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不景気なアメリカで突然失業者となった私。会社に通わない毎日を日記に綴ります。

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失業日記

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lilbones出版

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4年半勤めた会社を辞め、去年の10月に転職をした。そのわずか10ヶ月後に突然の解雇。
大して落ち込むこともなく、むしろすっきりとした気分なんだけどいいんだろうか・・・

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8月8日
金曜の午後、上司に呼ばれたら首だと思え

アメリカではそんなことわざがあるとかないとか。正直、聞いたことがないけど、その金曜日は朝から「首になるなら今日だな。金曜日だし」と思っていた。ところが同僚とランチを食べる頃にはそんなことすっかり忘れていて、午後3時半頃に上司に呼ばれてようやく思い出した。そして案の定、気まずそうに「残念だけど・・・」と切り出す上司。というか上司なのか、この人は。一応デザインディレクターだけど、私が担当していたレディースラインにはほぼ関わっていなかった彼。でも彼が私に解雇通告をするということは上司なんだろうな。どうでもいいけど。同じ週の火曜日、一緒にレディースのデザイナーをしていた同僚が急に首になった。火曜日だっただけに、みんな驚いた。それ以来、レディースラインそのものの存続の危機が噂され関わっている人間は一斉に不安を抱いた。「次は私たちだ。」まぁ、そう思うのも無理ない。私は水曜日以来毎日「なんのためにデザインしてるんだろう」とやる気のでないまま、でも一応まだ首になったわけではないし仕事をしないわけにもいかないので、一人で黙々と仕事をした。そして金曜日。後で聞いたら、計9人解雇されたらしい。その晩はみんな(女子ばかり)で飲みに行った。当たり前だ。
 
 

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8月9日、10日
週末はいつもどおり

でも日曜日が終わっても休みは続くことを考えると、なんだか気が楽だ。今日中に洗濯と掃除を済ませて、とか考えなくてもいい。金曜の夜は飲み過ぎて帰宅できなかったため同僚(元)の家に泊めてもらった。とは言ってもそんなに飲めるわけではないので、二日酔いも大したことない。家に帰ってからWとその友達と3人でダイナーへ。RoadsideHuevosとかいう、ベイクドポテトの上に目玉焼きとサルサが乗ってるやつを頼む。おいしい。
午後は「BodyWorlds3」を見に行く。人体標本のやつ。オリンピックに合わせて、筋肉や内蔵がむき出しの人体が槍投げのポーズを取ったりしている。どうでもいいけど、おへそと乳首の皮膚だけ残すのは止めてくれないか。日曜日は月に一度のローズボウルのフリマ。ベージュのヒールとビンテージのハンカチ数枚、赤い革がいい感じのバッグを買う。バッグは買うのを悩んでいると、売っていた女の子が「これ買えばいいカルマ!」と言う。ちょっと前に現われた客がこのバッグを買おうとしてすごく失礼だったらしい。よくわからないけど、いいカルマを手に入れるに越したことはない、と思って12ドルを払った。それに大きさもちょうどよくて使いやすい。果たしていいカルマは訪れるだろうか。フリマ散策中に母から電話。前日、電話をしたがつながらなかったのでメールで知らせてあった。心配性の母の反応を心配したけど、なんかこっちもあっさりしてる。「みーちゃんならなんとかなる」。みんなに言われる。
 
 

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8月11日
そして月曜日。

金曜日、首になった会社を去りながら「goodbye,longcommute!」とつぶやいた。なにせ片道50マイル、約1時間の道のりを毎日往復していたのだ。それをもうしなくて済む。のはずだったけど、月曜日は歯医者の予約を入れてしまっていた。会社でやっと保険がおりて、会社の近くの歯医者をわざわざ探して行って、今回は2度目の治療だった。しかも仕事に差し障りのないように、お昼時に予約をしたのに。面倒くさいけど、しょうがないので通い慣れた道のりを、普段よりは遅めの時間に行く。途中で首になっていない元同僚に電話をして、ランチに誘った。歯医者のあと、元同僚数名と待ち合わせた魚グリルのお店へ。男ばかり4人現れる。元々女子が少なかったけど、これで本当に男だらけの会社になったな。
こっちは清々してるのに、元同僚はなんだか心配そう。ぎこちない感じで「で、元気?」と聞いてくる。ランチを食べながら、いつも通り会社の愚痴を言い合っている。うーん、むしろ会社に残った彼らがかわいそう、と負け惜しみではなく純粋にそう思ってしまった。帰宅してサイト作りに専念。以前から作り直そうとしていたのでこれを機にしっかり完成させようと思う。
 
 

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8月12日
今日はなにしよう。

大体お店とは平日の昼間、みんながちょうど働いてる時間に開いている。会社が終わった頃には店も閉め始めていて、急がないと、もしくは週末まで待たないと用事を済ますことができない。なので失業してまずやろうと思ったことは、フィルムを出しに行くことだった。家から車で15分くらいのところに写真屋さんがあって、そこに出すといつも写真がきれいに戻ってくる。フィルム自体の現像が上手いのだ。スーパーで安く1時間で現像するよりよっぽど良い。フィルムが3本たまっていたので、さっそく出しに行く。帰りにWholeFoodsに寄ってコーヒーフィルターと液体石鹸を買う。一日中家にいると猫と過ごす時間も増える。ちょうど猫の行動学について本を読んでいるので、観察しつつ遊んでやる。異常に臆病なジジが少しはリラックスできるように。失業して時間ができたので、やろうと思ったことはいくつもある。そのうちのもうひとつがファイナルファンタジーXIIをいいかげんにクリアすること。2年前くらいに始めて一度全部データが消えて、それでもしつこくやり直していたのにここ数ヶ月は放棄していた。でもやっぱり気になる。しばらくぶりにゲームを立ち上げると懐かしいテーマ曲が流れてくる。でも全然覚えていない。何をしてたんだっけ。えーと・・・とりあえず2人のレベルを上げてハントをひとつやって、終了。ちょっとがっかり。
 
 

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8月13日
失業後初めて10時まで寝た。

会社に通わなくなったからといって昼まで寝てダラダラしたくないので、ここのところ9時頃には起きていたけど、今日は気づいたら10時。ま、いっか。でも仕事の夢を見る。しかも、夢の中でその夢のことを元同僚に話している。もういいってば。
起きたのが遅かったので特に何もしないままお昼。冷蔵庫にあったナスと豆腐をフライパンで焼いて、ネギ、生姜、だし醤油をかけて食べる。家にあるもので昼を済ますことができるので経済的だ。昨日現像に出した写真を取りに行く。見てみるとだいぶ前の写真もある。これいつ? 去年? すっかり忘れてた。あとはメイク落としを買ったりして帰宅。家にいて気づいたけど、3時〜4時頃はどうにも眠くなる。猫も大体寝てる時間だ。猫が寝ているのを見ると眠くなる。5時半頃までがんばったけど、学校から帰宅したWもうつらうつらしているので諦めて私も昼寝。30分ほどのパワーナップ。予想以上にぐっすり寝た。今日メールを見たらクビになる前に勤めていた会社の元同僚から一通届いていた。その子は私がまだいた頃にすでに会社を辞めていて、今はバンド活動をしている。クビになったことを聞いた、というのと、今晩ライブがあるから来ない? という誘いだった。どうせ朝起きる心配もしなくていいし、久しぶりだったのでWと出かけた。バンドの練習とツアー以外はバイトもしていない彼女は「暇なら遊ぼうよ」と言う。「普段なにやってるの?」と聞くと、「お皿洗ったり、ご飯作ったり。まぁ主婦だね」。
そうか、そんなもんか。
 
 

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8月14日
木曜日はファーマーズマーケット

それだけは何日も前から決めていた。ファーマーズマーケットは農家が直接野菜などを売りにくる市場。週末にあることが多く、町によって規模が違う。ハリウッドのは大きくて有名だけどまだ行ったことがない。一番地元のやつは木曜日の午後4時から8時までで、以前一度だけ行ったものの会社があってそれっきりだった。今日7時頃にのんびり出かけて行ったらなんかのお祭りみたいに人がいっぱい。いつもこんなに来てるのかな。おいしそうな苺や桃類を見てると「JapaneseKyohogrape」と書いてある。サンプルを味見すると、確かに巨峰!かなり久しぶりの味。思わず購入。4ドルで安いんじゃないかな。日本のよりは小粒だけどあまくておいしい。ここのマーケットのいいところは野菜やくだもの以外に屋台が充実していることで、タコスやクレープ、インド料理、ペルー料理、バーベキュー等、迷ってしまう。時間があまりなかったので早そうだったタコスを頼む。チキンとビーフ。来週は何食べようかな。マーケット後はそのまま映画館へ。昨日から公開の「TropicThunder」が目当て。BenStiller、Robert DowneyJr.、JackBlack主演のコメディで、トムクルーズも実は出演していたり、と見所が満載だった。でもこういう映画って日本では公開されないのかな。どうなんだろう。わかりにくいっちゃわかりにくいかも。さて、週末はDanaPoint。楽しみ。
 
 

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8月15、16、17日
海辺の週末

この週末はダナ・ポイントに行く、というのは4月から決まっていた。Wからの誕生日プレゼント。本来なら(?)金曜日会社の後そのまま向かうところを、失業したおかげで昼間から出かけることが出来た。自宅から南下すること1時間ちょっとの海沿いの町だ。ついてすぐにカヤックレンタルへ向かう。25ドルで2人用のを借りてのんびり、一生懸命に漕ぐ。肩と胸と腕が疲れるけど気持ちいい。ここのところジムに通っていたお陰で思ったほど筋肉痛にはならなかった。夜はひとつ北の町、ラグナ・ビーチへでお寿司。板前さんがちゃんと日本人で、しかもいちいちリアクションが大きくて笑った。翌日土曜日はさらに南下してビールフェスティバルへ。StoneBreweryというローカルのビールが主催している12周年記念フェス。ビールファンが方々から集っていて、みんなStoneのTシャツや他の醸造所のTシャツ等を着ている。私はdesignateddriverとしてビールは一口ずつの味見しかせず、でもWはちゃんと10種類試していた。来年は私も参戦してテイスティング用の記念グラスをもらいたい。帰り道、ダナ・ポイントからほど近いSanJuanCapistranoのミッションに寄るも、時間が遅すぎて入れなかった。ちらっと覗いたら庭がかわいらしかった。これは次回! 日曜は朝からチェックアウトして早めに家路へ向かった。留守番していた猫はやっぱり意外と平然としていた。
 
 

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8月19日
「火曜日には行きます」

と、日曜のBBQで私はトニーに言った。トニーはクビになった会社の前の会社の上司。実はクビになったその日、彼女と電話で話してフリーランスをする約束をしていた。以前の会社は私が去って以来グラフィックデザイナーに恵まれていないらしく、いつでも人手を探していた。そして今日、火曜日。10ヶ月ぶりだっただけに道を少し間違えながら会社についた。みんなに「おかえり〜」と言われる。いや、帰ってきたわけではないんだけど・・・と思うも、実際に来ちゃってるからな。以前のデスクの隣のスペースで仕事をする。なんか変な感じ。夕方、見たことのない子がやってきて「新しい子?」と聞いてくる。むしろ古いんだな、と思うけど「あ、フリーランスで」とわけのわからない返事。明日も一応行く予定。ほかにも仕事探さないとなぁ・・・
 
 

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8月25日
そろそろ自分の行く末が心配

フリーランスを一応始めたものの、前勤めていた会社だし、それ以外の仕事は未だ見つかっていない。ネット上で求人のところを流し見する日々。「お!」と思った仕事があったけど、勤務地がオハイオ州・・・完全な独り身だったら考えてもいいところだけど、同棲2年の私には躊躇せざるを得ない距離だ。他にもちょっと興味のある会社等を見つけても、ロサンジェルスからは遠い。これまでのようにアパレル会社で探して見ているけど、ここロサンジェルスや少し南のオレンジカウンティーはアクションスポーツ系の会社が多くて、それはそれでいいんだけどあまり私の性に合わない。なんとなく。別にアパレル関係でなくてもいいんだけど、やっぱり過去5年ほどその業界で働いてきたので一番自信がある。2週間のんびりしてきたけれど、そろそろちょっと心配になってきた。大体自分はどうしたいんだろう。フリーでもっと仕事をしたいならそれなりの就職活動をしないといけない。そういえば就活って長く険しい道だったような気がする。忘れてた。「今週仕事がつまんなくて」と昨日友人宅でのホームパーティーで誰かが言っていたのを聞いて、ぼんやりと「仕事があるときはそれが当たり前だと思うものだなぁ」と思った。私だってもちろんそうで、どこかで「いつどうなるかわかんない」とは思っていても、いつかどうにかなったときの具体的な対策まで練っていないし、それよりも上司の愚痴を言い合ったりして過ごしたもんだ。
 
 

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8月28日 なにもしてないようで・・・

気づいたら木曜日。フリーランスに出かけない日は週末気分なので、曜日の感覚が段々薄れて行く。今日は例によって夕方からファーマーズマーケット。例によってフルーツを買い込む。今回はお店のお姉さんに勧められてグリーンプラムに挑戦。見かけによらず、甘い。露店でププサ(エルサルバドル料理)を買って早めの夕飯にした。

昨晩、というか今朝の3時までゲームをしてたため、朝は10時近くに起きた。もっと寝ていたかったけど、だらけないようにがんばる。2年近く前に始めたファイナルファンタジー12をいまだにやっていて、一度データが消えたのにしつこく最初からやり直し、休み休みやってここまできた。この調子でいけばもうすぐクリアできそうだけど、終わっちゃうのもなんか淋しいよなぁ。

起きてからはネットで就職活動というか情報収集というか情報発信。ポートフォリオをネット上で公開できるサイトがいくつかあるけど、効果のほどはどうなんだろう。他の人のポートフォリオを見てるとすごいのとかあって「私大丈夫かな」と心配になる。もしや私、デザインがどうとかよりもただ一緒に働きやすいだけなんじゃ、とか考えるも「そんなことないさ」と自分を励ます。

先日Wに失業中の私についてどう思うか問うたところ、「焦ることないし、俺と出会う前からちゃんと仕事してたじゃん。大丈夫だよ」というようなことを、もっとちゃんとした感じで言われて嬉しかった。味方がいるのは心強いことだ。

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1月3日 そして新年 ちょっとどころか随分と一休みしてしまった。その間失業を無事卒業し、フリーランス先にそのまま就職した。結局週5日働いていたし、しかも自宅からではなく会社に通っていたのでそれだったらちゃんと正社員になって保険などの手当をもらおうと思ったからだ。これで良かったのかな、と一瞬思ったけど正社員になってからは仕事内容も増えてやること盛りだくさん、なかなか楽しんで仕事をしている。今まではほぼずっとレディーズのアパレル用グラフィックをやってきたけど、ここでは帽子やバッグ、子供服もデザインさせてもらった。どれも初めてやるようなデザインだったけどこれがおもしろく、特に子供服はできあがるのが楽しみだ。

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9月4日 失業後初めての面接

以前の職場で週2回のフリーランスを始めた初日、デスクの電話が鳴った。その職場の元同僚からで、転職したての彼が転職先からかけてきていた。「ここでグラフィックデザイナーを探してるらしいんだけど、興味ある?」とのこと。もちろん、と答えてそれきりになっていたのが、先日その会社から電話があった。木曜の2時に面接。

その会社はアパレル業界の大きな企業で、友達もずっと前にそこで働いていたことがあった。でもたしかあまり良いことを言ってなかったような、と彼女に聞いてみると「あそこにいて良かったことはひとつもなかった」という。そこまで。でもまぁ、とりあえず自分の目で確かめてみることにした。

今日2時少し前に着くとそこは聞いていた通り、大きな建物。ただ工業地帯にあるのでビル、というよりは工場セッティング。面接時に中へ通されるとデスクがずらーっと並んでいる。一体何人働いてるんだろう…

仕事内容を聞くと最初に聞いていたグラフィックデザイナーではなくアシスタント的な仕事らしく、ちょっととまどった。そうかー。別にそこまで私はグラフィックデザイナー!と思ってるわけではないけど、そのアシスタントの仕事を受けたらファッション業界にさらに深入りすることになる。果たしてそこまでファッション業界にいたいか、と聞かれると微妙。やはりもっとじっくり自分が何をしたいのか考えるべきだな。

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9月7日 やっとカーテンを縫う

部屋のブラインドが猫に壊されて、猫サイズの四角い穴(窓)が開いてどれくらい経つだろう。今日ようやくカーテンを縫うことができた。先送りにしてた割にはあっさりとできあがって、満足。ついでに2着のワンピースの丈直し。ちょっとした達成感。

ところが昨日から家の中がすごくちらかってる。クロゼットを掃除しようと思い立ったのはいいんだけど、いらなくなった物が山のように出てきてしまった。ゴミとして捨てるもの、まだ使えるもの。まだ使えるものは近所のリサイクルショップに持って行かないと。

夜はインターネットを徘徊する。かわいいレタープレスの作品を見つける。先週買った「Printingby Hand」という本の作者のブログから辿って行った。レタープレスやシルクスクリーンでいろいろ遊んでみたい気持ちがふつふつとわき上がってきてる。近々母校を訪ねてプリントラボが使えるか調べてみようかな。

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9月8日 失業1ヶ月記念日

記念日というかなんというか。祝うものでもないけども。こうして一ヶ月経ってみて思うのは、仕事っていうのは必ずしも月金で出勤しなきゃいけないもんでもないんだなぁ、ということ。当たり前だけど、実際にそれが日常になってしまうとそこから逸脱するのが怖くなる。失業して時間が有り余ってる毎日をもっともっと充実させることはできるはずだけど、それでも今の日々は以前よりも潤ってる気がする。気分的に。自分の行く末を考える日々。やってみたいプロジェクトが次々に浮かぶ日々。のんびり夕食を作ってワインと一緒にいただいたり、ぶらぶらと近所のファーマーズマーケットに出かけて見たことのない果物を手に取る日々。悪くない。これで食べるのに困らなければなぁ。

会社勤めをしていた頃は割と地道に貯金をしていた。失業したときのための貯金ではなく、来年行くつもりのベルギー旅行や、あとは後々の家購入とかそういったためのものだ。地道に、とかいうのが苦手な私だけど、貯金だけはきちんとやっていた。失業する1、2ヶ月前に会社から定年後のための貯蓄の申込書をもらって、そんなことまで考えていた。将来のための貯金!と割とシビアにやってきたけど、今となってはそれもどうなることやら。生活するのに最低限の収入を確保するのがまず第一だ。

週2回のフリーランスに加えて、Wの両親のサイドビジネスのためにウェブサイトを作成することになった。ウェブは専門外だけど、自分のサイトを作ることはできたからなんとかなるだろう。お世話になってるだけに、ちゃんとやりたい。お金を取るのは気が引けるけど、取らないわけにはいかなさそう。フリーランスに慣れないので金額をつけるのがとにかく困る。

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9月12日 面接、2件

本日は前回面接に行ったA社へ2回目の面接と、別のB社へ初めての面接。この2社がとても対照的だった。A社は大企業。今日は別の部署の部長と会った。40代半ばの彼女は面接の仕方から言ってることまで前回面接した人よりもテキパキしていた。しかも質問が徹底していてまずどこの大学に行ったか、そこに決めた理由、そこでは何をしていたのか、から始まり、以前の会社での一日の過ごし方、理想とする仕事環境、等々。私が一通り答えると、次は彼女がその部署の仕事内容や仕事の進め方、自分自身の履歴などを実にじっくり話してくれた。同じ会社でもやっぱり面接する相手=仕事をする相手が違うと印象は大分違うもんだなぁ。彼女はとにかくきっちりしていて、一緒に仕事をするには心強いと思った。

次は先日いきなり電話があって面接に行くことになったB社。一体どこから私の情報を、と思って今日改めて尋ねると「あれ? 連絡なかった? ○○から…」というはっきりしない返事。よくよく聞いてみると、数日前にオンラインポートフォリオサイトで私を見かけてメールをくれた人の紹介だった。でもそのメールは「君のスタイルは私のクライアントに合いそうだ」「仕事内容はまだ極秘」というもので、それ以来連絡がなかった。てっきりフリーランスかと思っていたんだけど。その時点でB社のコミュニケーション能力がちょっと心配になった。面接は割と簡単に済み、工場を案内してくれた。帰り際に「で、どう思います?」と聞かれ、ちょっと答えに困ってしまった。

まだまだ考えることは多そうだ。

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9月14日 木曜日にiMacを買ったんだった。

よく考えたら今までずっとノートパソコンで、自分のデスクトップは買ったことがなかった。もしこの先フリーランスをもっとやっていくなら12インチのパワーブックでは無理がある。それなら買ってしまえ、ということでいざ近くのアップルストアへ出かけた。買ったのは24インチの一番速いやつ。一緒に行ったWが学生だということで、学割で買えた上にiPodタッチやプリンタまでついてきた。ラッキ〜

さっそくセットアップして使ってるiMacだが、ただひとつ問題が。モニタがなぜかすごくグロッシーでまぶしい。一番暗い設定にしても光が反射しまくって目が痛くなる。後ろが窓、っていうのがいけないんだろうけど…。それでも今までの倍の大きさのモニタは悪くない。あと、速い。これは仕事がはかどりそうだ。仕事があれば。

実は仕事、というかバイト的なものを今週から2、3週間やることになった。同じく解雇された元同僚の知り合いを通してで、時給15ドル。はっきり言って安いけど家にいるよりは収入になるし、これを通じて知り合いやコネが増えると思ってやることにした。というわけで明日は9時半から出勤です。

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9月19日 今週はバイト。

例のバイトだけど、仕事内容は今まで会社でやっていたようなこと。ブランド自体は割と有名になってきてるけど会社としてはけっこう新しく、社員も20人いないくらいだ。おもちゃやバッグなど色々作っていてアパレル部門はまだ新しく、私を雇ってくれたリンダも社員ではなくフリーランスでやっているらしい。けっこう忙しいけど部外者だからか、気持ち的にのんびり仕事できていることに気づいた。

この仕事を受けたときにひとつ心配だったのはリンダのことで、実は彼女は前の会社のオーナー(の一人)の元彼女。なくなった(というか外部委託になった)レディース部門の最初のデザイナーも彼女だ。ところがセンスはいいけどテクニカルなデザインができない、という噂を聞いていた。でもコネはたくさんある。実際イベントを企画したり、人とつながるのが得意なのだ。だからそういう人とつながっておくのはいいかな、という下心もあって引き受けた。実際に知り合う前の彼女の印象(というか想像)は遊び好きで派手、デザイナーという肩書きでちやほさされたい子、というものだった(我ながらひどい…)。ところが会ってみるとそれなりに落ち着いていて、デザインやファッションに対する情熱がある。テクニカルな面においては多少問題があるものの、それも自覚していて自分なりにがんばっている。「もう夜遊びは控えようと思って」とも言っていて、見てる限りではまじめにバリバリ仕事をしている。クリエイティブな女性のネットワークの場を作るLadies LottoというグループのLA担当でもあり、実際にはとても前向きで努力家だと思った。

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10月2日 失業というか

気づいたらほぼ毎日仕事をしてた。といってもそのバイトというかフリーランスなんだけど。おとといWに「現状に満足しちゃだめだよ」と言われた。割と安い時給でフリーランスをしてる現状のことだ。そうかぁ、と思った矢先、メールが届いた。以前就職活動中(求人情報サイト観覧)に見かけてちょっと「お」、と思った会社からだ。でもオハイオ州は遠いよ、と思って結局見過ごした。その会社が私のポートフォリオを見て興味を持ったとのこと。電話で面接をしたいらしい。

どうしたらいいのかなぁ、と悩んでいたのは昨日。そしたら今日、バイト先のプロダクションマネージャーから「ちょっと」と呼ばれ、フルタイムで雇いたいという話をされた。なんだなんだ。モテモテじゃないか。「このまま仕事がみつからなかったら…」と密かに心配していたこともあったのに。株も大暴落で景気が悪いんじゃなかったのか。

それでも会社勤めという責任から一歩ずれつつこの2ヶ月を過ごしたせいか、フルタイムとなると少し躊躇してしまう。この自由な感じ、ほぼ毎日出勤してるとはいえ気分的になんか違う。それを失うのがちょっとためらわれる。でも不景気で職のチャンスさえない人たちが溢れる中、こういう機会を蹴るのは罰当たりなんじゃないかとも思ったり。フルタイムだと保険等がつくし。やっぱり楽なのだ。でも今のバイト先は悪くない。雰囲気もいいし、小さいのがいい。どうしようか、自分の人生。

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10月8日 初めての失業手当

本当は失業してすぐに手続きをすればよかったんだけど、いまいちよくわかっていなかったため、1ヶ月ほどたってからやっと申し込んだ失業手当。知らなかったんだけど会社勤めをしていた間中、税金や何やら給料から差し引かれる中に失業手当も含まれていたらしい。自分がもし失業した場合のための積み立てというか。だったら自分のお金、もらわない手はない。数日前にやっと初めての失業手当が郵便で届いた。400ドルちょっと。元々いくら稼いでいたかによって最高999ドルまでもらえるらしいけど、フリーランスで働いたりなんかすると差し引かれる。それでも悪くない。

私が住むカリフォルニア州の失業率は現在7・7%らしい。ニュースでは毎日大統領選と経済危機の話題。国民の危機感も高まっている。今日ラジオで聞いたのは、ここのところSalvationArmy(救世軍)やその他のスリフトストア(中古品や古着を売る店)の売り上げが伸びてるとのこと。でも不景気なんてまだまだ始まり、これからもっと悪くなる。経済や金融については詳しくないけど、それくらいはわかる。

そんな中、フルタイムの仕事を取るかフリーでがんばるかで悩む。おとといフリーランスの依頼がメールで届いた。今日は友人でアパレル会社に勤める子から別の仕事の依頼。まぁこれだけで安心できるわけないけど。オハイオ州の会社とはあさってに面接が決まっている(ロスのオフィスにて)。

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10月22日 ちょっと一休み

前述した面接はかなりレイドバックだった。色々聞かれたり答えたりしたものの、印象に残ってるのは生デニムの話とか天気が良くてこんな日は海に行きたくなる、とかいうことだ。ひとつ聞かれたのは「どこでも働けるとしたらどの会社で働きたいか」。これはリンダにも聞かれたことがあって、彼女の答えは「マークジェイコブス」。私はそこまで好きだったりこだわっているブランドがないので答えられなかった。面接で聞かれたときは少し考えてから自分かな、と答えた。正直な答えだったけど、そんなことを言ってしまっただけに面接官は私にそこまで気がないのがわかってしまった。でも嘘をついてもしょうがないのでなるようになるか、という気持ち。
先週は一週間休みを取って木曜から日曜まで、以前の会社の同僚の実家に遊びにいった。その実家というのがサンフランシスコから北へ3時間ほど車で行った森の中にある。ヒッピーだったご両親が移り住んで、家も一から自分たちで建てた。でもいかにも手作りの丸太小屋とかいう感じではなく、なんというか、ちゃんとしている。普通の家だ。家の目の前に小川が流れていて橋もかかっている。友人が幼かった頃は橋はまだなく、川を歩いて渡っていたそうだ。本当に森の中で隣の家なんかまったく見えない。家の敷地も一体どこからどこまでなのか。とにかく空気がきれいで水道から冷たくておいしい水も飲み放題だ。ロサンジェルスにいて仕事のことで悩んだり渋滞に巻き込まれてイライラする日常を過ごしているのがふとばかばかしくなってくる。自家菜園で野菜を作り食べきれないものは瓶詰めにする。お母さんは陶芸をやっていて作品を売って収入を得ている。こうして暮らせていけることが潔くてかっこいいと思うのは都会人ゆえか。

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1月3日 そして新年

ちょっとどころか随分と一休みしてしまった。その間失業を無事卒業し、フリーランス先にそのまま就職した。結局週5日働いていたし、しかも自宅からではなく会社に通っていたのでそれだったらちゃんと正社員になって保険などの手当をもらおうと思ったからだ。これで良かったのかな、と一瞬思ったけど正社員になってからは仕事内容も増えてやること盛りだくさん、なかなか楽しんで仕事をしている。今まではほぼずっとレディーズのアパレル用グラフィックをやってきたけど、ここでは帽子やバッグ、子供服もデザインさせてもらった。どれも初めてやるようなデザインだったけどこれがおもしろく、特に子供服はできあがるのが楽しみだ。

正社員になったもののなんとなく自由な気分は引き続き感じており、忙しいながらもストレスフリーなのだ。バリバリ働けて会社にも重宝されるという、とてもありがたい状況。もちろんいずれはやっぱり独立したいけど、それまで楽しみながらじっくり稼ぎつつ経験を積もうと思う。

失業日記

2009年1月4日 発行 converted from former BCCKS

著  者:lilbones
発  行:lilbones出版

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