葬儀
二章 通夜と葬儀に関するおかしな話
読経中の和尚の可愛いイビキ
姉の代わりに死にそこねた祖母
告別式に病院送りとなった霊柩車夫人
実母の死に化粧と叔母の狼狽
斎場での悲鳴と滑稽
調理場から眺める葬式風景
酔いどれ住職の失敗譚
遺骨が喪主に飛びついた
三章 葬儀社とお坊さんとの上手なつきあい方
葬儀業界と葬式仏教
各宗派別葬儀と世界各国の葬式スタイル
葬儀社とお坊さんとの上手なつき合いかた
遺言とは何か
遺言がなくて大トラブル
遺言の書き方、弁護士費用
あとがき
墓とお葬式の現実、現代二兆円市場の光と影 いまどき現代葬儀事情
一、葬儀の適正料金
葬儀の適正料金
葬儀ビジネスは巨大市場
最も多い苦情は料金トラブル
業界が作った料金見本の三点セット
結婚式場のような火葬場
二、あるお坊さんの独白
「院号」つけて三〇〇万
葬儀屋さんは演出家
目次
一章 通夜と葬儀で起こったホロリとする話
葬儀社員も泣けた別れの儀式
笑顔を残して逝った無名老人
感涙した極道弟と亡兄の仲間たち
大親友の通夜で目覚めた葬儀屋魂
愛娘の出棺拒む惑乱社長
父と娘が一緒の野辺の送り
父が来るまで死ねない!
放蕩親父を変えた妻の死
父を手厚く迎えた喪家の人達
遺産目当ての遠い縁者と資産家未亡人
本妻に分骨認めさせた陰の女の執念
涙で濡れた葬儀屋さんの肉親の葬儀
二章 通夜と葬儀に関するおかしな話
読経中の和尚の可愛いイビキ
姉の代わりに死にそこねた祖母
告別式に病院送りとなった霊柩車夫人
実母の死に化粧と叔母の狼狽
斎場での悲鳴と滑稽
調理場から眺める葬式風景
酔いどれ住職の失敗譚
遺骨が喪主に飛びついた
三章 葬儀社とお坊さんとの上手なつきあい方
葬儀業界と葬式仏教
各宗派別葬儀と世界各国の葬式スタイル
葬儀社とお坊さんとの上手なつき合いかた
四章 遺言状の書き方
遺言とは何か
遺言がなくて大トラブル
遺言の書き方、弁護士費用
あとがき
墓とお葬式の現実、現代二兆円市場の光と影 いまどき現代葬儀事情
一、葬儀の適正料金
葬儀ビジネスは巨大市場
最も多い苦情は料金トラブル
業界が作った料金見本の三点セット
結婚式場のような火葬場
二、あるお坊さんの独白
「院号」つけて三〇〇万
檀家もずるい
葬儀屋さんは演出家
言いなりでなくていい「戒名料」
○葬儀社役員 四六歳
二〇年近く葬儀社にいて、これまでさまざまな葬儀をやらせてもらってきました。
同じ人の死でも、天寿をまっとうしたいわゆる大往生の場合と、不慮の事故による突然死の場合とではお葬式の様相がガラリと異なります。後者の事故死で、とくにご遺体の破損状況がひどい場合は、ご遺族の悲しみや取り乱しぶりも強烈なものがあります。
私どもはいわば陰の演出者ですから、できるだけ前面に出ないようにしておりますが、それでも一定の時間の中で式を進めなければならない立場ですので、場合によっては憎まれ役を引き受けなければなりません。
私ども葬儀社に対してとかく世間の批判があることは存じあげておりますし、ビジネスライクに過ぎるとのご指摘など、耳の痛い点も多々ございますけれど、私の個人的な感想で言わせてもらうなら、お葬式というのは、死者とのお別れの儀式でもあります。
最愛の人を、それも予期せざる不幸な事故によって失ったご遺族の悲しみや無念さはことばにしえない重みを持ちますが、しかし、死は現実となったのです。それも認めたくない心情は察しますが、どこかでいつか「区切り」をつけなければなりません。
その区切りのつけかたのスタイルこそ大きな問題となるところであり、今後の葬祭ビジネスとからんで、そのありかたが本質的に問われている時代に入っていると思います。
なんにしても旅立つ死者と生者に、ひと区切りをつける儀式は必要かと思われます。
作家の故吉行淳之介さんが、エッセイでよく某女流詩人の作品を引用していました。正確ではありませんが、
「死んだやつは放っておけ 俺はこれから朝メシだ」
といったような一節です。これは生の側にとどまることを選んだ人間の生きる強い姿勢と、死という重い悲しみを前にしてすら、人間は生理的な条件から自由ではないというヒトの現実的なありようをうたった一文だと思います。
乱暴な言いかたを許してもらうなら、
「気の毒だが、もう死んでしまった者のことはあきらめなさい」
という気持の始末をつけさせるための儀式を、私どもは手伝っていると思います。
ところで、いろいろ気の毒な死の場面に立ち会っている私ですが、何度やってもたまらない気持にさせられる葬儀があります。
それは、脳や身体に重い障害を持ったお子さんをお持ちの、お母さんたちがつくっている障害者の会といったサークルが主宰する葬儀です。
重い障害を持ったお子さんの母親たちは濃密な連帯感で結ばれていて、とくに会員のお子さんが短命で亡くなったときの葬儀は、いたたまれないくらい、深い静かな悲嘆に会場が包まれます。
しかし、皆さん日ごろから言葉にできないほどの大変な苦労をしていますから、取り乱すような人は滅多におりません。
お子さんがご存命中に精一杯闘い、全力で寄り添ったというお気持があるからでしょうか。また自分より先に旅立ってくれたという複雑な心情もにじむのかもしれません。
弔辞や弔電を聞いていると、ぐっと込み上げてくるものがありますが、こちらもプロですから式の進行の具合を意識したりして、それほど動揺することは普通はありません。しかし、出棺の時に至って『ぞうさん』の唄が始まると、さすがの私ももういけません。
♪ぞうさん ぞうさん
鼻が長いのね
そうよ 母さんも なーがいのよお
「会」のお母さんたちが、喪主の家族を真ん中にしていっせいにその歌を合唱され、会場いっぱいにその童歌がメロディが響きわたると、それまでこらえていたぶん、私は感情の発露をどうにも抑えきれなくなるのです。「会」のお仲間のお母さんたちには、「明日はわが子」という、ご遺族のお母さまと一体となったおもいなのだと思います。
♪ぞうさん ぞうさん
お鼻が長いのね……
見ると、どのお母さんがたも顔をくしゃくしゃにして、化粧がはげたりアイシャドーが頬を汚したりして、ある種こっけいな顔つきになっているのです。
中には全身を震わせ、一心不乱にお経を唱えるのに似て童謡を夢中で歌うお母さんたちの姿もあり、異様な熱気の中でクライマックスを迎えるのです。あれは何度やっても慣れません。本当に逃げ出したくなるくらいずっしり重くて、こういう商売をしている者に対しての、試練のような気さえすることがあります。人間は私も含めていつか必ず死ぬものですが、さまざまな死があるのだということをつくづく教えられます。
タチヨミ版はここまでとなります。
2017年3月31日 発行 初版
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本名=高橋 豊。大学中退後、出版社での編集者時代を経て官能作家に。 数百人の人妻を取材した人妻作家、ラブホテル業界に通じたラブホテル作家、多彩な性風俗分野を知る風俗作家として知られる。 週刊大衆、増刊週刊大衆、パパラッチ(以上、双葉社刊)、週刊実話、増刊週刊実話、別冊週刊実話(以上、日本ジャーナル出版刊)、週刊漫画タイムズ、別冊週刊漫画タイムズ(以上、芳文社刊)、話のチャンネル(日本文芸社刊)等の雑誌系と、日刊ゲンダイ、夕刊フジ、デイリースポーツ、東京中日スポーツ、大阪スポーツ等の夕刊紙系で活躍。 著書に、ラブホテル業界の大物仕掛人たちをインタビュー取材した『ファッションホテル』『よろめき』『婚外SEXの絶頂』(以上、双葉社)、『秘欲望ファイル』(黒田出版興文社)、『女囚たちの淫罪白書』(コスミック出版)、構成に『ラブホテル一代記』(小山立雄著=イーストプレス)等。ポルノ好き女性読者のファンが多い。 元日本文芸家クラブ会員。