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Ten(10)

Mr.座敷わらし

座敷わらし出版



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「天を切り裂く音を聞くために生きている」
男はそう言った。確かにそう言った。だが彼は未だその意味を知らなかった。
「本を書いたらって今まで2人に言われたんだ」
「その辺を歩いていたら題名が浮かんできた」
「人に言うとは思わなかった」
「題名がそれ」
「読んでみたい」
・・・
「出身はどこ?」
「新潟です」
「新潟でこの前地震あったよね」
「おれのいたところでも同じぐらい揺れた」
男は聞いてくれた女に心から感謝した。

「山手線に乗るにはどうしたらよいですか?」
男は生まれて初めて道を聞かれた。
「行けば上に書いてあるから、改札から入って行ったらわかるよ」
行けばわかるのか。そうだよな。

「本当の事を言うと体が動くんだよ」
それは未体験であった。支えは自分の体と、道路脇に停めてある自転車であった。
周りで声がした。周りを頼るべきだよな。
最初に女の声がした。次に男の声がした。
「先輩。お家帰れますか?車危ないですよ。」

「今満員電車に乗るのを躊躇していたら切符が消えたところ」
「今散歩中」
「もう戻ってこないの?」
「わからない」
「ずーーっと説明したとしても、わからない人はわからない。それは最初から決まっている。」
「私は冒頭で大事なことを言った」

「楽な姿勢でいないとしんじゃう」
「この車輌全部でも狭い」
「道路とか車とかあって、ずっとこういう感じで来た。」
「〇〇なので他のお客さんが休めないそうです」
「努力します」
その後、男に〇〇が現れた。

「宿なし?」
「泊まってる」
「すご~い」
男が夜散歩をしていた時に撮った野良猫の動画を見せたら、動物好きの女がそう言った。
「ヒゲをはやして行ったから、そう見えたのかな(笑)」
男は一緒に笑ってくれた別の女に心から感謝した。

「どうぞ見て行ってください。どんな指輪をお探しですか?」
「まぶしくて足が止まった」
「サイズはいくつですか?」
「わからない」
男は右目を右手の中指と人差し指で閉じて、暫く佇んでいた。

「東京にいた時、山手線に乗って、人間観察するのが面白かった。」
「うん。山手線と中央線と総武線に乗ってきたよ。」

「今日は風が強いです」アナウンスが鳴った。
その日は、風の強い日で、その時、駅の東口で風が吹いた。
祭りの場所を囲っている三枚ほどの仕切りのバリケードが風で倒れた。
七夕の日だった。

「最初は見て見ぬふりをしていたけれど…」

リアルな交流が世界で展開される。それはとても楽しい。
祈りなど、見せかけである。かといって祈りのない世界もまた有り得ない。
時は至れり。

あなたはどう生きますか?

    

    


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Ten(10)

2019年7月12日 発行 初版

著  者:Mr.座敷わらし
発  行:座敷わらし出版

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