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二泊三日の合宿型出版イベント、ノベルジャム2018にて創作された『グッバイ、スプリング』(寧花著)の製作チームが再びタッグを組み、本作エクストラを上梓。

2018年3月26日に行われた日本独立作家同盟主催「グランプリ授賞式」にて、NovelJam2018特別賞を受賞いたしました。たくさんのご感想・ご声援誠にありがとうございました。今後とも『グッバイ、スプリング』『グッバイ、スプリング エクストラ』よろしくお願いいたします。

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グッバイ、スプリング
 エクストラ

寧花



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  この本はタチヨミ版です。

 目 次

悩めるケイ

悩めるホタル

マスターの日記

悩めるケイ

 ケイとホタルが高校二年になった春。ケイが一人で店に来て、何やら物憂げに席に着いた。平日の中途半端な時間とあって他に客はいない。そうだ、こいつら春休みか──と思う。
「なんだ、進級できたわりに辛気臭いな?」
「べつに」
「いいなぁ、お前ももう十七歳か。青春真っ只中だな。俺が嫁さんと付き合いだしたのも十七の時だったんだぞ」
「……」
 何か気に障ったのか、ケイは眉をひそめて顔を上げた。踏んではならない地雷だったか、だがもう遅い。
「聞いてよマスター……」
「どうしたの」
 ケイの向かいの椅子に腰掛けて、内心嬉しい気分で耳を傾けた。普段はどこか遠慮がちなケイにこうして頼られるのは近所の喫茶店のマスター冥利に尽きる。
「ホタルのやつ、オープンスクールに来てた新入生にまで告白されてたんだ……先週は先輩」
「へえ、やるなホタル」
 その先輩とやらは学校でも一、二を争うほど人気の男らしい。ケイはこう言っているが、俺はコイツもそこそこモテることを知っている。というのはホタルから聞いているからだ。ところがケイはある種の無頓着さを備えていて、基本的にはホタルのことしか見ていない──というのは、俺が長年見てきた実感だった。
「しかも、わざわざ僕に報告に来て得意げな顔をするんだよ」
「でもどうせ全部断ってるんだろ?」
 それはいつものことだ。ケイも俺のその言葉を否定はしなかった。
「アイツは一体何なの……」
「……面白いな。お前たち」
 少しも面白くない、と言わんばかりにケイは恨めしげな顔をしてアイスカフェオレに口をつけた。
 ケイがホタルに惚れていることは、近しい人間なら誰から見ても丸分かりだ。幼馴染がとんだ美人でさぞ落ち着かないことだろう。傍から見ている分にはとても楽しいものだが。
「いいね、青春だね」



  タチヨミ版はここまでとなります。


グッバイ、スプリング エクストラ

2018年3月21日 発行 二版

著  者:寧花
編  集:小野寺ひかり
デザイン:山家 由希
発  行:『グッバイ、スプリング』製作チーム

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寧花(しずか)

巧みなドラマと絶妙な駆け引きを得意とするシナリオライター。女性向け恋愛ゲームのシナリオを執筆。株式会社ボルテージ「特別捜査密着24時」「容疑者たちの甘いたくらみ」、フリュー株式会社「恋愛幕末カレシ」等一部シナリオを担当。
twitter アカウント @yagi_4zuka

『グッバイ、スプリング』(2018)
▶https://bccks.jp/bcck/153408/info

各電子書店にて配信中。BCCKSにて3位獲得
NovelJam2018特別賞を受賞

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