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犯罪組織を主人公にしたダークサイドストーリー!
ハイスピードで課せられる任務。
ターゲットの抹殺に命を賭ける犯罪集団。
数々の犯罪にあなたはついてくることが出来るか!?
最後に勝つのは前代未聞の悪なのか
それとも悪を懲らしめる正義の存在なのか?
目を離すことが出来ないストーリー展開が繰り広げられる!

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LSCO~大規模犯罪組織~

兼高 貴也

無色出版



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  この本はタチヨミ版です。

 目 次

プロローグ
開始
任務
方法
練習
初めて
配置
援護
真相
完了
中島と竹中
仲間
田辺と三鷹
尊敬

後悔
各々
新任務
依頼
会場入り
真意
召集
申し出
指導
計画
驚愕
報告
毒殺
変装
セッティング
役割

到着
インタビュー
初失敗
圧勝
外車
結局
これから
本題
心配
長い一日
発表
弱音
旅立ち
理由
犯罪組織
把握

下積み
強さ
驚き
脱帽
出現
オムライス
姉妹
喪失
宣戦布告
交戦
約束
裏切り
混沌

あとがき

プロローグ

 Large-Scale Crime Organization
 人々はこう呼ぶ『大規模犯罪組織』と――。

 この組織ではその名の通り犯罪を起こすことが目的であり、それを遂行することに大きな意義を持つことを今は誰も知らなかった。
 犯罪にも様々なものがあるが、ひったくり、窃盗など小さな犯罪もこの組織を介して行われている。そして、最も大きな犯罪である『殺人』がこの組織の要と言えるものだった。
 現在、LSCOでは日本中に約二万人の会員を持つ。組織の拠点としている建物の外観は病院に似た研究所のようだ。しかし、実際は本部が地下にあり、そこがLSCOの本拠地である。医療用薬物の研究という口実があってこそ秘密裏に犯罪を企てることができるのだ。
 本部には射撃練習場、定期的に開かれる会合のための大ホール、司令部の解析室などが設けられている。
 この大きな組織の指揮を執るのが国際指名手配中の「大平浩二」だ。彼は日本で罪を犯すだけでなく、海外でも犯罪を行い、世界中から目をつけられている。そう言った理由があるためLSCOの指揮権は事実上、幹部に任せているのだった。
 当然これほど大きな組織であるが故に幾つもの部が存在する。
 一つ目は薬物研究部。ここでは主に薬物を取り扱うエキスパートが揃っている。作成しているのは当然ながら麻薬を初めとする毒劇物だ。
 二つ目は射撃専門部。ここはスナイパーの育成や射撃を得意とする人材を掘り出すための部になっている。射撃専門部で育成された後、各々に拳銃が支給され、強盗や殺人を犯す人材として巣立って行くのだ。
 三つ目は司令部。ここは任務を請け負うための唯一の部署である。殺人の依頼を受け、それに見合った報酬の相談や取り引きを行っている。この部は幹部人材つまり頭の切れる人材でエリートが多く存在している。爆弾やナイフ、拳銃などを調達して管理しているのもこの部だ。
 四つ目は小犯罪部。文字通り小さい犯罪を行う部でありLSCOに入ってきたばかりの新人が在籍している部署だ。
 五つ目に脱獄援護部。ここでは逮捕された犯罪者の脱獄を支援することが目的だ。
 続いて、詐欺専門部。主にLSCOを運営するための資金を詐欺によって調達している。
 そして、機材管理部。ここではトラックやクレーン、飛行機にヘリコプターといった出動要請が出た場合に備えて、様々な乗り物を用意している。
 最後は殺人を主とする大規模犯罪部である。LSCOの顔でもある部署だけに会員から優れた技術の持ち主が集い、殺人を遂行するために洗練されたメンバーで作りあげられている。LSCOの顔である大規模犯罪部に所属しているのは四人と少数精鋭で作られており、チームワークやお互いの長所を存分に生かして常にともに行動する。彼らは司令部が絞り込んだターゲットを高いポテンシャルの維持により確実にかつ迅速に抹殺していく。
 この物語は大規模犯罪部の四人を中心に展開していく。
 
 さて、プロローグはこの辺りで終わりにして、物語の主役人物四人について簡単な人物紹介に移ろう。

 まず、この部のリーダー的存在である「中島恭一」。LSCOへ加入したのは約三年前の夏だった。ある殺人事件を起こし、逮捕されたが服役中に脱獄。逃げ場がない彼を助けたのが大平だった。加入後、射撃専門部へ配属される。その一年後、実力が認められ大規模犯罪部に転属されることになった。

 二人目は部のデータ処理を行う「竹中裕二」。LSCOに入ったのは中島と同時期。彼はコンピューターウイルスを作り、政府のデータバンクにハッキングして入り込むと、国内の個人情報を盗み取り、安全といわれ続けて平和であった世の中を混乱に陥れた張本人。ネット上ではハンドルネームTとして有名になり、大平の目を引きヘッドハンティングされた。LSCOに入ってからは司令部でのコンピューター処理を担っていたが、二年前中島と共に大規模犯罪部への転属となる。そのため、中島とは基本的に仲が良い。しかし、お互いに分かりあっているため、対立するところはとことん対立する。

 三人目は国際テロ組織(ITO:International Terrorism Organization)に所属経験を持つ「田辺祐一」。LSCOには二年前に入り、大規模犯罪部には一年前に配属された。ITOではスナイパーを担っており、射撃センスはLSCOでトップの実力を持つ。ITOでとある出来事が起こり、日本滞在中にLSCOの存在を知って、ITOを脱退。そこで身につけたスナイパーの経験からLSCOの射撃専門部へ配属。他の射撃専門部員達とは比にならない腕の持ち主であったため、配属されて異例の半年という速さで大規模犯罪部に転属される。

 最後の四人目は大規模犯罪部に転属されてわずか一年という新人「三鷹邦彦」。LSCOには五年前に加入。小犯罪部に一年。その後、射撃専門部に三年いたが、努力をすることもせずにのうのうと過ごしていたため実力がつくことも当然無く、認められることもなかった。しかし、一年前になんの躊躇いもなく一人の警察官を殺し、異常な精神構造が運良く認められて大規模犯罪部に中島の誘導の元、転属された。ただ、この性格が時に先輩三人の足を引っ張ることもあるのでまだまだ自覚が足りないのも確かである。

 人物紹介をまとめると、「中島」、「竹中」は二年前からいるベテラン。「田辺」はスピード配属の実力派。「三鷹」は少しの手のかかる新人というところだろうか。

開始

 ――ここはLSCO本部。その一角にある大規模犯罪部の部室で、デスクに向かってパソコンの画面をじっと睨んでいる人物が一人いた。電子機器のことであれば何でも来いという冷静かつ沈着な性格の持ち主である竹中だ。パソコンの画面ではメール画面が映し出され、誰かと連絡を取っているようだった。
「おい、竹中。何してる? 飯には行かないのか?」
 声の主は竹中を残して外に出ていた中島からだった。竹中は胸につけたバッジに向かって言葉を返す。どうやら無線機能のついた道具のようだ。
「たった今、司令部から任務の詳細が送られてくるという情報が入ったんだ。ここは離れられない。先に食っていてくれ」
 竹中は他人が自分の電子機器に触れることに非常に敏感な性格だった。司令部からの連絡もリーダーの中島が受けるのではなく、竹中が行うのにはそういう理由があってのことだった。そんな竹中の行動に中島は言葉を返す。
「腹が減ったら仕事にならんだろう?」
 中島の声に竹中はそれも一理あるが、飯より仕事だと言い張る。
「任務が来たらすぐに知らせるのが司令部から配属された僕の仕事だろう。仕事とパソコンを取られたら僕には何もなくなってしまうからね。ご飯はここで適当に作って食べるから心配しないで大丈夫。それより任務が来た以上みんな集まって話をしないと」
「分かっている。飯を済ませたらすぐに部室へ戻る」
「了解」
 竹中は部室に用意された冷蔵庫から適当に食材を取り出し、慣れた手つきで料理を作っていく。こしらえたのはチャーハンだった。チャーハンを手に取り、デスクへ戻る。そして、再びパソコンに目をやる。画面に文字列が映し出されているのを確認する。画面には「任務確定」の文字が記されていた。竹中はその文字を見て司令部にメールを送り返す。カタカタとパソコンのキーボードを叩く音が静かな部室に響く。
「ターゲットは?」
「最近大企業として名乗りをあげているTAKUMA工業の社長、西川琢磨」
 パソコンの画面に目をやりながらチャーハンを平らげる。
「先日、西川はある会社を自社の圧力で倒産に追い込んだ。その会社の元社長が恨みを晴らすべく我々に任務を依頼して来た。恨みを晴らすため殺して欲しいとのこと」
 竹中はチャーハンの入っていた皿を片付けながら真剣な眼差しでディスプレイを見てキーボードを叩く。
「分かった。詳しくはそちらについてから聞くことにするよ」
 そのとき部室のドアが開いた。
「ただいま」
 竹中が振り向くとそこには三人の姿があった。
「ただいま」と声を発した三鷹。帽子を深くまでかぶった田辺。そして、竹中と彼が使っているパソコンに鋭い視線を送る中島。三人は各々の表情で竹中の方を見つめていた。パソコンの画面には先程の質問に対する答えが返ってきていた。
「待ってる」
 竹中はその文字を確認すると同時にキーボードを叩く。
「了解」
 竹中はそう返信するとパソコンを閉じた。そんな様子を見ていた中島が口を開く。
「新しい任務の内容か?」
 中島の問いかけに竹中は答える。
「あぁ、司令部へ向かおう」
 三鷹は首を傾げて、中島の方を見る。すると、中島は三鷹をよそに「決まったんだな」と言葉を響かせる。そんな中島の言葉に竹中は頷くとチャーハンの皿を洗いにキッチンへ向かった。その間、三鷹が竹中のパソコンを触りかけると、竹中は大きな声で一喝する。
「Don’t touch it!」
 竹中は帰国子女である上に、勝手に自分の機材に触れること強く拒むため、怒るとつい英語が出てしまうのだった。一喝された三鷹は「すいません」と小さく謝り、パソコンから離れた。竹中は皿を洗うと、次の行動に移るため、司令部へ向かう準備をする。準備といっても自分のノートパソコンを抱えただけだったのだが……。

任務

 大きな音を立てて司令部の自動ドアが開く。四人は並んで一番奥の部屋まで向かう。司令部のメンバーは大規模犯罪部の面々を知っており、大体のことを把握しているため職務の手を止めることはなかった。そして、一番奥のデスクに座っている女性に四人の視線は注がれる。
「待ってたわよ」
 少々小柄な女性は四人を見るなり、待ちくたびれていたかのように声をかけてくる。彼女の名前は「安藤由貴」。司令部のトップとして指揮を執る人物である。日頃からパソコンに向かい、情報処理および分析・解析を行っている。
「任務内容はこの人から聞いた?」
 安藤はそう言うと竹中を指差した。そのまま中島の顔を見る。そう、先程竹中がメールでやり取りをしていた人物こそが安藤だった。
「いいや、まだだ」
 中島はまだ竹中からの任務内容についての指示が出ていないことを告げた。すると、安藤は竹中の顔をギロリという目で睨みつけた。そんな安藤の対応を見て中島はとっさにフォローに入る。
「飯を食いに行ってて、その間に竹中とやり取りが行われていたみたいでね。移動時間で連絡を付けたかったのだが、知っての通り竹中は自分のことは自分でするタイプだろう? 飯の片付けやらで時間が取れなかったんだ。こいつの性格は君が一番知ってるだろう。そう怒らないでやってくれ」
 中島の対応に安藤は「はぁ」と小さくため息をついて、気を取り直す。
「そう。じゃあ今回の任務について私から直接話すわね」
「よろしく頼む」
 安藤と中島は言葉を交わすと、任務内容の説明に入る。彼女はデスクの上のパソコンに手をやり、ターゲットの情報を元に一枚の写真をディスプレイに映し出す。
「今回のターゲットはこいつ。名前は『西川琢磨』。TAKUMA工業の社長よ」
 その写真を見て三鷹が大声を出す。
「あ! こいつ見たことあるよ。テレビによく出てる」
「そう、今調子づいてる人よ。現在地はとっくに特定済み。住んでるのは高層マンションの三十八階」
「さすがだね。由貴ちゃん。どこまでも完璧主義者だ」
 中島のそんな褒め言葉に覆い被せるように竹中が冷静な声で質問する。
「殺し方は?」
「任せるわ」
 安藤は冷静に呟いた。
「そんな高いところにいるのに殺れるか?」
 中島は昼から一杯引っかけてきたのか安易な質問に田辺が言葉を選んで同時に質問する。
「周りの環境は?」
「この辺り一帯は高層ビルの密集地なの」
 中島からする酒の匂いをかき消すように安藤はそういうと、パソコンを自分の方へ向けてまた何かを調べ始める。そして、一つの地図データを出して、拡大する。
「真ん中のビルがターゲットのマンション。東西南北全て高層ビルに囲まれている」
「なるほど」
 竹中は少し考えながら言葉を紡ぐ。
「田辺、射撃できるか?」
 その言葉に田辺も答える。



  タチヨミ版はここまでとなります。


LSCO~大規模犯罪組織~

2019年3月14日 発行 初版

著  者:兼高 貴也
発  行:無色出版
公式ウェブサイト:
https://takaya-kanetaka-novels.jimdofree.com/

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兼高 貴也

1988年12月14日大阪府門真市生まれ。高校時代にケータイ小説ブームの中、執筆活動を開始。
関西外国語大学スペイン語学科を卒業。大学一年時、著書である長編小説『突然変異~mutation~』を執筆。同時期において精神疾患である「双極性障害Ⅱ型」を発病。大学卒業後、自宅療養の傍ら作品を数多く執筆。インターネットを介して作品を公表し続け、連載時には小説サイトのランキング上位を獲得するなどの経歴を持つ。その他、小説のみならずボイスドラマの脚本・監督・マンガ原案の作成・ボーカロイド曲の作詞など様々な分野でマルチに活動。闘病生活を送りながら、執筆をし続けることで同じように苦しむ読者に「勇気」と「希望」を与えることを目標にしながら、「出来ないことはない」と語り続けることが最大の夢である。

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