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編集者ライターへの道2017



米光講座シーズン8






















「先輩インタビュー」は、2017年6月24日、宣伝会議セミナールームで行われた。


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編集者ライターへの道2017

米光講座シーズン8

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この本の成り立ち

 講座名が長すぎる。「宣伝会議・編集・ライター養成講座 上級コース 米光クラス」。
 長いので専任講師の名をとって「米光講座」と呼ぶ。二〇一〇年からはじまり、二〇一七年の三月二十五日にシーズン8がスタートした。
 米光講座は「実際に作る」という方針がある。原稿をどんどん書く。いい原稿はどんどん発表する。本も作る。インタビュー方法の授業をやったら、次は、もう実際にやってみる。
 講座6回目、インタビューの実践。
 米光講座の卒業生で、現在プロとして活躍している6人をゲストに招いた。およそ3人ずつ6チームの受講生が、ゲストを60分間じっくりとインタビューした。
 編集者ライターとして第一歩を踏み出した若者を、その第一歩を踏みだそうとあがいている若者がインタビューした。後輩が先輩にインタビューしているという図式だ。
 インタビューはチームで行ったが原稿は各自それぞれが書いた。つまり同じインタビューから複数の原稿ができることになる。だから、この本には、同じ人の同じときのインタビューが複数個、並んでいる。
 ふつう、ひとつのインタビューから生み出される原稿はひとつだから、これは講座ならではの珍しいケース。原稿が、書き手によって大きく変わるということも楽しんでもらえるだろう。
 編集も、校閲も、受講生が一丸となって取り組んで、こうやって本になった。
「頭でわかっている」と「実際にできる」は違う。やった者だけが、次に進める。
 学びながら、追い立てられるようなスケジュールで作ったものなので、原稿を書いたみんなや編集長は、「もっとこうしたかった」「もっと書き直したい」と忸怩たる思いもあるだろう。インタビューに答えてくれたフレッシュな新人のみんなも「もっとうまく答えたかった」と思ってるだろう。
 だが、それでいい。それがいい。
 これはプロセスの中のひとつの区切りでしかない。区切りとして成果物を作ったことが「もっと」という気持ちを生み出すのだ。欠けたところもあるだろう、でも全力で、何かを形にした。それは、もっと手を伸ばすための、もっと自由でいるための、次のステップにつながっている。
 これは、そういう本だ。

                 米光講座シーズン8 専任講師 米光一成

目 次

この本の成り立ち 米光一成 2

青柳美帆子 インタビュー 5
佐々木鮎美 6
木下ゆりか 8
西川ちねま 10
濱安紹子 12

オグマナオト インタビュー 15
宮崎留実 16
すがたもえ子 18
加藤学宏 20

ミノシマタカコ インタビュー 23
神楽みやび 24

宮下由布 インタビュー 27
さくらいみか 28
ネッシーあやこ 30

コラム 村山悠 32

橋村望 インタビュー 33
寺島伶菜 34
北形兆 36
村山悠 38

コラム 北形兆 40

村中貴士 インタビュー 41
丸居久仁男 42
横山由希路 44
加賀谷玲奈 46

写真:佐々木鮎美

青柳 美帆子
Aoyagi Mihoko

フリーでもやっていけた
就職で見えたおもしろさ


1990年生まれ。早稲田大学文学部卒。米光講座シーズン3を受講中に「エキレビ!」でデビュー。フリーライターとして活動後、2016年アイティメディアに入社、編集記者に。

──この仕事を目指したきっかけは?
 昔から文字を書くことが好きでした。大学のサークル活動やフリー編集者の姉の仕事を手伝ってみて、意外と適性があるんじゃないかなって。編集者として仕事を得るきっかけになればと、米光講座に。フリーでもやっていけそうだったのですが、24歳のとき視野を広げたくてアイティメディアに就職しました。35歳、45歳と歳を重ねるごとにできることも増やしたいなって。24歳の人間が一度も就職せずに働いていると、常識がないんですよね。精神的にも不安定。メディアの作り方、教育の仕方があって。媒体や組織の特権ですよね。フリーだったら放置されるけど。
 ビジネス系のニュースを担当していますが、媒体で書けないことは自分のブログで書けばいい。漫画のレビューを「ねとらぼ」にタダで寄稿したりしてます。フリーも楽しかったし、今編集記者として働かせてもらうことも楽しいですよ。

──米光講座を受講してよかったことは?
 米光さん、「エキレビ!」編集長のアライさんに会えたこと。米光さんに教えてもらって、アライさんに知り合って原稿を見て育ててもらったので。ここに来てなければ、こんなに書いていないかな。
 技術的なことでは、ブロークンな文体を学べたこと。米光さんは、ウェブの世界でもわりとブロークンな文体だと思います。そこから入れたことがすごくよかった。アライさんも、型にはまったものが好きじゃない編集者。典型的な原稿って、いつでもできるんです。「20年これでやってました」という人が、米光さんのような最初にドンとくるものは絶対に書けない。ライターをはじめる前に選択肢を知っていたことは大きいです。

──プロを目指す上で大切なことは?
 好奇心があること。自分の専門分野はもちろん、流行、ネットや世の中の流れに対するインプット量が多くないと話にならないと思います。
「世の中には、原稿がおもしろい人間とつまらない人間の2種類しかいない」。上司から教わった言葉です。結局おもしろい人が書く原稿がおもしろい。「おもしろい人間になる努力をして、おもしろい原稿を書いて」と。生まれつきおもしろい人間がいるわけではなくて、その人がインプットして、やってきたことがおもしろい。原稿って、ネタが大事ですから。技術だけじゃない。おもしろいことを仕入れていくモチベーションが必要です。

アイティメディアの「ねとらぼ」でも執筆。『名探偵コナン』のマニアに劇場版全21作について熱く語ってもらった記事はSNS総シェア数1500近くに上る。

                             聞き手・佐々木鮎美

「私、おもしろいですかね?」って、編集長に聞けなくて

1990年生まれ。大学在学中に「エキレビ!」でライターデビュー。2016年にアイティメディアに就職し、現在は編集記者として活躍中。

──ライターを目指したきっかけは?
 文字を書くのが好きで、小学生のころから小説を書いたりしていました。仕事として意識しはじめたのは、大学のワセダミステリクラブのころです。作家や書評家の先輩たちを見て、自分にもできるのではないかと思っていました。そんななか、フリーの編集をやっている姉の手伝いで、文字起こしや編集の仕事を経験。人に話を聞いて記事にしたり、レビューを書いたりするライターに適性を感じ、今の道へと進みました。

──米光講座で得られたものは?
 米光さんならではのブロークンな文体の書き方を学べたことです。特にウェブ媒体はテンプレートが用意されていて、当てはめれば誰でも書けてしまうものも多い。本格的にライターをはじめる前に、型にはまらない文体の書き方を学べたのは大きかったですね。

──おもしろい原稿を書くために、必要な資質、実践していることは?

 今の上司に言われたことなのですが、大前提として、おもしろい人間でなきゃいけない。おもしろいネタの見方、仕入れ方ができる人の原稿は、おもしろいんです。そのためには、多くのインプットをする努力が必要です。技術だけでは、原稿は書けないですからね。
 それから、原稿を書く前に、取材してきたネタのなにがおもしろかったのかを編集者と共有します。自分でも整理ができるし、できあがった原稿がつまらなかったときに、「青柳、あんなにおもしろいって言ってた話が入ってないじゃん」となり、原稿が修正しやすくなります。

──今後の展望は?
 アイティメディアに就職したのは、やれることの幅、視野を広げるためです。フリーライターとの違いは、自分の書く記事が媒体の方向性やブランドカラーの一端を担っていること。媒体がどのようにつくられているかを見られるのは、おもしろいですね。
 目標としては、同じビジネス系の業界に転職できるくらいの力を身につけられるようにがんばりたいです。将来的には、広報やコンテンツの宣伝プロデューサーのような仕事をしてみたいです。どんな仕事においても伝えることはとても重要視されていて、そのとき必要なのが言葉の力。書くことができれば、いろいろな仕事の可能性が広がると思います。

毎日3~4本執筆している「ITmedia ビジネスオンライン」。入社した2016年には『新人記者が行く』を連載。

                             聞き手・木下ゆりか

さまざまな出会いと
100本ノック
講座が生きて、今がある

2012年、受講中に「エキレビ!」デビュー。フリーライターを4年経験後、編集記者へ転身。現在アイティメディアでビジネス系の記事を担当。1日3~4本の原稿をこなす。

──受講したきっかけを教えてください。
 大学のころ、フリー編集者の姉の手伝いをしていました。次第に適性があるんじゃないかと思うようになったんです。所属していたサークルはワセダミステリクラブ。でも、ミステリー作家志望ではありませんでした。アニメや漫画のレビュー、ジェンダー系の記事を書きたい。自分から仕事を得るチャンスの場を探していました。もともとファンだった米光さんが講座を開講していることを知って。受講を決意しました。

──受講してよかったとことは?

 講師の米光さん、「エキレビ!」編集長のアライユキコさんに出会えたことです。受講中に「エキレビ!」でライターデビューしました。掲載されるまで、45回やり取りして。あのときアライさんに育ててもらわなければ、今こんなに書いていないですね。先輩のオグマナオトさんに取材できたことも大きい。「ひとつの媒体で年間100本書けば成長できる。逆算して月に何本書くと決めている」と、モチベーションがアップする言葉をいただいて。とてもやる気が出ました。

──それが、青柳さんの「エキレビ!」100本ノックにもつながった。

 100本書くと、このメディアや媒体でこの読者にウケるって体で覚えるから、すごく書きやすくなります。全能感が生まれる瞬間があるんです。「いけるぞ、書ける」と。今、アイティメディアで編集記者をしています。1日に34本書くのが通常です。企画も、取材のネタ拾いも、すべて担当しています。「エキレビ!」100本ノックの経験は生きています。

──最後に、受講生へアドバイスをお願いします。
 今の上司に言われました。「原稿がおもしろい人は、人となりがおもしろい」と。でもつまらない人間でも、経験と努力次第で変われます。インプットは必要不可欠です。専門分野に関してはもちろん、世の中の新しい事に敏感になる。ネットで書きたかったら、動向を追うこと。そして自分の書きたい媒体を知ること。原稿は結局、ネタです。技術だけではおもしろく書けないです。ネタを仕入れるモチベーションや、やる気があってしかるべき。おもしろい人間になるための要素につながっていくと思いますよ。

オグマナオトに取材した「アドタイ」の記事。青柳美帆子が「エキレビ!」100本ノックを目指す転機となった。

                             聞き手・西川ちねま

ライターに必要なのは
おもしろい人間になるための努力

米光講座シーズン3を受講中に「エキレビ!」でライターデビュー。以来「ねとらぼ」や「女子SPA!」などで執筆する。現在はアイティメディアで編集記者として活躍中。

──ライターを目指したきっかけは?
 大学の文芸サークルで書評を書いたり、フリー編集者だった姉の仕事を手伝ううちに適性があるんじゃないかと思って。もともと書くのが好きで、小学生のころから小説を書いていましたが、経験を重ねていくうちにレビューやインタビューなどの、ノンフィクションのほうが向いていると思うようになったんです。なかでもアニメ、漫画、ジェンダーに関する記事を書いてみたくて。

──米光講座を受講した経緯は?
 書く仕事を得るためのきっかけを探していたときに、米光講座を知りました。実は、米光さんの作ったゲームキャラクターで二次創作をしていたんですよ。米光さんは私にとって神のような存在。神に会えるし自分のチャンスにもなるかも! そんなミーハーな気持ちで決めました(笑)。

──受講してよかったことは?
 米光さんを通して「エキレビ!」編集長のアライさんと知り合い、彼女にも育ててもらったので、この2人と出会えたことが一番大きいです。あとは、いろいろ話せる同期と先輩ができたこと。技術的な面だと、ライターになる前の段階で米光さんのブロークンな文体を学べたのはよかったなと。テンプレートのある原稿ってある程度やれば誰でも書けちゃうけど、それに慣れてしまうとブロークンなものって身につけるのが難しいんです。たとえば同じ媒体で20年やってた人が、米光さんみたいな、最初にドンとインパクトを持ってくる原稿を書けるかというと難しい。米光さんもアライさんも型にハマったものを好まないタイプで、紋切り型の表現を使うと怒られました。フリーライターをへて、編集記者として働く今も、講座で得た経験は生かされています。

──プロのライターに必要なことは?

 原稿はネタがおもしろくないとダメなので、インプットが多くないと話にならないですよね。上司が「世の中には、原稿がおもしろい人間とつまらない人間の2種類しかいない」って言ってたんです。原稿がおもしろい人間はその人となりもおもしろい。ただ、人間は生まれつきではなく、インプットしたものによっておもしろくなっていくもの。ライターには、おもしろい人間になるための努力が必要です。

現在は「ITmedia ビジネスオンライン」で1日3~4本の記事執筆を担当。企画提案から取材に至るまで、ほぼすべてを手がけている。

                              聞き手・濱安紹子

写真:宮崎留実

オグマ ナオト
Oguma Naoto

興味を掛け合わせると
企画は膨らみ続ける


1977年福島生まれ。広告会社を経て35歳で文化系スポーツライターに。著書は『甲子園スーパースター列伝』(集英社みらい文庫)ほか多数。

──ライターを目指したきっかけは?
 学生時代、新聞記者に憧れていたことがきっかけです。スポーツにたずさわるには新聞業界に入らないといけないと思っていて。当時はウェブライターというジャンルもなかったですからね。それがかなわずいったんは広告業界に入りました。

──35歳からのスタートに焦りは?
 どんな経験でも生かすことができるのがライターです。
 たとえば広告業界では、とにかくアイデアの数を出すネタ千本ノックというのをよくやりました。それだけのアイデアを出すためには常に「他でやってないネタはなにか」という視点ですごすことになる。
 次に、見つけたネタをどんどん掛け合わせて広げていく。プロ野球となにか。たとえば、今ここにコーヒーがありますけど、野球とコーヒー、でもいい。足りなければプロ野球選手と好きな飲みもの。できるだけ関係ないもの同士を掛け合わせるとギャップがおもしろくなる。大喜利みたいな感覚ですね。おかげで「企画立てなきゃ」と思わなくても、アイデアはおのずと浮かんできます。

──講座で一番生きていることは?
 自分マトリクスという発想法を知ったことです。A3の紙に、自分の好きなこと興味のあることを書き出して視覚化します。そこに出てきた言葉はすべて仕事にできると思っていい。実際に僕も自分マトリクスに書いたことはほぼ「エキレビ!」で原稿にしています。
 原稿の依頼が来たときにも、テーマと自分マトリクスに書いたなにかを掛け合わせて考えてみるのもいい。
 定期的に書き出すと、変わらず出てくる言葉があります。それはもう絶対専門にしたほうがいい。新しく出てきた言葉は、前は興味なかったけど今はあるんだと気づける。消えたものは、なんでこれ消えたんだろうと考えられる。

──プロを目指す上で大切なことは?
 しめきりを守ることは当たり前。プラス、付加価値のある記事を書くことですね。
 速報性は新聞やテレビにはかなわない。ためになった、それ知らなかったというお土産のある記事を書く。どんどん書く。作品が自然に自分の営業ツールとなって、次の仕事につながっていく。それが最高のサイクルですね。

2017年4月、もうすぐ40歳になるタイミングで『報道ステーション』スポーツコーナーの構成作家チームに加わる。

                               聞き手・宮崎留実

企画は考えない
自分マトリクスに書いた
ものはすべて仕事になる

1977年福島県生まれ。ライター・インタビュアー・構成作家。著作に『福島のおきて』(泰文堂)など。

──ライターを目指したきっかけは?
 スポーツにたずさわりたかったので、学生時代には新聞記者になりたいと思っていました。

──年間120本以上の記事を書く上で通る企画を作るコツは?
 毎日意識して企画を考えようとは思っていません。思いついたらメモをしています。自分の得意分野の中で誰もやっていないことを探す。もしくは誰かがやっていても、視点の違うものを探す。
 スポーツは年間を通してカレンダーがあります。今の時期なら全仏テニスをやっているからテニスとなにか、プロ野球のシーズンならプロ野球となにかという感じで掛け合わせていきます。
 雑誌を見れば今のトレンドや注目されていることがわかるのでスポーツを絡める。野球雑誌が清宮幸太郎を表紙にしていれば、清宮から派生するなにかで書く。たとえば過去の怪物と比較するとか、お父さんも有名人なので、お父さんつながりで書くとか。
 そのとき目に入ったものから連想していくので、大喜利に近いのかな。ネタに対してどう絡めていくか、ひねっていくか。すべてがデータになり得るし、やろうと思えばどんな組み合わせもできる。自分のまわりにあるものすべてがネタになり得るんです。

──講座で得たものはなんですか?
 講座で自分マトリクスを書いたのはすごく大きかった。一枚の紙に自分の興味のあること、好きなこと、関わっていることを書き出すんです。書いたものはほぼ「エキレビ!」で原稿にしています。出てきた言葉は全部仕事にできると思っていい。興味のあることだから、気後れするのではなく、専門家だと言っていいくらいに考えて。依頼が来てから考えてもいい。興味があるんだから調べるのは苦じゃないでしょう。企画をなにか考えてと言われたときに、本来のネタと自分マトリクスで出てきたものを掛け合わせていくといいんじゃないでしょうか。

米光講座でプチ専門にしていた風車と「天空の城ラピュタ」を掛け合わせた「エキレビ!」の記事『今夜はバルス祭り! 風車で解く「天空の城ラピュタ」オープニングに隠された物語とは』。

                             聞き手・すがたもえ子

広く浅くでもいい
すべての興味が
仕事につながる

1977年福島県生まれ。35歳でフリーライターになり、最近はテレビの構成作家の仕事も手がける。自著に『仰天!感動! サッカーヒーロー超百科 日本編』(ポプラ社)など。

──ライターを目指したきっかけは?
 書くことが特別好きだったわけではなく、ライターを意識していたわけでもありません。ただ、野球や剣道などの経験を通してスポーツに魅力を感じていたので、新聞記者になってスポーツにたずさわり続けられたらいいな、とは思っていました。20代前半のころです。

──企画を立てるコツはありますか?
 企画を考えるときは、イベントとテーマや関心を掛け合わせていきます。スポーツなら1年間のカレンダーはわかっているから、高校野球、ウィンブルドン、オリンピックなど、イベントに合わせて準備できます。それを自分のテーマや切り口、世の中の話題と組み合わせると、どんな文章が書けるだろうかと。天から降ってくるように思いつくのではなく、自分の思考ロジックがあるのです。

──講座で印象に残っているのは?
 いくつかありますが、自分マトリクスを作ることは、当時の私にはとても役立ちました。紙のまんなかに自分の名前を書いて、そのまわりに好きなこと、興味のあることをひたすら書き出していく。頭のなかでぼんやり持っていた興味も、視覚で認識することで「ああ、自分はこんなことに興味があるのか」と明確になります。定期的に書いて、過去と比較することで変化を確かめるのも大切ですね。
 マトリクスには好きだけどくわしくないことも書いています。深掘りしていく労力が苦にはならないテーマです。マトリクスに書いたことは、ほとんど「エキレビ!」の記事になっています。自分の興味や体験がすべて仕事につながるので、ライターはいい仕事だと思います。

──プロのライターとして大切なことは?
 ライターにとっては過去に書いた原稿がなによりの営業ツール。だから極論を言えば、次の仕事につながらなければ、前の仕事は失敗だったことになります。今の仕事にも、たどっていくと駆け出しのころ「エキレビ!」で書いた記事とつながっているものがあります。
 独りよがりではなく、読者が読んでよかったと思うお土産になる原稿を書こうと意識しています。まず書く、ライターだと公言する。行動の先にプロとしての道が開かれていきます。

オグマナオトが役立ったと振り返る米光講座の「自分マトリクス」。興味をあぶり出す手法として定期的な作成を推奨。

                               聞き手・加藤学宏

写真:神楽みやび

ミノシマ タカコ
Minoshima Takako

書いた情報で人も仕事も
つながって
循環していく

フリーライター・ウェブ編集・企画・ディレクション。主な執筆分野は女性、ライフスタイルなど。日本参道狛犬研究会会員。

──講座を受講してよかったことは?
 考えることや切り口を意識する訓練ができたところかな。ライティングの仕事って、企画が必要とされるところがあるので。米光講座は、実際にものを考えたり、書いたり、作ったりすることが、とても多かったです。それが非常に役に立って、飽きずに最後まで楽しんでこれたなと。あとは、先輩や後輩、もちろん先生もふくめて、いろんな人とのつながりができたことが、一番大きいです。仕事も増えましたし、編集者としてこちらから依頼をすることもあります。

──人と仕事をつなげるコツや大切にしていることは?

 出会ったライター志望の人や印象に残った人を覚えるようにしているので、きっかけがあれば仕事につなげられるアンテナは、持っておくようにしています。いつでも頼めるように情報収集するようにしています。交流会では、人とのつながりが広がっていくことが多いので、できれば顔を出しています。またフリーランスなので、好きな人たちとつながっていけることも強みだと思います。人を紹介するときは、仕事をする人も、仕事を頼んだ人も相互にプラスになればいいなと思ってやっています。

──編集とライターの両方をする理由は?
 いつのまにか両方の仕事をするようになりましたね。割合としては、半々。両方やっていると、どちらの苦労もわかるので、つねに「ありがとう、ライターさん」「ありがとう、編集さん」の気持ちでいられて、仕事がポジティブにできます。どちらも楽しいです。

──これから編集やライターを目指す人にアドバイスをお願いします。
 間口の広い仕事なので、いろいろ、やってみるといいのではないでしょうか。今は、ライターの募集は多いので、まずは応募してみるのも手です。そして、めげずにやり続けることかな。それから、専門性を身につけるという人が多いです。専門性があると上達するのが早くなると言われていますし、仕事にもつながりやすくなるみたいですよ。

トヨタ自動車のクルマ情報サイト「GAZOO」で執筆した第4回「くるまマイスター検定」in横浜のレポート記事。現在、旅とクルマ情報を強化中。くるまマイスター検定3級取得。

                              聞き手・神楽みやび

写真:さくらいみか

宮下 由布
Miyashita Yu

書き手のエネルギーを
そのまま読者に
届けたい

新聞の校閲・記者・ベトナムの日本語教師・語学スクールの広報をへて編集者・ライターに。2016年より結婚情報サイトのチーフエディターを務める。

──米光講座を受講したきっかけは?
 自分のやりかたで編集をしてきましたが、それがどのくらいずれているのかを確認したくて。編集といっても、書く作業も多いので、ライターとしての能力を見極めたかったというのもあります。

──受講する前と後で変わったことは?
 編集者としてライターへのフィードバックをするときに、よい場合はあまり書かないタイプだったんです。受講してから、フィードバックがライターの不安を払拭したり、モチベーションに働きかけることがわかって、「ここがよかった」「こういう理由でここを直しました」という返しを前よりもずっとするようになりました。

──美術館によく行かれるようですが、そういった趣味を仕事に生かしていますか?
 編集・ライターの仕事には、役に立たないものはないと思ってます。積極的に趣味を仕事につなげようとはしてないですが、自然とつながっていく場合もあるかもしれません。たとえば映画や美術館については、今は純粋に好みだけで行く・行かないを決めています。けど、仕事の場合はそうはいかなくなりますよね。趣味と仕事がつながることで、自分の興味が予想外の方向に広がっていく楽しみを感じたこともありましたが、今は素直に楽しむ時期かなと思っています。

──今たずさわっている乾物の本は、仕事と趣味がつながってるんですよね?
 これは3年前に自由大学の乾物のある生活、という講義に通ったのがきっかけです。今年、自由大学出版というレーベルができるのですが、「乾物講座発信で本を出そう」というプロジェクトが立ち上がり、参加の呼びかけがあったので、ほんのお手伝いのつもりで手をあげました。このプロジェクトで大事にしているのは、企画側が持ってる熱い思いや社会への提言が、本を手に取る人への押しつけになりすぎないこと。熱量調整を心掛けています。一方で、書くことにはじめて挑戦する人もいて、プロじゃないからこそ文章に残っているエネルギーがあるので、それはそのまま伝えられるようにしたいです。ふだんの仕事では、修正せざるを得ない場面もありますが、そのままの文章を極力直さずにどう生かすかの力を鍛えられる場だと思っています。

自由大学出版第一弾、「乾物のある生活」プロジェクトは、ほぼ全員がボランティアで参加。印刷費はモーションギャラリーにてクラウドファンディングで集めている。

                             聞き手・さくらいみか

みなが同じ考えを持ってはいない だからていねいに言葉を探す

新聞社で校閲・テレビ局担当記者として勤務後、ベトナムで日本語教師に。帰国後は通訳スクールの広報・制作。現在はウエディング情報サイトのチーフエディター。

──米光講座を受講したきっかけは?
 自分のやりかたで合っているのか、客観的に見てみたかったからです。ライティングのスキルアップもしたいと考えていました。

──講座を受講してよかったことは?
 ライターから送られてきた原稿へのフィードバックの中身が変わりました。前は、よい原稿に「よかった」とあえて口に出して言わなくても……って考えていました。でも、自分が外部ライターになってみて、編集のフィードバックがモチベーションに大きく関わってくることがわかって。ライターの原稿に訂正を入れたいときにも、前より具体的に理由を伝えるようになりました。

──編集者を目指したきっかけは?
 出版社各社から毎年出ている「夏の100冊」です。比べてみたときに、角川文庫のラインナップが抜群におもしろくて。こういう仕事がやりたいと思いました。就職試験で角川を受けた時は、それを言いすぎて玉砕しちゃったのですが。

──編集者・ライターとして大事にしていることはなんですか?
 できるだけ誰かを傷つけないようにしたいということです。意図せず誰かを傷つけたり、不快にさせてしまう原因は、取材不足と技術力不足。取材では、思い込みを外すことが大事です。誰も傷つけないというのは不可能なことで、それを目指すこと自体がある意味でおごりだとは思います。みなが同じ考え方や思想を持っているはずがない。でもその上で、違う思考の人を少しでも揺らすことができるとしたら、ていねいに言葉を探していくことだと思っています。

──ていねいに言葉を探すことの、具体例を教えてください。
 カルピスを先週飲んだときに「こんなに甘かったっけ」と感じて、去年も同じように思ったのを思い出しました。ほかにも、カルピスの色って透明なのか白なのかわからないとか、口に含む時に氷があたるなとか。起きたことをカルピス甘い、おいしいとかの大きい言葉にまとめず、おいしいの手前、その手前、その手前にあった言葉を探す。書きおわったら、自分に「これ本当?」って問いかけをしながら推敲を重ねます。

2008~13年には、東京メトロで配布されているフリーペーパー「東京トレンドランキング」の企画・編集・執筆を行なっていた。

                            聞き手・ネッシーあやこ

コラム 編集って、意外とたいへん

 インタビュー集をつくるには、ライターに取材をしてもらって、何文字・何行で書いてくださいと依頼しなければならない。
 それなのに焦ってしまい、指示を間違えたり、依頼内容に漏れがあったりしたものだから、もうたいへん。しかもそれを訂正しても、人によって解釈が変わってしまう。今度こそ正しく伝えたと思ったら、返ってきた原稿は文字数も行数もバラバラだった。自分の伝え方がわかりにくかったのだから、仕方がない。ライターとやり取りするたび、相手にとって何がわかりにくいのかが明らかになる。
 さらに校閲校正で、事実誤認の修正や文字統一をおこなう。どのように修正するのか、議論も起きた。それをチェックするのがまたたいへん。読みやすく、ベストな形で原稿を読者に届けるために悪戦苦闘した。
 編集とは、文章を読者にとってよりよい形にして届けることだ。その作業は意外とたいへんだけど、けっこう楽しい。
                              紙の本 編集長・村山悠

写真:寺島伶菜

橋村 望
Hashimura Nozomi

話しやすい現場とは
笑顔あふれる酒場のよう


米どころ、秋田出身。デザイン会社に約7年勤務。日本酒好きがきっかけでライターを目指す。利き酒師、焼酎利き酒師や酒匠の資格を持つ。他にも幅広いジャンルの記事を書く。

──ライターを目指したきっかけは?
 ライターになる前、7年ほどデザイン事務所で働いていました。仕事中は部屋にこもることが多く、仕事終わりにお酒を飲みに行くことが楽しみ。特に日本酒にハマりました。フリーデザイナーになったとき、もっと日本酒のことが知りたいと思い、利き酒師の資格をとりました。
 すると編集者の友人から日本酒の記事を依頼されたんです。文章を書く経験はゼロでしたが、資格を生かしたいと思い挑戦しました。でも最初は「つまらない」とバッサリ。自分の言いたいことが伝わらない。それが悔しかった! 最終的にオッケーはもらえましたが、これでもかと書き直しました。この経験を通して文章を書く魅力を知り、もっと上手に書きたいと思ったんです。

──講座を受講して何を得ましたか?
 当たり前のことですが、本やウェブ記事を読むことはとても大事だと気づきました。私はなにかを調べることが好きです。資格取得のときも、お酒の講習会に参加して200種類以上を飲み比べ。米光講座にゲストで来ていた編集の方の紹介で「女子部」というコミュニティーに参加させてもらい、女性の好みの味わいや飲みかたを調査したり。味わったお酒はテイスティングノートにまとめています。味や香り、見た目、舌触りなど、自分が感じたことをそのまま記録したものです。
 私はよく自然体と言われますが、心の中はいつも緊張状態。なので緊張しても頭が真っ白にならないように、できるだけ調べるようにしています。たとえ取材で話題につまっても、小ネタをはさむと盛り上がる。話の引き出しはたくさん必要ですね。

──プロのライターとして大切にしていることはありますか?
 どんな人にも誠実さを持ちつつ、フレンドリーに接するようにしています。酒場にいるような親しみやすさです。酒場はみんながリラックスできて、人の意外な本性がわかったりする場所。ついゆるんだ笑顔をしてしまうでしょ。仕事の時も、同じように笑顔を忘れずに。キリッとした人でも、案外酒場だとデレちゃうのかも、なんて想像しながら(笑)。構えてしまうのは相手も同じで、その緊張をほぐすのもライターの役目。相手を尊重し、笑顔で話しやすい雰囲気を作ることが大切だと思います。

『40歳からの東京酒場』(散歩の達人MOOK/交通新聞社)で、『面白くて旨い!名珍ラベルの日本酒集めました』という記事などを担当した。

                               聞き手・寺島伶菜

よく知っているのに
伝わらない
悔しさが出発点

秋田県出身。利き酒師、焼酎利き酒師、酒匠の資格を持つフリーライター。「SAKETIMES」「ESSE-online」「イべニア」などを中心に執筆。

──ライターを目指したきっかけは?
 日本酒に興味があって、いろんな種類を飲んでいくうちに、どうして美味しいのかを突き詰めたくなりました。そこで、利き酒師の資格を取得。編集者をしていた友人に話して、お酒を切り口にした健康や食についての取材記事を書いてみたらと声をかけてもらったのが転機です。

──はじめて書いた記事はどうでしたか?

 新酒鑑評会についての記事を書いたら、「つまんないからダメー」と言われて。何度も書き直して掲載にこぎつけました。そこで、知っていることと書くことは全然違うのだと気がついた。よく知っているのにおもしろさが伝わらないのはなぜだろう。悔しさも手伝って書くことに取り組みたいと思いました。

──講座を受講してよかったことは?

 宣伝会議の編集・ライター養成講座の総合コースを受講して、終了後すぐに上級の米光講座へ進みました。外部からのゲストはもちろんですが、クラス内にもプロの編集者やライターで活躍されている方がいて、仕事の依頼が来ることもありました。お酒に関する取材ではなくても、依頼が来たらできるだけ受けています。やってみないとおもしろいかどうかわからない。

──受講前と後で変化はありましたか?

 誰が読むのかを具体的に考えて、限られたスペースにどういう情報を入れるか取捨選択できるようになりました。ムック本に、酵母がどうとか専門的な話を書いても読者には興味を持ってもらえない。それよりは飲み方や合うおつまみといった、読者がおもしろいと思う話を入れたいです。

──ライターとして大切にしていることは?

 取材のときには自然体を心がけています。スマートさよりも誠実さが伝わることが大事。酒場のようにリラックスして、笑顔で話しやすい雰囲気を作りたいです。それには、話のきっかけは多いほうがよい。いろんな視点で事前に調べることは大切です。無駄かな、使わないかな、と思いながらも好奇心でどんどん調べて、話の引き出しを作る。仲良くなって、もっと話を聞きたいですから。

お酒について様々な角度から分析したテイスティングノート。特徴が詳細に書きとめられている。「ごくわずか、石のようなミネラル感」などイメージしやすい言葉を心がけているという。

                                聞き手・北形兆

無理して
かっこつけない
自然体でいること

デザイン事務所に勤務したのち、フリーライターに。「SAKETIMES」「ESSE-online」「イべニア」などで執筆中。

──ライターを目指したきっかけは?
 きっかけは、友人に文章を見せてダメ出しされたことです。フリーのデザイナーになってから、編集の仕事をしている友人の事務所に机を間借りしていました。そのころ、日本酒好きをなにかに生かそうと、利き酒師の資格をとったことが転機です。友人に「利き酒師の資格とったよ~」と言ったら、食にまつわる媒体の仕事を回してくれました。ところが、書いたものを見せると、「面白くない。これじゃ載せられない」と一蹴されてしまいます。悔しくて、何度も書き直し、やっと「これなら記事として載せてもいいよ」とOKが出ました。がぜん書くことのおもしろさに目覚めて、お酒のイベントに参加してレポートを書くようになりました。

──講座を受講してよかったことは?
 私はもともとデザイナーなので、編集やライターの知識がありません。まず編集・ライター養成講座の総合コースを受けて、体系的な知識を学びました。講座で同じ志を持つ仲間に出会えたことは大きいです。総合コースでも、その後に進んだ上級の米光講座でも、講座後の飲み会は、ライターの仕事を増やすきっかけになりました。すでに編集の仕事をしている人や、自社でライターを募集している人もいて、飲み会で交流を深めるうちに、受講生から仕事を任されたのです。講座修了後に、友人から誘われて仕事になったこともあります。駆け出しのころは、まだ記事を書く感覚がつかめませんでした。だから、ジャンルを問わず仕事をもらって、媒体による書きわけを覚えました。

──プロのライターを目指す上で大切なことはなんですか?
 取材相手やテーマに対して誠実であること。仕事を引き受けたら、事前にものすごく調べておきます。もうひとつは、取材相手の前で、自然体でいることです。無理してかっこつけると、余計に緊張しますから。私はとても緊張しいなんですけど、調べておけば、相手との会話がスムーズに進みます。酒場で人と接するときのように、取材先でも構えないでいたい。本当は、緊張して頭が真っ白になることもありますけどね。そんなときも、事前に調べたことが会話の糸口になります。私の場合は、何でもよく調べることが自信や相手との信頼につながっています。下調べをして、かっこつけない自分がいれば、取材相手からおもしろい話がひきだせます。

「SAKETIMES」で取材した記事『すべてのお酒が試飲可能な古酒・熟成酒専門の酒屋!東京都杉並区「いにしえ酒店」で日本酒の熟成文化に魅了される』。

                                聞き手・村山悠

コラム 失敗上等の本作り

 「確認はいいからやってー」。米光先生によく言われたセリフだ。最初は編集長という肩書に腰が引けていた。何でもメンバーの意見をまんべんなく聞き、賛同を得て進めようとした。しかし、意見は出てこない。スピードが落ちる。アイデアも鮮度を失う。
 アドバイザーとして参加していたOGの与儀さんから「みんなに納得してもらわないと進めないというのは思い込みかもよ」と言われた。保証がないと動かないチキン野郎の自分に気づいた。
 米光講座の本作りは、フライング大歓迎、改善、訂正、変更でもっとおもしろくしようという考え方だ。それは失敗ではない。なぜなら「全て仮決定」だから。失敗がないから手を挙げやすくなる。ワイワイと楽しそうにやっていると、みんな集まってくる、アイデアを言いたくなる。めんどうもあるが、楽しい、おもしろいが勝っていく。
 次は何を作ろうかな。軽やかに心が弾んでくる。
                              電子書籍 編集長・北形兆

写真:加賀谷玲奈

村中 貴士
Muranaka Takashi

脱サラ受講生が
プロのフリーライターに
なるまで

1973年 大阪生まれ。脱サラした後、宣伝会議の編集ライター養成講座をへてフリーライターに。直近ではデイリーポータルZ新人賞2017にて佳作に選ばれている。

──もともと書くことが好きでしたか?
 いいえ。大学では理系でしたし、音楽が好きなので就活では楽器メーカーを受けて、卒業後はレコード会社でバイトをしたりしていました。まさか書くことを仕事にするとは想像もしていませんでした。

──講座を受講してどうでしたか?
 編集・ライター養成講座総合コースの卒業制作で最優秀賞を受賞したのですが、「これでプロとして食べていける」とは思わなかったですね。受賞の前から上級コースの米光講座には行こうと決めていました。
 印象的だったのは6回目の授業後の飲み会。米光さんから「前より断然よくなった」とほめられたんです。その夜の夢に米光さんが出てきた。オレそんなに嬉しかったのかって(笑)。講座から数ヶ月経って同期の橋村望さんから編集の方を紹介いただき、記事を書くことになりました。それがプロとしてはじめての仕事です。16種類のからあげクンを食べ比べる『からあげクン祭2015』のイベントレポートでした。

──プロのライターを目指す上で大切なことは?
 しめきりを守る、編集者とのコミュニケーションをしっかりとるなど、社会人として基本的なことがまず前提になると思います。
 あとはジャンルを狭めずにとりあえずやってみる。自分の守備範囲外だと思っても『タモリ倶楽部』的な視点で他の人が書かない記事を書くようにしています。

──フリーライターになってから生活は変わりましたか?

 変わりましたね。好きなときに起きて好きな時間に寝ます。夜型人間なので夜に仕事することが多いです。作業場所はカフェよりも家で作業するほうが集中できますね。

──今後書いてみたいものは?

 ニセ科学とか疑似科学、音楽などのジャンルは興味があるのでやってみたいです。
 あと森高千里さんにインタビューしてみたいです。「ライター志望」「ザルで水くむ恋心」という2曲が好きなんです。数年前にはじめて聴いて、彼女ってこんなにおもしろい人だったんだって驚いたんです。気づかなくてごめんって思って(笑)。

プロライターとしてはじめて書き、「イべニア」に掲載された『からあげクン祭2015秋』の体験レポート記事。

                              聞き手・丸居久仁男

ライターに必要なのは
常識と企画力と
観察の積み重ね

1973年大阪生まれ。カレンダーメーカーでの会社員生活の後、フリーライターに。「GAZOO」「イベニア」などで執筆。

──米光講座を受けたきっかけは?
 もともとは、宣伝会議の「編集・ライター養成講座」の総合コースを受けたのがきっかけです。企画を考えることが好きで、米光さんをはじめ、嶋浩一郎さんや堀井憲一郎さんの授業がおもしろかったですね。
 総合コースの後、上級の米光講座に進みました。第6回の授業後の飲み会で、米光さんに「いいよ、これ。前より断然よくなった」と、課題をほめられたんです。それまではあまり評価をされていなかったのに。その夜、夢に米光さんが出てきて、「そんなに嬉しかったのか、俺!」と、自分でも驚きましたね。
 
──そのほかに、ほめられたことはありますか?
 米光さんにFacebookで、「競泳水着カフェ」のイベントレポートをほめてもらいました。自分では、描写についてさほど意識して書いた原稿ではないのですが、「場の雰囲気を伝える具体的な描写があってよい」と米光さんに言っていただけました。
 
──自分の強みはなんだと思いますか?
 理系的な観察眼が今の仕事に生かされている部分もあると思います。
 講座で、文章中に観察と感想の配分をどれくらいにするのかという授業があったかと思います。僕は、文章は観察の積み重ねだと思っています。特にイベントレポートなどでは、感想はほとんど必要ないぐらいの気持ちで書いていますね。
 でも今思い返すと、僕は理系ですから、将来書く仕事に就くとは、想像すらしていませんでした。2013年まで13年勤めたカレンダーメーカーで、閑散期の自社サイトの流入を増やすために、カレンダーに関するコラムを書いていましたが、それも全くの自己流で。講座を受けるまでは、誰かに教えを受けて、文章を書く機会がありませんでした。

──プロのライターを目指す上で大切なことは?
 企画力は必要です。でも大事なのは、しめきりを守る、編集者と上手くコミュニケーションをとるなど、人として基本的な部分がしっかりしていることだと思います。あとは自分の守備範囲外の依頼が来ても、とりあえずやってみることです。一回引き受けてダメなら、次に断ればいいのです。その仕事から、思わぬなにかが広がるかもしれないですしね。

クルマ情報サイト「GAZOO」に掲載され話題となった記事『どんな人が利用? ピンククラウン霊柩車がある葬儀社に聞いてみた』。

                              聞き手・横山由希路

観察力が今の仕事に
生かされてる


1973年生まれ。ライター。「GAZOO」「イべニア」などウェブを中心に執筆。『無地のボクサーパンツは帽子として成立した』でデイリーポータルZ新人賞2017佳作受賞。

──前職はカレンダー制作会社とのことですが、退職の理由を教えてください。
 いろいろあるんですが、端的に言えば飽きたということですね。13年在籍するうちに、毎年カレンダーを出すのがある種のルーチンワークになっていました。
 もちろん新企画を立てるのは楽しかったし、売れたら嬉しかったです。退職にあたって次の仕事の方向性を考えてはいなかったのですが、それでも怖くはなかったですね。むしろ学びたい意欲が強くなりました。
 前職では、100〜120文字ほどのカレンダーの紹介文を書いたり、閑散期には販売サイトでコラムを執筆したりしていました。ただ、今から振り返ればそんなこともしていたなという程度で、退職の段階では本当になにも考えていませんでした。

──自分の強みはなんだと思いますか?
 観察力です。米光講座には観察と感想を区別して観察で書くトレーニングの授業があります。僕は、文章は観察の積み重ねだろうなと思っていて、感想は別にいらないぐらいの感じでいつも書いているんです。
 イベントレポートを書いている時に、もう観察だけでよいかなと。以前一回だけあまりにも感想がないから、編集者の人に感想を書いてって言われたこともあるぐらいです(笑)。

──記事のネタはどのように企画しているのですか?
 自分で企画を立てる場合もありますし、先方から依頼された企画の場合もあります。

──プロのライターや編集者を目指す上で大切なことは?
 僕は企画とか考えるのは好きなので、それはもちろんそれで必要なことだと思います。ですが、もっと基本的なこと、しめきりを守るとか、編集者とうまくコミュニケーションとるとか。そういう基本的なことが前提としてまずあって、その上で企画力が必要なんじゃないかと思います。あとはジャンルを狭めず、こだわらないようにしています。自分の守備範囲外だったとしても、まぁ、これぐらいだったらギリギリいけるなと。そこでなにか広がるかもしれないし。で、違うなと思ったらやめればよいです。

アイマスクを着用して行う合コン体験レポート『相手の顔が分からない合コン! 話し方、ニオイだけで判断する「暗闇コン」に行ってきた』を「イべニア」で執筆。

                              聞き手・加賀谷玲奈

編集者ライターへの道2017

2017年8月5日 発行 初版

編  集:北形兆
     村山悠
     神楽みやび
     加藤学宏
     すがたもえ子
     ネッシーあやこ 
     宮崎留実
     深川岳志
     与儀明子
表紙・イラストレーション:ネッシーあやこ
監  修:米光一成

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