spine
jacket

───────────────────────



“しくじり”ベンチャーキャピタリスト

二千社以上企業訪問してきた東証一部上場企業のベンチャーキャピタリスト

二千社以上企業訪問してきた東証一部上場企業のベンチャーキャピタリスト出版



───────────────────────




  この本はタチヨミ版です。

しくじりベンチャーキャピタリスト
~私が経験した、ベンチャー投資7つの失敗実例!~

しくじりベンチャーキャピタリスト
~私が経験した、ベンチャー投資7つの失敗実例!~



2,000社以上企業訪問してきた東証一部上場企業の元ベンチャーキャピタリストです。

私は過去多くのベンチャー企業投資を行ってきました。

しかし、ベンチャー企業投資に関しては、「しくじり」の連続と言っても過言ではありませんでした。

投資実行しても、いつまで経っても業績が上がらないベンチャー、一時急成長を遂げたのち急落して倒産するベンチャー、などなど。

特に失敗は多くの学びがあったようにも思います。

投資した企業の大半は「しくじり」だった、とも言えます。

成功は「偶然の成功」があるかもしれませんが、失敗は「偶然の失敗」がないように思います。

もちろん、何が失敗だったのかは、その要因が一つではありません。

しかしながら、その失敗に大きな影響を与えたポイントは必ずあるはずです。

多くの失敗があり、その失敗は私の大きな経験となりました。

失敗は成功のもと。

「しくじり」から学ぶ、ベンチャー企業投資。

その「失敗要因」は、忙しい毎日、トラブルや課題解決に追われる瞬間瞬間には見えづらいものです。

しかし、一定期間を経て振り返ってみると、そのタイミングはいつだったのか、どこだったのか、見えてくる部分はあるものではないでしょうか。

ベンチャーキャピタルからの視点として、その「しくじり」ポイントとは何か。

7つの投資したベンチャー企業の事例をご紹介いたします。

本書の「しくじり」は2種類のしくじりに分割しています。

1つは、ベンチャー企業、その「事業自体」のしくじり。

そしてもう1つが、投資する側から見た「投資」のしくじりです。

このような2種類の「しくじり」について、それぞれ私が実際に経験したベンチャー企業投資における実例を7事例ご紹介いたします。






1、バイオ発電ベンチャー


【市場背景、投資背景】

環境分野は投資領域の中でも非常に魅力的な分野の一つです。

省電力や自然エネルギー関連等、日本の技術力を生かせる分野でもあります。

太陽光、風力や水力、地熱発電やバイオ発電など多くのベンチャー企業へのアプローチをしていました。

余談ですが、日本は四方海に囲まれた海洋国家でもあります。

つまり、海の波力などを利用した発電ベンチャーや、海洋上の風が強い地域での発電も大きな可能性があります。

また火山・地震の多い日本では地熱発電も可能性は多く、日本は海外に比べても多くの知見や情報を持っている、魅力的な分野でもあります。

【会社特徴・強み】

投資したのはバイオ発電の会社。

比較的小型のバイオ発電でもあり、効率的な発電効率を維持できる技術がウリでした。

まだ小さな会社で、社員は10名ほど。

売上も5~6億円ほどの規模でした。

中小企業向けの工場などをターゲットに、バイオ発電機を販売していました。

排出した廃棄物や副産物を、再利用することで、全体として廃棄物を自然界に排出しないようにすることを目指していました。

自社で工場は持たずに、研究開発に重点を置いていたのですが、当社は1億円の投資を実行。

社長はひげを生やし、やや強面の方でした。


【しくじりポイント】

事業自体は設立から増収基調を継続、営業力・技術力共にある程度、実績を上げていました。

この人ならと、投資を決定したのですが、よくある話で社長が浪費家。

なんと、投資した資金を使って事務所の内装工事を実施しました。

事業よりもきれいな事務所にすることを優先。

大事なのは事業への投資であるにもかかわらず、研究開発や営業力強化等は実現せず、結局赤字運営を継続。

投資した資金は底をつき、他社からの投資も断られ、事業継続を断念。

しくじりポイントとして挙げられるのは、発電分野で、バイオ発電が思った以上に市場としては成長率が低かったことも一つの要因でした。

太陽光や風力、水力など自然エネルギーの成長など、発電方法も多様化した昨今、有限ではない発電方法が、今は求められているのかもしれません。

そして、もう一つ、大きなしくじりポイントは、代表個人の思想や考え方。

事業に対する真摯な想いや情熱がなければ成功はしません。

事業よりも、事務所をきれいにする、見かけをきれいにすることを優先していては、事業は立ち上がりません。

まずは、事業を成功させ、社会に還元し、その結果、収益の一部を社員の働きやすい環境にすべく改善していくという順番が大切ではないでしょうか。

一番最初にすべきこと、間違っていては、事業の成功はままなりません。


【投資しくじりポイント】

環境分野、エネルギー分野は投資軸においては、問題はなかったと思います。

しかしながら、代表の考え方は非常に重要です。

何を軸に事業を立ち上げたのか、何をしていきたいのか、見定めることは不可欠ではないでしょうか。

また、事業の方向性も重要です。

特にエネルギー産業のような大きな市場には、国や政府、行政等の意向で、方向性が大きく変わることもあります。

その中で、バイオ発電という選択肢は適切だったのかどうか、大きな「しくじり」だったかもしれません。





2、アニメ制作ベンチャー


【市場背景、投資背景】

世界に間たる、日本のアニメ文化。

日本発の「ジャパニーズカルチャー」の先駆的存在と言ってもいいのが、アニメ分野。

しかしながら、アニメは非常に多くの人手がかかり、多くの時間も必要であるため、多額の資金がかかることも大きな問題。

ジブリの宮崎駿などの長編アニメには数年の期間を有し、時間のみならず、多額の資金が必要であるのはご存知のところではないでしょうか。

さらに、リスクがあるのが、その完成したアニメが、必ずしもヒットし成功するとは限らないという点です。

ある意味、博打の一つ。

アニメ業界では、このリスクをどのように低減するのか、大きな課題ではあります。

もちろん、アニメに限らず、コンテンツ産業全てにおいて、このリスクは共通項かもしれません。

リスクを低減する方法としては、ヒットする可能性を限りなく高める方法と、投下コストを縮小する方法、収益の多様化を図ることなどが選択肢として挙げられます。


【会社特徴・強み】

人手と資金が多く必要なアニメ業界。

一つの長編アニメには数年をも有する時間が必要な作品もあります。

海外などで安い賃金の国では、多くの人手を経て作成し、ヒットすれば多くの収益を生み出せます。

しかしながら、高額な賃金の日本においては、ヒットするかどうかわからない作品に、なかなか多くの人手と時間を割けないところが大きな問題点でした。

この問題を解決できるベンチャー企業へ投資します。

デジタル技術を駆使し、デジタル処理においてアニメ制作プロセスの簡素化、時間短縮が実現可能なベンチャー企業でした。

海外ではディズニーやピクサーなどのアニメ作品に、デジタル技術が浸透しています。

日本では旧来からのアニメ作品に慣れ親しんだことから、なかなか受け入れられない環境、ユーザーニーズがあることから、なかなか浸透してきませんでした。

しかしながら、ディズニーなどのアニメ映画ヒットなどを背景に、徐々にではありますが、少しづつ日本でもアニメのデジタル化が浸透しつつあります。

以前、投資した同社は、少人数・短期間による低コストのアニメ制作技術が特徴でした。

そしてもう一つは、コンテンツの収益多様化。

長編アニメなどの大型コンテンツではなく、小型コンテンツを多様なマーケットインフラに乗せることで小銭を幅広く集め、収益化するビジネスモデルを有していました。


【しくじりポイント】

同社はアニメコンテンツ製作を行っていました。

当初はある程度PRも功を奏し、一定の知名度も高めることに成功しました。

低予算の割には、アニメ制作の技術は当時では優秀でしたが、ある程度のヒットで、それ以上の成功は見られなくなってきました。

もともとマーケットターゲットは、コアなアニメマニアではなく、少しアニメが好きという、比較的ポップなアニメファン向けをターゲットにしていました。

このような背景から、作製するのはポップな作品に終始。

とはいいつつも、ドラえもんやサザエさんなどの国民的アニメにはかないません。

コアなアニメファンではなく、また一般大衆向けアニメではないターゲット層を意識。

シュールな笑いを取り入れた、20代・30代層をメインターゲットに選定していきました。

法人とのタイアップや広告宣伝もうまく進め、ある程度の知名度は得られましたが、一定以上の成長が止まってしまいます。

理由は様々なところが考えられますが、停滞した大きな理由一つが、そのコンテンツ内容がただ単純につまらなかったということでした。

当たり前ですが、コンテンツが面白くなければ、どんなにアニメ技術や市場開拓技術に優秀な面があっても、成功には結びつきません。

コンテンツ産業で魅力不十分であることはあまりにも致命的でした。

例えていうなら、ラーメン店です。

どんなにラーメン店の見栄えや広告手法が長けていたとしても、そのお店が美味しくないラーメンであれば、最終的には顧客は来てくれません。

今回のしくじりは、同じような理由かもしれません。

アニメ分野において、一番重要なものは何か。

その視点が薄かったことも、大きな理由の一つだったのかもしれません。

まさに、事業における、最も重要な部分に弱みを抱えていたといえるのかもしれません。


【投資しくじりポイント】

日本文化の輸出、という傾向の中、拡大市場の一つでもあり、投資分野としては悪くない分野だったかと思います。

しかし、コンテンツ分野は、当たりはずれの多い、博打的要素の強い分野でもあります。

いくら左脳を駆使し、ロジカルに市場を分析しようと、マーケット開拓しようと、その核となる「感性」を持ち合わせていなければ勝てない分野ではないでしょうか。

特に代表を始め、役員がクリエイティブな感性を持っていなければ、ユーザーの感性を理解することは難しくなります。

抱える人材クリエイターに対してもそうかもしれません。

大事なのは、まず、事業の根幹は何か、その事業における、外してはならないセンターピンは何か、そのセンターピンを理解し、見抜くことが投資における重要な視点かもしれません。

このような意味でも、やはり代表の論理的思考や頭の良さなどではない「感性」をも重視する必要があったのかもしれません。

特に創造性・感性を必要とするクリエイティブな分野において、これかを見抜けなったことは大きな「しくじり」だったのかもしれません。







  タチヨミ版はここまでとなります。


“しくじり”ベンチャーキャピタリスト

2019年5月28日 発行 初版

著  者:二千社以上企業訪問してきた東証一部上場企業のベンチャーキャピタリスト
発  行:二千社以上企業訪問してきた東証一部上場企業のベンチャーキャピタリスト出版

bb_B_00159779
bcck: http://bccks.jp/bcck/00159779/info
user: http://bccks.jp/user/146301
format:#002y

Powered by BCCKS

株式会社BCCKS
〒141-0021
東京都品川区上大崎 1-5-5 201
contact@bccks.jp
http://bccks.jp

二千社以上企業訪問してきた東証一部上場企業のベンチャーキャピタリスト

二千社以上企業訪問してきた東証一部上場企業のベンチャーキャピタリスト

jacket