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「枕の上の頭、見上げるとは限らない。」

伊川 頻也

フラグメントの海出版局



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  この本はタチヨミ版です。





-登場人物-





・ 雪徒(ユキト)…27歳。

酒と女好き。恋人がいるときは浮気しない。けっこうまじめ。
仕事は、実家のおもちゃ屋の手伝いという名の店長。
きれいな顔をしている。タバコは吸わない。

・ 冬歩(フユホ)…32歳。

タバコと海外の詩人好き。よく読書している。
雪徒の恋人。仕事はしていたが、ある程度、貯金できたのでやめたらしい。
とあるお茶の会社のOLをしていたらしいが本当かどうかはわからない。
そこそこ美人。












      ____或る夜。
              或るおもちゃ屋の二階にて。


「てめー…、ひとん家、来といてリルケかよ?あぁー?」
 雪徒は冬歩に悪態をつく。実は大して気にはしていない。
「うっさい。いまいいところなのよね。邪魔すんな、クソガキ。」
 冬歩は雪徒のほうを振り向きもせず、二つ返事をしてリルケの詩集を読み続ける。
「はあぁ?…てめェ…、ババアぁ……。そもそもリルケとか知らねぇし。なぁにがリルケだぁ。
この前は…、じゃ、ジャン・コクトー…だったよなぁ?……あ~…、腹へったぁ…。」
「…つくれば?」
 冬歩は刹那、本当に、刹那と言うにふさわしい一瞬のみ、雪徒を見て、言った。
「…つくって…?お姉さま?」
 雪徒は少し、可愛らしげな声を捏造してみせる。
「…殺すよ?」
 冬歩はすごく冷たい声と冷たい目で雪徒に吐き捨てるように答えた。
「…うぜぇ!!…っちぃぃぃぃっ。あー、はいはい。で?お前は食べないの?」
「はっ…。食べるに決まっとるがな。有史以前より貴様は私に飯を作るべきだ。」
 少しも悪気なく、冬歩は言い切った。
「ババア…、てめェ…、…んー…、ま、いいや。何食うの?」
 ケロッとした感じで雪徒は冬歩に注文を聞く。
「何でもいい。つーか本読ませて。」
 冬歩は少しだけ、笑顔で言った。
「ったく。だったら自分ちで読んでりゃ…何だよ?その顔は…」
「寂しいこと言うなよ?戦争は…終わったんだぜ?スケアクロウ」
 ・・・。雪徒は少し困ってしまった。…スケアクロウ?
「いつ戦争したんだよ?はあぁあ?……スケアクロウってっだれ?」
「…知らない。いいからアレつくって。」
 雪徒は考える。…アレ?アレってなんだ?アレはアレだろ?
アレってなんだ?アレはアレだろ?……わからねえ。…わかりやすさは大切だ。



  タチヨミ版はここまでとなります。


「枕の上の頭、見上げるとは限らない。」

2018年2月13日 発行 初版

著  者:伊川 頻也
発  行:フラグメントの海出版局

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