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2018年8月某日、「けんちくの手帖」座談会が行われました。メンバーは建築家の吉永健一さん、コミュニティデザイナーの山崎亮さん、西上ありささん、編集者・ライターの狩野哲也です。
2004年から2010年までの6年間、3〜4ヶ月に一度のペースでこのメンバーが大阪・中崎町のコモンカフェに集まり、「けんちくの手帖」というイベントを開催していました。
「けんちくの手帖」はマニアックな「けんちく本」「けんちく人」を集めて、既成のメディアとは違うルートで世に広めることを企むプロジェクトでした。
今回はその「けんちくの手帖」の同窓会的なイベントの開催に向けて集まり、6年間の軌跡を振り返ってみました。
「けんちくの手帖」はオランダのムーブメントが出発点?
狩野 僕は吉永さんと山崎さんがコモンカフェで打合せされている際にお店に立ち寄ったことで誘っていただき、3回目あたりから記録係をしています。最初に「けんちくの手帖」をはじめたきっかけは何でしたっけ?
山崎 僕の記憶では建築家は自分たちの考えをちっちゃな冊子にまとめることが多いと感じていたのがありますね。自分たちの活動を本にまとめるというのはオランダの影響があります。
狩野 オランダの影響?
山崎 オランダでムーブメントをつくっていた人の話を聞くと、当時はオランダの政府が建築家を含めたクリエイター全般が本を出すということに補助金を出していて、レム・コールハースとか分厚い本を出してどんどん出版していました。コールハースの弟子たちも分厚い本を出して、建築を建てる前に自分たちの考え方を社会に表明する時期がありました。
そのムーブメントが日本に情報として入ってきて、みんな冊子をつくるわけです。それを見ていると、僕らが本として認識しているものとぜんぜん違う組み方をしていて、いきなり結論があったり、文字がないページがずっと続いたりとレイアウトの仕方が全然違っていて、アーティストと普通の本との間ぐらいの本が占めていました。
建物を建てると数千万円とか数百万円とかお金がかかっちゃうんだけど、小さなお金で冊子をつくり、自分たちの思想や態度を伝えて仕事に結びついたり、本自体を出版することになっていく日が目に見えていたので、だったら今はまだ本を出版してないんだけど、ちょっと自分の手帖のように本をつくって、世に問うている人、自費で出版やホッチキス止めしたりしてるような人たちが、他にもいっぱいいるんじゃないかと考えました。
それは僕らが「環濠生活」という冊子を自分たちでつくっていたからだと思います。「仲間がほしいとか、お手本がもっといっぱいあるはずで、そういうのをひとつずつ話を聞いてみたいんです」という話を吉永さんとしていた覚えがありますね。
吉永 メビック扇町で開催されたブックメイカーズディライトの時じゃないですかね。本やフリーペーパーを展示して、クリエイターが自分軸発信としてつくったオリジナルの作品や商品をメーカーや流通とつないでいくことを意識されたプロジェクトでした。
山崎 ありましたね。
吉永 当時山崎さんとそこで知り合ってお互いに仕事の話をして、家に帰ってふと思ったのは、「環濠生活」もつくられているし、山崎さんはまわりにそういう人がいるという話もしていたし、僕のまわりでもそういう類の人がいた。
世の中に建築家がつくったちっちゃい本がたくさんあるなら、それを世に出さないのは非常にもったいない、と思って山崎さんに「こういうイベントを考えているんですがやりませんか?」という話をしました。
ちょうどコモンカフェができた年の2004年です。自分が設計したお店だし、場所はコモンカフェでやることにしました。本棚があるので、そこにゲストの建築界隈の本を置いておくと、誰かに読んでもらえるんじゃないかという話になって。
狩野 西上さんの参加経緯は?
西上 なんか「僕(山崎)がやるんだから手伝うのは普通でしょ」と言われて。
吉永・狩野 ジャイアン!
山崎 (笑) 当時、僕も西上も花森安治さんに興味をもっていたので、彼の生き方だったり、雑誌「暮らしの手帖」の広告入れずにコンテンツ勝負で実際に現場に見に行ったり、製品を比べてみたりする姿勢が好きで。
建築家が自分で自分がつくった冊子のことを発表し、現物を見ながらみんなで議論をする、「暮らしの手帖」ぽいのがいいねと話をしていて、彼女が「けんちくの手帖」と言いました。
狩野 「けんちくの手帖」の命名者は西上さんなんですね。
西上 かわいくしたほうがいいかなと思って。
狩野 いいですね。最初のゲストだけ二組なんですね。
吉永 僕と山崎さんと一方ずつ選んだので最初だけ二組。
山崎 二組では時間が短すぎたので次から一組ずついこうってなったんじゃないかな。
吉永 これまでのゲストのみなさんに喜んでもらえた部分は、本を出版しても当時は感想を聞く場所がない状況で、今だったらアマゾンのレビューとかあるけれど当時はそういうのもないから、そのあたりの面で喜んでもらっていました。
山崎 コモンカフェオーナーの山納さんの影響がでかいですね。当時、メビック扇町のコラボレーションマネージャーをされていたので、ブックメイカーズディライトなどに誘っていただき、手作りの本をみんなに見せるのは面白いと気づいたし、山納さん自身にも12回目のゲストに登場してもらったし。
狩野 みんなの印象に残っているものはなんですか?
西上 高知遺産! 世界遺産に対抗して京都遺産ならわかるけれど、高知ってぜんぜん対抗できてないのに堂々と高知を誇っているところが驚きでした。
一同 爆笑
西上 高知愛で本になっているところがすごくときめきます。
狩野 愛情でできているといえば、2回目のフリーペーパー「南部再生」とか、16回目の書籍「天満のスイッち」とか19回目の書籍「野田+福島」とかも地域への愛情でできている系のプロジェクトですね。
吉永 高知だけど龍馬とかでもなく、尼崎だからといって近松でもなく、という紋切り型じゃないところが良かったなあ。
建築関係者以外も
参加しやすいイベントへ
吉永 僕が印象に残っているのは、10回目の劇団「ヨーロッパ企画」ですね。舞台装置とか本もつくっていたけど、それが建築っぽいなと思ってゲストにお呼びしました。
建築とランドスケープという分野と演劇の異種格闘技になるのかなと思って話を聞いていたら、人をうながすために高低差をつけるとか、わりとランドスケープの話に近づいたり、その舞台装置もいろんな劇場でやるので、調整の仕方とかも建築のテクニック的な話が出てきたりと、同じようなところで苦労していたり、同じようなクリエイティビティを発揮しているんだなと思いました。
狩野 僕みたいに建築畑出身じゃない人もヨーロッパ企画などを選ぶことで参加しやすいイベントになっていたと思うんですが、そのあたり意識されていたんですよね。
吉永 うん。最初はなんか、本をテーマにしているけれど、「俺が俺が」みたいな作品集はやめておこうと言っていました。何か分析とか、フィールドワークをした上でこうだった、その中に自分がこうしたいといった意識がはっきりとでている本、単純に調査した本じゃなくて、なぜそれをテーマにしたのか、なぜその掘り下げ方をしたのかがはっきりわかっている人たちの本を選んできました。その中に、そういう考え方をもっていれば純粋に建築とかじゃなくても、演劇とかでも似た話がでてきて面白かったな。
山崎 当時は女子大生とかOLとかカフェに来る人たちが、建築の冊子とか読んでたら面白いよね、という話をしてましたね。
吉永 ゴリゴリの建築イベントでも二次会のときの話が面白いので、飲みながら話が聞けるイベントにしました。
山崎 スタッフである僕らもお金を払っていたし、かつてゲストは手弁当でしたね。高知や東京から来てくれたゲストの人たちは自腹で来てくれて、交通費も払ってないです。
吉永 さらに著書もコモンカフェの本棚用に一冊置いていってほしいと言ってました。いま考えたらめっちゃ図々しい(笑)
建築教育はさまざまなことに
活かせるはず
吉永 本にする覚悟というか、それだけのコンテンツがないとだめだし、まとめ方が下手だと面白くないし。それに対して情熱があり、情熱をぶつける場所として本がありました。
カラーコピーとホッチキスではお金がかかるから、どうやって安くあげようかとか、どうすれば一番楽だろう、人をどうやって動員しようとか、どんなに薄い本でも100回同じ作業をしないといけないから、なんらかの高効率化とかマネジメントとかが必要です。それはいろんな現場の人に手伝ってもらう建築の仕事にとって必要な才能だと思います。
山崎さんが建築家のもっている能力というのは単純に建てるだけでなくて、ほかのことに活かせるはずだ、というのを結構毎回言っていましたね。
山崎 言ってましたね。必ずしも図面に落とし込まなくても、建築家の技術はもっといろいろ応用できるはずだと信じていたし、studio-Lの仕事の仕方がまちづくりコンサルタントと違うような非常識なところがあるとすれば、そんなようなところから入ってきているということでしょうね。都市計画法とかぜんぜん詳しくないので、面白いところをみんなで探るところからスタートしましょうとか、こんな力技でどうやってまとめていくねんってやつをまとめましょう、建築の発想やまとめ方、折り合いのつけ方などは働いていると思いますね。建築の教育を受けてないとなかなか難しいところがあると思いますよ。
現場に入ってからみんな試行錯誤で身につけていきますけど、建築の教育を受けている人はすぐにできる人が多いので、建築教育ってすごい重要です。
それをすべて設計図面のほうに向けようとすると、建たない時代なので、みんな授業を受けたのに3割ぐらいしか建てられなくて、7割は図面を書きたいのに他何もできなくなって、単なる図面引き作業が専門のドラフトマンになってしまい、もったいないですよね。違う業界にいけばその業界にはないプロジェクトの進め方をして面白いことができると思います。
本になるプロセスには
共通した型がある
山崎 僕が印象に残っているのは、本をつくられた方には共通する型がありました。僕らはいつか出版してみたい、いつか住宅の設計をやってみたい、という遠いものでしたが、そうか、みんなこういうふうに冊子をつくったり、自分たちが何者かを示すために、中身がないと冊子はつくれないので、中身をつくる活動をやっているんだなとわかってきました。
中身をつくる活動というのは建築家の場合、調査に行ったりとか、自分たちが気に入った写真をどんどん取り込んでいったりすることです。わりとコンテンツのネタをもっているのに、もったまま、いつか出版したい、いつか設計したい、と思っていると思う。
その間に手帖が入るだけで、そのネタをいきなり設計も出版もできないんだけど、手帖化してみて、それを無料でいいからみんなに配ってみると、自分たちの存在や、何を考えている人なのかが理解されて、その次に「あんた面白いから本にしないか」とか「あんたに設計してほしいだ」という声がかかるようになります。
この手帖っていうところが、割とみんな共通していましたね。無意識だったかもしれないけど、その後、この人たちがやっぱり出版に結びついたり、設計を結構たくさん頼まれたりするような人たちになってるのを見ると、そういう段階というのがあるんだなとわかって。
例えば高知遺産は写真をたくさん撮るというリサーチがあって、展覧会をすると冊子にまとめればと言われて、手作りの冊子をつくったら、出版しないかと声がかかり、じゃあ一緒に出しましょうと出してみたら、あんまり売れないと思っていたところ、すごい売れたということにつながっている。
典型的ですけど、そういった順番がある。当時だったらウェブサイトをつくって情報発信するということができたので、もう冊子じゃないんじゃないかと思われていた時代だったけれども、今から振り返ればいっぱいウェブサイトがあるので引っかからなかったですね。
人に渡せる物理的なもののほうが良いと今ならわかるんですけど、当時は何かネタはある、じゃあお金をかけずにウェブで仕事につなげよう、つながらない。ということがあって。同業他社が多すぎるんですね。
手間をかけてでもお金をかけてでも、冊子化していくっていうことが、自分の知らないところにそれが渡っていき、その物理的なものがその人を信頼する内容になっていたんだというのを今から振り返ると分かりますね。それがわりと共通していたのは、印象に残っています。
狩野 物理的な本にするのが大事なんですね。フィールドワークというかまち歩きを楽しんだ延長でやっている人が多い印象もありますね。
吉永 そうそう。なんかこれいいよね、というところからスタートしている人が多い。フィールドワークというか、11回目の借家生活なんかも。
狩野 駒井さんの「借家生活」は衝撃的でしたね!
吉永 賃貸住宅で住んでいるときに、なんでこうならんのかなーっていうことを強引にやれる方法を考えて、そのプロセスをカラーコピーで印刷してホッチキスで止めた本だったけども、根底にはしっかりした思想がありましたね。
「けんちくの手帖」
ビフォーアフター
狩野 「けんちくの手帖」をはじめたことで、何かご自身変わったことはありますか?
吉永 感覚が近い知り合いが増えました。建築家のパーティーに出て行く人のとは微妙に違う。ずっとリストをみていくと、そのとき初めて会ったような人もだいたい何かお付き合いがあったりとかするので。
それ以前だと、会えなかった人たちに会えて、本にするだけのコンテンツをもっている人たちなので尊敬する人たちばかりです。自分も本を出しましたけど、参考にもなりました。
狩野 僕もけんちくの手帖で知り合った高岡さんが著者のひとりである書籍「生きた建築 大阪2」の編集協力させてもらいました。
西上 「けんちくの手帖」をはじめたことで、本のかたちじゃなくてもいい、地図でも、演劇でも、DVDでも、なんでもいいと思いました。
狩野 形になっていたら良いということですか。
西上 うんうん。あとは本にしているプロジェクトは、その工夫とデザインの可愛らしさとか、「書籍とまでは言えないけど、でもこれなら私でもできるかも!」と思うものが多かった気がします。ほしくなるものが多かった。書籍だと買うかどうしようかなと思うけれど、ちっちゃい冊子だと考えずにほしいと思える感じがしました。
山崎 我々も「環濠生活」やいえしまの「探られる島」という冊子をつくっていたので、コンテンツがあるんだったらそれを冊子化していくというのはかなり自覚的だったと思いますね。
それでも結構手間がかかるし、経費もかかるし、こういうことを続けていくのかどうしようかと迷っているときに、仲間がいっぱいいるとわかったので、やっぱりこれは続けて行った方がいいなと思えるようになりました。だからstudio-Lのプロジェクトはだいたい何か冊子をつくるんですよね。
西上は意識的にコミュニティデザインプロジェクトガイドという雑誌をでかい仕事の場合は一冊本気でつくるんですよ。
ウェブの時代だから、冊子をつくったりしなくていいじゃんと思わなくて済むようになったのが、「けんちくの手帖」で同じような、一見すると手間がかかる、効率があまり良くないような方法を選んでいる人たちにたくさん会えて、勇気づけられたっていうのはひとつ。
もう一つはやっぱり自分も本を出すことにつながった。すでに先輩として3回目に出ていただいた岡田さんに「テクノスケープ」を出した時に話をしてもらったり、本を出す前まで彼が論文でどうやってまとめ、最終的に本につなげていったのかお聞きすることができました。
「高知遺産」も当時すでに本を出していたけど、同じくプロセスを見せてくれたので、そうか、まずコンテンツを集める→展覧会→語る→お手製の冊子をつくる→出版につながる、と思ったとき、われわれもコンテンツはもう持ってるんだから、これをブックメイカーズディライトとか、いろんな人たちに伝えていくと、いつか「本を出さないか」と言われることになるんじゃねーかっていう風に思えたのは、「けんちくの手帖」から得たことで。実際に本を出すことになったというのは大きな変化だったと思います。
西上 冊子を遺族にもっていくことも多いんですよ。
狩野 遺族?
西上 地方でつくったプロジェクトの冊子は、結構な確率で高齢者が協力している場合があって、本にできるのを待たずに亡くなっちゃう人もいるんです。
なんで自分の家のおじいちゃんが活動に参加していたことを家族は知らないんですね。お葬式に私たちが参列すると、「なんでこんな若い人たちが来るの?」という反応になったときに冊子がすごく役立つんです。
その人が写っているので、「実はこのプロジェクトに毎回ガイドで来てくださって、私たちはすごくお世話になったんです」と言うと、そのとき初めてお子さんたちは親の一面を知るわけです。
紅茶屋さんをひとりでやっていたおばあさんが、「環濠生活」の完成を待たずに亡くなっちゃって、お孫さんにできた本をもっていくと、おばあちゃんの1日が紹介されている記事を読んで、「こんな1日を過ごしていたんですね」という感じで号泣されたことがあります。
狩野 へー、いい話ですね。
西上 すごい喜ばれます。ホームページを見てくださいと言っても、なかなかそこにたどり着けない方もいらっしゃると思うので、やっぱり紙の本にしておくといいなと思います。
狩野 ありがとうございました。本書ではそれぞれがジャンル分けしづらいほど多様な要素をはらむプロジェクトのため、文末にハッシュタグで関連キーワードをわけています。これから何かをはじめたい人の参考になればと考えています。
まちの「いい感じに使われている」場所を収集、フリーペーパーにまとめて紹介する活動を続けている「さんかく▲スケール」。都市やけんちくの中にあらたなパラメーターを見出してプロジェクトを作り続けている「SPACESPACE」の2グループを招いてお話をうかがいました。
さんかく▲スケールのみなさんは、フリーで入れてなんとなく居心地よくいられる場所=“いい”場所の写真を集めたフリーペーパー「HA*CTION」を作成。喫茶店などに置かせてもらうことで幸せな出来事が起こる場所を街々に広げようとしています。SPACESPACEは水都再生建築展への出展作品「パワープランニング」を提案。都市に流れる水・人・熱・風という環境的要素と橋、ジャンクション、公園、農園など人工的な要素をダイナミックに掛け合わせることでエキサイティングかつ環境に配慮した都市風景を作り出していました。
彼らのアイデアの他にもいろいろ“まちづくり”のネタはあるでしょう。今回のイベントがお客さんそれぞれにまちを活き活きさせるネタを見つけるきっかけを与えてくれればうれしいです。(吉永)
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フリーペーパーを使って尼崎の南部地区のまちづくりをすすめている「あまけん(尼崎南部再生研究室)」の綱本さん、若狭さんからのお話をうかがいました。
「南部再生」は、尼崎の南部地域をオモシロがって発信するフリーペーパー。空気が悪い、ヤンキーのまち、大阪府尼崎市…尼崎のイメージなんてこんなもの。でもそれだけじゃない。取材という視線でまちを歩けば、オモシロイこと、ちょっといい話、結構リッパなことが湧き出てきます。
学生、新聞記者、会社員、商店主、行政マンらが渾然一体となったチームがどのような目線でまちに入り込み、発信できる内容に仕立てているかお話をうかがいました。
尼崎運河クルージングの活動やアマイモというさつまいもの話、突撃従業員食堂という企画で市役所や警察署の食堂に訪れた話など、どれも仕掛けている側が楽しくなりそうな話でした。
フリーペーパーをつくったことで尼崎界隈にネットワークができたこと、そこからメイドイン尼崎の事業につながる話など、地域に根ざすことで生まれるまちづくりのかたち。それはシンボルロードや箱ものを作ることあるいはイベントを行うこととはちがう可能性を指し示していました。 (吉永)
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岡田さんはなぜ自分がテクノスケープに興味を持つようになったのか、工業風景や東京タワーに対する市民の評価がどう変遷したのかなど分かりやすく説明してくれた。
続くディスカッションでは、工場の風景に価値を見出したとして、それをどう保存・活用するのかについて話し合った。シアトルにある「ガスワークス・パーク」は、当初工場敷地を市に寄贈したエドワード氏の名前を取って「エドワードパーク」という名前にしようとしていた。しかし、工場をそのまま残した公園にするという計画案を嫌った彼の家族が「エドワードパーク」という名前を使わないで欲しいと申し出たことから「ガスワークス・パーク」 という名前になったという。
工場風景は必ずしもポジティブに評価されるばかりではないため、その価値をどのように人々へ伝え、理解してもらい、ファンになってもらうかが重要だ。「ガスワークス・パーク」を計画・設計するにあたって、ワシントン大学のリチャード・ハーグ氏は工場の価値を説くシンポジウムを何度も開催したという。僕らが工場を公園として活用するときも、同じような価値の啓発が必要になるだろう。
その他、「工場を公園として利用する際の安全面について」「郊外の住宅地の風景が今後価値を持ちうるか」「工場や住宅を壊していくプロセス自体を公園のプログラムとして活用できないか」などの議論がなされた。
来場者は60人。岡田さんの人柄が多数の来場者を惹きつけたのは間違いないが、テクノスケープという言葉が「気になる言葉」になりつつあるのもまた確かなようだ。
工場はすでに懐かしい対象になりつつある。今後、郊外の何気ない集合住宅が多くの郊外居住経験者の原風景としてノスタルジーを呼び起こす対象となるのかどうか。人口減少社会の郊外住宅地に興味を持つ僕としては、公団スタイルの住宅の景観的価値をどう取り扱うかが気になっている。(山崎)
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京都の町家を町並みとは“違った”視点で観察している「キョート*ダンメンロシュツ」の吉永さんをゲストとしてお招きしました。
京の町屋が壊された後に露わになる町屋の切断面…”ダンメン”には表の町並みからはうかがい知れない京都がCTスキャンのごとく映し出されています。大胆な増築、間に合わせの補修、密かなルール違反など、そこには芸能人寝起きチェックのごとく町屋の素顔が白日の下にさらされています。男が背中で人生を語るように、町屋はダンメンで自らを語る。京都の裏側で繰り広げられているそんなダンメンワールドをスライドで見せていただきました。
吉永さんは7年間で2500軒のダンメンを撮り続けてきたと言います。そこで浮かび上がったキーワードはこちら。シルエット、変わり果て、跡地の使い方、ダンメン考古学、パラレルワールドなどなど。そんなことを話しながら歩くダンメンをめぐるツアーも開催されているとか。ダンメンには京都人の本音と建前がそのまま現れているという話が印象的でした。(狩野)
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「高知遺産」は2004年に高知市のギャラリーで4回にわたって開催された展覧会【高知遺産】で参加者および来場者よりセレクトされた400点あまりの高知県の「遺したい」あるいは「大切な」建築、まち、風景を紹介した「高知本」です。
「高知遺産」には高知県と聞いたときに思い浮かぶ観光地などは載せられていません。そこにはいま高知に住む人々が面白いと思うもの、あらためて掘り起こしてみると興味深い歴史が見えてくるものなどが南国の青い空を背景にした美しい写真、テキストによって紹介されています。この本、片手に高知を放浪してみたくなる、そんな一冊です。
前半は自費出版するまでの解説があり、編集、デザイン、撮影、写真の色分解まで内輪で行ったのだとか。本を卸に通さない販売ルートで売っていくことで経費を抑えたことなど、本業を別にお持ちでありながら、よくできたなと感心するエピソードが聞けました。(吉永)
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高知が世界に誇るセルフビルド集合住宅「沢田マンション」(通称沢マン)。ガウディの「サクラダファミリア」、香港の「九龍城」にも例えられる沢マンはオーナーである沢田夫婦が数十年にわたってコツコツと作り続けたものです。住民が便利に暮らせるように続けられた増改築は時に暴走し沢田マンションを徐々に異形の建築と化していきました。
その複雑さゆえ探偵ナイトスクープなど各メディアで紹介されながらも全貌は住民にすら謎のまま…。そんな沢マンに住みこみ、各部屋の実測調査や住民へのヒアリングを決行、その全貌を一冊の論文にまとめあげた初代沢マン調査隊々長加賀谷哲朗さんを今回はゲストにお迎えしました。
前半は加賀谷さんの適確かつ愛情深い洞察によって浮き立たされた生の沢田マンションが紹介されていきました。そこからはメディアで紹介されている"変な建築"とは違った沢マンの一面をうかがい知ることができたように思います。
後半のディスカッションでは2ヶ月間調査のため沢マンに住み込んだ経験のある要さんも参加。観客を巻き込みながら「共同で住むということはどういうことなのか?」「住まいに本当に必要なものとは何か?」そして根本的に「建築を作るということはどういうことなのか?」などなどの熱い議論が続けられました。(吉永)
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京都の学生有志の集まり「京都CDL(京都コミュニティ・デザイン・リーグ)」と、その機関誌『京都げのむ』の中心メンバー柳沢さん、渡辺さんをゲストに迎えました。
「京都CDL」は京都の建築を学ぶ学生たちが学校の枠を超えて、京都の建築やまちについて考える集まりです。
彼らの活動の大きな軸は「『京都らしさ』を問い直す」ということのようです。それは、神社仏閣や町家による町並みなど、お決まりの京都とは違う「京都像」を見出すこと。
学生ならではのフットワークの軽さ、有り余る体力を活かした人海戦術、そして発展途上ならではの斬新な発想を活かした膨大なフィールドワークは、さまざまな興味深い「京都像」を浮かび上がらせていました。
雑誌『京都げのむ』はそんな5年にわたる活動記録を中心に編集されています。京都の有名な建築に値段をつけたり、銭湯や墓地をデータベース化したり、京都を記録し続けながらひたすら縦断横断するなど、他に類を見ない京都のオルタナティブアーカイブを産み出していました。
イベント後、柳沢さん、渡辺さんには感謝の言葉をかけていただきましたが、わたしたちスタッフもこんな充実感を味合わせてくれたお二人に感謝感謝です。(吉永)
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今回は「住宅都市整理公団」の総裁こと大山さんを迎えました。
前半のトークは大山さんによる団地の解説。時折写真撮影時のエピソードなど交えながら、独特の視点での団地鑑賞術を披露していきました。一種シニカルな語り口からは一見どうでもよさそうな団地、どこにでもありそうな団地の魅力がビミョーにあぶりだされていました。
後半はディスカッション。大山さんのスタンスをあらわしていると思ったのは、次のようなやりとり。「大山さん自身は団地に住んでいるのですか」「団地は住むものじゃない、見るものだ」「世の中、好きか嫌いかで分けられるものではない。でもどちらでもないけど“気になる”ものはある」
好き/嫌いをベースにおかないで淡々と見つめていく、その姿勢は建物の陰影や人物、生活臭などが丁寧に取り除かれた大山さんの団地写真からも読み取れます。それは「物語を派生させない」ためだからと言います。
昨今、景観の話題が多く語られていますがその語り口は、これがいい景観、これが悪い景観と決めてかかっている感があります。大山さんはこう言います。「田んぼが広がる風景は現代人にとって自然を感じる風景だけど、稲作が始まる前の縄文時代の人にとっては『人工的な』風景だったに違いない」
最初からいい/悪いのストーリーを決めて物事を見てしまうとある種のトラップにはまる危険性があります。そう考えると前提を取り払って淡々と観察することはとても大切なことかもしれません。大山さんの観察眼のベースになっているのはそういうスタンスなのかなと。そんな観察術を鍛えれば世界はもっと面白おかしく見えてくるでしょう。(吉永)
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街づくりの提案をするために、シンポジウムや展覧会を開き、その結果、本までこぎつけた例として、studio-Lの山崎亮さんをゲストにお迎えしました。
ハガキホルダーにポストカードを入れた都市再生の提案書「環濠生活」が驚きの体裁ですが中身は骨太。180ページにわたる都市再生の提案書であり、大阪府堺市の環濠地区の生活空間を再生するための「14の提案」がこめられています。
「環濠生活」をつくるきっかけは、堺市の道路課にかかってくる電話のエピソードから。「街路樹の落ち葉で家の前が汚れているから掃除しにきて欲しい」。どうして自宅前の落ち葉さえも他人に掃除させようとする人の住む街になってしまったのか。
考えてもみなかった屋外生活を提案することで、その生活を支える空間が必要になる。それを提案すべきだと山崎さんたちは考え、活動資金もメンバーで出し合ったとか。その後の冊子「ランドスケープエクスプローラー」でもプロジェクトを本にまとめたことで、研究会の司会やイベントの企画運営に誘われ、本が名刺がわりになっていったと言います。
後半は書籍「マゾヒスティックランドスケープ」の中身の話になり、彼らがどういった視線で風景を読み解いているのか一端を垣間見ることができました。ヤクルトおばさんの話は何回聞いても面白いです。午後3時に閉まる銀行の前にヤクルトのおばちゃんが来て、そこでずっとしゃべっていて、ほとんどヤクルトを売ってないという話です。まちの使いこなしが粋ですね。
最後にこれまでのけんちくの手帖で取り上げた事例をもとに本にいたるまでの分析があり、特に「まちあるき」が原点のものが多い印象でした。(狩野)
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劇団「ヨーロッパ企画」で俳優ともに舞台美術を手がけている酒井善史さんをゲストにお迎えし、独特の味わいのある「ヨーロッパ企画」の群像劇を支えている舞台美術と、劇団事務所で進められているリフォームプロジェクト「ヨーロッパリハウス」についてお話をうかがいました。
建築と舞台美術の異種格闘技になるかと思いきや、話を始めてみると建築と舞台美術が同じようなことを考えていたり、同じようなことで苦労したり、同じようなことで喜んでいるんだなぁとおたがい共感し合うことばかりでびっくり。
「地形を使って人の動きを喚起する」というコンセプチュアルなレベルから、「フレームだけ残して実際壁はないけど壁があるように見せる」というテクニック、そして「天井が低い劇場では梁形に合わせてセットをカットする」なんてまるでリフォームで「天井が低いから梁形に合わせてユニットバスをカットする」ときみたいな現場レベルの話まで。
「えっ、おたくもそう?」「そうそうそういうことありますよね」という感じでえらく話が盛り上がりました。(吉永)
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駒井さんは京都の借家をカスタマイズしながら転々と移り住む「借家生活」などのユニークな活動で知られる建築家です。断熱とか、耐震とか、防犯とか、耐久性とか、癒しだとか、家族の絆だとか、デザインとかいう、やわなお題目をさわやかに突き抜けた駒井さんの実践力に脱帽。楽しい家はただ正解を求めるお題目だけではできないのだよ。今日の話はもっと多くの人が聞くべきだったと、心から思います。建築家も将来施主になる人も。(吉永)
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大阪21世紀協会のチーフプロデューサー(当時)として、文化プロデュースの仕事にかかわってきた一方で、中崎町で日替わりマスター制のお店「コモンカフェ」で、何人もの若き料理人やイベンターをご自身の文化的な活動に巻き込んできた山納さん。
山納さんは、「他者」との出会いによって人は成長するという想いで、その出会いの場をひとつひとつ作り上げてきました。2007年、それまでの過程をコモンカフェという本にして出版されました。その集大成がこの1冊におさまっており、カフェの教科書と言えるでしょう。
お店のノウハウなど明け透けに書いた内容は瞬く間に世間の話題を集めました。コモンカフェ成功の裏に、いろいろなヒントがつまっているはず。その秘密に迫りました。
山納さんはコモンカフェの話を入り口に、足繁く通ったRINO’S POINTや扇町ミュージアムスクエア(OMS)の閉館をきっかけに「カフェというインフラを使って、OMSをつくってしまおう」という思いに至ったこと、インキュベーション施設のメビック扇町でたくさんのクリエイターと出会い、自分軸と他人軸についての考えにいたった話や六甲山カフェの話など、さまざまな仕組みづくりについて話してくれました。
印象的だった言葉がこちらです。
「ひとつ意識したことは、ひとりひとりがムリせずに表現活動できることをしよう。誰でもできることをしようと考えていました。ヒントみたいに思いついたことを出し続けることが大事なんだと思います。面白いと思った人は関係者、参加者になっていきます。同じ思いをもっているところにできるだけ早くアクセスするのが重要だと思います。関係のあるミクシィのコミュに書きまくる、とかそういうことですね」
どなたかの場をつくるヒントになる言葉ではないでしょうか。 (狩野)
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今回のゲストはおしゃれ公園協会雑誌「OSOTO」の編集長でありランドスケープデザイナーとしてもご活躍の忽那裕樹さん。
「OSOTO」はもともと大阪府公園協会が出していた協会誌「現代の公園」をリニューアルした雑誌です。
業界の人だけが読む業界誌から、おそとが大好きなアーティストたちへのインタビューを交えるなど一般の人々に公園の楽しい使い方を伝える雑誌に見事に変身させています。
それは忽那さんのランドスケープデザイナーとしての活動にも重なるところがあります。忽那さんがつくりだそうとしているのは、ただ美しくきれいなだけでなく、人々が使いこなすことで生き生きと輝く公園、ひとびと自身がつくりあげていくような公園です。
そんな忽那さん活動の延長に雑誌「OSOTO」はあるように思えます。
逆にいえば編集という作業で「OSOTO」が今までにないほど楽しい協会誌に生まれ変わったように、公園も視点を変えれば今以上に面白い展開があるかもしれない。そう思えてきました。公園はまだまだ面白い。(吉永)
関連キーワード #ランドスケープ #公園 #場の使い方 #雑誌 #提案書
三休橋筋愛好会の森山秀二さんに、大阪のユニークかつ実績を挙げているまちづくりをまとめた本「大阪のひきだし」とそこに取り上げられたまちづくリの数々についてお話をうかがい、会場のコモンカフェには40名の方々が詰めかけました。
2000年5月に都市大阪更生研究会で知り合った5人組が誕生し、その後、大阪のひきだしが完成するまでのアツいプロセスを教えていただきました。
「大阪のひきだし」に取り上げられたまちづくリの数々は、行政や企業に頼らずにそのまちが大好きな人たち自身の手によって進められたものばかり。その行動力や活動の広がりは先の市長選や府知事選で各候補が語る常套文句「大阪には元気がない」という言葉を覆すようなエネルギーを放っていました。
そんな活動を本というかたちで世の中にアピールすることは「実は大阪のまちって元気じゃないか」とまちのポテンシャルを再認識させ、「なんだ、こうすれば自分たちにもできるじゃないか」というリアリティを与えることにつながるでしょう。
本の出版にはそんな力があることをきづかせてくれました。(吉永)
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「ヴィヴィッド・テクノロジー 行為の可能性/技術の機能 ~構造設計への関心を軸に、建築の変容とその可能性の中心を探る~」というテーマで、2006年5月から2007年5月まで11回に渡って行われた「archiforum in Osaka 2006-2007」の講演記録を編集・再構成し、あらたに参加構造家による書き下ろしの往復書簡を加えた内容が一冊にまとめられた『ヴィヴィッド・テクノロジー』が本になるまでの過程についてお話をうかがいました。
archiforum―アーキフォーラム―は1997年より大阪にて継続している約1年ごとの講演会シリーズであり、コーディネータがその年のテーマと招聘する講演者のラインアップを決定するという仕組みです。
10年目のコーディネータ3人が建築構造を巡る技術に焦点をしぼり、若手構造家や先進的な建築家にゲストに来てもらって話を聞いたまとめの本です。
タイトルのヴィヴィッド・テクノロジーには凝り固まった頭と身体を解きほぐしてくれるような新鮮な構造や工法を表現したいという思いが込められたのだとか。
ちなみに構造家とは、構造エンジニアとか構造業、雑用業など呼称は多様ですが、ここでは構造家で統一されています。
後半の対談は『ヴィヴィッド・テクノロジー』の内容から始まり、構造設計家が果たしている役割とそれをうまく生かしている建築家たちの話で盛り上がりました。(吉永)
関連キーワード #書籍 #アーキフォーラム
ゲストは天満地区のお店や人、町を紹介した本「天満のスイッち」を出版した組立通信の真柴マキさんです。「天満のスイッち」が出版されるまでの経緯や、書店やアマゾンで本を販売する際の意外な事実、本を取り巻く業界の問題点、出版後に起こる苦労、本を出すことの心構えなどを「天満のスイッち」の体験を下に時に失敗談を交えながらお話いただきました。
失敗談の顛末については一部、真柴さんご自身がブログに書いている(ホントにステキなブログです)ので詳しくはそちらをごらんいただくとして、そのたびたびの凛として立ち向かう姿勢、本とその向こう側にいる読者と天満への「愛情」に感嘆するとともにこの思いが「天満のスイッち」の人気を支えているのだと実感しました。
けんちくの手帖でもいままでの活動を本にまとめて出版する準備を進めているところ。「メディアの使命は発信した後にある」とか「本は手で触るもの」など数々の名言が飛び交った今回のお話はけんちくの手帖にとっての叱咤激励にもなったのでした。(吉永)
関連キーワード #ローカルメディア #書籍
ゲストの西田司さんは、建物の設計に留まらず、裏路地の再生やアーティストアパートメントの運営、地方の材木と大工さんを都市に届ける家具制作や、六本木に農家のこせがれレストランを土塗りワークショップでつくるなど、環境づくりやものづくりを建築のスキルを活かして積極的に展開されています。
それらの実践活動の成果として取りまとめた2冊『ロジホン』『RE-CITY』やメディアパンダの活動などの経験を踏まえ、これからの社会にコミットしていく建築家の活動領域と設計の手法についてお聞きしました。
そのどれもこれも意欲的で面白いプロジェクトばかりですが、その見事さは西田さんが「建築」の仕事をしていることに起因しているのではと思います。世の中の雑多なものをひとつの形にまとめ上げる、それは建築家が持っている職能のひとつではないかと。「いやいや建築家にはそんな能力なんてない」と否定されたけど、いやいや潜在的に建築家はみんなその力を持っているんじゃないか。
星飛雄馬が大リーグ養成ギブスでいつの間にか右手も鍛えられていたように、建築家も自然と鍛えられているのではないか。できないと思い込むより、とりあえず投げてみると、早い球が投げられるかもしれない。(吉永)
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ゲストはラウンドアバウトジャーナル(以下、RAJ)の藤村龍至氏と山崎泰寛氏。
先日、別のイベントで二人はRAJの「手の内側」を明かしてくれた。「議論を次から次へとつなげていく」という方法は、その途中で議論に参加しようとする人にとってむしろ排他的な議論の内容になるのではないか、その「議論のつなげ方」自体がRAJの議論が「閉じている」という印象を持たせることになっているのではないか、という指摘もあった。
こうした質問に対し、ふたりは「分かる人だけが分かればいい」という決意を新たにし、「議論が閉じているとか開いているという話題自体が面白くない」という話にもなった。まず、彼らは議論をその都度ごとに切り分けたくないと思っている。だから、常に議論が続いているような場をつくろうとする。先日のRAJも、それ以前のイベントから議論がつながっているという。そして、その議論は今回の「けんちくの手帖」につながった。そうやって同じような議論を繰り返すという無駄を排除しようとしている。元を正せばRAJはふたりが自分たちで始めた活動である。自分たちが勉強しようと思っていろんな人たちを呼んで議論して、その内容を発信しているだけである。となれば、誰に遠慮する必要があろうか。たまたま集まってきた人たちが、「途中参加者にも分かりやすいメディアにすべきだ」と吼えるのは少し違うのではないか、とも思うのである。
けんちくの手帖に出演しただけで80名もの人を集めてしまうほどの2人である。望むと望まざるとに関わらず、RAJはすでに個人的な勉強会の枠を超えてしまったのだろう。本人たちは今でもプライベートな勉強の場だと感じているのかもしれないが、すでに規模が持つパブリックネスというものが発生してしまっている。だからこそ、「議論が閉じている」という指摘があるのだろう。関わる人の数が一定規模を超えたとき、不可避的に生じる公共性にどう対応するのか。RAJがこれからどんなマネジメントを展開するのか、とても興味深い。(山崎)
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大阪市の野田・福島エリアの街のさまざまな魅力を盛り込んだ本『野田+福島―路地裏から「ほたるまち」まで』の出版に関わられた都市大阪創生研究会ワーキンググループの岸田文夫氏に出版にいたる経緯をお話いただきました。
『野田+福島―路地裏から「ほたるまち」まで』は野田、福島を取り上げたフリーペーパー「野田+福島」を再編集した本。その切り口は町屋、銭湯、市場などさまざまで、住民ですら気がつかなかった野田・福島エリアのポテンシャルを余すことなく伝えています。
本の評判は地元の本屋でも上々で住民の方々が数冊まとめて買っていくのだそうです。ある人は地元のお土産に、ある人は野田福島から出て暮らす親戚や知り合いに配ったり。そう、この本のおかげで地元の方々は自分の住む町を人に自慢したい、離れて暮らす人に伝えたいと思うようになったのです。
「報告書でまちは変わらない、まちに働きかける実践をしたい」という思いでつくり始めたフリーペーパーはその思いの通り野田福島のひとびとの意識を変えていったのでした。(吉永)
関連キーワード #ローカルメディア #フリーペーパー #書籍
今回は戦後の集合住宅の中でも、大阪市などの市街地への立地が特徴的な「市街地住宅」というものを日々研究活動されている「大阪市街地研究会」のメンバーの方々にお集まり頂きました。
メンバーは、大学の先生や住宅公団関係の方をはじめ、実際に市街地住宅に住んでいる住民さんや、不動産業を営む方などバラエティの富み、ゲストは総勢9人!
市街地住宅は昭和30~40年代、司馬遼太郎、森光子、野村克也などセレブが住まう超高級団地でした。市街地住宅を見て思うことは「本当に団地?」という意外感です。
一見するとまるでオフィスビルのようにスマートな外観が多く、マンションのような派手さはありません。また、住民の洗濯物が街路に丸見えとなっては、まちの品格を損なう恐れがあるとして、道路の面したバルコニーは作らず、住民の生活感がまちに露出しないような意匠の工夫があったとか。
オフィスビルのようなスマートなファサードはこういったまちへの配慮が生み出したかたちとも言えそうです。さらに市街地住宅は戦後の市街地開発の中で「防火建築帯」の役割も果たしていました。
住まい手のニーズや価値観が変化してきている中、長屋や近代建築が見直され、若い人などの居住希望が高まっているのと同様に、市街地住宅においても、その立地性や意匠のディディールなどの良さが再評価されています。ただ一方で、権利関係の他、耐震補強などの安全の問題もつきもので、不動産評価は未だマイナス評価であることも現状です。
一口に保存・活用というと簡単ですが、その実現には、住まい手側の需要をより大きな運動に盛り上げていくとともに、不動産や住宅開発側の柔軟な理解も求めていくたゆまぬ努力も必要です。
建築から50年程建った現在でも、市街地住宅から学べるまちづくりの視点が色々あると感じました。(吉永)
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今回のゲストは大阪・中崎町のカフェRカフェの店主、藤井有美さんです。建築学科の学生だった藤井さんが友だち3人で卒業設計の課題として制作した長屋をリノベーションしたのがRカフェのスタートでした。それから5年。カフェ激戦区の中崎町の中でも人気のカフェとして定着しています。Rカフェが珍しいのは玄関で靴を脱いでお店に入ること。なんとなく友だちの家にお邪魔するような気分になります。急勾配な階段をあがり、よくオムライスを食べていました。打ち合わせの中で「カフェなんて必要ないようにしたい」と藤井さんの口から衝撃の発言が。その真意に迫りました。
RカフェのRは「見つめ直す」のリマインド、「再利用する」のリサイクル、「再生」のレボリューション、「実現する」のリアリゼーション、「活性化」のリビタライズなど、あらゆるReの集合体としてRカフェの存在があると意味し、名付けたと言います。
彼女が大事にしていることのひとつは近隣との関係。5月5日のこどもの日には、Rカフェ主催で向かいのとたんに子どもたちと色を塗るイベントが開催され、完成した作品は路地を行く人たちを楽しませます。
「誰かを前に私でいるということ、目の前の誰かがちゃんといること、同時に起こるこの二つによって、やどり木は在ることが出来る気がします。とっても当たり前のことなのに、意外とできなかったりするこの二つのこと、これからも大切にしていこう」という力強い言葉が印象的でした。今回は大きなテーブルをつなげてアットホームな雰囲気で行われました。Rカフェ有美さんの話とぴったりとマッチした雰囲気になったと思います。(狩野)
関連キーワード #カフェ #イベント #地域 #卒業課題 #中崎町 #女性店主 #セルフビルド
住み開きを提唱するアサダワタルさんからお話をうかがいました。
「住み開き」とは自宅や個人事務所を代表としたプライベートな空間の一部に、本来の用途以外の新しいアイデアを盛り込み、さまざまな人が集えるパブリックな空間へと変えてゆくその活動、もしくはスペースを指します。
不定期のホームパーティーや自宅での文化教室のような定番モノから、芸術家のアトリエ、屋上ガーデン、ヘルパーのサロン、私設図書館や博物館など様々な分野での実践が全国各地に展開されているといいます。
と、この感想を書いている狩野も結婚するまでは中崎町の自宅兼事務所でサロン文化大学という名称で文化教室的なことを開催していた際、アサダさんから取材していただきました。
https://sumibiraki.blogspot.com/2009/05/blog-post_07.html
開くことで縁が広がりますが、開く範囲を工夫しないとしんどさもあります。さまざまな例を紹介してもらったことで、自分にあう開き方を知ることができました。(狩野)
関連キーワード #書籍 #場の使い方 #フィールドワーク #思想
瀬戸内海に浮かぶ家島の活性化プロジェクト「探られる島」ついて、中心メンバーの西上ありささんからお話をうかがいました。
旧家島町が主催したまちづくり研修会に参加し、まちづくりの方法を探りながら活動している生活者有志と、まちづくりを専門とする若手社会人や大学生のグループstudio-Lが協力しあい、企画、運営するプロセスを聞き、おとぎ話のような感動のものがたりが学生やまちの人々などまちづくりの素人たちの力によって次々と実現する様は痛快でした。元気と勇気をもらえました。
今回、大きな収穫が二つありました。狭い社会では内部の人が派手に動くと中でたたき合いになるが外部からではそれがなくスムーズに進められる。これはまちづくりに際して外部の人が関わることの意外な効用。
もう一つは住民の会議に参加したおばちゃんが結果を家に持ち帰って旦那に説明した方が、旦那が直接会議に出るよりスムーズに話がまとまること。そして家島ではおばちゃんが 家族同士の横のつながりを作り出している。プロジェクトではそれを生かしている。家島ではおばちゃんだったけど地域ごとにローカルな合意システムがあるんだろうなと思った。(吉永)
関連キーワード #まちづくり #島 #フィールドワーク #住民巻き込み型
大阪を中心に1950〜70年代のビルをこよなく愛するビルマニアカフェの活動について5人からお聞きしました。
定期的に集まって好きなビルの写真を見せ合う5人が、この魅力をたくさんの人に知ってもらいたいとはじめたイベント、ビルマニアカフェ2008での活動は痛快でした。さらに自分たちで鉄道広告社のビルを借り、バー階段室、スナック社長室をはじめ、雑誌「月刊ビル」を発行するあたり、ただの趣味を超えた狂気じみた本気さが伺い知れました。
話を聞いてすぐに月刊ビルを購入し、浪花組の特集記事に悶絶しました。お話の最後にもメンバーのひとりである高岡さんが語っておられましたが、月刊ビルの取材を入り口に、大阪の歴史にすぐに直結するダイナミズムを感じられる面白さがあり、そのワクワク感がこの活動を支えているんだろうと感じました。(狩野)
関連キーワード #書籍 #ビル #写真 #雑誌 #社史 #階段
●アサダワタル
「住み開き―家から始めるコミュニティ」筑摩書房
「コミュニティ難民のススメ ― 表現と仕事のハザマにあること ―」木楽舎
「表現のたね」モ・クシュラ
「想起の音楽 表現・記憶・コミュニティ」水曜社
●大山顕
「団地さん」エンターブレイン
「団地の見究」東京書籍
「ジャンクション」メディアファクトリー
「高架下建築」洋泉社 など
●岡田昌彰
「テクノスケープ―同化と異化の景観論」 鹿島出版会
「日本の砿都:石灰石が生んだ産業景観」創元社
●OSOTO(オソト)
「01」~「06」財団法人大阪府公園協会
●小野暁彦
「ヴィヴィッド・テクノロジー―建築を触発する構造デザイン」学芸出版社
●加賀谷哲朗
「沢田マンション超一級資料―世界最強のセルフビルド建築探訪」築地書館
「驚嘆! セルフビルド建築 沢田マンションの冒険」筑摩書房
●京都げのむ編集委員会
「01話題沸騰CDL」「02京都売ります!」「03セクシー京都」「04あしたのキョー」「05CDL西安へ行く」「06みやこきわめぐり」京都CDL
●三休橋筋愛好会
「大阪のひきだし 都市再生フィールドノート」鹿島出版会
●studio-L
「山崎亮とstudio-Lが作った 問題解決ノート」アスコム
「コミュニティデザインプロジェクトガイド01 地域を越えた小さなプログラムのつくりかた[瀬戸内しまのわ2014]」「コミュニティデザインプロジェクトガイド02 地域の未来をつくる小さなプロジェクトのつくりかた・磨きかた ひろしまさとやま未来博2017[ココロザシ応援プロジェクト]」特定非営利活動法人ソーシャルデザインラボ
●高岡伸一
「生きた建築 大阪2」「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪2018公式ガイドブック」140B など
●綱本武雄
「工場は生きている―ものづくり探訪」「ものづくりの現場から―まちの希望がここにある」かもがわ出版
「大阪名所図解」140B
●天満スイッち編集室
「天満のスイッち」「01」「02」組立通信
●都市大阪創生研究会
「野田+福島 路地裏から「ほたるまち」まで」創元社
●西田司
「オンデザインの実験」TOTO出版
「建築を、ひらく」学芸出版社
「おうちのハナシ、しませんか?」エクスナレッジ
●BMC(ビルマニアカフェ)
「いいビルの写真集駄WEST」「いい階段の写真集」「喫茶とインテリアWEST」パイインターナショナル
●藤村龍至
「ちのかたち 建築的思考のプロトタイプとその応用」TOTO出版
「藤村龍至 プロトタイピング-模型とつぶやき」LIXIL出版
「批判的工学主義の建築:ソーシャル・アーキテクチャをめざして」エヌティティ出版
「コミュニケーションのアーキテクチャを設計する―藤村龍至×山崎亮対談集」彰国社 など
●真柴マキ
「ペンギンの飼い方」組立通信
●山崎亮
「コミュニティデザイン―人がつながるしくみをつくる」学芸出版社
「コミュニティデザインの時代 - 自分たちで「まち」をつくる」中央公論新社
「まちの幸福論 コミュニティデザインから考える」NHK出版
「ソーシャルデザイン・アトラス: 社会が輝くプロジェクトとヒント」鹿島出版会
「縮充する日本 「参加」が創り出す人口減少社会の希望」PHP研究所
「コミュニティデザインの源流 イギリス篇」太田出版 など
●山納洋
「コモンカフェ―人と人とが出会う場のつくりかた」西日本出版社
「カフェという場のつくり方: 自分らしい起業のススメ」「つながるカフェ:コミュニティの〈場〉をつくる方法」学芸出版社
「地域プロデュース、はじめの一歩」河出書房新社
●ヨーロッパ企画
「ヨーロッパ企画の本 我々、こういうものです。」ミシマ社
●吉永健一
「団地図解: 地形・造成・ランドスケープ・住棟・間取りから読み解く設計思考」学芸出版社
●LANDSCAPE EXPLORER
「マゾヒスティック・ランドスケープ―獲得される場所をめざして」学芸出版社
2018年12月11日 発行 初版
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