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      プロローグ


 沸騰する海底からマグマに押し上げられ、島が隆起し始めていた。
 グツグツと海面に溢れ出る真っ赤な溶岩は果てしなく吹き上がり続けていた。海の水はぶくぶく沸騰し荒れ狂い、うねる海面から立ち登る水蒸気と噴煙が日差しを遮っていた。まさに地獄だった。赤熱しゃくねつしたたりは狂奔きょうほんし、あらゆる微生物を殺戮し尽くしていた。細胞を持つものならすべて焼き殺す勢いで、終わりを知らぬようだった。ドロドロとした赤い溶岩の舌なめずりの音が真っ黒な大地に響き渡っていた。延々と続く地獄絵だったが、それでも、地球奥深くの力も衰える日を迎えた。マグマの吹き上がりが収まり大地の熱が冷め始めると、空は青空をようやく取り戻し、海風うみかぜが大地の微熱を少しずつ奪っていった。
 その様子を見ていた空飛ぶ動物たちは、新しい大地が物珍しかったのか、それとも旅の休息に都合の良い場所だったのか、大海原に吹く風に乗りやって来たり、蒸気が登り立つ島の上空を何度も旋回し平らな土地を慎重に見定めると、その内の数羽が恐る恐る降り立った。長旅で疲れたひ弱な脚を上下させ、ほつれた羽をほぐし、ようやく休息の体勢に入った姿を見ていた上空の鳥達は、安全だと確信したのか、次々にその平らな土地に降り立った。
 最初に降り立った鳥の群れが子育てを終え季節が一巡すると、数多くの鳥の群れがその後を追うように飛来し、何億粒もの種をその島に運んできた。
 冷えた溶岩の隙間に撒かれた種は、きっと戸惑っただろう。
 微熱をはらむ頑固な溶岩石は動ずることなく、無数の種たちは痩せ細り、朽ち果てていった。
 同じことが何度も何度も繰り返され、かなりの年月が経ったある日、歯を食いしばり我慢を重ねて生き残った数粒の種が芽をひょっこり生やし、太陽の光をキラリと跳ね返した。
 すると、どこかでその様子を見ていた幼い山の神と風の神が芽の輝きに誘われ、この地にフワリと宿った。まだひ弱な力の神々たちは、事態をただ見守るばかりだったが。
 芽生えた種は踏ん張って大きくなろうと試みたが、その多くが途中で力尽き、枯れ果て、雨や風にもて遊ばれコロコロ転がり、粉々になって大地に溶けていった。
 それでも、わずかな種が生き残ろうとした。
 母の乳房に必死に食らいつく赤子のように、生き残った種たちは、溶岩石に溜まったわずかな養分を貪欲に吸い、やがて双葉から四つ葉を開けた。薄緑色うすみどりいろした双葉や四つ葉は、暴力的な硫黄漂うその大地で、太陽の光を懸命に受けとめようとその葉脈を太くしていった。やせ細っていた根も大地の養分を吸いとるために、その根を広げていった。
 季節が巡り、育ち上がった草木くさきに花が咲き、実が熟れると、わずかな土くれに種をポトリと落とし、子孫を増やしていった。草木たちと共に育った山の神と風の神は、大地に寄り添い慎ましい声援を送り始めた。その声に励まされた種の子孫たちは、硬くデコボコした溶岩石の隙間に、恐る恐る根を伸ばし、やがて太く強く育つと硬い溶岩石を砕きだした。
 その時、種と溶岩石の戦いが逆転した。
 砕かれもろくなった溶岩石は、風雨にさらされ土くれになっていった。土くれとなり、そこに養分が蓄えられると、新たな芽吹きがあり、草木が林となり森となり、この大地は大きな深呼吸を始めた。雨風に鍛えられた緑が大地をさらに覆い、その色を深めると、それに誘われた小さな動物たちがどこかから現れ、寄り添い暮らし始めた。
 「暮らす」と言ってもそれは大変なことだ。
 大波が海岸沿いの暮らしを根こそぎ飲み込んだこともある。溶岩石の塊がゴロゴロ転がり、草木を薙ぎ倒し、押し潰したこともある。この星、地球の具合がおかしくなり、雨が一滴も降らず赤土が剥き出しになり、息絶え絶えになったこともある。
 島の真ん中あたりでは、今でも赤い土ボコリが舞い、寡黙な農民が衣服を赤く染め歯を食いしばり生きている。数知れぬ苦難を乗り越えたこの島の命たちは、それでも絶えることなく脈々と、今日まで生きづいてきた。そして、大きく育った山の神と海の神も、彼らと寄り添うように涙を流し、生まれ出ずり死に至るまで、時には激しく怒り、時にはエールを送り、一つ一つの命を見守り続けてきた。
 この島の命達は、真正面から戦い、朝露の涙をこぼし、苦難を乗り越えてきた。
 立派なものだ。
 北の海岸に建つ一軒の家に集う人間たちも同じだ。
 今日は、チィーリン・ハウスと呼ばれる、その家に集う人々の話をしようかと思う。喜怒哀楽と言っても、哀しみがその多くを占めている。そんなに楽しい話ではないかもしれない。

 「何故、話をするか」って?
 特に取り立てて理由はない。
 あえて言うなら、私の好きな人間たちがそこにつどい、あくせく日々を営み、そして何よりも懸命に「生きて」いるからだ。
 私が永遠の眠りにつく前に話しておきたいという、個人的な思いもある。
 私の身勝手なのは分かっているが。
 時間はまだ少しあるようだから、始めのところだけ話しても良いだろう。

 
 
 
      「鉄砲の弾」の話


 クリスマスの翌日の朝だった。

 父と私は、押し寄せる大きな波を見つめていた。
 濃いエメラルド色の大きな波の壁に、良い波を求め世界中からやって来たサーファーたちが、海鳥のようにポツリポツリと取りついていた。南の島の、この北の海岸には、冬になるとぶ厚い波が押し寄せる。そして、そのぶ厚い波を求め彼らがやって来る。せり上がった波の壁に果敢に取りついては呑み込まれ、空中に放り出されてもへこたれぬ彼らの姿に、父は何かを重ね合わせていたのかもしれない。
 
 朝食を終えた父と私は、砂浜と通りを遮る堤防の上でぼんやり時を過ごしていた。
 真っ青な空に千切れ雲が流れていた。
 砂混じりの北風が耳元で音をたて、椰子の木がざわめいていた。
 野生化したニワトリが胸を張りながら闊歩し、浜辺のシャワーの雫が風に舞っていた。
 海鳥が風に向かいホバリングし、自由を謳歌していた。

 何の話からか、私は父の二の腕の傷跡について訊ねた。
 ずっと気になっていたが、そのとき訊ねるべきだと思った。
 「パパ。この傷はどうしたの?」
 父は、「ああ。これか」と、二の腕に残る傷跡をさすった。
 焼けゴテをジュッとあてたように、いびつに肉が盛り上がり皮膚は引きつっていた。

 「ああ。これか。これは弾の跡だよ」
 「弾って?」
 「鉄砲の弾」
 「鉄砲の弾の跡」
 「そうだ。パパが、戦争に行ったとき、弾が当たったんだ」
 「え?痛かった?」
 「そうだなぁ・・・痛かったというより、熱かった」
 「熱いんだ」
 「そう。熱かった。とても熱くて、そして、なんだかなぁ」

 そのあと、何の話をしたのか、実は覚えてはいない。
 残念だが、父との思い出のすべてが今ではボンヤリしている。
 記憶の断片だけが私の心に残り、時おり、鮮明な情景となり蘇るだけだ。私の記憶力が乏しいからか、それともそれが普通のことなのかは、分からない。

 ただひとつ、はっきりしているのは、父の記憶が朧げだとしても、父は父の人生をきっちり生き終えたということだ。




      カリフォルニアの蒸し暑い夜

 カリフォルニアの蒸し暑い夜だった。
 海岸沿いの街に吹く涼やかな海風も、内陸まではそよいでこない。
 低い山脈に囲まれたこの町に篭った昼間の熱気は、夜になってもジトリととどまっていた。
 部屋の空気をかき回す扇風機の音が耳につき、寝返りを何度も繰り返して嫌な朝を迎えるのが、この町の住民に課せられた宿命だった。

 その夜、ジャックは夢を見ていた。
 繰り返し見る戦場の夢だった。
 密林の中をジャックは歩いていた。
 蚊に刺されようが、ヒルに血を吸われようが、何も感じない。
 身も心もあらゆる感覚が麻痺していた。
 泥水を吸った重い戦闘ブーツが体力を奪っていく。
 この密林を抜ければ我が家があるという幻想を抱いていた。
 密林の遠くに鳴り響く迫撃砲の音に首をすくめる。
 ジャックの隊列から距離を置き並行して進む敵兵が、ジャックたちをもて遊ぶように、闇雲に銃撃を繰り返し、笑い声をたてる。
 ののしり笑われ死の恐怖と戦う自分が滑稽だ。
 息をしているのか、いないのか。
 水滴が滴り落ちそうな空気を吸い、肺が水浸しになる。
 そして、屍肉と火薬の匂いが吐き気を誘う。
 体に染み込み慣れたはずの戦場の匂いだが、鼻腔の奥深くに忍び込むと目眩を起こしそうになる。
 チン!と、銃弾がヘルメットを擦った。
 嫌な気分だ。
 死神の舌鼓なのか。
 わずか一インチ先に、死が待っている。
 上空を見上げると、木々の隙間から、何十機もの爆撃機、B52ストラスフォートレスの機体が垣間見える。密林で這いつくばるジャックたちとは無関係に、高い空に大きな翼を伸ばしキラキラ輝き勇壮な姿を見せている。
 「優雅なもんだな」と罵り言葉を吐き捨て、視線を密林の先に戻したとき、ブン!と太い音が身体近くで弾け、上半身は仰け反り、ジャックは声にならない声を残して泥水に倒れた。
 糸が切れた操り人形のように、手足の力が抜け、熱い何かが腕を焦がし、意識がポンと飛んだ。

 「あ。あ。」

 「ねぇ!」
 「ジャック、ジャック、大丈夫?」
 ケイトの柔らかで微かな声が、頭上から聞こえる。
 天使が迎えに来たのかと、薄っすら目を開けると暗闇の中だった。

 「ねぇ。ジャック、大丈夫?」
 ケイトの心配顔が、視界に入った。
 「あ、ケイト」
 意識が開き、しばらくしてジャックは上半身をゆっくり起こした。
 ブン!という太い音が耳の奥に微かに残っているが、ここは密林ではない。

 「生きている、よな」
 ジャックは、二の腕を摩り深い息をひとつ吸った。
 パジャマ代わりのTシャツが寝汗でびっしょり濡れそぼり、全身の筋肉が気怠さを纏っていた。
 目が暗闇に慣れると、窓から薄っすら差す月光を受け、カーテンが揺らいでいた。

 「ねぇ、ジャック」
 ケイトは、ジャックの腕を静かに摩っていた。

 「ごめん、ケイト」
 「ううん。大丈夫、大丈夫だからね」
 「ああ。また、あの夢を見たんだ」
 「うん」
 「何、やっているんだか」
 「良いのよ、ジャック」
 「ありがとう。いつまでも、何、やてるんだか」
 「お水飲む?」
 「いや、今はいい。ごめん。いつも、いつも、こうやって」
 「大丈夫。大丈夫だから」
 「何かな。とても情けない」
 ケイトは、子供を抱えるように、ジャックの身体を胸に抱いた。

 戦争から帰還した兵隊を、「帰還兵」と呼んだ。
 戦争終結が見え始めたころ、ジャックは故郷に「帰還」し帰還兵となった。
 戦争が始まってしばらくは、帰還兵がこの町に無事帰還すると、町をあげて歓待したようだ。だが、戦況が悪化し訃報が次々もたらされると、町の雰囲気は変わっていった。敗戦の色が濃厚な町にジャックが帰還すると、心から喜んでくれたのは身近な家族や親戚、そしてわずかな知人だけだった。
 誰かしら、この町の住民は戦死者の訃報を受け止めてきた。
 生きて帰還した者を、彼らが笑顔で受け入れる心の余裕などなかった。

 帰還からしばらく経つと、ジャックは「帰還兵」という役回りを押し付けられた。
 兵隊でもなく、職につき日常生活を営む者でもない、宙ぶらりんな役回りだった。
 そして、文字通り悪夢に襲われる日々を過ごしていた。
 日がな一日、何をするでもない。
 戦場を共にした仲間はそれぞれの故郷に帰還した。
 今ごろ何をしているのだろう。精神に異常を来した者、五体のどこかに傷を負い不遇になった者。カフェで読んだ新聞には、そうした帰還兵の話が綴られていた。麻薬に溺れる者、犯罪に走る者、国の責任だとかなんとか。帰還兵を語るどの文字も、ジャックの実感からかけ離れていた。行間の向こう側で、帰還兵の多くが「静かに耐え忍んでいる」はずだ。大きな声で「平和」という言葉を叫ぶ連中が「光」なら、ジャックの心の中で生きている帰還兵たちは「陰」だった。

 戦争が終わると景気は悪化し、誰もが日々の生活を営むことに必死だった。
 そして、「帰還兵」という曖昧な役回りを演じるジャックは、世の中から弾かれていた。
 弾かれると、奇妙な猜疑心がもくもくと湧いてきた。「早く働けば良いのに」と思われていると考えていた。身勝手なジャックの猜疑心だった。
 帰還し日が経つにつれ、知り合いたちがジャックと距離をとり始めたのは確かだった。僅かずつ後ずさりし、彼らはジャックから離れて行った。「これも猜疑心のせいか」とジャックは自分を罵った。テレビや新聞に映し出される帰還兵たちも、冷ややかな目を浴びているようだった。そうした情報が、ジャックの猜疑心に拍車をかけた。

 ケイトだけが、ジャックを心から温かく受け入れてくれた。
 戦争から帰還したジャックは、約束通りケイトと結婚した。
 近くの教会で、両親と数人の友人に囲まれた小さな結婚式だった。
 そして、翌日から二人だけの生活が始まり、ケイトはジャックが抱える闇と向き合ってくれた。
 高校で音楽を教えるケイトは、「しばらく、ゆっくりすれば」と、ジャックが悪夢から立ち直るのを我慢強く待っていた。

 同じ高校で同級生だったケイトは、いつも明るくジャックを照らしてくれた。
 夏休み前のダンス・パーティーの夜、水玉模様のドレスのケイトは、まばゆかった。ダンスの下手なジャックの手をとり、ケイトがリードしてくれた。キラキラ輝くダンス・パーティー会場は、ハリウッド映画の一つのシーンのようだった。横断幕には、高校の紋章のライラックが描かれていた。そして、ケイトは、そのライラックの妖精のようだった。

 高校を卒業し、父の大工仕事に慣れたある日、戦場に行くことになった。
 戦況はすでに芳しくなく、この町にも戦死者の訃報が日々もたらされ始めていた。

 「ね。戦争から帰ったら結婚してくれない?」
 ケイトのか細い手をとり、瞳の奥を見つめながら告白すると、ケイトは「当たり前じゃない!もちろん!」と、小さな声で応えてくれた。結婚の先に何があるのか、そして戦争から帰ってきた自分のことなど、描けるはずがなかった。

 まだ若かった。

 そして、今、毎夜悪夢にうなされるダメな自分がいる。
 国の命令に従い、人を殺し、殺された。仲間の死をどれだけ見つめただろう。そして、敵兵の死を。それでも「国が悪い」と単純に割り切れぬ自分がいる。そう言い放てば、どれだけ楽だろうか。「すべては国が悪い」と口にすればこの悪夢から解き放たれるだろうか。火薬や死臭が漂う湿気た密林の空気を日々吸い込んだこの身体や心が、そう言い放つことで解き放たれるならどれだけ楽なのだろう。
 「すべては国が悪い」とそっぽを向き、笑顔で町を闊歩する。もちろん「帰還兵だ」という視線など楽々と跳ね返し、ケイトと手を繋ぎ大通りの映画館に行き楽しいハリウッド映画を観る。映画のあとは、イタリアン・レストランで美味しいディナーだ。ワイン・グラスをカチンと合わせ、ケイトと楽しい話を交わす。夢のような生活だ。
 しかし、現実は違う。
 誰かの責任に帰すことなど考えることもなく、毎夜悪夢に魘され、ケイトに子供のように抱かれる不甲斐ない日々を、ジャックは過ごしていた。




      「老いた漁師」と「チィーリン」


 密林の攻防からサイゴンの街に戻ると、数十人いた仲間の半数以上がニビ色の認識票だけになっていた。何も物語らぬ鉄片だけになっていた。そして、泣いたり落ち込んだりする感覚の失せたセルロイド人形のようなジャックがそこにいた。
 つかの間の休みが訪れ、ジャックはサイゴンの街中に出た。
 川を渡った先は戦場だが、街は人いきれで満ちていた。
 車やバイクの喧騒がジャックを道端に追いやろうとする。魂の抜けた異邦人は邪魔者でしかなく、街中で突然背後から撃たれたとしても構わなかった。失うものなど何もなかった。
 ジャックは、よたりよたりと人いきれに追いやられ、お気に入りのカフェに向かっていた。
 汗がじとりと流れ、シャワーで落とした汗と油が浮かび上がるが、つかの間の平和な世界にいるだけで気持ちは落ち着いていた。
 自動車やバイク、自転車で混み合う表通りからカフェへの近道の路地を曲がると、小さな古本屋が目に入った。「こんなところに、古本屋があったか」と、引き寄せられるようにその小さな古本屋に入ったジャックは、積み上げられた古本の山で最初に目にしたペーパーバックを手にとった。
 何者かが「そうあるべきだ」と誘ったように、ジャックはそのペーパーバックに惹かれた。
 裏表紙を見ると、それはベトナム人らしき小説家の英語訳された小説で、メコン川で漁を営む老人の物語のようだった。表紙と裏表紙を何度か裏返し眺めるジャックを、奥に鎮座する店主らしき老人がじっと見つめていた。裏庭から流れるハード・ロックをBGMに、ジャックをジロリと眺めていた老人は、ジャックが本を手にして近寄ると、ニコリと笑みをこぼしジャックが差し出したドル札を片手で素早く受け取り、「これは、良い本だ」と言った。

 「そうなんですか?」
 「そうだ。これは、本当に良い本だ」

 何が「良い」本なのかを訊ねても、その拙い英語では説明し難いだろう。老人もそれ以上は何も言葉にせず、大切な物の受け渡しが終わったように、ジャックをじっと見つめるばかりだった。ジャックは感情の見えぬその視線に耐えきれなくなり、「あ。ありがとう」と口にすると逃げるように店を後にした。

 戦場から引き上げても耳鳴りは低く重く残っていた。深海から上がって来た潜水士のようだった。路地裏から抜けた先にある広場のカフェは、表通りの喧騒から隔絶されており、耳の痛みは少しは和らぐはずだった。カフェには、木漏れ日がチラチラ揺れていた。パリの路地裏のカフェにたたずむようで、ジャックの心は安らいだ。

 テラス席の隅に腰を降ろし、エスプレッソと蒸気で温めたミルクの注文を終えると、ジャックは、手垢のついたその小説のページを繰り始めた。

 老人に名前はなかった。
 「老いた漁師」だった。

 老人の舟はりっぱなものでなく、板切れを張り合わせ水につからなくとも済むような粗末なものだった。遠くナパーム弾の炸裂する音、機銃の乾いた掃射音、稀薄化した何種類もの化学薬品の臭いや死臭、上空を覆う爆撃機の轟音、しかしメコン川を厚く包みこむ密林は、小動物のささやかな営みに満ちていた。

 「爺さん。今日はどうだった?たくさん獲れたかい?」
 「ああ。昨日よりは、ましだな。大なまずが増えてきたな」
 「良い餌が増えたようだ」
 「そうか。『栄養豊富』だな・・・」
 「明日も早く起きねば、な」
 老人の言葉を爆音が遮った。
 美しい銀色の翼の爆撃機が北へと飛んで行く。
 しばらくし、爆音が遠ざかると、小鳥たちの囀りが戻って来た。
 老人は美味そうに煙草をふかし、その囀りに耳を澄ましていた。

 淡々とした描写が続く物語だった。老いた漁師は雄弁に語らない。村人とも挨拶を交わすだけだ。政治家たちの巨大な時間と老人の慎ましい日々の時間が交錯し、物語が織り成されていく。濃いエスプレッソをひと口啜りページを閉じると、脳幹をひねられた感覚がジャックを襲った。目眩にも似た、安物のウィスキーで酔っ払ったようだった。酔った気分のジャックはポケットから皺だらけのドル札をテーブルに置くと、本を片手に席を立ち表通りへと歩き出した。

 陽は傾き、表通りには夕暮れの喧騒が始まっていた。人の群れが右往左往する表通りをぶらつくジャックは、やはり邪魔者でしかない。行き来する生きる執念から弾かれそうなジャックは、人いきれで湯気を立てる露店が立ち並ぶ横丁に迷い込んだ。肉、野菜、衣類、生活用具、ブリキのおもちゃ、ありとあらゆる物が売られる生活の場だ。道端に開かれた食べ物屋では、丼から麺をすする男たちの姿があちこちにあった。たくましい人々の逞しい生活の営みに溢れる露店街の人波に、流され歩くのをジャックは楽しんでいた。人とぶつかり揉まれ、生きていることを思い出そうとしていたのかもしれない。
 老いた漁師の古本を片手に人波に流されていると、ある露店の店頭にたどり着いた。
 「フェリックス・ミュージアム」がその露店の名前のようで、その店名がペンキで無造作に描かれた木片が、路上に立て掛けられていた。
 「何が、フェリックス・ミュージアムなんだろう」か。いぶかしげに、贋作ばかり(だろう)骨董品の山を眺めていたジャックは、その中にあった木彫りの置物に惹かれた。ライオンのような風貌の木彫りの置物に見覚えがあった。どこかで目にしたことがある置物だった。
 ジャックがその置物を見つめていると、店の奥から老人が、ゆらゆらやって来た。表情があるのかないのか、死んだ目の老人がジャックによたりと近寄り「これは、チィーリン(麒麟)というんだ。買うか?」と声をかけてきた。

 「チィーリン?」
 「そうだ。チィーリンだ」
 「お前、中国知っているか?」
 「知っているよ」
 「それは、中国の神話に出てくる動物だ」
 「神話に?」
 「そうだ。お守りみたいなものだ。買うか?」
 「ああ、お守りだね」
 「家に置いておけば、幸せになるから、買うか?」
 「幸せ?」
 「そうだ。希望のない奴には、必要だ。買うか?」
 「希望のない奴?」
 「そうだ。お前のような奴のことだ」
 「買うか?」
 「はい。買います」

 ジャックは老人の言葉に負けた。いや、信じたのかもしれなかった。幸福という言葉を忘れたセルロイド人形にも、お守りは必要なのかもしれなかった。どこから見ても土産用に大量生産された置物だったが、惹かれるものがあった。ジャックがうなずくと、老人はチィーリンの置物を素早く手に取り新聞紙に包み、すぐに裂けそうな薄いビニール袋の中に入れた。有無を言わさぬ手際だった。客を逃さぬという商魂が垣間見え、ジャックはクスリと笑いそうになった。
 ジャックの笑みをジロリと見た老人は、勘違いしたのか「じゃあ、もう一つつけてやろう」と、二つ目のチィーリンの置物も新聞紙に包んだ。老人のサービスだったのか。
 ポケットからドル札を出し代金を支払うと、死んだ目の老人はニコリと笑みをこぼし、「グッド・ラック」とジャックの手を握り絞めた。赤く血走ったその瞳は、密林に潜む悪魔のようだった。ジャックは青黒い血管が浮くか細い手を握り返し、「ありがとう」と言い置き、人波に漕ぎ出した。

 「グッド・ラックか。何だったかな。幸福」
 露店の飯屋でチャーシューと野菜を挟んだバゲット・サンドを頬張るジャックは、幸福という言葉の意味を失った自分を笑ってみた。過去と未来のない場所に迷い込んだジャックにとり、老いた漁師の話を綴った一冊の古本と、一対のチィーリンの木彫りの置物だけが、確かな現実だった。そして、苦いコーラで流し込む味わい深いバゲット・サンドだ。夢遊病者のようなジャックの脳裏に浮かぶ「幸福」という言葉の欠けらを、小さな悪魔が心の奥底からざわざわ浮き上がり、運び去ろうとしているようだった。




      「皺だらけの老人」、そして南の島へ


 帰還兵となり、錆びた心を引きる毎日だったが、それでも陽は差し始めていた。

 高校生のころ、運転免許を取るとジャックの行動範囲は広がった。低い山に囲まれた町から脱出するだけでも気持ちが高揚した。海辺にたどり着き、押し寄せる波を見つめているだけで、ジャックの世界は大きく広がった。そして、海辺沿いのサーフ・ショップで薦められたのがサーフィンだった。憧れはあったが、カリフォルニア州の内陸部に住むジャックたちにとり、サーフィンは身近なものではなかった。サーフ・ショップの店員が「ま、一度やってみれば」と借してくれた古いサーフ・ボードを脇に抱え、恐る恐る波に向かって行った。最初は見よう見まねで、波を潜り沖に出ることも覚束なかったが、休んでは波に向かいを繰り返しているうちにサーフ・ボードの上に立つことができた。すぐに沈没しダンパー気味の波に揉まれたが、そのとき何かのスイッチが入った。
 
 父の大工仕事の手伝いで貯めた金で中古のサーフ・ボードを手にした瞬間から、ジャックはサーフィンにのめり込んだ。

 しかし、それは遠い昔の話だ。屈託無く笑っていた日々が嘘のようだ。帰還兵となり、日がな一日、ぼんやり過ごしているだけだ。この数カ月、笑ったことなどないジャックだったが、ある日、アパートの中庭の木陰で青い空を眺めていると、あのころの潮風をふと感じた。あの海辺の日々に嗅いでいた風だ。耳奥で潮騒が小さく騒めいた。そして、部屋の物置部屋に仕舞い込んだサーフ・ボードを思い出した。引っ越し荷物と一緒に物置部屋に放り込んだままのはずだ。
 翌日、ジャックはケイトの出勤を見送ると、ロサンゼルスにあるサーフ・ショップまで車を走らせ、サーフ・ボードの修理道具を買い集めた。修理にかかる時間など考えなかった。百年かかろうと構わなかった。このまま年老い、修理途中のサーフ・ボードの横で永遠の眠りについても良かった。動機など考えもしなかった。中庭で潮風を感じ潮騒を耳にし、心が少し開いただけだ。

 中庭に持ち出したサーフ・ボードは、思った以上にひどかった。
 フィンは割れ、サーフ・ボードの表面はひび割れや大小の穴があちこちにあった。削ぎ忘れたままのワックスにはホコリがこってりこびりついていた。「まるで、皺だらけの老人だなぁ」と、ジャックはため息をこぼしたが、「さてと」と気を取り直しサーフ・ボードを手のひらで撫でてみた。
 その日からジャックの日課が始まった。毎朝ケイトの出勤を見送ると、中庭にサーフ・ボードを持ち出し修理を始める。それと、昼食用のバゲット・サンド。あの、サイゴンの街で頬張ったのよりは味は劣るが、懐かしさが染み渡った。麻のシャツを脱ぎ、「皺だらけの老人」に向き合う日々が始まった。朝から夕暮れまで、ハチドリの羽音を聴きながら時を過ごす。作業に集中すると、一日はあっという間に過ぎた。陽が傾きケイトが帰宅するころには部屋に引き上げ、夕食の支度にかかる。
 そうした日々が何週間か過ぎ、「皺だらけの老人」は息を吹き返していった。昔の精悍さはないが、波に乗るには十分な仕上がりだった。中庭の壁に立てかけると、老いて勲章をもらった老人が一張羅いっちょうらの服を羽織り背筋を伸ばしているようだった。
 「まぁ良いかな、これぐらいで」と、マグカップをテーブルに置くと、ジャックは足元からピンク色のペンキ缶と細い毛先の筆を取り上げ、最後の仕上げに取りかかった。
 あの夏の夜のダンス・パーティーの横断幕に描かれていたライラックの花だ。
 世の中を何も知らなかった二人はコロコロ笑い合い、ライラックの花を見つめキスをした。
 鉛筆で丁寧に下書きをし、細い筆で色を塗る。
 「皺だらけの老人」の一張羅の服にはピンク色のライラックが似合いそうだった。

 ある休日の朝、「海に行こう」とケイトを誘った。
 ケイトは驚いたようだった。
 フォークに刺したベーコンが揺れ、やがてケイトの大きな瞳がキラキラ輝いた。
 それからだ。
 錆びた心が少しは軽くなっていった。波は何事もなかったかのように、ジャックを受け入れてくれた。昔も今も波は変わらず、遠い水平線から押し寄せていた。浜辺のベンチの木陰に腰を下ろす身重のケイトは、波間に沈没するジャックを眺め笑っていた。

 週末になるとジャックは海に向かった。青くうねる波が、ジャックを待っていた。
 昔ほど、波には上手く乗れなかったが、波はジャックの心の錆を少しずついでくれた。

 ある日、「町を出よう」と言い出したのはケイトだった。
 景気が戻ってくると大工仕事も増え、ジャックは父の大工仕事の手伝いに汗を流していた。高校生のころから見よう見まねで父の手伝いをしていたから、少しは役に立っていたはずだ。

 ケイトのお腹が膨らみ、安定期に入ったころだった。

 「ね。ジャック」
 「うん?どうしたの?」
 「海のそばに住みたいんだけど」
 「海のそば?」
 「そう。海の近くに」
 「どうして?」
 「どうしてって。何となくだけど」
 ケイトは膨らんだお腹をさすりながら、部屋の隅に立てかけたサーフ・ボードを眺めた。

 「海のそばは良いけど。どのあたり?」
 「南の島」
 「南の島?」
 「そう。この町を離れて、いつも海が輝いているような島」
 「それで、南の島?突然だなぁ」
 「それがね。そうした方が良いような気がする」
 「そうなんだ。そうした方が良い、か」

 ケイトは、帰還兵という役回りにまだ閉じ籠っているジャックが心配だった。「皺だらけの老人」と名付けたサーフ・ボードを抱え、沖に向かうジャックは生き生きしていて、町中にいるジャックとは違うジャックが、波間に浮かんでいた。浜辺のベンチの木陰から波の上のジャックをぼんやり眺めていたケイトは、ふと思った。「海に囲まれた南の島に行くべきだ」と。

 「それで。仕事は、どうするの?」
 「なんとかなるんじゃない」
 「と言っても、さ」
 「きっと、なんとかなる」
 「なぜ?」
 「なぜ?って。そろそろ夢を描いても良いかなと思って」
 「夢か。夢だね」
 「玄関ポーチに置物があるでしょ」
 「ああ。チィーリンのこと」
 「そう。チィーリンって、幸せを運んでくれるとか言っていたじゃない」
 「ああ。あれを買った露店のお爺さんが、そう言っていた。店の名前はフェリックス・ミュージアムだった。何故かね」ジャックは、死んだ目をした老人を思い出した。まるで仙人のような老人だった。戦争が終わったいま、どうしているのか。おそらく、たくましく生きているんだろう。

 「希望のない奴には、必要だ、とか言っていた」
 「でしょ。まさにフェリックスね」
 「それは、どういうこと?」
 「だから。フェリックスって、希望っていう意味だったはずだけど」
 「そうなんだ」
 「そして、希望のない人に、希望を手渡したというところかな」
 「まるで、希望がないみたいだな。僕は」
 「そうかもね」
 「厳しいな」
 「私も、これからが見えないから一緒よ」
 「君が?」
 「そう。私も。あと、この町にも飽きたから」
 「飽きた?」
 「そう。飽きた。なんかウンザリ」
 「じゃあ、チィーリンがいるから、町を出る?」
 「そう。そういうこと」
 「そういうこと?」
 「そう。チィーリンにお願いして、次の世界を見たい」
 ケイトの瞳が輝いた。

 「でも、引っ越すとなると、大変だなぁ」
 「まあね。でも、本当に必要なものだけで良いんじゃない」
 「本当に必要なもの?」
 「そう。本当に必要なものだけ」

 ジャックは「本当に必要なもの」が、すぐには浮かばなかった。何が必要で何が必要でないのか。その線引きをする自信はなかった。帰還兵として町に帰ってきたころの、呼吸をしているだけという感覚はかなりマシにはなったが、消え去ってはいない。父の大工仕事を手伝っていても、手が止まることがある。呼吸さえしない自分がいた。けれど「飽きた」のは事実だ。「うんざり」だった。そして、南の島。膨らんだケイトのお腹を見つめるジャックは、「希望」という小さな欠片を掴みかけていたのかもしれない。

 「ねぇ」
 「うん?」
 「実はね」
 「何?改まって?」
 「航空券を、買ったの」
 「え?」
 「だから、航空券を」
 「いつ?」
 「このあいだ」
 「で、いつ行くの?」
 「次の感謝祭が終わったころ。感謝祭からクリスマス休暇の間は、暇だって言っていたでしょ」
 「うん。いま手伝っている家の修理も、あと少しで終わるから、感謝祭が始まったら年末までは暇だって父さんが言っていた」
 「じゃあ。良いよね」
 「うん。行かないと、もったいないし」
 「じゃ、決まり。一度行って見て、家を探さない」
 「家、って」
 「そう。家。私たちと、この子が住む家」
 「分かった」

 ジャックは、サイゴンの町で出会ったフェリックス・ミュージアムの老人の言葉を思い出した。

 「希望のない奴には、必要だ。買うか?」

 酷い言い方をされたものだ。死んだ目の老人に「希望のない奴」呼ばわりされたわけだ。けれど、あのときは、その言葉を素直に受け止めるしかなかった。いまだって、希望の意味などはっきりしない。帰還してから、その意味を深く考えたことなどなかった。

 南の島に何があるのか、正直言って分からない。
 ただ、ケイトとお腹の子供との三人で暮らす場所は、この町ではないという気はする。

 「さてと。寝ようか」
 「うん。寝ましょう」
 ジャックは、ケイトの背をさすりながら、ゆっくり目を閉じた。

 「そうだ・・・チィーリンと、あの小説だけは、持って行こう」
 ジャックは「本当に必要なもの」リストにその二つを書き加えた。




      不動産屋のフレッド


 手渡された紙ファイルは、年代物だった。
 ファイル名が何度も書き換えられた跡があり、角は擦り切れていた。ジャックが両手で紙ファイルをしげしげながめ、「どうしたものか」と持て余していると、ケイトが「あら、ありがとう」と奪い取り、物件情報が書かれた資料に目を落とし始めた。

 島の南にある繁華街の安ホテルにあった電話帳で調べ、訪れたコーエン不動産の主人、フレッドは寡黙な老人だった。

 「わざわざ、この島に住みたいって?」
 「いろいろ調べてみて、この島の、この町が良いかなと思いまして」と、「希望する物件」アンケートをフレッドに手渡すと、フレッドは「ふむ」とうなずき、何冊かの紙ファイルを書類棚から取り出してきた。その書類棚は厚い木材で作られていた。書類や本が整然と並べられ、いくつかの写真が置かれていた。若かりし頃のフレッドと女性、そして髪の毛がクシャクシャのソバカスだらけの少年。何十年も前の、家族写真のようだった。

 熱心に物件情報に目を通すケイトを横に、ジャックとフレッドは何を話して良いやら探り合っていたが、やがてフレッドが先に口を開いた。

 「あなたは、あの戦争の帰還兵?」
 「そうです。戦争も終わりのころでしたが」
 「そうか。それは、大変だっただろう」

 フレッドとの会話はそれだけだった。
 フレッドは、ジャックの言葉を噛みしめると瞳をゆっくり瞬かせ、「二人でゆっくり見てください」と言い残し奥の部屋に消えていった。

 フレッドがいなくなると部屋の空気は幾分軽くなったが、ケイトの眉間には深い皺が寄り始めていた。「はぁ。ふぅ。なるほどね」ため息が増えるたび、ケイトの横顔に落胆の影が宿っていった。

 「どれもこれも、やっぱり、難しいわ」
 「難しい?」
 「ええ。築何十年だと予算に合うけれど、ボロ家だわ」
 「ボロ家かぁ」
 「そうね。どれもこれも」

 「希望する物件」アンケートに目を通したフレッドが言い残した言葉通りだった。
 「どれもこれも、手を加えないといけない、な」と呟くばかりだった。
 フレッドから手渡された紙ファイルの物件情報は、確かに「かなり」手を加えないといけないものばかりだ。夢に描いていた家はどこにもなかった。現実は、二人の夢の欠けらさえ入りこむ隙間を見せてはくれなかった。眉間に皺を寄せ、いくつかある物件のうち、ようやく二つの物件を選んだとき、フレッドが内ドアを開け顔を覗かせた。

 「フレッド。この町のことをあまり知らないから、とりあえず何軒か案内してもらえれば有難いんですが?」
 「ケイトさん、良いですよ。明日は暇だから、お付き合いしますよ」
 「ありがとう、フレッド。で、この二軒に興味があるんだけど」
 「それですね。海辺沿いの家ですね。ただ」
 「ただ?」
 「ただ、カリフォルニアの人なら知っているでしょうが、海辺沿いの家は手入れが大変ですよ」
 「そんなに大変なんですか?」
 「それはもう。四六時中潮風にやられますから」
 「四六時中ですか」
 「車なんかすぐに錆びますしね」
 「そうなんですか」
 「せっかく海辺の町だからと言っても、本当は海辺の家は避けてもらった方が良いんです。本当は。思ったより維持費がかかりますから。それでも良いなら」
 ジャックとケイトは顔を見合わせた。

 「そうは言っても、予算が限られているなら良いのかもしれません。あなたたちの手で修理し、手入れを欠かさないならお勧めかもしれません」不動産屋風の淡々とした言葉だったが、その行間に微温がこもっているのに、ジャックとケイトは気づいていた。その理由はずっと後になり分かったのだが。

 「じゃあ、明日の昼過ぎに、この二軒も含めていくつか見に行きましょう。それで良いですか?」
 「フレッド、ありがとう」
 「では、明日の昼過ぎ。午後1時頃にここに来て頂いて、私の車で行きましょう」

 その夜、ジャックとケイトは何も語り合うことなく眠りについた。
 夢と現実の違いなど嫌というほど見せられてきた。
 「そんなことは、なんて言うこともない」という強い意志だけが二人を突き動かし、この島にやって来た。スタートは切られた。後は、未来を開いていくだけだ。
 うす暗がりの天井を睨むジャックとケイトは、自分に問うていた。
 「大丈夫だ」と、心の中で何度も繰り返していた。
 エアコンの室外機のうなり声が子守唄になったのか、日中の慣れない強い日差しで疲れた二人は、やがて静かに眠りについた。

 翌朝、紹介された家はどれもこれもぼろ家だった。フレッドの言葉通りだった。浜辺沿いの家は痛むのが早い。手入れを怠るとすぐにダメになる。「慣らし」のつもりで何軒か物件を見せてもらったが、まるで廃屋ツアーのようだった。崩れかけた家ばかりだった。心がポキリと折れそうになり意気消沈していた二人が、ようやく辿り着いたのが築数十年の、潮風でペンキやら何やらが剥げ落ちた、「ボロ家」だった。

 「ここだね」

 その家にジャックは強く魅かれ、笑みを零した。
 潮風がそよぐベランダに立ち海の輝きを目にしていたジャックは、暗がりに追いやっていた正気を掴みかけているようだった。あらゆるものから開放されたようなこの家に、強く魅きつけられた。海があり空があり、水平線が見え、潮風がそよいでいる。

 「海辺近くの家は常に手入れしないと。これから住むには、手入れがかなりいる物件です。でも表示している金額より、かなり安く交渉できると思いますが」と、背後に立つフレッドが囁いた。
 住む覚悟があるのか否か、問われているようだった。
 どの町にも昔からの住人がいる。
 匿名で生きる大都会なら誰がどこからやって来てどこに住み着こうが、無視してくれる。
 しかし、小さな町ではそうはいかない。
 ジャックとケイトが住んでいた、カリフォルニアの田舎町でもそうだった。

 「ここに決めたいけど、いいかな」
 ジャックはケイトに囁いた。

 「うん。でも、かなり手を加えないといけないみたい」
 野生化したニワトリが腐りかけたテラスの下を闊歩するのを目で追い、ケイトは少し不安な顔を覗かせた。

 フレッドは黙って二人を見守っていた。
 答えは二人が決めることだ。
 そして、この町に溶け込めるかどうかも二人次第だった。

 フレッドがドアの鍵を開けると、ジャックとケイトは、暗がりの中に恐る恐る身を入れた。瞼を何度か閉じ暗がりに目が慣れると、窓からの木漏れ日に映し出された部屋は、血肉が削ぎ落とされた骸骨のようだった。染みだらけの壁、でこぼこ浮いた木の床、腐りかけた剥き出しの配管。部屋に置き忘れた机の上には、壁の隙間から忍び込んだ埃と砂が溜まっていた。

 「配管は、まだ持ちそうだけど」
 「でも、すぐに新しいのに変えないとダメだろうね」

 何を話せば良いのか、ジャックとケイトの頭には、言葉が一つも浮かんでこなかった。最初の一球目で大暴投し収拾がつかなくなったピッチャーのように、ダンスパーティーでバンドが演奏を始めるや足を滑らした女子高生のように、二人の心はきっかりくじかれていた。
 部屋の隅の蜘蛛の巣にかかった虫が、バタバタと動いていた。屋根裏にはネズミが走り、そして屋根で鳩がクークーと鳴いている。

 ケイトのか細い手を握りしめるジャックは、部屋を覗いてはため息をつき、うなだれ、二階へと階段を登って行った。

 二階の天井には雨漏りのシミが目立っていた。悪い予想は当たるものだ。あきらめの言葉さえ思い浮かばなくなっていた。海に面した部屋にたどり着くと、ジャックはカビ臭い部屋の空気を吸わぬよう、窓辺に忍び足で近づき窓をゆっくり開けた。「ギィ」と錆びた蝶番の軋む音とともに窓を静かに開くと、二人は目を閉じた。日差しがあまりにも強かっからだ。そして、カラリとした潮風が吹き込み、ケイトの髪をさっと撫でた。

 「あ」
 二人は外に広がる海に心を奪われた。
 ただただ、光る海がそこにあった。
 緩やかに湾曲する水平線が見えた。
 ベランダで感じた海よりも、何倍も大きな海がそこにあった。

 「ケイト。ここにしようか」
 「うん。あ?」
 「どうしたの?」

 窓の外に顔を出し、辺りを見回していたケイトが笑顔になった。

 「どうしたの?」
 「うん。あなた、ちょっと待っていて、私、お隣りを見て来るから」

 そう言い残すと、ケイトは、足取り軽く階下に降りて行った。
 「お隣り?・・・」

 ケイトが居なくなった二階は、ホラー映画のセットのようだった。埃がたつ乾燥しきった暗闇に、光が朧げに差し込んでいる。ジャックは我慢しながら二階の部屋の状態を調べ、ひどく落ち込みながらフレッドが待つ階下のテラスに戻って行った。
 
 「いかがでした?」
 「はぁ。大変そうです」
 「そうでしょう」
 「けれど」
 「『けれど』?」
 「けれど、魅かれるんです、この家に」
 「そうですか。それが一番大切かもしれませんね」
 「何故だか分からないのですが。とても」
 「そういうものかもしれません。求めていた住処なのかも」
 「『求めていたもの』?」
 「頭で考えるだけでなく、心が何を求めているのかも重要かもしれません」
 「心が」
 「そして、隣人。あ、奥さんが戻っていらっしゃいましたよ」

 ジャックの視線の先に、隣家から戻って来るケイトの姿があった。

 「ケイト、どうだった?」
 「どうだった?って?」
 「だから、隣りに住んでいる人たち」
 「うん。素敵な方々。奥さんも私と同い年ぐらい」
 「そうなんだ」
 「そしてね、私と同じで、いま妊婦さん。この子の良い友達になるかもね」
 ケイトは、ぷっくら膨らんだお腹を両手で摩り、深く息をついた。

 「でね」
 「で?」
 「ここに決めましょう」
 「それで良いの?」
 「隣人こそ宝物、だから」
 「それ聖書の言葉か何か?」
 「え?お母さんが言っていた言葉」

 「ふむ」と、フレッドがうなずいた。

 「そうですね。家というのは、見た目だけでは良し悪しが分からない。『隣人』、良い言葉です」 フレッドは細めた目を水平線に留め、二人の次の言葉を待った。

 ジャックとケイトがこの北の海岸にある家に引っ越したのは、その二ヶ月後だった。
 引きずる重しを断ち切れるかどうかは分からなかった。
 希望と不安を抱え、二人はこの町にやって来た。
 チィーリンの置物と老いた漁師の小説、そして「皺だらけの老人」と名付けたサーフィン・ボードと一緒に。

 そうそう、二人だけじゃなかった。
 ケイトのお腹の中で育ち始めている、素敵な男の子を忘れてはいけない。




      蹄鉄


 フレッドが紹介してくれた町外れの狭いアパートに寝起きし、ジャックとケイトは新しい生活に乗り出した。
 ジャックは、町にある中古道具屋に通い大工道具を一つずつ買い揃えていった。必要な木材は、町役場と話をし廃材を格安で貰い受けた。フレッドの顔見知りの古道具屋で、裂けた生地のソファー、グラつく机、脚の長さがちぐはぐな椅子を安く手に入れた。どれもこれもそのままでは使い物にはならないが、良い木材で作られているのが気に入った。良い木材なら、手を加えれば立派な家具になるはずだった。
 ケイトは町の布地屋や手芸店を周り、日焼けした格安の生地やハギレを集め、毎日ミシンに向かった。ミシンも年代ものだった。フレッドの亡くなった奥さんが長年使っていた足踏み式の古い型のものだったが、サビひとつなく使い勝手も良いミシンだった。

 「フレッド、ありがとう」
 「いやいや。私が持っていても、使わないので」
 「でも、奥さんが使っておられた」
 「ケイト、それで良いんですよ」
 「本当に?」
 「妻が生きていれば、きっと君たちのことを大好きになったはずだから」
 「ありがとう、フレッド」

 テラスに置いたテーブルで、三人は語り合った。

 「あまり話したくはなかったんだが」

 フレッドの息子も、あの戦争に行った。そして、戻って来なかった。戻ってきたのは、あのニビ色の認識票だけだった。そして、その数ヶ月後、フレッドの奥さんも亡くなった。心労がたたったのかもしれない。乳がんの闘病生活を長年送った奥さんは、息子のニビの認識票を手にとると、顔色ひとつ変えずにその鉄片を握りしめ、酸素マスクに隠された唇を震わせていたという。そして、力尽き、眠るように旅立った。
 訥々と話し終えると、フレッドは温かな笑みを浮かべた。

 「あなたたちがここに住み、素敵な家をそして家族を『育てて』くれるなら、妻も喜ぶに違いないと思うんです」

 「フレッド。何も知らずに御免なさい」
 「いえいえ。それが人生です。そして、果敢に生きようとする人に何もしないわけにはいかない。この家は良い家ですよ。見た目は酷いが。あ、すみません。けれど、ここは、この場所はこの島の山の神様と風の神様が行き来する、特別な場所です」
 「『山の神様と風の神様』ですか?」
 「そう。その神様たちが行き来する場所だと、昔から言われているんです」

 ジャックとケイトは、驚き、見つめ合った。

 「なんか、神秘主義みたいな話で恐縮ですが、この島に住むということはそうした神様と一緒に住むということです」
 「そうなんですか」
 「あの公園の先に、あの駐車場の向こうに岩場があるでしょ」

 フレッドはゆっくり腕を上げ、遠くにある黒い岸壁を指差した。

 「あれは溶岩が流れた跡です」
 「溶岩ですか?」
 「そう。溶岩です。この島が海底から隆起したときの名残りです。島が隆起しても溶岩が流れ続け、そして海に押し出していった跡です。昔は、草も木も何もなかった。ただただ真っ黒い溶岩だけの島でした。でも、ある日、鳥が種を運んできたのでしょう。その中から、何粒かの種が踏ん張って育ち、根をはやし、緑の葉を拡げたわけです。そして、山の神と風の神が宿った」

 二人にとり思いもよらぬ島の歴史だった。

 「ああ、これは申し訳ない。話をし過ぎた。でも、この島に住むことの楽しさや喜びは、その種の芽吹きから繋がっているんですよ。脈々と。では、長居してはいけませんから」

 フレッドは立ち上がると、「そうそう」と言い、足元に置いた紙袋から鉄の置物を取り出し、テーブルに置いた。

 「これはお守りです。蹄鉄」
 「蹄鉄?」
 「そう、馬の蹄につける蹄鉄です。何もできませんが、これは私の家に長年伝わるお守りで、玄関先に置いておけば、幸せになれるという言い伝えがあリます。良ければ。あの玄関に置いてあったチィーリンの置物の側にでも飾ってください」
 「ありがとうございます。飾らせて頂きます」

 フレッドの車を見送りながら、ジャックとケイトは手を握り合った。

 ボロ家は、やがて生まれ変わっていった。
 そして、ジャックだ。
 日々の作業がジャックの心を立ち直らせていった。
 「帰還兵」という役割から解き放たれ、ジャックは新たな役割を見つけていた。




      幸せって、何?


 「鉄砲の弾」の話のあと、父と何を話したのか実は覚えていない。
 
 私が、子供から少年、少年から大人になり、子供が生まれ家族を持ち、ようやく父が分かってきたような気がする。けれど、私が成長するにつれ、父の記憶は断片となり、ひび割れ粉々になって風に吹き飛ばされようとしている。やがて、その記憶の粉は、砂浜で舞い上がり、海へと帰って行くだろう。

 それでも構わないと思う。
 父が、父の人生をきっちりと生き終えたというのが、一番大切だ。

 今も、この家の玄関に一対のチィーリンが鎮座している。
 中国の神話にある「麒麟」という名の動物で、「幸せをもたらす」という。

 「幸せって何?」と、父に訊ねたことがある。
 父は何も答えず、水平線の先をじっと見つめ、しばらくして小さな笑みを一つこぼした。
 私は目を細め、父の視線を辿った。
 その視線の先に何があるのか?
 父に、何が見えているのか?
 知りたくなったからだ。

 眩い光の先を、私は懸命に見つめた。
 けれどそこには、大きく弧を描く水平線と輝く波がうねっているだけだった。

 〈「チィーリン・ハウス」(本編)に、続く〉





   雷文の作品紹介 ①

   「春は菜の花」

 プラスチック臭漂う新興住宅地で育った一人の男、太一のなんでもない「小っぽけな」人生の物語。浮き沈み激しく揺らぐ景気に翻弄されながら、三度結婚し、三人の子供をもうけ、そして三度離婚した太一は、破天荒だったが自分なりの人生をなんとか生き切った。そこには、太一の好きなロックがいつも流れ、そして真っ黄色な菜の花が咲いていた。なんでもない「小っぽけな」太一の人生を彩る、狂気にも似た、そしてゴッホが求めた希望にも似た黄色い菜の花が垣間見えるなか、三人の子供達(ヨシオ、サキ、ケイ)は、太一とぶつかり、生きる術を学びながら、それぞれの人生を歩み始める。現代の、微妙にゆがんだ日常にあらがい、果敢に生きた、太一という一人の男。これは、そんな「ちっぽけ」な男の、大人の為の物語。

   雷文の作品紹介 ②

   「リト・エル・グランデ」

 伝説の覆面レスラー、リト・エル・グランデを巡る物語。引退間近となったデビル・キングは、子供の頃に出会った名も無き覆面レスラー、リト・エル・グランデを超えることはできなかった。引退試合を前に、デビル・キングを取材した若い新聞記者レイは、その名も無き覆面レスラーの消息を追い、デビル・キングが超えられなかった「もの」を追い求めていく。一人の男が覆面レスラーという夢を抱き、果敢に生き、そして去りゆく姿を、デビルズ・フォールという街に巣食う悪魔達が天使の衣をまとい見守るなか、アル中の元スポーツ記者、敏腕だった老ジャーナリストやメキシコ料理店の料理人、いくつもの人生の物語が交差しながら描かれていく。淡々と生きる大人の人生に抱かれた「熱情」を描いた物語。

   雷文の作品紹介 ③

   「聖ニコラスの機械式自動車」

 鉄の塊のような自動車を愛する自動車整備工、ジャックと仲間たちの物語。砂礫地帯にあるジャックの自動車工場に、ハリウッドで活躍する俳優達ージョージ、ジョー、ビルーがやって来る。誰もが鉄の塊のような自動車を愛する男達、機械式自動車愛好会の仲間だ。電子化の時代にあらがうように、一台一台、ジャックは、彼らと共に理想的な機械式自動車を作り続ける。そして少年だったマイキー。今は、電気自動車会社に勤めながらも、子供の頃から憧れていた鉄の塊のような自動車を、今も思い描いている。鉄の塊のような自動車、機械式自動車に向けられた大人達の愛情を通し、物作りの温かさを心にしっかりと抱える大人たちの物語。聖ニコラスからのクリスマス・プレゼントとは何か。これは、大人の為のクリスマス・ストーリー。

   雷文の作品紹介 ④

   「桜、まだ咲かぬ」

 京都・太秦の東松撮影所の保管庫で、ある古いフィルムが発見される。同北大学の映像文化研究者・桜田教授は、アルバイト学生の青山雷花と蜂岡大也の手を借り、関係者の話を聞きながら、その未編集フィルムの復元を始める。それは、戦後間もなくの頃に制作され、未公開の映画作品「桜、まだ咲かぬ」だった。 戦後間もなくの頃。復員兵の斎藤清太郎は、「われわれの仲間」の多くを戦争で失った現実を前に、生きる厳しさに翻弄されていた。やがて東松撮影所に戻った斎藤清太郎は、これからの時代を夢見るため、生き残った「われわれの仲間」とともに映画「桜、まだ咲かぬ」作りに奔走する。現代と戦後間もなくの二つのときを行き来しながら、物語はやがて終焉へと向かい謎が紐解かれていく。「桜、まだ咲かぬ」は何故未公開に終わったのか。戦後を生きた名もなき映画人たちが、今を生きる我々に託した映画の魂、そして夢とは何かを描いた、大人の為の、そして映画をこよなく愛する人々の為の物語。


 雷文の作品は、主要デジタル・ブック・ストア(含、KindleやiBooks)全十二社にてお読み頂けます。 また、BCCKSにて、紙本を発注することができます。ぜひ、お読み頂ければ幸いです。BCCKSでの雷文作品は、「https://bccks.jp/store/qfci」にアクセスして頂ければ深甚です。




 雷 文 プロフィール

 京都市生まれ。
 本名、中嶋雷太。
 同志社大学大学院修士(新聞学)修了後、出版社、外国政府機関を経て、株式会社WOWOW(当時は、日本衛星放送株式会社)にプロパー社員として入社。シニア・エグゼクティブ・プロデューサー等を歴任。開局直前より番組プロデューサーとして国内外の映画、演劇、テレビ番組やイベント制作に携わる。京都・太秦の実家在住時より、自分の観たい映画、演劇やドラマを夢想し続け、WOWOWでのプロデューサー業のかたわら個人的に映画・演劇・テレビドラマ化を想定した数多くのロング・シノプシスを書き溜める。二〇一八年、元・雑誌編集長等の助言を得て、書き溜めたロング・シノプシスの「ストーリー・テリング化」を始め、第一作「春は菜の花」を七月に発表。デジタル・ブック・ストア(現在、KindleやiBooksを含む全十二社)を通じ配信。これに続き、第二作「リト・エル・グランデ」(九月)、第三作「聖ニコラスの機械式自動車」(十一月)、そして「桜、まだ咲かぬ」(十二月)を続けて発行。本作「プロローグ: チィーリン(麒麟)・ハウス」は、南の島の北の海岸にある一軒の家(チィーリン・ハウス)とその家族や町の人たちを巡る、喜怒哀楽に満ちたたおやかな物語で、雷文のライフワークの一作であり、長編作品のプロローグ編として発行。今後本編続編数作を発行予定。
 小説でも脚本でもない、親が子供に寝物語するようなストーリー・テリングを目指し、大人の為の物語として、国境を超え世界の人々に楽しまれること、そして百年保つ物語を世に送り出すことを目標に、二〇一九年以降も複数の物語を発行する予定。また、次代を睨み、既成概念に囚われぬ映画、演劇やドラマを創り出したい人々との幅広い交流の場作りを目指している。
 雷文の作品の発行元、チィーリン・ファミリー・カンパニー株式会社は、雷文の著作物の著作権管理会社であり、映画、演劇やドラマ化に向けてのライセンス業務も執り行っている。

 コンタクト: righta00.00@iCloud.com

プロローグ: チィーリン・ハウス
Prologue Qilin House

2019年1月4日 発行 初版

著  者:雷文 Ray Bun
発  行:Qilin Family Company

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Qilin Family Company(チィーリン・ファミリー・カンパニー)は、大人の為の物語を紡いでいきたいという願いを込めて設立しました。時代に振り回され、喜怒哀楽を重ねながらも、日々力強く生きる大人たちに、少しでも安らぎを感じてもらえれば幸いです。 主要ライターに、雷文氏を迎え、2020年を超えて、日本および世界に向けて、「大人の為の物語」を拡げていきたいと考えています。見たい映画や演劇、そしてテレビ・ドラマを、物語という形で描き出し、織り紡ぎ出してゆければと願うばかりです。(代表:中嶋雷太) Qilin Family Company was established for weaving stories for adult people. For them, who are always struggling daily lives, we hope they enjoy the stories. Welcoming Mr. Ray Bun as a main writer (story teller), we would like to expand our stories over the world as well as in Japan, over 2020. Also, we would like to weave the stories for future theatrical films, theatrical play or TV dramas. (Rep: Raita Nakashima)

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