はじめに　に代えて

詩の良さは巧拙にはないと
わたしとしては思い込んでいたい

でも、巧い詩を見ると打ちのめされる
到底
こんなすごいものを書くことはできないと

行間にどれだけ豊かなイメージが広がっているのか
書かないことで感じさせることができるのか

でもね、
極限まで言葉を選んで切り詰めて
素晴らしい構築力を持って直して、
直して直して、
組み立てて
また削って、
選び直して、

足して引いて掛けて割って
砕いて潰して混ぜて捏ねて

ときには辞書を引くことさえして
言葉の持つ裏の意味まで盛り込んで

書いて消して書いて消して書いて
書いて消して書いて消して書いて

わたしにはその行為を
詩作だと思うことができない

わたしは詩人ではないから

心の形をそのままに
叩きつけることしかできない

だから詩人の書くようなりっぱな詩は
どう頑張ったって書けそうにない

でも、
詩を読むという行為は

詩を書いた人の心に
寄り添う行為なのではないか

だから、
読んでくださった人が
寄り添ってくれたことで

自分の心の中に
何かを残すことができるような言葉を
叩きつけていきたい

わたしには
それしかないのだから


平成二十七年十二月　淡波亮作

たからもの

この小さな胸のつかえを
たからものと呼んでみる

持ち続ける同じ気持ち
分かりあえる人はどこに？　

ぐるぐる
　ぐるぐる
　　膨らみ続ける

そっとそっと
　そっとそっと
　　大事にし続ける

あなたからの贈り物を
たからものと呼んでみる

心の底見透かすよに
　重い重い
　　想いを

あの夢　この夢

追い出そうとしてもなお
あの夢　この夢

つかのまに　通り過ぎた
七色の眩しい光

壊れそうな　儚い笑顔

朝の空に溶けてゆく
朧なかたち　崩れる

すべては夢だよ
生きている今でさえも

瞬きのうちに
思い出すらも薄れて

目に映るものと
心に残せる僅かな

ふらふら　ゆらゆら
夢うつつ　混ざりゆく

はるかかなた
取り戻したいとも　思いつけない　ほど

おいてけぼりの小さな
あの夢　この夢

ハピネス

辿り着いた場所に
救いがなかったように
上目遣いに何を探し求め続けたとて
見下ろす視線の主は
何も与えてはくれない

通り過ぎた日々よ
留まり悩まぬ友よ
今も　夢を　夢を

歩み止めた　その場所から
見渡す四方に見える
見慣れ過ぎたもの
心騒がすこともなく
目を閉じて繋がる
手の届く幸せだけを

忘れ去った友よ
捨て去られた日々の
中に　何を　見てる

小さな声で

ただ　気になってた　ただ　気になってた
耳の奥側に　爪をかけるように

小さな声で　小さな仕草で
不安の種を　追い出そうとして

少しずれたリズムで　斜めの視線で
遠ざかるもの　追いかけぬよう

灯りを点けぬまま　耳を澄ましている
誰かのつぶやきが　フツフツと浮かんでくる