spine
jacket

「SUSONO(すその)」は2018年1月に、「新しい暮らしの文化圏を作る」プロジェクトとして発足した、新しいコミュニティです。2020年1月からは体制を新たに、佐々木俊尚・松浦弥太郎の二名を中心に、参加メンバーたちが本格的に運営に関わりながら、トークイベントや部活など、様々な活動を続けています。

この本はそんなSUSONOに参加した理由、これまでの活動記録、そして、この場所で過ごす中で得た「経験」や「思い」を、一冊の本にまとめたものです。

既存のものとは違う「コミュニティ」の中って、どんな感じなんだろう?
そもそも、「SUSONO」ってなんなんだろう?

そんな皆様の思いに応える、12本のエピソードを収録しました。最後までお読み頂ければ幸いです!

───────────────────────



#susonolife

SUSONO

SUSONO本制作委員会



───────────────────────

 目 次


ポラリスであるように


そもそも、SUSONOって?

その①「コミュニティ」に入るって、どんな感じですか?


私とコミュニティとSUSONO 後藤駿一


「SUSONOの安心感 - 初めましてのメンバーとゲストハウス宿泊」 鈴木駿介


人と出会い、私と出会う。 なかもとみか


SUSONOのSUSOは低い 坂田さち子

その②SUSONOって、何をやっているんですか?


根が張り巡らされて、広がっていく ――トークイベント 佐藤康平


おうちごはん部合宿 大橋健介


ゆるいだけがSUSONOじゃない? なかむらゆき


昼寝から目覚めても 和良拓馬


じゃ部を打つ 中村唯

その③SUSONOに入って、どうなんですか?


私の背中を押す存在 ――とあるメンバーの独り言―― なつき


ゆるやかに広くつながる世界 かわかつようこ


変わらないという変化 朝倉菜都美

【追記】SUSONOの活動休止について

 「新しい暮らしの文化圏をつくる」コミュニティ「SUSONO」は、残念ながら2021年8月31日をもちまして、現体制での活動を休止する運びとなりました。

 コロナ禍の中でも活動継続の道を探ってまいりましたが、残念ながらこのような結果となりました。自分自身も、運営メンバーとして活動していた身でもあります。長くコミュニティを持続させることができず、力不足を痛感しております。申し訳ございませんでした。
 SUSONOが目指していた「ゆるいつながり」が、なぜコロナ禍の中で上手く機能しなかったのか。そして、僕が望んでいたことと、SUSONOの現状にズレが生まれたのはなぜなのか。今はなかなか上手く言葉にすることができません。ただ、いつかはちゃんと言葉にしたいと思いつつ、新しいスタートを切っていこうと思います。

 最後になりますが、これまでのSUSONOの3年半に渡る活動に、ご支援及びご協力くださった皆様に、改めて御礼申し上げます。


2021年9月 #susonolife編集長 和良拓馬

ポラリスであるように

「#susonolife」の創刊に際して

 まだ電気や地図が充分なクオリティに達していなかった時代、方角を見失った人々は、夜空に輝く北極星を目印にして、夜道を歩んでいった。北の空の上で、動くことなく輝き続ける北極星。ただの星、されど多くの人に道を示す尊い星――。
 僕は理科は苦手だ。だが、先生から教えてもらったこの話は、暗記という範疇を大きく超えて、今も記憶に残っている。

   ◆

 僕は今、コミュニティの過去と未来をまとめる本をつくろうとしている。
 2019年も終わりに近づくある日、SUSONOの今後を話し合う会議があるというので、思い切って参加することにした。その際に「サイト内に掲載するコンテンツをどうするか?」という話になった。
 提案をしてみた。せっかくメンバーでコンテンツをどんどん生み出すのならば、じゃあ、それを本にまとめて、表に出してみませんか?

 最初はそこまで賛同されないと思っていた。SUSONOは「目標や目的を優先しない」や「ゆるくつながる」を理念とするコミュニティである。一方で、「本をつくる」という営みは、目標や目的を持った活動であり、かつ相互の連携・連帯が無ければ完成に導けないものだからだ。SUSONOの理念とはズレがあるかもしれない。
 が、思いのほか賛同者が集まった。ビックリした。というか、過去にも何度かSUSONOで本をつくろう! と提案し、ことごとく跳ね返されていたのだが……。タイミングというやつなのだろうか……?

   ◆

 2020年1月某日、都内の会議室で「SUSONO本」の編集会議を開催した。ファースト・ミーティングで決めることは「本のテーマ」だ。このテーマを軸にして、原稿を書き、表紙を描き、本にしていく。
 まずは「SUSONOの良いところ」をざっくばらんに話してもらうことにした。そうやって打ち解けていくうちに、方向性は定まって行くだろう、と。

 ……定まらなかった。

 僕も、みんなも、口を揃えて「SUSONOは良いコミュニティ」だと言う。でも、どこが、なぜ、どんなときに、といった要素はバラバラで、どう集約すれば良いのかが見えてこない。
 かくして、頭を痛めた僕は思い切ることにした。

「『SUSONOって?』という疑問を、そのままテーマにしましょう」

   ◆

 SUSONOは不思議なコミュニティである。
 各々が各々の場所にいて、別々の道に向かって歩んでいる。
 なので、本来は交差しないはずなのだ。
 でも、今、こうして思いを乗せた文章が集い、一冊の本にまとめることができた。
 それは、SUSONOの中に「北極星」があるから、辿り着けたのではないだろうか。

 さて、本書「#susonolife」を発刊した目的だが、ひとつは今所属している、ないしはかつて所属していたメンバーの皆様に、改めて「SUSONOって?」と振り返って頂くキッカケを与えること。もうひとつは、「コミュニティ」や「共同体」という新しく生まれつつある概念にピンとこなかったり、そもそも気がついていない方々に、「SUSONOって?」と考えるキッカケを与えることです。

 当方含む12名の方が、執筆というかたちで本誌へ参加しております。そして、それぞれが自分なりの視点で、SUSONOというコミュニティを捉えています。そこにある「違い」と「共通点」をぜひお楽しみ頂ければと考えております。
 そして、読者の皆様にとって、この本が新たな一歩を踏み出す「道しるべ」になれたのであれば、より一層嬉しい限りです。

2020.1.19 第1回SUSONO本ミーティングでのひとコマ
photo by Takuma Wara



家庭とか会社とか、そういうのとは異なる「コミュニティ」というヤツが、最近流行っているらしい。でも、何で僕たちはお金を払うとか、労力をかけてまで「コミュニティ」に入っているのだろうか? そして、その中のひとつである「SUSONO」にハマってしまったのは、何でだろうか?
そんな根本的なお話を、メンバーの皆さんと一緒に考えていきましょうか。

というわけで、

#susonlife
創刊号テーマ
【SUSONOって?】


いってみよう!

そもそも、SUSONOって?


https://susono.life/about

「SUSONO(すその)」は2018年1月に、「新しい暮らしの文化圏を作る」プロジェクトとして発足しました。SUSONOには、佐々木俊尚「21世紀の教養を身につける議論型コミュニティLIFE MAKERS」と松浦弥太郎「くらしのきほん」×「灯台もと暮らし」×「箱庭」のメディア集合体「スチーヴ」、さらに参加した様々なメンバーが1つになり、様々な活動を続けてきました。
 2020年1月からは体制を新たに、佐々木俊尚・松浦弥太郎の二名を中心に、参加メンバーたちが本格的に運営に関わることになりました(この「#susonolife」という本も、新しい胎動と言えるでしょう)。
 これからの心地よい暮らしや社会についてともに考え、仲間たちみんなが主体となった場、ひとりひとりがコミュニティを彩っていくことを理想とし、活動を続けていきます。


主なコンテンツ

①メンバー限定のイベント
 メンバー限定のイベントとして佐々木俊尚、松浦弥太郎を交えたイベントを開催しています。
 オフラインでは、各界で活躍する著名人と佐々木俊尚とのトークイベントを行っています。ゲストとの楽しいトークはもちろん、毎回終了後には懇親会もございます。メンバー同士の交流の場になっており、これがメンバー間の次なる活動に結びつくことも。なお、トークイベントの様子は録画・録音し、後日メンバー限定で配信しますので、参加できない方、遠方にお住まいの方もオンラインで楽しめます。

【直近のイベントゲスト】伊藤亜紗(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授)、植野広生(dancyu編集長)、菅本裕子(モテクリエイター)、久保田雅人(工作の伝道師・ワクワクさん)、穂村弘(歌人)、龍崎翔子(ホテルプロデューサー)など

 オンラインでは2020年より、松浦弥太郎と月に1~2回、オンライン上でのチャットを実施しています。提示されたテーマをリアルタイムで語り合うチャットはもちろん、実施後のトークも非常に盛り上がるのが特徴です。


②部活動コンテンツ
 SUSONOのもう一つの柱が「部活動」です。これは参加メンバーが主体となり、イベントを行っていくものです。同じような趣向を持った仲間を集めて、ワイワイと楽しみながら活動します。サイト内には部活動のコーナーがあり、活動内容を確認したり、活動内容を記事として投稿したりすることも可能です。

【主な部活動】ボードゲーム部(月に1度ボードゲームをみんなでプレーする)、おうちごはん部(不定期での料理イベント開催)、ワイン部(不定期でのワイン試飲会開催やワインにまつわる旅行を実施)、じゃ部(何でも提案し、実行するグループ)など


③その他
 SUSONOのサイト内には運営メンバーによる「コンテンツ」、メンバーが長文コンテンツを投稿できる「ブログ」、短文を投稿してコミュニケーションをとる「タイムライン」などもご用意しています。そこで書かれているのは、参加したイベントの話、作った料理、思い出話などなど……。また、今年から始めたSpotifyのプレイリスト上にお題に沿った音楽を投げ込む「SUSONOプレイリスト」も、毎月数十もの名曲が集まっています。
 ぜひSUSONO内で楽しくインプット&アウトプットをしてみてはいかがでしょうか?

 ……というわけで、SOSONOについてのイメージは湧いたでしょうか?
 より深く知りたいと思ったそこのあなた! ぜひ次のページに続くメンバーのエピソードもぜひお楽しみください。

photo by Takuma Wara

その①

「コミュニティに入る」
って、
どんな感じですか?

そもそも、大半の人は「コミュニティに入る」という意識が無いのかもしれない。普通はそこに「コミュニティがある」という感覚ではないだろうか。
そのような意識が大半を占める中、「コミュニティ」を選び、入っていったのは、どんな理由からだろうか?

私とコミュニティとSUSONO

後藤駿一

 生まれてから、死ぬまでの間、私たちは幾つもの人や物や場所に出会う。
 それが偶然なのか必然なのかは置いておいて。少なからず、出会う存在には影響を受けている。
 生まれてから最初に家族という存在に出会い、育てられ、言葉を覚え、感情が芽生える。
 そして、学校という家族以外の初めてのコミュニティに入り、学問を始め、集団行動や人間関係を学ぶことで、生きていくことの意味を見いだす。時には友達とけんかをし、また時には好きな人ができて恋に落ちる。
 かくいう私もコミュニティに影響を受けて育った内の一人である。

 ここで今まで私がコミュニティとどう関わっていったのかのエピソードを少しお伝えしよう。
 サラリーマンの父と専業主婦の母との間に生まれた私は、幼少期はとても活発で親の言うことを全く聞かない言わば自由奔放の一人息子として育った。学校ではどのクラスになっても面白いキャラクターとして認識され、周りから面白いと思われていることに嬉しさを感じながらも、毎度浴びせられる期待や評価にプレッシャーを強いられていた。それが後になって自分の生き方の軸になったことは間違いはない。しかし、心のどこかで周りの期待に答えなければ自分の居場所がなくなってしまうと感じるようになった。
 その後、大学生になった私は、学内サークルにも複数所属、次第に様々なコミュニティ内で人と出会い共感することが一つの生きがいになっていた。
 どこでも自分の居場所を探し、周囲に期待されて行動する日々を繰り返していた。
 社会人になっても、自分がここでできることは何か、貢献できることはなにか、逆にそれがなかったら自分はここに存在する価値はない。
 そう考えるようになっていた。そしていつしか、期待や成果を求められることに、いつも何かを抱え込んでる自分の生き方に疲弊していた。

 そんな中、2018年6月、自分が尊敬している音楽プロデューサー・亀田誠治さんのトークイベントがあるということでイベントサイトを見てみるも、満席。なんとかして亀田さんの講演を聞きたいと思った私は、あるコミュニティに入会をすればその講演会がきけるというページにたどり着き、即断即決でENTERキーを押した。それがSUSONOだった。そう、最初自分はSUSONOそのものに興味をもったわけではなくいかにして亀田誠治さんの講演を聞くかにスポットを当てていた。その結果、入ったのがSUSONOだった。それが自分の価値観に大きく影響するコミュニティとは、この時少しも思っていなかった。

 ここで自分がSUSONOにあって他のコミュニティにはないであろう特に良いなと思ったポイントを何点か伝えたい。

【心地良さ】
 SUSONO内の交流会で、運営メンバーの方々と初めてお会いして話した時、まだ言葉を交わしてもいないのに「どんな人でもどんな人の価値観も受け入れますよ」と、そういった態度やふるまいをあの時感じたことを今でも思い出す。名刺交換もなく、初めて話すメンバー同士でも肩書きはなんですかなど、あなたは何ができますかなど、初めて会話する度に言われてきた言葉がSUSONOではあまり聞かなかったし、自分が話したことも多くなかった。会員メンバーと話すときも、あなたの趣味は何? とか興味をもっていることって何? とかの会話の切り口が多く、そこから自分のことを見てくれたり肯定してくれる人が多くいると感じた。しかも必要以上にプライベートな会話はせず(結婚してるんですか? とか何歳ですか? とか失礼の質問はあまり受けない笑)良い意味で関係性はゆるい。もちろんよく知っているメンバーもいるが、あまりその人のことを知ってなくてもなんだか心地よい仲間もいる。それがSUSONOのコンセプトの一つである「多様性を受け入れる場」が用意されているからだと感じている。

【良質なWebプラットフォーム】
 SUSONOの入会窓口はオンライン上からである。俗にいうオンラインコミュニティは今や世の中に広く存在するが、その中でも重要な部分がサイトのプラットフォームであると感じる。
 自分の認識で一番多いのが、Facebookのサービスを使用したオンラインコミュニティであるが、SUSONOはオシロ株式会社様が開発した独自のプラットフォームを使用している。
 非常に多彩な機能が盛り込まれており、従来のコミュニティにはなかった快適さ、視認性、交流の充実度どれをとっても非の打ち所がなくとても良質だと感じている。
 この件については、論より証拠ということで実際に自分の目で見て体感してもらいたいところではある。

【様々なジャンルのゲストを迎えてのトークイベント】
 一般的なあるトークイベントは自分が興味あるゲストやテーマに対しての事柄しか聞かない傾向にある。
 SUSONOでは様々な分野のゲストをお招きしてトークイベントを開催している。参加してみると、それまで自分が興味が湧かなかった分野に対しての知見が広がる。
 佐々木俊尚さんの多彩な質問で、ゲストからより深みのあるものが引き出された会話が繰り広げられる。そこから影響を受け、その分野に対して学びたいという欲が出る。
 終わった後には、この人の話を聞けて良かったなあ、もっといろんな人の話を聞いて見たいなあと毎回至福の余韻に浸る。

【多種多様な部活動の充実度】
 SUSONOには、部活というものがある。部活と聞くと学生時代に戻ったように感じる人もいるのではないかと思うが、学生時代の熱血系の部活とは少し違う。
 ワイン部や日本酒部、おうちごはん部などの飲食をメンバーで楽しめる部活から、「ジャブを打つようにジャンルを問わず誰でも気軽にイベントを立てて良い」という意味のもとに発足された「じゃ部」といわれる部活もある。
 その他、ボードゲーム部、田んぼ部、ゆるスポ部など様々なジャンルの部活があり、この活動を通じて仲良くなったメンバーが多い。部活動はオフラインの交流の場、自分の暮らしをさらに充実させる場として最高の活動だと思う。

 上記以外にも、SUSONOについて書きたいことは山のようにあるが、他の作者が書いたエピソードに委ねようと思う。きっとSUSONOで繰り広げられる様々な物語が知れるだろう。

 最近、私がよく思うこと。それは「人は知らぬ間に自分に合う居場所を求めている」ということだ。
 そして、自分の居場所や役割を見つけて自分で作らないとその場所にいる資格はないと考えていた自分に「ありのままでいい、役割なんてなくてもいい、そのままの君でいい」と教えてくれたのはSUSONOで出会ったメンバーだった。
 それは『ゆるやかにつながり心地よい暮らしをつくる』というSUSONOのコンセプトが、今の自分にフィットしていたからだと思う。
 これからもSUSONOの活動は続いていく。そこでどんな景色が見られるのか、どんな人に出会えるのか、私自身もわくわくしながらSUSONOライフを楽しみたいと思う。

photo by Yuki Nakamura

「SUSONOの安心感 - 初めましてのメンバーとゲストハウス宿泊」

鈴木駿介

 SUSONOメンバーとゲストハウスに宿泊。
 人見知りの僕が、なぜ初めて会う人が半数以上いる宿泊イベントに参加することができたのか?
 今考えてみても、とても不思議で、いつもならしない決断だ。
 考えて出た答えの一つが「安心感」。
 ゲストハウス宿泊という実体験を通して感じた、SUSONOの安心感について話したい。

コンセプトへの安心感

 そもそもなぜ僕はSUSONOに参加したのか?
 一番の理由は「ゆるやかにつながり、心地よい暮らしの文化圏をつくる。」というコンセプトへの共感だ。

 SUSONOに入会したのは、立ち上げ初期である2018年1月。
 社会人2年目も終盤に差し掛かり、生活にも慣れてきたタイミング。平日は主に家と会社の往復で、仕事に集中。休日は1人でゆっくり過ごしたり、大学・高校時代の友人や会社の同期と遊んだりと楽しく過ごしていた。「なるほど、こんな感じで社会人生活を送るのだな」と思いながら、仕事も私生活もそれなりに満足していた。
 しかし、他の職種や知らない世界への興味、新しいことへの挑戦意欲など、「自分の幅を広げたい」「何かしたい」という想いも心の片隅にあった。

 そんななか、ツイッターでたまたま「SUSONO」を見かけた。
 誰のツイートか覚えてないが、なんとなく心に引っ掛かり、サイトを見ていた。
 最初に感じたのは「これだ!」というSUSONOへの共感。サイトから伝わる、温かい優しい雰囲気に安心感を感じつつ、「ゆるやかにつながり、心地よい暮らしの文化圏」というメッセージにすごく心がひかれた。特に「ゆるやかにつながり」という言葉が心に刺さった。
 何かを大きく変えるというより、ちょっとだけ新しい風を取り込みたいという自分の想いに、まさにピッタリだった。
 しかし、実際に入会に至るまではかなり不安があった。SNSも見るだけで発信する勇気もなく、オンラインサロンなどに入ったことも、入ろうと考えたこともなかったからだ。
 その不安を振り拭って入会できたのも「ゆるやかにつながり」という言葉の存在が大きい。「ゆるくてもいいんだ」と思えたときに、まずは試しに入ってみようかなという気持ちになれた。

主宰者への安心感

 入会を決意できたのは、SUSONOを立ち上げた「主宰者への安心感」も大きい。
 SUSONOを知った当初は、恥ずかしながら佐々木俊尚さん、松浦弥太郎さん、灯台もと暮らしさん、箱庭さんなど主宰している方々についてほとんど知らなかった。
「どんな人たちなのだろう?」とプロフィールやウェブサイトを確認した。僕が知らなかっただけで、本の出版などいろいろなことをしていて、それぞれにたくさんのファンがいることを知った。
 主宰者に対して共通して印象に残っているのは、「温かさ」と「優しさ」だ。サイトの雰囲気や記事の内容など、どれも人の温かさや関わる人たちへの優しさを感じた。
 SUSONOには、主宰者の想いやスタンスが表れているのだなと納得し、安心感が高まり、入会のさらなる後押しになった。

メンバーへの安心感

 入会し、実際にメンバーに会うことで、コンセプトや主宰者から感じられた安心感が、確信に変わった。
 会う人、話す人、みんな優しい。
 僕が最初にイベントに参加できたのは、「横須賀の空き家を見学する」というイベントだった。知り合いは誰もいなく、不安な思いをいだきながら参加。しかし、初めて会った人たちの雰囲気にすぐに安心感を抱いた。「この人たちとなら仲良くなれるかも」と素直に思えた。メンバーと話していく中で、その思いはだんだんと強くなっていった。みんな優しく、なんとなく共通した雰囲気があって、居心地が良かった。
 SUSONOに入った理由を聞くと、僕と同じように「コンセプト」や「主宰者」への共感がほとんどだった。同じことに共感して集まる人たちなので、初めましての人とも自然と仲良くなれるし、会話もはずんだ。入会前に感じた期待が確信に変わった。

ゲストハウス宿泊イベントに参加

 SUSONOに少しずつ慣れていくなかで、サイト内で「今度、ゲストハウスに行きませんか?」という投稿が流れてきた。ちょうど「ゲストハウスに行ってみたい」と思っていたので、すごく興味があった。しかし、投稿者とは2~3度話したことがあるだけだし、そのとき参加表明をしている人たちの半分は会ったことがなかったので、すぐに手を挙げることができなかった。当時の僕は、「宿泊は友達の中でも、特に仲が良く気心がしれた人と行くもの」と考えていた。会った回数が少なく、初めましての人と宿泊するのは、ハードルがとても高かったが、勇気を振り絞り参加表明。
 結果、めちゃめちゃ楽しかった。鎌倉散歩、ゲストハウス宿泊、朝ヨガ、江ノ島散歩などとても充実した時間だった。一夜を過ごす中で、普段しない深い話もできて、本当に楽しい時間だった。

 いまでも「なんでそんな大胆な決断ができたのか?」とよく考える。
 その理由は、やはりコンセプト・主宰者への安心感や会った時に感じたメンバーへの安心感だと思う。共通なコンセプトに共感している安心感があり、実際にあったメンバーからそれを感じることができたので、初めて会う人たちがいる宿泊イベントに参加することができたのだと思う。

 SUSONOへの安心感が、僕の固定概念を振り払うことができ、全力で楽しむことができたのだと思う。
 このような体験がたくさんできるので、SUSONOは安心でき、自分の幅を広げてくれる、とても貴重な居場所になっている。
 これからもSUSONOを通して、新たな体験をしたり、自分の裾野を広げていきたい。
 すでにいるメンバーはもちろん、SUSONOに共感してくれた新しい人たちともゆるくつながり、日々の生活をより楽しむことができたらさらに嬉しい。

人と出会い、私と出会う。

なかもとみか

 人生は他者だ。

 とある小説に書かれていたこの七文字に、私は深く同意する。
 どんな人に出会い、どんな体験を共にするのか、どんな時を過ごすのか。
 他者との関係の中で、自分が、人生が、つくられていく。
 人生は他者だ。

 SUSONOボードゲーム部にはじめて参加したとき、道に迷って遅刻した(その時間に集まった人たちでゆるっとはじまる部活なので、遅刻も何もないことは、その後知ることになる)。他の参加者は、すでにいくつかのグループに分かれて、それぞれゲームを始めている。こんばんはと部屋の中に入ると、ひとつのグループが、次のゲームを一緒にやらないかと声をかけてくれた。ありがたく入らせてもらう。ゲームは知らないものばかりだったが、やったことのある人がルール説明し(これがとても上手で、感心しきりだった)、確認しながら進めてくれたので、困ることはまったくなかった。
 瞬発系のゲームが強い人、怖いくらいの推理力を発揮する人、天然発言で笑いを誘う人。はじめて会う人たちばかりだったが、感心したり、驚いたり、笑ったりで飽きることなく、あっという間に時間が過ぎていった。新しいゲームをやるたびに楽しい楽しい言う私に、隣の人が声をかけた。

「SUSONOって、名前とか知らなくても楽しめるところがいいよね」

 そうなのだ。
 一緒にいる人たちの、名前さえ知らずに過ごしている。
 そのことに、私は驚いていた。

 SUSONOには、まず「do(する)」がある。山登りや読書会、料理、ボードゲームなど、「これをやりたい」という人がイベントを立て、「自分もやってみたい」という人が集まっていく。「やりたい」がもとなので、経験も年齢も関係ない。「do」があるので、お互いを知らなくても話のきっかけができる。山登りであれば、景色や登山グッズ、休憩のおやつについてなどなど。そして、一緒に何かを「する」中で、その人たちの一面が見えてくる。
 そう、ボードゲーム部でも、「瞬時の判断が早い」「人のことをよく見ている」「感性がおもしろい」と、自己紹介がなくても、ゲームを通してその人たちのことが自然と見えてきていたのだった。

 学校や部活などで出会った友人は、席が近かったり何かの拍子で話したときに、興味関心が合ったり、共通の友人がいることがわかったりして話すことが多くなり、仲良くなっていた。仲良くなったから、遊びに行ったり、食事に行ったり、一緒に過ごす時が増え、関係が続いている。

 SUSONOは逆だ。
 知ってから一緒に何かをするのではなく、何かを一緒に楽しむ中で見えてくる人柄を知り、深めていく。
 それが、SUSONO的つながりだと私は思う。

 それは、小さな子どものころのつながり方と似ている。名前も知らない、公園ではじめて会った子。遊んでいる姿がなんだか楽しそうで、一緒に遊びたくて、「あーそーぼー」と、声をかける。あるいは、なかなか声をかけられなくて、親に「ほらっ」と背中をそっと押されて加わる。名前を知らなくたって、一緒に楽しめる。友だちになれる。
 SUSONOも「楽しそう」からはじまる。「ゆるやかにつながり、心地よい暮らしの文化圏をつくる」というコンセプトのもとに集まった様々な人たち。年齢とか、肩書とか、そういうのは知らない。知らないからこそ、色眼鏡で見たり、バイアスがかかったりせずに「目の前のその人」を自分の感覚で知っていける。

 相手から見た自分についてもまた然り。SUSONOの人たちに、新たな自分を見つけてもらえるのもおもしろい。
 読書会に参加したときのこと。私は本を読むのが好きなのだが、読んだ本の内容をわりとすぐに忘れてしまう。そのことについては取り立ててなんとも思わず、同じ本を何度も楽しめるとだけ思っていた。それを話すと、ポジティブだと皆に言われて驚いた。そうか、ポジティブなのか。思ってもいなかった自分の一面だった
 
 SUSONOは枠がゆるやかであるがゆえ、「やってみたい」も幅広く、人生でやるとは思ってもみなかった「do」にも出会える。(「カカオ豆からチョコレートを作る」なんて、SUSONOでなければやらなかっただろうな)色々なイベントに参加するうちに、参加者の色々な面が見えてくる。新たな一面が見えるたびに、その人の「層」が重なっていく。「do」はもちろんだが、それ以上に私はSUSONOで出会う人たちのことを知っていくのがおもしろい。

 人生は他者だ。
 SUSONOで出会う人たちは、私を、人生のスソノを広げていっている。

SUSONOのSUSOは低い

坂田さち子

 最初に「SUSONOのSUSOは低い」とお伝えします。富士山の裾野のように低くてなだらかなので、踏み入れるのが簡単なのです。

 私がSUSONOを知ったのはTwitterでした。2018年に松浦弥太郎さんが「ゆるやかにつながりながら、新しい暮らしの文化圏を作ろうというプロジェクト」を作り、そして一般人も参加できるということを知りました。【〔よりぬき〕今日もていねいに。BEST101】を拝読し、感銘を受けていた私は、その方が作るコミュニティなら、きっと素敵な場所になると思い早速参加させていただくことにしました。
 私は一生懸命お仕事をしている以外特に特技も才能もない普通の人ですが、「色んな人と会いたい」「色んなことをしたい」という欲はずっと持ち続けていました。
 しかしながら、誰が悪いということはないのです。そして、どこかにはあるのかもしれません。ただ年齢とともに、「年齢問わず」「色んなことに参加できる」そんな間口の広いコミュニティは、日々仕事をこなしつつ周囲を見回してもなかなかみつからなくなっていました。ひとつのことだけでよければカルチャーセンターで学べばいいのです。が、私は大人の学校みたいに、色んな年齢の人が集まって好きなことをわちゃわちゃ話していて、それに参加したり、「あっちも興味あるから行ってみるね」と言って違う集まりに移動できたりする場所があればいいなぁと思っていたのです。
 【新しい文化圏を作る】ほどの斬新な考えや力はないのですが、SUSONOの住人(個人的にコミュニティの住人と思っているのでこう表記します)として参加や応援はできると思い、ドキドキしつつ参加のボタンを押させていただきました。

 SUSONOの最初のローンチイベントにも、張り切って参加させていただきました。20代・30代の人が多い印象でしたが、40代、50代もちらほら(年齢をみてしまうのはよくない癖だと思いますが、なんとなく心細くて……)。初めて会う近くの席の人と、これからSUSONOでどんなことをしたいか話して発表する時間もあり、「SUSONOは形も色もこれから作っていくんだ」と砂場で砂山を作るような面白さと、そして自分もその一員なんだという嬉しさを感じたことを覚えています。
 SUSONOは最初は月1回、テーマを決めてトークイベントが開かれました。最初のうちは、それ以外の動きがなかなか鈍いように思いましたが(偉そうに言っていますが、自分も仕事が忙しく見守っていただけです)、そのうちに、色んなことをやってみたい「部活」、提案やちょっとした部活まではいかないものをつぶやく「じゃ部」などが誕生していきました。

 私は社会人になってからゲーム好きで、TVゲームも対人ゲームも大好きな私はその中のひとつ「ボードゲーム部」に参加させていただきました。なかなか実際に参加するには勇気が必要でしたが、ボードゲーム部の楽しそうな後日の活動報告をみているうちに是非参加したい! と思うようになりました。
 実際に部活に参加したのは「ボードゲーム部」だけなのですが、そこはまさに大人の部活!「ゲームが好きな人」がそれだけのつながりで集まる会でした。大人ならではの、場所の提供してくれる人(ありがとうございます!)、ゲームを山ほど持ってきてくれる人、食べ物やお酒は各自で持ちよりで部活開始です。許された時間の中、初めて会った人達とただひたすら、色んな種類のボードゲームをする! 遊ぶ! 話す(ゲームの駆け引き)! 楽しい! まさに大人の部活!
 その日の最後は、やってみたかった「人狼」ゲームでした。占い師を引き当て、ルールを充分に理解していないので、自分から殺されにいくようなことをして(大馬鹿)処刑されて終了しました。

 その後、仕事が忙しく中々部活に参加できずにおります。しかし、SUSONOの住人である限り、ある日突然どこかの部活や参加(そう、例えばSUSONO本のように)させていただくことができると、「ボードゲーム部」ですんなりと受け入れてもらえた経験が教えてくれます。
 SUSONOは、住人になるのも簡単です。色々な人がいるのでその人のペースで住人で居続けるのも簡単です。そして、色んな部活や活動に参加するのも簡単です。それはすべて「新しい文化圏を作ろう」という人は「新しい住人」「新しい出来事」「新しい感覚」に寛大だからなのだと思います。
「SUSONOのSUSOは低い」ので、一歩踏み入るのは簡単です。ほんの少しの勇気と勢いと、そして寛大な気持ちがあれば。
 もしこの本を読んで新しい住人となる方がいらしたら、ぜひお声をかけてくださいね。
 反応は遅くても……必ずしますから!

photo by Yuki Nakamura

その②

SUSONOって、
何をやっているんですか?

ここまで一通り読んでみたけど、やれ部活やら、やれイベントやらと言われても、何だかまだピンとこないところも多い。
普通に遊んでいるだけなのだろうか? それとも……?

根が張り巡らされて、広がっていく ――トークイベント

佐藤康平

「SUSONO」には、月一で佐々木俊尚さんと、各分野で活躍されているゲストの方とのトークイベントがある。様々な気づきがある「授業」のようなものだと思っているが、ここで得られるものは単純な方法論や知識だけに終わらない。「SUSONO」の空気感ならではの独特のものがあるので紹介してみたい。

 唐突だが、まず「人」を大きな樹木に例えてみる。以前、屋久島を訪れた時に見た屋久杉にインスピレーションを受けたものだったので、その時の写真と共にお伝えしたい。

屋久杉の全体像
photo by Kohei Sato

「幹」はその人の外見や人となり。溢れ出る貫禄やオーラのようなものだ。
「枝」はその人の活動。幅広い方向に細い枝を出している人は、多彩な人だ。逆に、限られた方向に集中して太い枝をつける人もいる。
「実」はその人の実績。広がった枝から色とりどりの実をつける人もいるし、とある分野で成果を上げ、ひとつの大きい実をつける人もいるだろう。
「根」は幹から枝までつながる神経の大元であり、土壌から栄養を吸い上げるもの。ものの見方、考え方、活動にあたるまでの動機などの価値観にあたる部分だ。普段は目には見えてこない部分だが、とても重要なものだ。

 このイメージを踏まえて、佐々木さんのトークイベントで共通して感じたことの流れを順に追っていきたい。

 まずは、簡単なあいさつで始まり、世間話も兼ねて佐々木さんとの関係性について話される。ゲストの方の「幹」にあたる人となりを、オーラや話し口調で何となく感じ取ることができる。
 次に、プロフィールや活動内容が前の画面に映し出される。主にメディアを通じて感じ取れるような「枝」や「実」といった部分を、ざっくりと紹介していただける。

 ここからが本番で、徐々に深掘りが始まる。一個一個の活動の動機であるとか、心の変化、想い等を掛け合いの中でじっくりと探っていく。根元の土を掘り起こし、「根」の一本一本についている土を丁寧にそぎ落としていくのだ。
 だんだんと「根」の一本一本の形が見えてきたかと思った頃に、所定の時間が過ぎてトークイベントは終了する。

根についている土をそぎ落とす
photo by Kohei Sato

 終わった後にはゲストの方の根っこから枝先までの神経構造が、ぼんやりとつながって見える気がする。心を許してくれなければ見られない部分を感じられて、親近感がわいてくる。日常の中での小さな心の動きは皆そう変わらないものだと気づかされる。これが「共感」の感情につながる。行動にどう動機付けしていくかが人それぞれ異なり、この繰り返しで人生が大きく変わるのだ。

 そして、自分の中に細い「根」がつくられる。ゲストの方の「根」を、自分なりに解釈して模したものである。新しく発見した考え方や視点を取り入れて日々を過ごしてみよう、というようなものだ。細い「根」はゆっくりと長い年月をかけて土壌から養分を吸収するものとなる。時を経て、「根」は太くなって神経の大元となり、「幹」となり、「枝」となり、大きな「実」をつけることにつながる、かもしれない。

 より専門的な内容で方法論を教えてくれるような講義は多い。どう「枝」を伸ばしていくか、どういう「実」をつけるかにあたる部分だ。ただ、分野に対する知識がしっかりしていないと頭だけ空回りしてしまう。
「根」の一本一本を掘り起こすような佐々木さんのトークイベントは、関わったことのない分野の話でも無理なく聞ける。足湯に浸かった時に血行が良くなって、体全体がじんわりとぽかぽかして活性化するような心地よさがある。全く異なる分野の方でも似た考えを持っていることに気付けるのも面白い。

「SUSONO」というコミュニティ名は様々な解釈ができる。山の裾野が下に広がっている様子は、自然な「共感」から、小さい「根」が生え、「根」同士がつながり、「土壌」に対して網の目のように張り巡らされて広がっていくイメージにもつながると思っている。

 雑誌で見た「縄文杉」という名の巨大な一本杉にあこがれて屋久島を訪れたものの、ふと気づくと、道中の大小の屋久杉が思い思いに「根」を張り巡らせている様子に魅了されていた。肩書や実績にとらわれることなく価値観に視点を向ける「SUSONO」での様々な出会いと気づきにも似ているなと思う。

「SUSONO」ならではの佐々木さんのトークイベントでは、今まで様々なものを学ばせて頂いた。これからも多彩なゲストの方々の「根」を知り、吸収できることを楽しみにしている。

根が張り巡らされて広がっていく
photo by Kohei Sato
photo by Yuki Nakamura

おうちごはん部合宿

大橋健介

 雑木林と小高い里山。トトロが出てきそうな森。
 おうちごはん部の「合宿」が開催されたかやぶき屋根の古民家は、武蔵野の面影が残る所沢にありました。

『おうちごはん部』とは、レンタルキッチンを借りて、その日に集まった部員みんなで料理と食事を楽しむ会です。
 よそいきではない、日常のために気軽に作ることができるレシピで作ります。

 まずは近くのスーパーでみんなで買い出し。
 当日のメニューは【石窯焼きピザ】【餃子】【常夜鍋】です。
 今回は合宿という非日常な会だったため、日常向けというよりはちょっとパーティー感のあるメニューになりました。
 ほうれん草、豚バラ肉、椎茸、酒、昆布、強力粉、ドライイースト、トマト缶、モッツァレラチーズ、オリーブオイル……様々な食材を手分けしてカートに詰めていきます。人数が20人と多いのでほうれん草だけでも1.5kg分の分量になります。

 買い物が終わったら、いざ本日の宿へ。
 ひと足先に着いていた主宰の佐々木俊尚さんが「買い出しお疲れさま〜」とあたたかく迎えて下さいました。

 身の回りを整えたところで、さっそくごはんの支度に取り掛かります。
 まずはピザと餃子用の生地作り。テレビで見ていると簡単そうに見える単純作業でも自分の手でやってみると意外と時間がかかります。

 餃子の餡づくりが終わったら、皮に餡を詰めて行きます。
 中身をどれくらい詰めるのか? ひだはどれくらい細かく付けるのか? 餃子の形に各々の性格が出るようで、成形し終わったものの批評でひとしきり盛り上がります。

 餃子をつくることと並行して、今回の目玉である石窯焼きのピザも調理開始です。炭に火を点け、釜の奥の方へどんどんと焼べていきます。「石窯」と言うよりはコンクリート製のブロックを積み上げた様な簡易なものなのですが、これでピザが焼けてしまうというのも新たな発見です。火力で窯の中が温まるのを待ってピザを中へ入れて行きます。

 3月とは言え底冷えのする夜でしたが、窯の炭火が作り出すメラメラとした炎の火力は圧倒的で、ふと縄文時代におこなっていたかもしれない原始的な調理を想像しました。
 思わず、みんなで「炎っていいねえ……」と眺め続けていました。

 取り出したピザをヘラからじかに手に取り、その場で頬張ります。
 柔らかでクリスピーな生地、熱々のトマトソース、炭火の香り、そして、背景にはオレンジ色の炎……今まで食べてきたピザの中でも一番美味しいピザでした。日本一の賞を取ったあの店のピザよりも確実に。

 屋内へ戻ると、餃子が焼きあがっています。さらに、囲炉裏には豚肉とほうれん草、そして椎茸とえのきがたっぷりの常夜鍋がかかっています。こんな口福感のある食事会があるでしょうか。人数が多いからこそできる、ライブ感とエンターテインメント感が気分をどんどんと高揚させていきます。
 ここで一旦、全員で「カンパーイ!!」自然に沸き起こる笑いとともにビールを飲む速度も加速していきます……。

 翌朝。
 朝もごはんの支度から始まります。「田んぼ部」で作った岐阜県黒川村の無農薬のお米をかまどにて炊き上げて行きます(SUSONOには田んぼ部もあるのです。田植え・草取り・収穫・脱穀と一年に数回黒川村まで赴き、田んぼ仕事を体験します)。
 もちろん、味噌汁、漬物等も用意をして「いただきます!」

 そして、この日は月曜日。大半のメンバーが所沢から都内へ向けて元気に出勤して行きました。

   ◆

 一年前の出来事を思い返しながら、いま原稿を書いています。

 単純なことでも、やってみなければわからない気づきがあちこちに散らばっているのがSUSONOの活動の面白さです。何よりも大人数で民家を借り切って一晩共にすること自体が非日常でした。

 ゆっくりと反芻してみると、とても貴重で楽しい時間を過ごしたのだと改めて感じます。こんな素敵な一日をみんなで作り出すことができたことには感謝しかありません。

 そして、この原稿もメンバーと一緒に借りた中目黒の会議室で書いています。窓からは梅の花が咲いているのが見えます。メンバーと一緒に書いているこの時間も、きっと後から振り返れば良い思い出になっていくのだと思います。

 元々はつながるはずの無かった人たちとつながっていく。佐々木さんの著書にあるように、「そして暮らしは共同体になっていく」のかも知れません。

 これからも素敵な時間を共に作って行きたい。
 SUSONOのメンバーさんたち、これからもよろしくお願いします!

photo by Shunichi Goto
photo by Yuki Nakamura

ゆるいだけがSUSONOじゃない?

なかむらゆき

 私には、SUSONOならではと感じる部活動が二つある。
 その二つとは「ワイン部」と「田んぼ部」。どちらも活動内容や雰囲気は全然違うのだが、どちらもにも共通するものがある。
「アクティブ」かつ、「クリエイティブ」であるということだ。

 さて、本題に入る前に、それぞれの部活動が何をしているかを少し紹介したい。
「ワイン部」は、基本的にはワインを飲みたい人が集まってできたグループで、定期的にどこか場所を借りて、持ち込みワインと創作おつまみをそれぞれ持ち寄って、ただひたすらにワインを愉しむ。ワインについての難しい話し(産地とかブドウの品種とか、何かの香りに例えたり、歴史を話したりとか)は、とりあえず置いておいて、みんなで楽しく飲む、呑む、呑む……。
 まあ、そんな高尚な話をするのではなくて、気軽にゆるく会話を楽しもうよ、というスタンスだ(ワイン部の名誉の為に言っておくが、ワインの知識がある人もいるので、高尚な話も聞ける)。
 そんなワイン部なので、初めて来た人や、ワインは好きだけど量はそんなに飲めないという人も、食事会の最後には、なんだかんだワイン部のゆるさにはまっていく。それが「ワイン部」だ。

 代わって「田んぼ部」は、年に5回、岐阜県の黒川という町に行って、お米を作る部活動だ。この黒川という場所は、「ザ・日本の里山」という感じで、緑の山々に囲まれ、道の脇には小川が流れている、とても風光明媚な場所である。
 私も初めて聞いた時は驚いたのだが、稲作作業というのは(細かい工程を除けば)、5回現地へ行けばできるのだ。具体的な内容は、「田植え」に始まり、「草取り(田んぼのお掃除)」×2回、「稲刈り」「脱穀」。この5回で、あなたがスーパーで目にするような白いお米が出来上がる。
 黒川の農家さんの田んぼをお借りして、約半年かけて、お米作りをする。自分で植えた苗が成長し、実をつけ、やがて稲穂になって、真っ白なご飯となる。その流れを体験できるのが、「田んぼ部」である。
 ざっと説明すると、こんな感じの部活である。

 それで、一体どういうところがSUSONOっぽい、のか。

 例えば、飲みの席で出たアイデアが、その場限りで終わってしまうというのは、よくある話だ。
 だが、ワイン部は、飲み会で盛り上がった話をその場限りで終わらせない。ワイン部には、旅行やサイクリング、のようなからだを動かすことが好きな人が多く、一度みんなでサイクリング旅行をしようと盛り上がった。プランは広島県尾道市を出発し、途中の島で一泊し、愛媛県今治市を目指す。出発地点までは現地集合にして、それぞれの手段で集まる。
 そして、10月某日。天高く馬肥ゆる秋。期待を胸に、いざ天気予報を見ると、史上まれに見る大きさの台風が日本列島に接近しているではないか。どうか神様この日だけは外してください、と祈るも、自然には勝てず、あえなくキャンセル。全員がとても楽しみにしていたばっかりに、この日は残念会をして終わった。
 とは言え、3か月ほど前から準備をしてきたこの企画、みんなのやる気は台風をも凌駕した。再度予定を調整し、12月に再度チャレンジすることとなった。
 慣れないクロスバイクにまたがり、意気揚々と出発。と、ここでワイン部らしく、尾道の酒屋さんでワインボトルをみんな1本ずつ買い、背中のリュックサックに詰め込む。750mlのボトルを担いで自転車を漕ぐ。
 そもそもしまなみ海道は道中に坂道が沢山あるのでかなりハードなサイクリングなのだが、さらに輪をかけるストイックさ。
 幸運にもお天気に恵まれ、風を感じながらペダルを漕ぐのはとても気分が良い。ちょっとしんどくなったら、自転車を降りて、太陽に照らされた瀬戸内海をボーっと眺める。なんという贅沢な旅だろう。

 と、思っていたのだが、試練はここからだった。日が暮れてだんだんと体の疲れもたまる中、(物理的にも心理的にも)見えないゴールを目指して暗闇の坂をそろりそろりと上る。もうこれ以上回せないという所までギアを低くしても、ペダルは軽くはなってはくれない。
 最後の力を振り絞り、なんとか宿までたどりつき、夜の宴が始まる。重たい想いをしながら背負ってきたワインボトルがずらりと並ぶ。
 自転車に揺られた発泡ワインが湧き上がるハプニングもありながらも、楽しい宴は終わり、次の日、全身の疲労に耐えながらも今治の地に足を踏み入れた。
 普段はワインを飲むだけの部活ではあるが、サイクリングをしたり、電車でワイナリーへ行ったりと、活動の幅は広い。

photo by Yuki Nakamura

 その活動の幅の広さで、負けないのが「田んぼ」部である。この部活に参加するには、まず岐阜の黒川まで行かないといけない。この町には、コンビニエンスストアも高校も、ましてや娯楽施設もない。あるのは、豊かな自然と地元の元気な子供たちと、そんな子供に負けないくらい楽しそうな大人たち。私たちは黒川の人たちに手伝ってもらいながら、お米作りをする。
 毎回の滞在の中で米作りをする作業は、実質半分ほど。じゃあ一体、それ以外の時間で何をするのか。その空いた時間は、みんなで考えて決める “大人の遊び時間” なのだ。
 中でも印象に残っている “大人の遊び時間” は、田植えを終え一息ついて休憩をしている時だった。
 広い駐車場で、おもむろにアスファルト白い線を書き始め、地元の人と私たちで、ドッチボールが始まったのだ。ドッジボールなんて小学校以来だろうか。「俺、じゃあ外野行くわー」「顔面は無し?」などと懐かしい会話をしながら、ボールを投げる。ボールをよける。
 狭いコートの中で、さらにびっくりしたのは、本気になっているのが黒川の大人たち。普通だったら、こけて怪我でもしたら……とか色々考えるのだが、彼らはこけるのもいとわない、全力姿勢(実際こけてもすぐ起き上がっていたし)。そんなこんなで、相手の闘志に負け、われらSUSONO勢は惨敗に終わった。
 大人たちが必死に(もはや地元の子供よりも)ドッチボールをするという姿勢が、とても新鮮で、生き生きしている姿がカッコよかった。
 私の中で、知らず知らずのうちに身についた「こうあるべきだ」という考えを、バッサリと崩してくれる。夏になると近くの川に足をいれて涼み、ホタルをみたり、満点の星空の下でBBQをしたり、木に登ったり、竹の流しそうめんを作ったり、黒川の人にとってはなんてことのない時間が、非日常的で面白い。私は田んぼ部での米作りの活動も好きなのだが、この余白がとても好きだ。普通だったらできないことが、ここならできる。そんな自然の環境と創造的な人たちが沢山いる。

 今回、SUSONO部活動の意外とゆるくない一面(このコミュニティのコンセプトは、ゆるくつながっていることなのだが)を紹介したが、まだまだ書きたりない。ゆる~い部活のゆるくない部分を少しのぞいてみたら、もしかしたら、あなたもはまってしまうかもしれない。

photo by Yuki Nakamura

昼寝から目覚めても

和良拓馬

 SUSONOで最も印象に残るイベントと言えば? という問いかけは、今回のSUSONO本制作においても、各自意見がバラバラに分かれるものである(これだけ様々な体験談があるというのは、本をつくる側としては大変嬉しい限りである)。
 さて、君の場合は? となったとき、僕は間違いなくこう答える。

「カレー部のみんなと河原の土手で、お昼寝をしたことです」。

   ◆

 夏が近づき始めた、5月下旬のある日。都内某所の小さなキッチンは熱気であふれていた。
 その日はカレー部が主催する「みんなでつくろう!カレーランチ会」という、SUSONOのメンバーでカレーをつくるイベントが開催されていた。チキンカレー、野菜カレー、そしてカレー研究科・水野仁輔氏がレシピを考案した「ファイナルカレー」の3種類をつくり、食す。当時の僕はカレーづくりはさっぱりの初心者だったので、メンバーの慣れた手つきとスパイスに関する造詣の深さには、ただただ見とれるだけだった。

 イベントは大いに盛り上がったが、キッチンのレンタル終了時間が迫っていた。一旦ココを出ましょうか。そして、しばらくの間はみんなで周囲を散歩することにした。
 ふらふらと歩いているうちに、河川敷に辿り着いた。周囲はバーベキューをしていたり、親子連れが遊んでいたり……。何気ない休日のひとコマがある。

 いつの間にか、僕らは河原の土手に座っていた。今日は良かったね、美味しかったね、最近どういう音楽聞いてる? という他愛もない話が続いた。
 そんな会話も、いつの間にか途切れるようになった。……誰かがスヤスヤと、寝息を立てている。しょうがないね。じゃあ、私も。そんな流れで、僕たちはごろんと寝ころんだ。

   ◆

 そもそもお昼寝とは、何かしらの強烈な目的があってするものではない。
 いつの間にかウトウトし、いつの間にか心地よくなって、いつの間にか目を瞑っている。
 そんなお昼寝の精神は、SUSONOの「ゆるさ」や「心地よさ」といった風土と合致している。だから僕は、最も印象に残るイベントとして、コレを思い出すのだ。

 一方で、目が覚めたあとはすぐに、慌ただしい元の世界に戻されて、心地よさが長続きしないのもお昼寝の特徴である。心地よくて大事にしたいけれど、何かに飲み込まれてしまうと、なかなか戻れなかったり、戻り辛かったりする。
 残念ながら、カレー部は現在活動休止中である。また、イベント時に共にカレーをつくった仲間も、様々な事情がありSUSONOを離れることになった。

 あの日のイベントは、そしてカレー部の存在は、もう忘れ去られてしまうのだろうか。
 いや、そうじゃない。なぜなら、僕はあの日以降、自力でスパイスカレーをつくってみたり、カレーをつくるイベントを主催したりしている。あのときは見とれているだけだったレシピを、頭の中で何度も思い返しながら。

 活動を続けること、そして心地よい場を残し続けること。それが途絶えなかったからこそ、SUSONOというコミュニティは今もあり続ける。
 だから、また一緒にカレーをつくろう。
 そして、たまには河川敷の上に寝ころんでみよう。
 せっかくココで出逢ったのだから、昼寝を夢で終わらせるだなんて、なんだかもったいない気がするのだ。

イベントでつくったあいがけカレー
photo by TAKUMA WARA

じゃ部を打つ

中村唯

 SUSONOには『じゃ部』という部活動がある。
 じゃ部は、部長がいないのに成り立っている、ちょっぴり変わった部活動だ。

 じゃ部はみんなが自由にイベントを立てることができて、ゆるっと発信することを目的に存在している。

 わたしがSUSONOに参加した頃、すでに『じゃ部』はあった。
 毎月、活動したり、しなかったり。気まぐれで、ゆるい部活動という印象で、わたしは、そのゆるさにひかれ、お散歩したり、おいしいご飯を食べるイベントなど、何度も参加した。
 しかし、今更になって、インパクトのある『じゃ部』という名前の由来を知らないことに気付いた。それくらい、いまのわたしには違和感なく、空気のようになじみのある言葉になっていた。

 由来について、過去のブログを辿ると、『「SUSONOで投稿するのは少し緊張しちゃうから、ジャブを打つ感覚で投稿したいよね」というメンバー間でのやりとりがあった。』と、ある。

(引用)スベったっていいじゃない。はじめの一歩のためにジャブを打つ場にできたら【じゃ部インタビュー】
https://susono.life/contents/4f6f0c85fe83


『ジャブ=力をあまり入れずに放つパンチ』、あぁ、まさに『じゃ部』だな、と調べて納得。
 あまり力を入れず、「やってみない?」と、ちょっぴり勇気を出して投稿する感じ。活動や空気感をよくあらわしている。

 こうして、『じゃ部』についてまとめていくと、SUSONOに出逢うころの記憶がふわふわと蘇ってきた。

 SUSONOに出逢う前のわたしは、興味があることや、趣味も大体一人で楽しんでいた。「一人の方が気楽だし」、と思いながらも、なんだかグレーな、もやもやとした日々を送っていた。
 しかし、SUSONOのメンバーと関わっていく中で、学生の頃に経験した共有、共感する事の楽しさを思い出していった。そして、ふと気付くと、もやもやのフィルターは消えていた。
 そんな自分の変化を感じ始めたころ、自分でもイベントを企画し、みんなで楽しみたいという気持ちが高まり、メンバーに話してみることにした。
 すると、『じゃあ、やってみたら?イベント立ち上げてから色々考えてもいいんじゃない?』と、なんともSUSONOらしい、ゆるくて前向きな言葉が返ってきた。
 そこで、勇気をもらったわたしは『じゃ部を打つ』ことにした。

 わたしが、みんなで楽しみたい! と、企画したイベントは『読書会』。
 子供のころから読書は好きだったけれど、共通の趣味を持っている友人はほとんどいないので、「誰かと共有する」ということをあまりしてこなかった。しかし、SUSONOには様々なことに興味を持っている面白い人たちがいる。そんな人たちが普段どんな本を読み、興味を持っているのか知りたくなったのだ。
 イベントを企画してからは、もくもくと妄想がふくらむ毎日。自分が企画するから、なんでも自由に好きなように考えていい。ものすごく自由なことをしているなと気付き、心が広くなった。
 そして、読書会について、いろいろとアイディアを出した結果、大好きなパンと本を組み合わせて、パン屋さんでモーニングを食べながら、好きな本を紹介するという、『じゃ部を打つ』ことにした。

 読書会当日。
 最初はドキドキしたけれど、おいしいパンを食べながら、各自、好きな本について自由に話し、おしゃべりも弾んだ。参加者からは、わたしが普段読まないような本をたくさん紹介してもらい、新たな知識や情報も得ることができた。本が好きな人との会話は楽しい。
 パンの良い香りとともに有意義な時間を過ごすことができた。
 
 実際に、読書会を開催して感じたことは、『自分でも出来るんだ!』という自信に繫がったということ。わたしはやりたかったことを実行でき、充足感を覚え、その後も、『じゃ部』で、カフェでの読書会のイベントを不定期で立ち上げている。今でもイベントの立ち上げ時は緊張するけれど、そんなときは子供のような『やりたい!』という素直な自分の心に従うようにしている。

 SUSONOに参加した当初は、自分でイベントを立ち上げる日が来るなんて全く考えていなかった。そんな自分が、企画し、実行することになるとは……。
 しかし、イベントのことを考えると、不安よりも、わくわくの方が勝っていた。それは、自分のやりたいことを素直に実行に移せたことによる、達成感があったからだと思う。イベントの立ち上げ時、すでにそんなことを感じていた。

 受け身のわたしがここまで行動できたのは、SUSONOのメンバーが発言を否定せず、受け入れてくれるという安心感があり、挑戦をすることへのハードルを下げてくれるからだ、とわたしは考えている。

 行動することは勇気がいる。けれども、『じゃ部を打つ』ように、ちょっとだけ勇気を出して行動すると、今まで気付かなかった新たな自分を発見できるかもしれない。
 SUSONOという居心地の良い環境と、『じゃ部』を含めたすべての活動は、自分の可能性を広げてくれている。そんな気付きを得ることができたことに感謝している。

photo by Takuma Wara

その③

SUSONOに入って、
どうなんですか?

コミュニティに入ったところで、自分の身に何か良いことが無ければ続かないですよね?
良いことがあった!? それって、お金が入るとか、モテるとか?
いや、そういうことよりも、もっと大切な事かもしれませんね……?

私の背中を押す存在 ――とあるメンバーの独り言――

なつき

「SUSONOって?」「これがSUSONOだよ」
 この本を手に取ったあなたは、少なからずSUSONOに興味を持ち、その答えを期待して読んでくださっているのだろうと思う。具体的な紹介や解説は多彩な書き手に譲るとして、ここでは「なぜ私が、この文章を書こうと思ったのか」を少しひも解いてみたい。独り言めいてしまうけれど。

「大きくなったら何になりたい?」
 幼い頃、大人たちが無邪気に問うてきたこの質問。あなたはどう答えたか、覚えていますか?
 私はいつも「お絵かきさんになる」と言っていた。強い意思や覚悟なんてない(問う側も求めていたとは思えないが)。大きくなるってどういうことか自体わからないし、もちろん「仕事」の概念もない。ただ、絵を描くのが好きだったから。というか、田舎育ちの子どもには、それくらいしかめぼしい遊びがない。いつも、大人たちの声を背中で感じながら、日の当たる縁側で、ひとりで絵を描くか本を読んでいた記憶がある。
 生活の周りにあるのは自然だけだったから、花やいきものが題材になった。愛読書だった図鑑を写すことも多かった。

 長じて、絵を描くことはなくなり、写真を撮ることが好きになった。子どもの頃にカメラを手にしていたら、「写真家になる」と言っていただろう。
 たぶん、美しいものを見ていたいのだと思う。幼い頃から親しんだ、自然がふとしたときに見せてくれる表情。光のきらめきとか、雨あがりの水滴とか、新緑、紅葉、つぼみがほころぶ瞬間。
 時折一人旅に出るのも、「そこでしか見られない風景」が見たいから。
 ちょうど1年前、3月初旬の黒島(八重山諸島)はもう焼けるほどの日差しで、石ころだらけの一本道の両側には背丈以上の草が生い茂り、乱れ飛ぶ蝶の大群の中を「ぶつかっちゃう!」と思いながらオンボロ自転車で疾走した、あの風景。

photo by NATSUKI

 今はブログだってインスタだってある。そんなシーンに感動したなら、写真なり文章なり、自分の感じたことを素直に表現すればいい。「作品」なんて大仰に考えなくても、自分の表現を世に出すことは(方法だけで言えば)ものすごく簡単になった。やればいいじゃん? 無数の人がそうしている。でも、いつも臆病な自分がいた。こんなありふれた写真が何の役に立つんだろうかと思ってしまう。人の心を揺さぶるような、唯一無二のものすごい表現でなければ出す意味がない、価値がない、どこかでそう思っているのかも知れない。
 だからお絵かきさんになるなんて、どだい無理な話だった。小さい頃の私には申し訳ないけれど。

 でも、ふと思うことがある。日々を生きる中で、小さな感動や勇気をもらうのは、名もなき無数の「誰か」が出してくれた写真や文章だ(いや、そう決めるのは早計だ。後世に残る巨匠になる人もいるだろう)。
 もしかしたらその人たちにも、「何の役に立つんだろう」というためらいがあったのかも知れないし、そんなことどうでもいい、自分の感じた美しい風景をとにかく見せたい!という気持ちだったのかもしれない。

 それが、SUSONOとどう関係してるかって?
 たぶん、こういう場がなければ、ここの仲間がいなければ、私はこんな文章を書いてもいなかった。もちろん自力で本を一冊作り上げるには遠く及ばないほんの一節の投稿で、「何の役に立つんだろう」とは相変わらず思ってしまうけれど。でも、お絵かきさんになれなくても、ならなくても、出してみてもいいのかも知れない。
 そう思えるすてきなご縁と機会をいただいたのが、このSUSONOだった。そして、あなたがこの文章を読んでくださったのも。

photo by NATSUKI

ゆるやかに広くつながる世界

かわかつようこ

「ゆるやかにつながり、心地よい文化圏をつくる」
 人とゆるやかにつながると聞いて、どのようなイメージをされるでしょうか。「つかず離れず」な関係。もしかしたら「都合のいい関係」と思う方もいるかもしれません。わたしもSUSONOに入ってから、ゆるくつながるってどういうことだろうと考えてきました。そのような中、最近の出来事でSUSONOの関係性に救われたことがあったので、そのお話をさせていただきます。

 数ヶ月前、職場で苦しいことがありました。こうなってしまったのはあの人のせいだと思いたいけれど、でも最終的にそうなったのは自分のせい。そのことを考えるとつらくなり逃げたいけれど、でも向き合わざるを得ない。心がえぐられるような気持ちで毎日必死に過ごしていました(誰もが一度や二度、程度の差はあれ、このような経験をされたことがあるのではないでしょうか)。
 辛いとき、誰かに話を聞いてもらいたいと思う気持ちもあります。でも、その一方で、何も話をしたくないときだってあります。なぜなら、そのことを思い出したくないから。今口を開くと、ポロポロと悪口が止まらなくなって、あとで自己嫌悪に陥ってしまうから。だからといって、誰にも会いたくないわけではないのです。一人だとふさぎ込んでしまうので、むしろ会いたくなってしまいます。

 そのような状況のときにちょうどSUSONO本の企画会議のイベントがありました。それがとてもありがたい時間だった、振り返るとそう思います。SUSONOの人たちは、お互いの年齢や職業、社会的なポジションをよく知りません。フラットな関係でありたいという思いからでしょうか、それらが話題の中心になることはない気がします。だから、自分が今置かれている状況を知っている人もいませんし、あえて身の上話をする必要もありません。企画会議は、SUSONOってどんなところだろうね、と各々わいわい発言していく場でしたが、その時間が自分にとっては心地よく、良い意味で辛い状況を忘れさせてくれる気分転換の場になりました。これは企画会議に限らずトークイベントや他の部活動だったとしても、同じように感じられただろうと思います。

 また、SUSONOという場を通して、今自分がいる苦しい世界だけがすべてではない、と実感できたことも心の支えになりました。これは現状に耐え、壁を乗り越えていくために必要な感覚でした。もちろん、家族や友人も大切な存在です。でも、1対1や1対少人数でない関係だからこそ感じられることもあるんだなと気づきました。

 ゆるやかに広くつながる世界。

 今まではどちらかというと狭く深い人間関係を作ればいいという考えを持っていました。でも、ゆるいつながりを広く持っていることもいいものだ、と思うようになっています。ゆるいつながりは距離感に余白がある関係といってもいいかもしれません。実際、私もSUSONOに出会ってから1年半という歳月を経て、色んな距離感の人ができました。距離がこれから近くなるかもしれないし、そのままかもしれないし、フェードアウトするかもしれない。大切なことは、どんな関係性になるかわからないけれど、それでも同じ空間をともに心地よく過ごせる人たちがいるということです。 この関係性も、とても尊いものだと感じています。SUSONOの場合は、似たような価値観を持っている人同士の集まりなので、より実現しやすい関係なのかもしれません。

 結局、人は人との関わりの中で傷つくかもしれないけど、大きな喜びもまた人との関わりの中で生まれるものです。だから、その時々で自分と人との距離感を選ぶことができるようにして、心健やかに生活していけたらいいなと思います。
 そのような中で、ゆるやかにつながれるSUSONOは、私の大切な場所のひとつになっています。

変わらないという変化

朝倉菜都美

 SUSONOでいつも顔を合わせているみんなから見た私の印象は、“よく喋りよく笑う明るい人”らしいです。
 だけど、私自身からしてみると、それはとても驚くこと。
 なぜなら私は超人見知りで超緊張しい! なんなら、トークイベントの後の懇親会でもいわゆる“ぼっち”になるようなタイプだったから。
 はじめの頃の自己紹介文では「人見知りで緊張しいなので、リラックスした自分を手に入れたくてSUSONOに入ろうと思いました」と書いていたほど、そこが自分のコンプレックスポイントだったのです。
 SUSONOに入った理由は色々思い付くけれど、実は「自分を変えたかった」が、根っこではないかなと今は思います。

 入会してしばらく経った後、文章表現インストラクターの山田ズーニーさんがゲスト回のトークイベントに参加しました。
 佐々木俊尚さんも山田ズーニーさんも文章のプロなので、美しい文章の書き方がトークテーマなのかなと思いきや、そんな浅瀬は一瞬で通り過ぎ、文章表現という手法を使いつつ「本気で自分に向き合うこと」についての熱いお話が繰り広げられていました(とっても面白くて、今でも私の中の神回です!)。
 中でも「“本物の思い”はどんなにたどたどしい表現だったとしても必ず伝わる」と度々おっしゃっていたのが印象的で、それに胸が熱くなったことを1年経った今でも鮮明に覚えています。
 お話の直後に気持ちがハイになりすぎて、恥よりも知りたい気持ちが勝ったので、質疑応答の時間には勇気を出して質問をしてみることにしました(人見知りだけど心の中は好奇心旺盛パッションタイプなのです)。

「私は人とのコミュニケーションに苦手意識があります。緊張のせいで上辺だけの会話になりがちで、本心がなかなか伝えられません。どうすればいいでしょうか?」

 それに対してズーニーさんは、
「相手のことを考えすぎたり、沈黙の間を恐れて焦ってしまうかもしれないけど、そこはぐっと堪えて、何か一つでいいから“自分の内側にあるもの”を言葉にして相手に投げかけてみるといいですよ」
 とアドバイスしてくださいました。

 質問をした時点では気付いていなかったのですが、なんとその質問自体が私の中の“自分の内側にあるもの”だったようなのです。
 いつもは苦手だったはずの懇親会では、佐々木さんをはじめたくさんの人とコミュニケーションについて話すことができ(しかも共感してくれる人ばかりだった! 嬉しかった!)、時間が足りないと思うほど安心してその場にいることができました。
 まさかコンプレックスを明かすことでみんなとの距離が縮むとは……!
 心を武装させなくてもこんなに柔らかく受け入れてもらえるものなんだな、自分の弱いところを見せてもそこを攻撃されることはないんだな。と、とにかく「救われた」気持ちになりました。

 素直になることで得られたものが私にとってとても喜ばしいもので、大げさではなくその日をきっかけに自分自身が“変わった”感覚があります。

 それは、「変わらなくていい」と思うようになったこと。

 あんなに変わることを熱望していたのに(しかも結構長いこと)、リラックスした自分はその思いを手放すことで手に入れることができました。
 SUSONOのメッセージにある「心地よい暮らしの文化圏」は、私のところにもちゃんと用意されていたんだなと感じられたことが、とても嬉しかったです。
 このイベントでの体験は今でも大切な宝物です。

 みんなとゆるく繋がることができることを実際に体験することができたので、それ以降は「ご飯を食べに行きませんか?」のような、ずっと苦手だった“この指とまれ”形式のイベントもSUSONO内で企画できるようになりました。変わらないことを選んだ結果、自然とできることが増えていったのは、嬉しい副産物でした。

 今も、まさか自分が本に載せる文章を書くとは……! と思いながら文章を書いているのですが、SUSONOのみんなとだったらやってみたいなと思ったのです。

 SUSONOは、私にとって安心安全と一緒に新しいチャレンジをする勇気を自然と持たせてくれる大切な場所。
 これからもSUSONOの文化圏に集まる仲間と、人生の幅を素敵に広げていきたいと思っています。

photo by Natsumi Asakura
「春心のおすそ分け〜桜の開花情報掲示板〜」 より
photo by Yoko Kawakatsu

#susonolife

2020年4月19日 発行 初版

著  者:SUSONO
発  行:SUSONO本制作委員会

bb_B_00163089
bcck: http://bccks.jp/bcck/00163089/info
user: http://bccks.jp/user/130566
format:#002t

Powered by BCCKS

株式会社BCCKS
〒141-0021
東京都品川区上大崎 1-5-5 201
contact@bccks.jp
http://bccks.jp

SUSONO

「SUSONO(すその)」は2018年1月に、「新しい暮らしの文化圏を作る」プロジェクトとして発足した、新しいコミュニティです。
これからの心地よい暮らしや社会についてともに考え、仲間たちみんなが主体となった場、ひとりひとりがコミュニティを彩っていくことを理想とし、日々活動をしています。

https://susono.life/about

jacket