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昨日、世界が終わって。
今日もまた、世界が終わった。
きっと、何事にも「永遠」なんてものは無いんだと思う。
きっと、無ければいいと思う。
私が私であることも、
全て、また、今日で終わる。
そうであってほしい。
『世界の終わりにあなたとわたし』
緩やかに流れた風は、私の知らない場所へと飛んで行く。
それを、ただ、見つめた。
指先で触れる事も、掌で握る事も、許されない。
ただ、ただ後ろ姿を見つめるだけ。
それでも、たったそれだけの瞬間でも、
私は「綺麗だね」って言い続けたい。
緩やかに流れ始めた音楽を、ずっと、心で鳴らしていたい。
鼓膜の奥底で助けを呼びながら、
「人生なんてこんなもん」だなんて、
いつまでも笑いながら。
『楓』
太陽に手を透かす。
そこに、まだ私がいてくれたから、
「明日も」
なんて歌ってしまう。
そこに、もう、私がいなければ、
「今日は」
太陽に手を透かす。
そこに、まだ私がいてくれたから、
「明日も」
なんて歌ってしまう。
そこに、もう、私がいなければ、
「今日は」
なんて歌ってしまうのだろう。
『昨日のうた』
橙の帰り道を思い出してしまったから、
優しさが首を刺す。
私の嘘は、あなたの優しさに勝てなかったと
証明しているような、夕暮れだ。
あの日の影が、
今、私の足元まで、
伸びて、伸びて、伸びて、
どうか。触れてほしくて。
『橙影』
気付かないくらいに、そっと。
風が瞳に触れたのだろう。
きっと、そうなんだろう。
でなければ、今、
透明が私の瞳から零れた理由が見当たらない。
そうだと言って。言ってほしかった。
私の中に、優しさは無いと言ってほしかった。
『優情』
宇宙の色を数えた。
「まだ人間だ」って気付いた。
それだけで良かったはずなのに、
また、僕らは幸せに触れようとする。
それが罪だと言われてしまえば、きっと、
この人生自体がそうなんだろう。
そうであるべきなのだろう。
でも、まだ、理解するには早い若いこの身体を、
何かの色に例えてみたい。
この身体に、何かの意味を持たせてみたい。
どうか。
僕も、君も、まだ、今日が終わるまで。
明日の色を数えていてほしい。
『未色』
心が浮かんで、どこかへ飛んで。
ゆらゆらと。寂しさを呟いて。
はらりはらりと。優しさを零して。
私はずっと、それを見ていた。
手を伸ばす事も無く、
ただ、見つめていた。
それ程に、私から離れた心は。
美しかった。
『心離れ』
「あなたに、羽は無いんだよ」
なんて。分かりきってる。当たり前なのに、
悲しくなるのはどうしてだろう。
笑って。泣いて。歌って。
それだけで幸せな毎日が、
数秒先で嘘になりそうで。
当たり前が当たり前でいてほしくないと
願うのは、想うのは、
どうやら、何年先も、嘘にはなりそうもなくて。
『当然とその他多数』
夜が私に嘘をついた。
その嘘に気付いていたのに、
見て見ぬふりをした。
ほら、朝がやってくるよ。
ほら、もうすぐ、
「ずっとそばにいる」
って言葉が嘘になるよ。
夜が私に嘘をついた。
朝が私を連れ去った。
『夜、さよなら』
どこまでも灰色なのは
この曇り空の話じゃなくて、
未だ大人になりきれない僕らの話で。
それと目が合ってしまわないように
手には、今日も、アルコール。
ぐにゃりと曲がる視界と反比例して、
心だけは穏やかだ。
透明を探り当てる事なんて、きっと、
出来やしないから。だから、
今日も、灰色にアルコールをぶちまけて。
『将来とアルコール』
春を売った君が死んでいく。
明日は明日じゃなくなって、
今日は形を崩し始めた。呼吸毎に。
透明にすらなれない感情は、いらないよ。
味の無い空気は、いらないよ。
風に包まれた今日を「春」というのなら、
君の汚れたそれらも。
どうか、どうか同じ「春」であれ。
『春売君は。』
殻なんて言えるほどの分厚さではないソレを、
誰かに見られてしまう前に、
乱暴に、心の表面から剥ぎ取った。
薄かった。とても、弱々しくて。
けれどそれが私は嬉しかった。
喜んで、涙して、少し恥ずかしくなって、
「ありがとう」なんて言ってしまうくらい。
明日になれば、また、
蘇ったそんな薄さに私は頼ってしまうのだろう。
真っ赤に染った薄さは、
ただ、私を見つめていた。
『皮膚』
あおいろのかいじゅう が
きょうも まちを ふみつける
ともだち に なりたそうな かおをして
かなしそうな かおをして
まちを ふみつける
かれは あおいろを ながしながら
おたけびを あげる
やさしさは まちを ゆらす
あおいろのかいじゅう は
さらに あおさを ましながら
きょうも まちを ふみつける
『青色のかいじゅう』
鴉が、うたう。
「次はお前の番だよ」
と。
風が、うたう。
「お前の場所は無いんだよ」
と。
僕は、うたう。
「ここは、僕の世界だよ」
と。
『ぼくらの唄』
朝が落ちてきた。
だから、僕らまた、生まれ変われる。
今日だけの為に産まれた希望のくせに、
「命」なんて名前を付けて。
僕らは。
『はじまり』
裏側は錆だらけだったから、見て見ぬふりをした。
それだけで、きっと僕らの中では。優しさだった。
それをいつの間にか、
誰かが、愛する理由に書き換えた。
また、見て見ぬふりをした。
これも優しさになってしまえば、
「こんなものが愛情なんて」
僕は泣きたくなるから。
『愛隠し日』
二つが一つになって。
よく見れば一つで。 振り返れば二つで。
「うるさいんだよ、もう、黙っててよ」
分かれるも、離れるも、
どうして一つにしかならなくて。
柔らかかった。まだ、柔らかかった。
それがどうして、僕は泣き出して、
数の空に舞い上がる昨日を
目隠しした。優しさなんかじゃない温度で。
『方程式を知らない』
耳の奥で、飛び降り自殺が始まってしまったから、
きっとまた全て生きてしまうのだろう。
バラバラに散らばった破片が、
今日の四隅を突き刺した。
剥がれかかった さよなら が駄々をこねたんだろう。
頭を掻きむしる前に、鼓膜を寝取られた。
脳の端は生へ向かってゆく。
「僕のせいじゃないよ」
「私のせいじゃないよ」
「生きてたら良かったのに」
心だけは未来予知をやめないでいてくれた。
『黄色い線の内側でお待ちください』
お前の言いなりにはなりたくないと。
だから僕ら、何度だって死んでやる。
お前の気が変わるまで、
僕らに飽きるその日まで、
何度だって死んでやる。
飛び散る血の色は虹色で、
「これが僕らの世界だ」
って描いてやればいい。
鮮やかさにうんざりしてよ。舌打ちしなよ。
こんな僕らを、誰かが、
「ロックンロール」
と呼んだんだ。
『音楽と中指』
星が消えても、僕ら何も思わないから。
だから輝きに目を瞑らなくても、
不思議に思わないでほしい。
ここに無い色を、探さないでほしい。
『星遊』
暗闇に罪なんてないのに、
汚い唾を投げるなよ。
孤独になるのが怖いから、
気付けば糸なんて手繰り寄せて。
「シラフだよ」なんて嘘言ってた。
それが悪いことだなんて、誰が言ったんだよ。
こんな事なら、
命綱に触れたら電流が走りそうだな。
ただ日々に乗っているだけなのに
痛みがあるのはどうして。
あの人達の目からビームでも出てんのかな
体が焼かれてく、縮まっていく、
黒ずんで、闇に消えていってしまうよ。
「次はあなたの番です」
そうだ。暗闇になったんだよ。僕ら。
ただ生きてるだけ、それで、暗闇になったんだね。
だから。暗闇に、罪なんてないんだよ。
『視線』
涙の色を教えてよ、なんて、
私は怖くて言えないよ。
だって、きっと透明なんかじゃないんでしょう。
私の知らない色で、あなたの頬に跡を残す。
だから、きっと、透明なんかじゃない。
そんな涙はいらないよ。
私以外の、
私以上の、
私じゃない誰かを溶かして産まれた色なんて、
私は怖くて拭けないよ。
『涙色と痕跡と』
空が沸騰した。
涙は未だ、その形を保ち続けた。
言葉は波打って、どこか、知らない街に届いてくれる。
それなのに、涙は未だ。
それが私は悔しくて、もっと高まれと、
温度の上昇を願った。
涙が形を保てなくなるくらい、
空は、もっと、沸騰していてほしくて。
『涙ノ沸騰』
朝を待つことが出来ない僕達を、
誰かが、「罪」だと言う。
夜に生きることが弱さなのだとしたら、
僕は、それでいい。脆くても、構わない。
ただ、黒の中で、
他の色を探す興奮からは
どうやら、逃れられそうには無いのだから。
『朝待つ彼らと』
足の裏から悲しさを放ちたくて、
僕は、夜を歩く。
地面の奥へ、奥へと流し込んで、
いつの間にか、
僕のモノでは無くなってしまえ。
夜を踏み潰しているうちに、
また、
知らない悲しさが生まれてしまう前に。
『夜踏歩』
空間が歪んだ。
首が浮かぶ。
足の先に熱さを感じた。
だから、
僕は赤色の振動に身を任せる。
偏見や奥底の自分や、汚さ。
それらすべてが、嘘になってゆく。
ねえ。これでいいんだよ なんて歌うなよ。
足を進ませるなよ。心に意味を探すなよ。
日々に、有限を与えさせてよ。
『前髪の長いミュージシャン』
ふわっと飛ぶ。軽々しく、
階段を一段跳ぶように陽気に。
「これが僕の人生なんだよ」
って最後に中指立てよう。
全部幻だったみたいだねって、
「はい終わり」
で、さようなら。
『最後の花火が終わったら。』
それは、とても、鮮やかだった。
黒一つの、色天井が、
どこまでも鮮やかに見えた。
この世で一番暗い明るさ、飛び込んで、
「世界逃避だね」なんて笑ってた。
背が伸びて、色天井に近づいて、
それなのにどうして、
世界と向き合うの。色を探すの。
僕らの秘密基地は、どうやら、
本当に秘密になったみたいだよ。
『夜、僕ら家を飛び出して』
夜が泣いたら、君が泣いてしまうから。
だからそのまま、この世の全て、
感情よ動くな。そのまま、そこで立ち止まれ。
鳥が鳴いたら、僕ら、朝に泣いてしまうから。
だからそのまま、太陽よ、動くな。
夜が鳴いたら、今日が嘘になってしまうから。
だからそれ以上、感情を揺らすな。
そこで、立ち止まれ。
全て、そこで止まれ。
僕ら、泣いてしまうから。
『夜に鳴く。』
ロックンロールは死んでしまった。
死んでしまった日、僕は笑ってた。
耳の外で、僕ら、濡れながら笑ってた。
この世界には必要無いモノなんだよって
あいつは笑ってた。
別にそれでいいよ。って笑える僕らだから、
きっと、耳の中は染まってた。
『ロックンロールが死んでしまっても』
2019年1月15日 発行 初版
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2016年より執筆を開始。 2018年 個人出版社を設立。 改名(ex.猫音みやび)