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判例六法 完全制覇 一問一答式問題集 民法1-1

判例六法ラノベ化プロジェクト

ノベル時代社



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  この本はタチヨミ版です。

【問題1】

 Aは、Bの代理人と詐称して、Cとの間で、BがCから金銭を借り受ける旨の金銭消費貸借契約を締結し、A自ら、Bのために連帯保証人になった。CがAに対して連帯保証債務の履行を求めた場合、Aは、代理権の不存在を主張して連帯保証債務の成立を否定することができる。正しいか? 間違いか?
※特に断り書きがない限り、問題文が正しいか、間違っているかを問うものである(以下、同様)。

【問題1】解説

 間違い。
 判例によると、無権代理人から代理行為の相手方に対し代理権の不存在を主張することが信義則上許されないとされている。

 他人の代理人と称して、金銭消費貸借契約を締結するとともに、みずからその他人のため連帯保証契約を締結した者が、債権者の提起した右連帯保証債務の履行を求める訴訟において、代理権の不存在を主張して連帯保証債務の成立を否定することは、特別の事情のないかぎり、信義則上許されない。(最判昭和41年11月18日)

※参考条文
(基本原則)
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。

【問題2】

 Aが死去し、子であるBとCが共同相続人になったが、遺産分割を行う前に、相続財産の一つである甲不動産の全部について、Bが単独名義の登記を済ませたうえで、自らの債権者であるDへの債務を担保するために甲不動産に抵当権を設定した。この場合において、BはDに対して、自らの持分を超える持分についての抵当権が無効であると主張することができる。

【問題2】解説

 間違い。
 設問と同様の事例で判例は、抵当権の無効を主張することが信義則に照らして許されないとしている。

 甲が、不動産について、共同相続によつて持分しか取得しなかつたにもかかわらず、自己が単独相続をしたとして、その旨の所有権移転登記を経由したうえ乙と右不動産について抵当権設定契約を締結し、その旨の登記を経由したときは、甲は、乙に対し、自己が取得した持分をこえる持分についての抵当権が無効であると主張して、その抹消(更正)登記手続を請求することは、信義則に照らして許されない。(最判昭和42年4月7日)

※参考条文
(基本原則)
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。

【問題3】

 Aが死去し、子であるBとCが共同相続人になったが、遺産分割を行う前に、相続財産の一つである乙銀行の預金1000万円について、BがCの代理人を兼ねていると称して、乙銀行より全額の払い渡しを受けた。
 CがBに対して、自らの相続分である500万円の引き渡しを求めた場合、Bは、乙銀行による払戻しは民法478条の弁済として有効ではない旨主張して、これを拒むことはできない。

【問題3】解説

 正しい。
 判例は同様の事例において、BがCに対して、乙銀行による払戻しは民法478条の弁済として有効ではない旨を主張することは、信義誠実の原則に反し許されないとしている。

 甲が、乙と共に相続した預金債権のうちの乙の法定相続分に当たる部分について何らの受領権限もないのに受領権限があるものとして金融機関から払戻しを受けていながら、その払戻しに係る金員について乙が提起した不当利得返還請求訴訟において、一転して、上記払戻しは民法478条の弁済として有効であるとはいえず、乙が上記金融機関に対して乙の法定相続分に当たる預金債権を有していることに変わりはなく、乙には不当利得返還請求権の成立要件である「損失」が発生していないと主張するに至ったなど判示の事情の下では、甲が上記主張をして乙の不当利得返還請求を争うことは、信義誠実の原則に反し許されない。(最判平成16年10月26日)

※参考条文
(基本原則)
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。

(債権の準占有者に対する弁済)
第四百七十八条 債権の準占有者に対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。

【問題4】

 Aは、Bに対して100万円相当のダイヤモンドを送付する際、宅配業者Cの宅配便を利用したが、配送途中でダイヤモンドが紛失した。Cが、同社の宅配便では宝石類を送付することができない旨、運送契約上の責任限度額30万円であることを明記しており、A、Bもそれを承知していた場合は、Aは、Cに対して、100万円の損害賠償請求をすることはできない。

【問題4】解説

 正しい。
 宅配便の荷受人が運送会社に対して運送中の荷物の紛失を理由として運送契約上の責任限度額を超える損害の賠償を請求することは、信義則に反し許されないとされている。

 荷受人甲が、宅配便を利用して宝石類を送付することができないことを知りながら、荷送人乙が運送会社丙の宅配便を利用してダイヤモンド等を送付することを容認していたなど判示の事実関係の下においては、運送中の右ダイヤモンド等の紛失を理由として甲が丙に対し乙丙間の運送契約上の責任限度額三〇万円を超える損害の賠償を請求することは、信義則に反し、許されない。(最判平成10年4月30日)

※参考条文
(基本原則)
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。

【問題5】

 Aは、B所有の甲ビルの地下一階を賃借して飲食店を営んでいたが、BがCに対して、甲ビルを売却した。その後、CがAに対して、甲ビルの地上部分にあるAの店舗に関する看板を撤去するように求めた場合、Aは、権利の濫用を理由にCの主張を拒むことができる。

【問題5】解説

 正しい。
 建物の地下1階部分を賃借して店舗を営む者が建物の所有者の承諾の下に1階部分の外壁等に看板等を設置していた場合において、建物の譲受人が賃借人に対して当該看板等の撤去を求めることが権利の濫用に当たるとした判例がある。

 繁華街に位置する建物の地下1階部分を賃借して店舗を営む者が建物の所有者の承諾の下に1階部分の外壁等に看板等を設置していた場合において、建物の譲受人が賃借人に対して当該看板等の撤去を求めることは、次の(1)~(4)など判示の事情の下においては、権利の濫用に当たる。
(1) 上記看板等は、上記店舗の営業の用に供されており、建物の地下1階部分と社会通念上一体のものとして利用されてきた。
(2) 賃借人において上記看板等を撤去せざるを得ないこととなると、建物周辺の通行人らに対し建物の地下1階部分で上記店舗を営業していることを示す手段はほぼ失われ、その営業の継続は著しく困難となる。
(3) 上記看板等の設置が建物の所有者の承諾を得たものであることは、譲受人において十分知り得たものである。
(4) 譲受人に上記看板等の設置箇所の利用について特に具体的な目的があることも、上記看板等が存在することにより譲受人の建物の所有に具体的な支障が生じていることもうかがわれない。(最判平成25年4月9日)

※参考条文
(基本原則)
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。

【問題6】

 Aは、Bが所有する乙土地に隣接する甲土地を所有しており、甲土地上に丙建物を建築している。その後、甲土地に下水管を引き込むために、乙土地上において、敷設工事をする必要が生じたが、丙建物が建築基準法に違反しており除却命令が出されている場合は、Bは乙土地上での下水管敷設工事を拒むことができる。

【問題6】解説

 正しい。
 隣接地に下水管を敷設する工事の承諾及び当該工事の妨害禁止請求が権利の濫用に当たるとしている判例がある。

 建物の汚水を公共下水道に流入させるため隣接地に下水管を敷設する必要がある場合において、建物が建築基準法に違反して建築されたものであるため除却命令の対象となることが明らかであるときは、建物の所有者において右の違法状態を解消させ、確定的に建物が除却命令の対象とならなくなったなど、建物が今後も存続し得る事情を明らかにしない限り、建物の所有者が隣接地の所有者に対し右下水管の敷設工事の承諾及び右工事の妨害禁止を求めることは、権利の濫用に当たる。(最判平成5年9月24日)

※参考条文
(基本原則)
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。



  タチヨミ版はここまでとなります。


判例六法 完全制覇 一問一答式問題集 民法1-1

2018年8月29日 発行 初版

著  者:判例六法ラノベ化プロジェクト
発  行:ノベル時代社

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