spine
jacket

とても短いですがお楽しみいただければ幸いです。
因みに、救いようのない話です。

───────────────────────



黒い空は羽根とともに泣いている

伊川 頻也

フラグメントの海出版局



───────────────────────

…胎動などはなかったんだよ。
ー出来上がりなんてそんなものさ…。

■役職【神】は嘆けない。

「…やれやれ。赤い月も見飽きたし、黒い瞳の種族もウンザリだし。
何とか成らんのかね?幼処おさなどよ…、私はもうウンザリだ。」
 白髪の女が言った。耳は尖っている。ファンタジー等でお馴染みのエルフといったところか。
「神だって分からないさ。滅ぼす寸前まで追いやり、回復させる。
…この手法で、この「世界」は保たれてきた。が、役職的にボクは神だが…、
あんたが創り手だったわけだし…、壊したいのと違うというのが厄介だね、エディター?」
 幼処と呼ばれた少年は、感情の通っていない声で返事をした。
「エディター…か。どうする?私を殺してみるかい?坊や…」
 女は、【厭世感で私は出来てます】とでも言いたげな声で言った。

「死ねないくせに?痛いだけだぜ?ボクは別に構わないが」
「偶には…死にたい。仮死でいいんだよ。殺っておくれよ…、坊や」
「把握した。実行する。」
「…ありがとう。産んでよかったよ…ふふ」
「やめてくれ。ボクはシステムなのだから…。それに…」
 少年の声は、僅かだが、くぐもっている。
「それに?」
「…目覚めが悪くなる」
「…なるほど」
「…実行するぞ?」
「ああ。」

… … …。

「後味が悪いよ。…母さん。」
 少年は左目からだけ血のような赤い涙を流した。
 
 92億年目の「世界」の片隅で…。

【了】

黒い空は羽根とともに泣いている

2017年12月11日 発行 初版

著  者:伊川 頻也
発  行:フラグメントの海出版局

bb_B_00152670
bcck: http://bccks.jp/bcck/00152670/info
user: http://bccks.jp/user/142541
format:#002t

Powered by BCCKS

株式会社BCCKS
〒141-0021
東京都品川区上大崎 1-5-5 201
contact@bccks.jp
http://bccks.jp

jacket