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 目 次


Home


私を生きる


崖の上からの眺め


ライト・ランゲージとの出会い


ライト・ランゲージ とは・・?


台風が来る前に


ニセコアンヌプリ


嵐が過ぎて


羊蹄山周遊


分かれ道


水が湧くように


Landscape Angel


いい湯だな


珈琲散歩


あとがき


付録情報

Home

 二年前、ここに来た時には明確な理由はありませんでした。
毎年恒例誕生日の家出、これから何をするのか一人になって考えよう -- そして行くなら北海道、そんな理由からでした。
パウダースノーのスキー場は私には無縁のものだし、観光しようにも本格的なグリーンシーズンの直前でバスもない。興味ある遺跡にさえ日程的に行けないこともわかっていましたが、それでも何か気になって一度行って見たくて訪れたのがニセコでした。

 この時、もしかしたら桜のフラワーエッセンスを作ることができるかもしれない、と道具を一式携えて行きました。
ところが、札幌で桜が満開を迎えようとしていた頃、ニセコで私を出迎えてくれたのは残雪の中に咲く蕗の薹でした。
ですからふきのとうでエッセンスを作ってみることにしました。

 それから1年半が経ったのちに、北海道は前世の縁ある場所であり今生日本に生まれたことに大きく関係していると知らされました。
そのことを聞いた時「ああやっぱり、、」そう思いました。
物心ついた頃から北の大地に憧れていたのには意味があったのです。
だから蕗の薹から受け取ったメッセージの中に「ホーム」という言葉があったのだとやっと腑に落ちました。

私を生きる

 立春の頃、祖母が他界しました。
それはこれまでの生活が一変する大きな出来事でした。
介護から解放され、望んでいた自由が--予期せずもたらされたのです。
私はこれからどう生きる?
問い直す時が来たのです。

 どれだけ自然からかけ離れた生活をしていても、迷う時、行き過ぎた時に私が戻る場所は自然の中以外にありません。
けれどもその時間を自分に今まで与えていませんでした。
次の仕事に飛びつく前に、自分を空っぽにする時間が必要だと思えました。

 色々動かしがたいと思っていたスケジュールを返上して休みを取り、二週間のニセコ滞在計画を立てました。

崖の上からの眺め

 札幌を経由してニセコにたどり着きましたが、まだまだ私の中の時間は東京モードでした。
寒くなったらどうしよう、食料の買い出しはどうしよう、あらゆる不安に対して事前に準備しようとしていることに気づきました。

 二週間過ごす部屋は8階、眺めの良い部屋です。
以前泊まった3階の部屋からは森の向こうに何があるのかわかりませんでしたが、この高さからは遠く昆布岳まで続く森と山々を見渡すことができます。
空模様は一日のうちでめまぐるしく変化して、西側の低い尾根を越えてくる雲は大地を拭うように流れて行きます。

 止むことなく風が吹いて黄葉の始まったばかりの森をざわざわと揺らします。
私はその風景を朝から晩まで飽かず眺め、雲に見え隠れする烏帽子の頂と対峙していました。
広くなだらかな昆布岳の稜線に対して、深く切れ込んだ尻別川の峡谷を挟んだこちらの森は、シンメトリーのカーブを描いていました。

ライト・ランゲージとの出会い

 朝、ベランダに立ってライト・ランゲージ・トランスミッション(宇宙語の伝達)を。
ライト・ランゲージ *0 を深めたいということもここへ来た目的の一つでした。
終えるとごく自然に「ただいま」と言っている自分がいました。

 朝食を終え落ち着くと、甘露水を汲みに散歩へ。
雨が降った後の曇り空。
道の隅にはイヌタデ、ママコノシリヌグイ、ゲンノショウコ。
そしてツユクサが夏の名残りで道端に咲いていました。
隈笹が生い茂る林の中にはこのような小さな花々は咲くことができませんが、笹が払われた日の当たる場所に身を寄せて咲いているのです。
でもこの日、たくさんの蕾を持つママコノシリヌグイだけはその花を頑なに閉じているのでした。

 低気圧が日本海に居座って、吹き込む湿った空気が雨を断続的に降らせていました。
午後一番で温泉に入り、そのまま昼寝して読書を。
読んでいたのは『Opening Light Language』Jamye Price 著でした。

 本の中で彼女がライト・ランゲージに目覚め始めた頃、同じような人々が世界にいるとメッセージを受けるのですが、その数は時とともに増えたり減ったり変化したといいます。
彼女はそのまま探求を深めてゆきましたが、私はフィンドホーン・フラワーエッセンス*1のプラクティショナーになろうという気持ちと共に芽生え始めていた微細な感覚を捨ててしまったのでした。

 その当時自分の未熟さを感じていたこともあり、「仕事にするという覚悟が無いのならそのような感覚には蓋をしなさい」というアドヴァイスを自ら聞き入れたのです。
パートナーを求めていたことも大きな要因でした。
相手に理解を求めることは無理だと思っていたからです。

 それ以来長い時間フラワーエッセンスは棚の中に眠らせ、瞑想することも辞め、ITに携わる会社で仕事をし-- コンピューターと同期することに慣れて行きました。
仕事にやりがいと活躍の場を探していましたが、最終的にはうまくゆかず限界が訪れた時、ふと思い出したのがフラワーエッセンスの存在でした。
ニールズヤードのお店に駆け込み、オーストラリア・ブッシュ・フラワーエッセンス*2の『Calm & Clear』を手にしていました。

 フラワーエッセンスのトレーニング再開をきっかけにたくさんの人と縁が生まれ、微細な感覚を少しずつではありますが思い出すようになりました。
今度こそその感覚を確かなものにしようとトレーニングを意識して行うようになり、毎日瞑想をしながら胸に湧いてくる言葉を書き留めたり、手に任せて絵を描きためていました。

 私はこれらのメッセージを受け取ることに時に不安を覚えることがありました。
受け取るメッセージの発信源は毎回違い、その内容も多岐に渡りました。
それらにどう対処して良いのかわからない時にハイアーセルフとの繋がりを強めるためにカミングホーム・エッセンス *3 の『オオニワゼキショウ』 というエッセンスをすすめられたのが2016年の3月でした。

 その後、日本の花や大地から作られているフラワーエッセンスたちに次々と出会うようになり、
何かが動き出しているような感覚を覚えたのです。
その感覚に導かれて秋には 『Essences in Japan 日本のエッセンス』というコミュニティ・ページをFacebookに作りました。
するとたくさんのプロデューサーさんやフラワーエッセンスのユーザーさんを紹介していただきました。
日本のエッセンスの探求、そして横の繋がりを作るためと思っていましたが、一年経ってみて私自分にとって"生まれた目的"を思い出すためだったのだと思えました。
振り返ると、この数年の変化の流れは本当に大きなものでした。

 そうしてこの春にはJamye Priceによる 『ライト・ランゲージ』のコースがあることを知り、発車直前の列車に飛び乗るようにして参加していました。
この時、きっかけを運んでくれたのは奄美大島で作られた奄美の四季シリーズ *4『ナウパカ』という不思議な花のエッセンスでした。
このエッセンスを摂らなければ、何度もスルーした広告を開いてみることは無かったし、ライト・ランゲージが以前興味を持ったことのある宇宙語であるとわからなかったでしょう。

 ライト・ランゲージのトレーニングコースの初日、水鉄砲から水が勢いよく噴出するように言葉が飛び出てくる体験をしました。
そして様々なトレーニングが終わる頃には、私が瞑想時に受け取っていたものとはライト・ランゲージだったのだと確信したのです。

 Jamyeの本にあったように、私も始まりはハンドサインや体の動きからでした。
しかし大きな動きはアチューンメントの妨げになるし、人前ではばかられ集中できません。
次第にその動きを手に、指先に集約しようと意図するようになったのです。
そうして指先のセンセーションから絵が描けることがわかり、絵の解釈を求めて言葉で受け取ることを意図するようになりました。
言葉は胸に湧くことが主ですが、自動筆記を試みたこともありました。

 この本を読むことで、私もまた自分のチャネリングに通じる感覚の始まりがどこにあったのかを思い出すこととなったのでした。

ライト・ランゲージ・トランスミッション テーマ「私は誰?」

ライト・ランゲージ とは・・?

 ライト・ランゲージ・トランスミッション*0とは直訳すると「光の言語の伝達」です。
チャネリングの一種の形態ですが、私たちが日常使う言葉に翻訳することを目的とはしていません。
ライト・ランゲージは量子的な言葉、多次元的な言葉とも呼ばれていますが、伝わってくる光(情報)を音の波として伝達することで、クライアント・受け手のハイアーセルフが必要とすることだけを粒子化して受け取ります。
ですから私 -- 送り手個人の意思や感情はもとより、識別や解釈と行ったフィルターを通さずに受け取っていただくことを可能にするものです。
言い換えるなら、宇宙語の波動、すなわち言霊・音霊をそのまま響かせ受け取ることに意味があります。

 そのソースは主にいくつかあるのですが、それらはエレメンタル・コード(精霊・自然霊系)、エンジェリック・コード(天使系)、ギャラクティック・コード(銀河系)、自身のハイアーセルフやガイドと行った存在などです。
初めのうちは過去生に縁のあった言語に近い異語として現れることが多いと言います。
伝達する形態にもいくつかの形があり、話す、歌う、ハンドサイン、そして描くことなどがあります。

 言葉では言い表せない感覚や、過去生(星の系譜)、他の次元に関すること、無意識にしまいこまれた記憶 -- そのような領域からの影響をクリアにするのにライト・ランゲージ・トランスミッションによるワーク、ヒーリングがより有効だと感じています。
ライト・ランゲージを学び始めてから、日常的な事象の中にも多次元的な情報があり、開示されることを待っている -- 可能性が眠っているのだと感じられるようになりました。
フラワーエッセンスもまた、摂る人の意図によって共鳴する部分が異なるのだと思えます。
エッセンスの波動も、ライト・ランゲージも量子的な働きをするのではないか、と想像します。

 ライト・ランゲージに開くことは誰にでもできます。
直観と同じように--信頼すればいつでも瞬時に見えない世界の叡智に繋がることが可能なのです。

 もう一つ私が感じていることは、他人から伝達してもらうよりも自分でその方法を学んだほうがより良いのではないかということです。
自らが受信して響かせることで日々の心身のメンテナンスしたり、より意識的に見えない存在・世界との相互交換--共に現実を創ってゆくこと、多次元に生きることの感覚を実感できるのではないかと思っています。

 少し本線から外れてしまうのですが、、
時を同じくして出会ったTimewaver Bizというコンピュータを使ったプログラムのコンサルテーションを受けるようになりました。
クライアントの量子場にアクセスするというプログラムにおいて受ける"調整"の部分とLLT(ライト・ランゲージ・トランスミッション)とは似ていると思えます。
コンピューター・プログラムですから、言葉による解析が行われるのですが、"調整"そのものは波動としてそのまま受け取るだけです。敏感な方なら体感することもできますが、それが重要なわけではありません。感じなくとも良いのです。
量子場や量子の振る舞い・原理を体験的に理解することは、そのまま宇宙を理解することに通じているのだろうと思えます。
3つのアスペクトを体験することでますます見えない領域と物質界の間で生きる理解が深まっていると感じています。

 そして興味深いのは、日本の花や神様との縁を結んでくれる和楽フラワーエッセンス/神楽フラワーエッセンス*5を作っているプロデューサーさんが日本で数少ないTimewaverのセッションも提供しているということです。

台風が来る前に

 週末には晴れる予報、小樽観光を終えてやって来る妹と一緒に山歩きをしようと予定を立てていると、地図にシャクナゲ岳という山があることに気づきました。
ひょっとして?と思い調べると、そこに咲くという黄花シャクナゲはヒマラヤ産のロードデンドロンと似た草丈10cmほどの小さな高山に咲く種だとわかりました。

 このロードデンドロンの精油を使ったミスト『Saced Earth』 *1 や別の種から作られたホメオパシーのレメディがあることが少し前に情報として入っており、気になっていたことから私に必要なものであると思っていたのです。

 今回は登りませんが、どんな山か、周辺のアクセスなど情報は入りました。今回は言わば下見です。
神仙沼から五色温泉への湿原巡りをしようと決めました。

 昼近くに神仙沼の入り口であるレストハウスにバスは到着しました。
山歩きには遅すぎるスタートです。
それでもゆるく歩ければ良いと思っていましたが、沼から大谷地手前の車道までの道はかなりぬかるんでいて木道は滑りました。
そして谷地の中の笹に埋もれそうな木道の行く先を見ると怖気付きました。
秋、不慣れな山でしかも熊のいるところ。
装備もハイキング仕様。
ここまでかかった時間を計算すると下山のバスに間に合うように五色温泉まで行くのは無理だとあっさり諦めました。
そこからは気楽に眺めの良い車道を湯本温泉まで歩くことにしました。

 私たちの尻込みを笑うかのように雲が晴れてゆきました。
そして行程の半分も歩かないうちに一台の車が止まり、「下山してくる家族を迎えに行くのでよかったら乗って行きませんか」と声をかけてくれました。
時間はたっぷりありましたが、車道歩きも十分楽しんだので・・お言葉に甘えて車に乗り込むとあっという間に大湯沼へ到着しました。

 散策路は立ち入り禁止になっていたので入れませんでしたが、温泉施設"雪秩父"で真っ白な硫黄の源泉と泥湯を楽しみました。
風呂上がりは畳の座敷で持参した弁当を食べ、コーヒーを淹れて一服。
バスが来るまでしばしごろ寝を。

ニセコアンヌプリ

 明日には台風が上陸の予報、雲は少し出ていましたがまだ晴れていました。
もう一日この空が持ってくれれば・・ニセコアンヌプリにロープウェイで登ろうと出かけました。
スキー場に着くと思ったより風が強く吹いていました。
風速13m、山頂は暗い雲にすっぽり覆われています。
雲が上がることを祈ってゴンドラに乗り込みました。

 強い風が吹く中、揺れるゴンドラで15分の空の旅。
山頂駅に到着する頃には -- 雲は一段と低くなり、みるみるうちに雲行きが怪しくなってきました。
しかし全く登らずに引き返す気に慣れず、とりあえず山頂を目指すことにしました。
笹を祓った登山道は土が剥き出しで曲がった根があちこち飛び出しています。
少し歩くとすっぽり厚い雲の中に。
20分ほど歩いて、どんどん強くなる風にこれ以上の無理は不要と思いました。
頂上を目指した人は私たちの先に行った1組だけでした。

 下山のロープウェイが強風で止まらないうちに戻ろうと結局降りることにし下り始めた途端、足を取られて転びました。
展望台のまで戻ると花火の音が聞こえ、ベンチを片付けている様子。
下山者のために動いてはいましたが、運行は見合わせとなったのでした。

 山腹はかなりの強風でしたが下界はなんともありません。
このまま戻るのもつまらないので、ペンション街を抜けて2年前に歩いた道、アンヌプリの麓を行く林道をニセコビレッジまで歩くことにしました。
結局今日ものんびり車道歩き、そして温泉へ。

嵐が過ぎて

 夜から雷が鳴り響き一晩中雨が降り続きました。
寝ている間に台風は近くを通過したようです。
朝に雨は上がりましたが突然の停電。
すぐに復旧したのですが、やはり電車もバスも動かず千歳空港は混乱の様子。
妹は札幌へ移動する予定が足止め、楽しみにしていた最終日のオクトーバーフェストも中止になってしまいました。

 幸いそれ以上の混乱はなく、翌日妹を送り出しました。
私はその日、一つの答えを迫られていました。
でもどうしても即答ができません。
一日様々なことをして本心を探りました。
けれども、やはり"今"その特急列車に乗ることはできませんでした。

羊蹄山周遊

 今朝も夜明けと共に目が覚めました。
せっかく晴れたのだから出かけようと机の上のパンフレットをひっくり返してバスで行けそうなところを見つけました。
羊蹄山の麓に水の湧くところ、京極噴き出し公園。

 にこっとバスの営業開始時間に電話をして、道の駅までのバスと帰りのバスを予約しました。
平日なのに道の駅は地元の野菜を搬入する人、買いたい人、旅行者でごった返していました。
ここから小樽行きのバスに乗り換え倶知安へ、そしてお昼を食べて喜茂別行きのバスで羊蹄山をぐるっと時計回りに京極を目指します。
本当は反時計回りに行けば近いのですがここから向かうバスはありません。
壮大な遠回りによる日帰り遠足です。

 車窓には緑のパッチワークとその向こうに羊蹄山。
数人の地元のお年寄りと私を乗せたガラガラのバスは、停留所に止まることなく特急さながらに飛ばしていきます。

 京極バスセンターからは徒歩で約1kmの噴き出し公園を目指します。
静かな住宅街を抜け尻別川を渡り、ほどなくして公園につきました。
豊富な湧き水が流れ出す緑と苔の美しい公園でした。

 もちろん帰りには京極温泉に寄ってひと風呂いただきました。
お湯は無色透明、露天風呂からは真正面に羊蹄山。
山頂には雲ひとつない快晴

 再び来た道をバスで倶知安へと戻ります。
この広い山麓一帯を開墾するとはどれだけ大変なことかと気が遠くなりました。
そしてそのような人の手の入る前の原野や山を、遠い昔に白老からニセコ、岩内、そして真狩から二風谷へと追われながら逃げたアイヌの娘の物語を思い出していました。

 毎朝ニセコの森と山々を眺めて過ごすうち、風に吹かれ、湧き水で喉を潤し、温泉の湯の成分と熱がじわじわと私の中に浸透して行くのを感じていました。

分かれ道

 駅前のカフェに立ち寄ってコーヒーを一杯。
支払いをして財布を鞄にしまおうと下を向いた時、飾り棚にあった『宇宙船とカヌー』と目が合いました。
その瞬間笑いがこぼれ「まただ」と思いました。

 人類の宇宙移住計画のために宇宙船を開発する使命を持って生きてきた科学者である父と、都会の生活に背を向けて深い自然の中へと回帰して生きる息子の話です。
この親子の物語がなぜかトリガーとなり、事あるごとに私の目の前に現れるのです。
その度に「私ならこの両極のどちらを選ぶのか?」となんども自問してきました。

 ある時、両極に見える二つのことは実は繋がっているひとつの円環なのだとヒントをもらいました。
でも今は -- その両方が同時に私の中に存在すると感じるのです。
ならばその両方を叶える仕事とは、生き方とは何なのだろう?
珈琲をすすりながら、そう心の中で繰り返していました。

 そしてふっと思い出したのは、私はこんな店を持ちたかったということでした。
二年前、ホームページに words of birds というページを作りました。
鳥の棲む森の近くで旅の本や古い地図に囲まれた喫茶店を開きたい、という計画でした。
でも介護で身動きが取れないと半ば諦めて、いつしかお蔵に入れた計画でした。

 壁一面の本棚には星野道夫さんの本がありました。
山の地図、冒険家の伝記、そして草木の絵本も。

 私が生まれたままの感性に立ち戻ることができる場所 -- それが北海道だと知っていたのでここまで来ました。
そして毎日風を感じ、雲や山を眺める時間という贈り物を受け取りました。

 けれどもそれができない忙しい日常では、一杯のお茶を楽しむ至福の空間とそこで流れるゆったりとした時間が、遠く自然の中に流れる時間に思いを馳せるひとときが私には必要なのです。
私が喜びを感じること、ならそれを仕事にしよう。
自然の中を旅したい。
ならばこれからもっと旅に出て受け取ったギフトを伝えよう。
そう思えました。

 橙に染まる羊蹄山を左手に見ながら、夕日を追いかけるようにバスは走っていました。
ニセコ駅で降りるとチロル風の駅舎にカボチャが!
ぐるりと360度、温泉綺羅の湯の前の広場も一面カボチャだらけです。
予約していたにこっとバスに乗り換えると、大きな石造りの倉庫群に灯りが。
改装されてカフェや催しなど、ニセコに住む人々のコミュニティの楽しい場へと変化してる中の様子が伺えました。
今のニセコを感じながら大橋を渡りホテルへ。

水が湧くように

 20年前、フィンドホーンに初めて行った時に引いたエンジェル『spontaneity』を想い出していました。
自発性とは自発的であること。漢字で読むとちょっと硬い、アグレッシブな感じがするかもしれませんが、英英辞典で読むとすんなりと受け入れられる表現の言葉です。

spontaneous 
happening or done in a natural, often sudden way, without any planning or without being forced:
Cambridge Dictionaly より引用

(どんな計画にも-外からの要請にも依らず、自然に、時に突然起こる-あるいは成されること)とあります。

 本来のニュートラルな状態に戻った時、考えずとも次の一歩が踏み出される感覚。
そこには気負いはありません。
けれども、その時微かに何かを受信しているのだと思います。
自分の投げた問いに対する世界の答えを、
見えない領域の自分がそっと息を吹きかけるようにして伝えているのです。
この瞬間が訪れるのをずっと待っていました。

Landscape Angel

 真夜中に一度目が覚めました。
南の空にオリオン座が輝いていました。
起きて外に出ては見ましたが、星の光を撮るにはホテルの周囲はまだまだ明るすぎるようでした。

 次に目覚めた時、カーテンの隙間の空が白んで夜が明けるのがわかりました。
起きて廊下に出てまずは羊蹄山を確認。
カメラを構える間にも紺色の空が少しずつ色を変え、やがて杏色に染まりました。
ベランダに出て昆布岳に挨拶をします。

 すると高いところに鳥のような、天使のような雲が。
その羽にいる丸い顔のbeingがこっちを見ているようにも。
人々が目覚める前、ランドスケープ・エンジェルは悠々とこの山々や森の上を、空高く飛んでいるのでしょう。
明日には帰るというこの日の朝、"ニセコ"が見せてくれた空でした。

いい湯だな

 朝食を早めに終えるといつも水を汲みにゆく坂本公園の近く、歩いて行ける秘湯--鯉川温泉へ。
懐かしい雰囲気の温泉旅館。今は日帰り温泉だけの営業だそうです。
朝から露天風呂に一番乗り。

 時が止まったかのようなしんと静かな館内でした。
お風呂場は相当年季が入っていてますが、このお湯を求めてあちこちから来る人も。
ちょっと日差しが眩しいですが、野趣溢れる露天風呂が気持ちいいです。
お湯は薄い緑の濁り湯。
目の前には森から落ちる水の流れ。

 "まぼろしの"とFacebookでもおすすめされていた高山ラーメンをカフェでいただきました。
細麺に醤油味のスープですが、普段食べなれない風味がしました。
スープに浮いている香油にコクがあるのだと思います。
残念ながら食べてしまったので写真はありません。
食後はわき水で淹れたコーヒー。
どちらも美味しかったです。

 宿に戻って帰り支度を。
広げた店をたたみます。
夜には隣のお宿で広い露天風呂と冷たい水風呂に交互に浸かり、湯上りにはロビーでバイオリンとピアノの演奏を楽しみました。

 明日は朝から空港への移動、でも飛行機は夕方5時。
せっかくなので私の店を思い浮かべながら -- 途中下車して喫茶店を巡ろうと下調べ。
一杯のコーヒーを楽しみに札幌を闊歩することにしました。

珈琲散歩

今回の滞在中、立ち寄ったカフェの記憶です。

倶知安 SPROUT 
駅前通り、店の入り口の焙煎機が目印。本格的なマシンで入れるコーヒー。
旅の本、山の本、オリジナル雑貨に囲まれた温もりを感じるおしゃれカフェ。

札幌 森彦(本店)
円山公園駅近く住宅街の中にある蔦の絡まる一軒家。カチカチと時計の音が懐かしい山小屋風カフェ。土日は混雑します。

札幌 SATURDAYS Chocolate Factory cafe
創成川イーストと呼ばれる地区に新しくできたチョコレート・ファクトリー。
BEAN TO BAR シングル・オリジンのカカオ版、産地ごとのバーが並びます。

札幌 寿珈琲
二条市場前 濃いめのネルドリップの珈琲。北欧アンティークのカップが棚に並んでいます。

あとがき

 埼玉に戻ってから1週間後には大雪山から紅葉の便りが、そしてあっという間に一ヶ月、中山峠には雪が積もったとニュースが届きました。

 戻ったとたん夜更かしのサイクルに戻ってしまいましたが、まだあの森の向こうの昆布岳がまぶたに残っています。
 自然の中に身を置く時、一体何が起こっているのでしょうか?
聞こえたのは "equilibrium" という言葉でした。
バランスがとれているように見える風景の真ん中には昆布岳と私を隔てる深く切れ込んだ峡谷がありました。
けれどもそれは問題ではありませんでした。
毎朝毎晩、雲に見え隠れするトコンポ・ヌプリ(コブのある山)の頂に私の心はありました。
なだらかな稜線にあるコブは自我かもしれません。
でもあの小さなコブはバランスの中の一部であると思えます。
ふと、イギリスにいた頃 -- 山頂のないなだらかな丘ばかり連なる風景に"退屈"を感じていたことを思い出しました。

 表紙裏と本編の終わりの画はあの雲と風景にアチューンメントして描いたものです。
二つのソースからのメッセージでした。
ランドスケープ・エンジェルは今日もニセコの空で歌っています。
あなたには何を語ってくれたでしょうか?

 最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

            2017年10月21日 吉沢良子

Journey on HP
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Essenecs in Japan
日本のエッセンス
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付録情報

*0 Light Language ライト・ランゲージ
  JAMYE PRICE.COM https://jamyeprice.com/

*1 Findhorn Flower Essences
  http://www.findhornessences.com/

*2 Australian Bush Flower Essences 
  http://ausflowers.com.au/

*3 ほしのしずく ~Gaia Life Art Space~
  http://stellagutta.web.fc2.com/
  Coming Home Essence

*4 Chan de Leur シャンドゥルール
  http://www.chandeleur.jp/ 
  
*5 Lotus フラワーエッセンス 
  http://flower-lotus.com/ 

参考図書
『Opening to Light Language』Jamye Price著
https://jamyeprice.com/product/

Naturally

2017年10月21日 発行 初版

著  者:Ryoko Yoshizawa
発  行:Journey on Books

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