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「てのひらのをと vol.1」をお手にとっていただきありがとうございます。本書はTwitter企画「てのひらのをと」に投稿された一四〇字以内の作品を集めたアンソロジーです。この企画はTwitter上にお題をタグ形式で出題し、そのタグを付けて投稿されたものは軒並みこの電子書籍に掲載しちゃおう! というもの。
記念すべき第一回のお題は……
「てのひら」
さてさて、どんな作品が集まったのでしょうか。お楽しみに!
「おじいちゃんとおばあちゃんは顔の同じところにシワがある」
僕がそう言うと、おじいちゃんは
「わしらはともに笑い、ともに泣いてきたからさ」と答えた。
「二人の掌にも同じようなシワがあるね」
僕がそう言うと、おばあちゃんは
「ええ、私たちはずっと手を繋いで歩いてきたからね」と答えた。
哀愁亭
「健やかなる時も病める時も一緒に居たいです。結婚してください」
僕がそう言うと、彼女は
「はい。おじいちゃんおばあちゃんになっても一緒に居たいです」と答えた。
「手を繋ぎませんか」
掌を向けて僕がそう言うと、彼女は
「ずっと握っていてください。私を離しちゃだめですよ」と答えた。
横山 睦
「はい、たっちー!」
ちいさな手を一生懸命に広げ、きみは僕と手のひらをぱちん、と重ね合わせる。何度も何度も鳴らした音を、僕は耳の奥に沁みこませてきた。
「ありがとう、お父さん」
白いレースをまとう手のひらが僕から離れ、きみを愛おしむひとの手に託される、この日のために。
一福千遥
その小さな世界に舞い降りる
絵本になりたい
歌になりたい
てのひらに浮かぶ折り紙の島のような
君の世界の一部になりたい
君が大人になった時 この物語を覚えてなくても
大きくなったてのひらに きらきらがいっぱい詰まるようにと
願う私のきらきら
そんな夢
友利りた
生まれたての手は
まだとても小さく
生まれたての君の
その手はまだ空だ
何を掬うのだろう
何を持つのだろう
何を掴むのだろう
何を包むのだろう
傷を負う日も来る
涙を拭う日もある
叶うならその手に
願わくばその手に
どうか温かな幸福が降り積むよう
MATTARI-NEKO@Roaming sheepコタツver
すっと差し出されたそれは小さくて薄くて触れれば壊れてしまいそう、という言葉がよく似合った。
愛しい。そう思ってそっと触れる。
握り返す力がなんだかとても強く感じて、ああ、幸せだなあ。声に出た。
あなたが幸せを感じれますように。私の感じた幸せよりも大きな。
胡桃野子りす
「手、貸して」
彼はそう笑って、私の手を握った。
私はされるがままに手を広げる。
手のひらに彼が指を滑らせた。
どうやら、手相占いらしい。
彼はふむ、と頷いて、顔を上げた。
「あなたは僕と結婚します」
私の手のひらには小さな指輪が一つ輝いていた。
安井 優
時には弦を爪弾いて
時には鍵を響かせる
あなたのそれは魔法の手
届かぬはずのてのひらが
おいでと私に差し出され
あなたの作るその音は
幾多の人を魅了して
いつか私を置き去りに
してしまうのではなかろうか
そんなつまらぬ不安さえ
拭い去るのはいつだって
あの時掴んだ魔法の手
ぶりば
届かぬはずのてのひらが
俺の曲を褒めちぎる
ぱちぱちぱちと控えめに
だけど笑顔は満面で
おいでと思わず手を伸ばし
キミの全てをこの腕に
周りの誰もが聞き惚れる
そのくちびるからこぼれる音
ただ俺一人だけのため
歌ってくれぬかと願う
懇願にも似た感情を
爪弾く弦に込めながら
ぶりば
てのひらを空にかざしてみれば
指の隙間から眩むような光線が走っている
蝶の様に広げれば破れた唐傘みたく
武骨で幻想的にも感じられる
陽の光に包まれた私のてのひらは
忽ち蜜柑色に変身していく
これからの原動力とこれまでの生を
授かっていることに
ただただ有難いのである
なかじ
伝え合う掌の思いがけない熱さを知っている
絡め合った指の思いがけない嫋やかさを知っている
ここにいて
そばにいて
ずっと離さないでいて
言葉にすれば消えて無くなりそうだから
MATTARI-NEKO@Roaming sheepコタツver
「君のてのひらは、暖かいね」
ぼくのてのひらは冷たかった。
同じ冬なのに。
ぼくはそんな君のてのひらが好きだった。
いつも暖かくて、優しくて。
そんな君のてのひらのように、なりたかった。
誰かを包み込めるくらいの強さがほしかった。
さくら@文フリ京都し09
朝の通学路
手袋を忘れたわたし
てのひらに白い息を吹きつける
まるであったまる気がしない
頬を膨らませてまた息を吹きつける
するとその手を大きな手のひらが包む
そしてほほになにかの感触
おはよ
身も心もあったかくなった
声の主があなただから
ハルヒ
君の小さなてのひらに僕は小指を持っていく
君はてのひら全体でぐっと握り返す
そこに生命の脈動を強く感じた
僕は指を離すのも忘れて泣いていた
そんな僕を君は不思議そうに眺める
僕は誓ったんだ
この小さなてのひらをずっと守っていくと
るぅにぃ
「お待たせ」
待ち合わせの場所に着いた。今日は彼とのデートなのだ。
「待ってないよ」
優しく彼は言う。
「じゃあ、行こうか」
手を繋ぎ歩き始めると
「てのひら冷たくなってる」
彼の手が私の手をぎゅっと包み込んだ。彼の手は温かくて気持ちよかった。
柚木 紫音
口ずける、と言うより、触れる、くらいの力加減で唇が降りてきた。顔を上げたあなたはニコリと笑って「懇願」と言う意味があるそうだよ?と目じりに皺を作った。あなたはずるい、私は鼻の頭に皺を作ってあなたの手のひらに爪を立てた。決して好きとは言わないのに。
二ノ宮橙子
君のてのひらを開くと
柔らかい皮膚にしわ一本
君のてのひらを開くと
湿ったてのひらのしわに綿ゴミ
君のてのひらを開くと
開くのを嫌がって怒り
君のてのひらを開くと
もう一人ではないんだね
硬く握られたてのひらは
色んなものを掴み離し
羽ばたいていく
僕の手はとうに離れて
晴れ時々雨
優しい掌が
私の癖毛を撫でる
マーブルに渦巻く
気恥しさと心地良さ
夕暮れの闇に引き込んで
此の儘何処かへ連れ去って
そんな途方の無い言葉
胸の中でだけ呟いた
木枯らしの音だけ響く
それなのに
不思議そうに
聞き返さないで
真読@創作
触れることなどないと思っていた。柔らかく温かな存在。一生交わりはしないだろうと他人事のように思っていたのに。ボクに寄り添い眠るキミ。その手のひらがボクの指を握る。
(ああ、あたたかい)
伸ばして触れたキミの頬。ボクの手に覆われればキミがふわりと花笑む。ああ、これを人は幸と呼ぶのか。
京橘(kyo tachibana)
てのひらのよごれを見つめる父がいて
いつかわたしも、ひとり暮らしに
「あの頃は、戦争だった」と父が言う
猫が死んだ日、思い返して
冬の空、エアーブラシで描いた雲
ジンクホワイト、溢れて雪に
「NO WAR」と、勇気を出して口ずさむ
わたしのてのひら、すこしよごれて
M*A*S*H「ジェントルマンは実験音楽の道に進む。売れなくてもいい。」
神に祈りを捧げるとき、人はてのひらを合わせる。打ち鳴らすこともあれば静かに重ねることもある。てのひらは天の扉を叩き、希望を包んで献上することができる。私はそのような器官がこの肉体に備わっていることを嬉しく思うし、それが人と人とを結ぶ紐にもなり得ることを美しく思う。
ざき
想いを伝えてくれた日は
固く固く閉じられていて
爪の先まで白く冷たかったのに
初めて手を繋いだ日
その温かさに嬉しくなって
ずっとずっと離せなかった
私の上でうごめく今は
熱をはらみ柔らかく
この先2人が掴むものを
優しく包み込んでくれる
大きな大きな幸せの器
芽衣@ワンライ・創作垢
力強く握ってくれた事を
今でも覚えてる。
毎日、毎日、掌から
貰う大切な宝物。
1つ1つ、大切に仕舞ってある。
私の元から離れてしまったけど
大丈夫。寂しくない。
大切な物を有り難う。
最後に握った手は
昔の様に温かく、
涙が出た。
貴女の未来が明るいものであります様に。
★ゆ ち き め★
掌が熟れた柘榴のように裂ける
『罪滅ぼしとは、こういうことなの?』
教会で、二千年前の彼のことを想う
「考え過ぎだよ」と今の彼は言う
『三日後に、彼は本当に蘇ったの?』
私の想像力が現実の私を超える
新宿で、奇妙な果実が泣いている
ポリコレ棒を握り、私は強くなる
KingdomSilkroad(楼蘭)“Old soldier ever tie-dyeing.”
てのひらにのせて溢れるほどの
幸せを望んでいるわけではない
ほんの一つ
私だけの私が欲しい
誰の為でもなく
私の為だけに時を過ごし
私の為にだけに泣いて
私の為だけに愛を語る
残りの人生何がしたいか
考えた時てのひらで掴むのは
今まで放棄してきた
私自身だと気がついた
琴華♡
この手から一体どれほどのものが零れ落ちたのだろう。
歩んだ道を振り返る。
綴った道の上には点々と何かが転がっていた。
それは私だ。過去の私だ。
私は私を捨て続けることで世界に道を造っていたのだ。
涙がはらりと落ちる。
そうとしか在れない現実がただただ無性に悲しかった。
御都米ライハ
小さい頃に触れた父の手のひらは固くてゴワゴワしていた。そのことを父に言うと、父は笑って「これが仕事をしている大人の手さ」と言った。大人になって気づいたけれど、父はただの会社員だった。だから、手が荒れるはずなかったんだ。父が僕のために、積み木や勉強机や椅子を作ってくれなかったなら。
哀愁亭
久しぶりに見た背中
あんなに大きいわけないのに
それはまぎれもなくあの子だった
小学校
運動会
綱引き
応援団
久しぶりに握ったてのひらは
繋がなくても大丈夫だよと言っている
それが嬉しくて
寂しくて
ずっとそばには
いれなくて
必要のない
胸が痛い
友利りた
悔しい。
と、口を開くことさえ出来ずに両の手を握り締めれば、てのひらからぷちりと音がした。
自己をすら容易く破るこの身はしかし、全力を振り絞っても対戦相手を打ち負かすには足りなかった。
認めるしかなくて、自ら破ったてのひらを開いて打ち鳴らし賞賛を贈る。
……悔しい。
るて@FF4廃
期待を胸にてのひらを差し出せば、子猫は何の疑いも持たずその上に乗って身体を丸めた。
とことこ。
てのひらから伝わる子猫特有の少し早い心音が愛おしい。
耳の下をくすぐった。
ごろごろ。
小さいのにもう喉を鳴らせるのか。
てのひらに聞こえる二つの音と柔らかい毛が擽ったい。
るて@FF4廃
まあるくて
ふわふわな
小さい手を
大事に
繋いでたあの日
いつの間にか
君の手は
しっかりと大きな手に
なっていた
手を繋ぐ事も
もう無い
もう一度
あの柔らかな手を
両手で優しく
包みたいと
願うのは
我儘でしょうね…
先を歩く
君の背中を
見つめながら
ふと目頭が熱くなる
なつのあや〜読書時間が欲しい
祖母の掌は小さいのに厚く力強かった、母の掌は自分より少し大きくてやはり厚い。
「働きだしたら手が厚くなる、まだ苦労を知らない手だね」
それを私に言ったのは誰だったか。
「働きだしてからが一人前」
「まだ人生の中盤ですらない」
薄い我が掌を見た。私は少し悲しくなった。
アオ@文学フリマ京都う-39
それは、昼休み、教室の一角で始まった。
てのひらを合わせて、大きさを比べる遊び。
『指、綺麗だね』
まわりで聞こえる勝った負けたではなくて、そう言って小首を傾げる彼。
瞬間、顔に集まる熱と浮ついた指先の感覚、そして彼のてのひらの温度と感触が、私の中に焼き付いた。
とうま
あなたは森に入り腐葉土を集める
部屋の箱に入れ白い種を植える
芽が出て白い手が生える
あなたはそれを愛し
いつまでも顔をうずめる
てのひらはあなたの顔を包む
ゆっくりと糸を引くように
私はあなたがとても好きだ
窓の隙間からいつも見ている
私はあの白いてのひらになりたい
草野理恵子
てのひらに包み込まれた僕の顔
ずぶりずぶりと抉られる音
しとどなる腐葉土の香に微睡みて
腐肉を食らう微生物の君
……もう、こんなことばかりしていたら、狂う……
嬌声だけが頭蓋を震わす
M*A*S*H「ジェントルマンは実験音楽の道に進む。売れなくてもいい。」
空から白いものが降る
「腕」と札がついている
部屋に帰りボールに入れる
ボールじゃいやだとすすり泣く
きれいな器に入れてやる
少し寒いと震えてる
一緒の布団に入れてやる
小さなひびがいっぱい入り
美しい腕が生まれた
てのひらとてのひらを合わせ
私たちはいつまでも眠った
草野理恵子
母がどんな人だったか知らない
舟に乗りイカを釣る母
ミイラを包む布の研究をする母
どんな母でも想像できる
その日
おいでという声だけ聞こえ
私は吸い寄せられた
真っ暗な中白く滑らかな手が揺れていた
私の頭についた雪片を静かに払い
母の温かなてのひらは凍った頬を溶かした
草野理恵子
「…どうして別れたの?」
会話が途切れた途端、予想通りの質問が来た。
「…彼、ミルクを先に入れるんだもの。」
どうにかこれだけ見つかった。思いだけではどうにもできないことは、全部このせいにしてしまおう。
私はてのひらでカップを包み込み、冷めた紅茶を飲みほした。
Sunny Side Up(globe)
「ある日、一人の赤子が生まれた」
それが物語の始まりだ。
これから先は自分自身で書いていくよ。
てのひらサイズの写真の中の君を眺めながら誓う。
夢に向かって自分の足で歩いていくよ。
それこそが、僕ら二人の願ったことだったから。
まだまだ物語の途中だ。終わらせはしない。
横山 睦
おろし立ての香りがした 袖貫いた春もはや
寓意の輪廻をまわろう 空位のダンスホールを
革手袋のようなあなたの手 絹地みたいなおまえの手
差し伸べられては 花開くよ
ガタピシすんだ 手いっぱい
パイ取り合って投げ合って
モラトってミゼラぶって
イッパシがんだ いけないかい
命題のない衒学会の絵
お爺さんみたいな手ですね。
と、現場の若い子から言われる。
昔、僕の指を、長く細くキレイだ、と褒めてくれる人がいた。
音楽室で、その子が弾くピアノの譜面をめくる係をした後だ。
そうか?と言って、かざした、関節の部分が膨れて、鱗みたいな皺が浮いた、僕のてのひら。
clatoピグ二郎
急にお面を被せられた
セルロイドの匂いがする
にあうにあう
友達の声
声が遠のき
露店の灯りが消える
小さな穴から違う世界が見える
道端に急に花が咲き
てのひらの形にゆらりと揺れる
一本の花が伸び私のお面に手をかける
私を愛する者の手だと感じた
友達はいらなくなった
草野理恵子
触れる。あなたの耳朶に。産毛が震える。
触れて。わたしの頤に。唇が戦慄く。
頬を包んで包み返されて、額を合わせて熱を伝える。皮膚の境界は薄れて馴染む。こめかみの拍動が共鳴する。
幾世紀にも渡って多くを失い、言葉すら失ったわたし達の最後の手段は、触れる。
それだけだ。
エリオ
その手のひらで頭を撫でられるのが大好きだった。
その手のひらで頬を包まれるのが大好きだった。
その手のひらで…ああ、これは内緒。
でもその手のひらはある日突然空の一部になり風の中に溶けてしまった。
それから毎日風が吹く。
私を撫で、包み、愛撫するように。
レディ
抽斗に入れたあなたの腕を
日なたに出す
風を受けあなたに蝶が群がる
私は蝶の翅をむしる
あなたは振り返り私を見る
私の頭をてのひらで包み
ありがとうという
あなたは何も食べないから
私の食べるところを見る
少し恥ずかしい
夜 一緒に月を見て
また 抽斗にしまう
草野理恵子
ぼくらはみんな生きている 生きているから歌うんだ ぼくらはみんな生きている 生きているからかなしいんだ 手のひらを太陽に すかしてみれば 真っ赤に流れ……あれ?と僕は歌うのをやめた。
手が透けて空が青かった。
そうか。気付いた。僕はあの事故で……。
生きていなくても、かなしいじゃないか。
蟻迷路
友達の家の赤ん坊がぼくの指を握る。片方の手はぎゅっと何かを捕まえ閉じている。この世に出てくるずっと前に、大切な何かを手に入れ、逃がすまいと強く握りしめているのだろう。色んなたくさんのものがすり抜けて行ったあとだらけのぼくの指も、相変わらずぎゅっと握りしめている。
わびー✨
びゅう
びゅうびゅうと命の源が外に漏れる。床も壁も手当たり次第に汚して、あっという間に温度を失っていく。
てのひらをたいように すかしてみれば
まっかにながれる ぼくのちしお
ははは
だっせぇ
こんな
母ちゃ
歌声
しか
思い出せ
ね
ひゅう
レオナール隊長
手のひらをかざす――
体温が透けてみえる。
昨日ふれた微かな熱が
いっしょに
僅かに、
ふれただけの体温が
今朝のお日さまを受けとって
いっしょに
透けてみえる――
手のひらを、かざす。
目庇(まびさし)に
こっそり泣いたあとを隠した。
【手のひらと体温。】
風鳶堂(ふうえんどう)
「てのひら」
あわせていた
静かに
祈っていた
温もりに
泣いていたのは
わたしだった
かみさま
しあわせは
ここにありました
tefutefu
武骨な手
仕事をしている手
責任を持っている手
擦り傷がある手
忙しい手
優しさを知る手
乾いた手
思いやりの手
笑顔を作る手
幸せを運んで
手のひらに
降り積もる
こわれない
見えない
温かさ
りの@気持ちを詩で紡ぎたい(低浮上気味)
僕には絶対に見せられない手の内がある。貴女の手を握りしめることもできないのに、この手の中に閉じ込めてしまいたいとも思う。そんな僕の前に差し出された、エスコートを待つ貴女の手。逆らえないままに手のひらで受け止めれば、見透かすような微笑みと共に指先が手の内に触れた。
綺想編纂館(朧)
ABBA聞いて 夜中にハイテンション
さっきまでの鬱蒼とした心臓は持ち逃げ
愛してるてのひらに 積もる冷たい雪のひら
でもあなたは嬉しそうなんだ
私は嫌だ
歌で塗り替える無理なエンディング
どんな名曲でもバッドだったじゃん
愛じゃないじゃん
そんなの
友利りた
自分の歌を録音するのが好き
でもそれは遺したいからじゃない
好きになってほしいからじゃない
聞いてほしいからでもない
ちやほやされる要素もない
愛される程うまくもないし へたでもない
ただ 確認したい
私から私への愛を
それはてのひらサイズの
勇気
友利りた
はらり ふわり
てのひらに【小さな花】が落ちてくる。
ひらり ふわり
私の熱で【花】は小さな水に変化する。
ふわり ふわり
小さな花は空を舞う
ぽつり ぽつり
【雨】が降って、てのひらに落ちた。
てのひらの上にあった【ちいさな花】は、【雨】の熱で静かに溶けていった。
秋原
悔しくて悲しくて、強く握り締めた手のひらには爪痕が残っていた。思い出したことを後悔しながら自室のベッドの上に体を投げ出す。ふいに手のひらに触れた柔らかさに驚いて目をやると、乗せられているのは小さな手。涙が溢れたのは「にゃお」と鳴いて爪痕をペロリと舐めた君のせいよ。
綺想編纂館(朧)
·
僕の手のひらは小さい
ソフトボール部に入り
ウインドミルで投げていた
手の指はマメができて相変わらず汚い
超嬉しいことだらけ
病に罹って右片麻痺
当然、野球もできなくなった
マメも消えた
女性の作業療法士さんが言う
「貴方の指、細くて綺麗ね」
コンプレックスの始まりだ
なおゆきちゃん
大きくて
固くてゴツゴツしていて
力強い手に
握られていた
私の小さな手
いつも繋いでいた手と手
何故か
まだ
忘れないのです
あの感触は
でも
もう二度と
触れ合うことは
無い
二度と
繋ぐことも無い
あの頃は
好きだった
その
ゴツゴツした
暖かい手に
もう二度と
なつのあや〜読書時間が欲しい
ある冬の真夜中、女の子は小さな雪だるまを作っていました。だけど家の中からお母さんが呼ぶ声が聞こえます。もうこんな時間、雪だるまさん、また明日遊びましょうね。口のない雪だるまに答えることができるはずもありません。その代わり、雪だるまは女の子の手のひらに小さな水の滴を残したのでした。
哀愁亭
季節が12回巡ってあの日がやってくる。
「沢山話しかけてあげてくださいね」
聴覚は最期まで残る感覚だから…と。なのに、頭の中から最初に消えていくのは貴女の声だなんてそんなの狡いじゃないか。
許せなかった
まだほのかに温かい母の“てのひら”が私にはどうしても許せなかった。
黒木結愛くろきゆめ
執筆者一覧(敬称略)
哀愁亭
横山 睦
一福千遥
友利りた
MATTARI-NEKO@Roaming sheepコタツver
胡桃野子りす
安井 優
ぶりば
なかじ
さくら@文フリ京都し09
ハルヒ
るぅにぃ
柚木 紫音
二ノ宮橙子
晴れ時々雨
真読@創作
京橘(kyo tachibana)
M*A*S*H「ジェントルマンは実験音楽の道に進む。売れなくてもいい。」
ざき
芽衣@ワンライ・創作垢
★ゆ ち き め★
KingdomSilkroad(楼蘭)“Old soldier ever tie-dyeing.”
琴華♡
御都米ライハ
るて@FF4廃
なつのあや〜読書時間が欲しい
アオ@文学フリマ京都う-39
とうま
草野理恵子
Sunny Side Up(globe)
命題のない衒学会の絵
clatoピグ二郎
エリオ
レディ
蟻迷路
わびー✨
風鳶堂(ふうえんどう)
tefutefu
りの@気持ちを詩で紡ぎたい(低浮上気味)
綺想編纂館(朧)
秋原
なおゆきちゃん
黒木結愛くろきゆめ
2020年2月2日 発行 初版
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