ある日、地球上で数パーセントの人々が同時にあるヴィジョンを体感した。それは集団催眠なのか、どこかの企業・研究所による実験的送信テクノロジーなのか、それとも人類とは別の何かが送ってきたものなのかであろうか?
そして、ビジョンのあとに届いたメッセージ
『追いつけ! さもなければ滅びる』
そのメッセージを紐解くと、人類の生き残るタイムリミットは1年? 果たしてその解釈は正しいのか? 謎が解けないまま時は過ぎ、地球は一年を迎えようとしていた。
そして、その日からちょうど一年を迎える日がやってくる……
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この本はタチヨミ版です。
こんばんは。正体のない作家、竹島八百富と申します。
私は、存在しておりませんが、複数の名前を使って活動しております。
オカルト事象の解明を趣味としていているうちに、好きが嵩じてホラー小説などを書くようになり、今ではなぜか作家稼業などをしております。
有り難いことに、読者の方から直接メール(✉juku828910@gmail.com)を頂くこともあり恐縮しております。
今回は久しぶりにSFっぽい作品に挑戦させていただきました。因みにジャンルはこだわっておりません。SFではなく、SFっぽいものです。
頭の中では、大雑把にストーリー展開は決めてはあるのですが、なにせ登場人物やキャラクターたちが勝手に動き回るものですから、当初のアイディアとはかけ離れていくかも知れません。
それはそれで、書き手の私自身も楽しみなのですが……。こちらも予想外の展開をすることを期待しながら、キャラクターたちに息を吹き込みたいと思います。
はてさて、SFっぽく、とは言ってみましたが、どうなることやら……(笑)
【追伸】
生意気にツイッター(@yaotomi_san)やフェイスブックなどのSNSもやっていますので、お暇であれば覗いてやって下さい。
また、ホームページ(http://yaotomit.wixsite.com/kidan)も発信していますので、こちらの方も、ぜひご覧ください。
著 竹島八百富
表紙デザイン 藤笑伊周
出版 Smart JUKU
https://www.smart-juku.info/
✉juku828910@gmail.com
「えっ?! なに?」
「あっ!」
「火の輪?」
「炎の指環?」
*
午後六時を過ぎ、小学二年生になる藤井白乃(ふじい・はくの)は、リビングのローテーブルで宿題として出されている漢字の書き取りをしていた。テーブルには、漢字ドリルとノートが広げられており、黙々と書いている。
時折、夕食の準備をしている母の瑞恵(みずえ)がそれを見守る。幾度と白乃の方へ目を向けるが、それはもはや習慣的な動きになっていた。そして、何度目か白乃の方へ目を向けたときだった。
白乃は、突然、一点を凝視するように宙に目を凝らしていた。
奇妙に思い、瑞恵は声を掛けようとした。すると、白乃が突然話し始めた……。
*
“それ”を感じた者たちは口を揃えて言う。「膨大なデータが一瞬で送信されてきたような感覚だった」それはヴィジョンともARとも異なるものだった。
感じた者、見えた者に共通点はない。感じなかった者、見えなかった者との差異もない。誰しもが、ごく普通の(地球の)人間である。もし、あえて差異を述べるというのであれば、それは単にセンス(感覚)の問題だけかも知れない。それとも生まれ持ってのセンス(才能)があったのかも知れない。しかし、それを証明することはできない。
さらに、それがなぜその日のその時刻だったのかも分からない。そもそも特別な意図などなかったかもしれない。グリニッジ標準時(ゼブラ・タイム)で、九月九日午前十一時十五分(数秒は過ぎていたかも知れない)・・・・・・世界の総人口の中のほんの数パーセントが“それ”を感じた。
“それ”を感じた者たちの多くは、その体験、その思いをSNS上で配信した。が、その数は意外に多く、瞬く間に世界中に広まった。
数パーセントといっても、世界人口はおよそ七十六億人である。それの数パーセント……分かっているだけで、この地球上のSNSで「感じた」、「見た」と名乗り出た者だけで四百万人はいた。
さらに、“それ”を感じながらも、自覚していない者、理解していない者、名乗り出ない者、自分の信念または宗教上の理由から自ら否定している者などもいると考えられているので実数はもっと多いはずであろう、と言われている。
やがて、“それ”を感じた者たちは、受信者(レシーバー)と呼ばれるようになる。
レシーバーは、人種、老若男女に関係なく現れた。一般市民、国賓級の者、有名人、政治家、国の有力者、科学者、犯罪者、病床の者、特定の神を信じる者、無宗教者……門地に関係なくあらゆる人々であった。
レシーバーたちが同時に感じられた“それ”は、ロンドンであれば昼前に、日本であれば夕刻に、東アメリカであれば未明にと、それぞれの国において時刻こそ違うものの、感じることができた者たちにとっては同時だった。
起きている者は、目の前に裸眼ARの画像が浮かんだかのように、眠っている者には夢の一部かのように、瞑想している者、運動している者、食事をしている者など・・・・・・それぞれの立場は異なるも、「感じた」、「見た」“それ”はやはり同じものだった。
ほんの一瞬の“それ”……しかし、そのデータ量は膨大なものであった。パソコンのデータ・ファイルのように一瞬に受け取った。ある者は、鮮明とまでは言わないが、ARを初めて体験したときのような感覚だったという。そして、それは感じたいときに、(まるでパソコンのハードディスクから資料を立ち上げるように)脳裏に浮かんでくるという。明らかに記憶とは異なるものである。
“それ”を感じた者(レシーバー)たちが言う。
「初め、それは炎の指環のように見えた。中央は真っ黒な円形、その周りを炎が取り巻くように輝いていた」と。
しかし、その中央の漆黒の部分はよく見れば、小さな光が散りばめられている。そして、その小さく点滅を繰り返している光の筋は見覚えのある形を模っていた。その光の散らばりが模る形は、ユーラシア大陸の東沿岸である。
そして、“それ”を感じた者(レシーバー)たちの意見を総合すると、その漆黒の部分が地球の夜側で、周りをとりまく炎の指環が太陽の外炎だということが分かった。
レシーバーの中には“それ”をCG動画で表わす者が、各国に現れた。言語こそ違えど、その中身はほぼ同じだった。これらの動画のおかけで、非受信者にも“それ”を視覚で知ることができた。
レシーバーたちの中には国の有力者や有名人もおり、数日の間に、この動画も世界中に拡散された。
《地球の夜側は太陽の外炎をバッグに自転を始めた。そして、徐々に外炎から外れ、太陽の周りを公転し始めた。自転を続けたままの地球が公転する中で、太陽側に美しい横顔を見せ、改めて地球の存在の素晴らしさを目に釘付けにした。
やがて、地球は太陽の真裏に行き、地球の姿はヴィジョンから見えなくなり、神々しい太陽だけになった。
反対サイドから、再び地球の姿が見えだした。九ヶ月進んだということなのか。地球はさらに公転を進め、元の位置に戻ってきた。ヴィジョンの中で一年の歳月が経ったのだ》
しかし、それだけではなかった。解説のないヴィジョンに映る地球の姿は、よく見ると一年前の姿とは変わっていたのだ。
“それ”を感じた者(レシーバー)の多くもすぐには“そのこと”に気が付かなかった。しかし、CG動画の職人たちは、ヴィジョンを何度も脳内再生し、感じたことをできる限り忠実に再現してくれていた。
受け取り側となるレシーバーたちも、まだヴィジョンを見慣れていないので、それ以上の細部にまで突っ込むことはなかったが、ほぼほぼ感じた通りだった。そして、この動画の出来に異議を唱える者はいなかった。
“それ”を感じることができていない者も公転の始めと終わりの地球の違い……“そのこと”に気が付き、体を震わせた。そのときの感情は、紛れもなく―恐怖―である。
公転を一周終え、元の位置に戻ってきたときの地球……周りに太陽の外炎を据えた夜の地球は……なんと、まさに漆黒だったのだ。
地球上の点滅を繰り返す灯りが一切無くなっており、自然本来の夜を迎えていた。
そして、最後にメッセージが送られてきた。そのメッセージは、英語でもなく、中国語でも日本語でもない、地球上に存在しない言語でありながら、なぜかその言葉の意味は万人の通じる共通の言葉だったと言う。
そのメッセージとは……
*
ヴィジョンが意味することとは?
地球上から人工的な灯りが一切消えている……
……人類滅亡?
それも公転一周分……つまり、タイム・リミットは一年?
終末論者、滅亡論者にとっては格好のネタであろう。
ネット上では、「エイリアンの襲来?」、「神の怒り?」、「未来からの警告?」等々、様々なオカルト板も騒ぎ立てていた。
有識者たちの意見がまとまることもなかった。有識者の中にもレシーバーは存在し、非レシーバーとは根本的に意見が対立していた。非レシーバーが唱えた意見は、集団催眠の類いだというものだった。
もしくは、ディバイスを利用せず、相手の意識に情報を送り込む技術をどこかのハイテク企業や研究所が実験的に流しているのではないか、という噂もあった。
*
「ただいま~」
「おかえり」
夜十時過ぎ、白乃の父、陸(りく)が仕事から帰ってきた。彼の仕事は宅配倉庫の責任者、取り立てて特別な技術や資格が必要なわけでもない。週毎に昼勤務と夜間勤務を繰り返す、ただの平凡なサラリーマンだった。
彼がダイニングのテーブルに付くと、瑞恵が夕食を出し始める。ごく普通の日常の行動である。
付けっぱなしのテレビではニュースが流れている。
夕食を出し、瑞恵は夫の前に座った。
「ねぇ、今日ね、ハッくん(家族間における白乃の愛称)がさ、変なこと口にしたの」
「変なこと?」
タチヨミ版はここまでとなります。
2018年11月4日 発行 初版
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つれづれなるままに、日暮し、パソコンに向ひて、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。 奇談屋書店の店主、竹島八百富と申します。 私は存在致しません。そして、私は一人でもありませんが、小説などを書いて日々のんびり過ごしております。 この度は、拙著にご興味をいただきまして、誠にありがとうございます。 これも何かのご縁でございましょう。お会いできたことを嬉しく思います。 お読み頂いた方が、読了直後に、「な~んかモヤモヤするなぁ」、「えつ? ここで終わるの?」などと、その後の物語の続きを思い馳せるような物語を、普段から好んで書いております。 コーヒー、紅茶、またはお酒でも飲みながら、リラックスしてお読み下さい。