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受け取ることで



何らかの変化をその対象へと起こさせる



それが「エネルギー」



それを空気の流れといってみたり



充実した時間を過ごすことといってみたり



欲求といってみたり



愛情といってみたり



みんな、辞書に自分たちの意味をのせて言葉を使っている

《#エネルギー 》


好きなヒトとの美味しい時間
兼松 明里


ダッドコンプレックス
伊東 彩乃


仲良しなことと、ビジネスと
l i s a


褒める、満たす、共有する
磯部 三恵

 好きなヒトとの美味しい時間  兼松 明里

 私のエネルギー源は、美味しいものを好きなヒトと食べること。

 エネルギーという単語は、栄養学的にいえば栄養素、物理的にいえば物が仕事をする力(電気や火など)のことをいうけれど、人は、というか私は「美味しいものを好きなヒト(たち)と食べること」が一番の原動力になっている。

 毎日時間に追われ、一息つく暇もなく夜お風呂にも入れずに寝てしまうような時は、なにがなんでも時間を作って、好きなヒトを誘って、料理が美味しくて店員さんも素敵なお店に行く。
 じゃないと日々の生活にゆがみが出て、頑張っているのにうまくいかなかったり、ちゃんと寝たはずなのに疲れがとれなかったり。
 それこそ、心の「エネルギーが足りない」状態になる。

 車はガソリンがあれば動くけれど、人は美味しいものだけじゃ動かない。
 なんて面倒くさいんだろう(苦笑)
 人は、心と胃袋がふたつとも満たされないと元気にならない。
 美味しいものと好きなヒトがいればちょっとの補給でもすぐ満タンになれるんだ。そんなところはすごく面白い。

 身のある話じゃなくったって、美味しかったけれどなに食べたんだっけ? って忘れちゃっても、満たされて「あー美味しかったし楽しかった!」ってお店を出る頃には、やる気と元気が満タンになっている私。

 春は風も気温も心地いいのに、なぜかお腹の中にもわっとしたものを抱えてしまう時期。
 そんなときは余計に、大好きなヒトと会って美味しいもの食べよう。

 ダッドコンプレックス  伊東 彩乃

 週に三回テニスをする。その他の日はウォーキング。月曜日の夜はカレーを作る。土日は私と晩酌。それが私の父の日課。一日の行動はすべてスケジューリングされており、ルーチンは必ず守られている。呆れた気分で尊敬する。元気な人だ。
 私が飲んで帰る日は必ず送り迎え。だから私は、暗黙のリミッターの中で夜遊びをする。この窮屈なルールも、遵守しなければゲームは続けられない。
 七十歳を越えて、孫さえいる今でも、私を十代の子どもみたいに扱う父。
 末っ子のせいではなく、私のこの出来の悪さがまた、余計に愛着させてしまうのだろう。
 さらには、ジェンダーバイアスがまるでないため、この歳でも私はのん気に甘えている。

 父にみなぎるエネルギー。立身出世を胸に戦ってきた根性論を得意げに話す。そんなストイックな時代を生き、今手にしているものこそが、父の自信の根拠なのか。
 大好きなオールド・パーを揺らす背中は、誇らしく穏やかで、経年の深みを帯びている。日本での歴史も古いスコッチウイスキー。愛飲した権力者も多く、男たちの成功の象徴であったという。琥珀色の中に、父がそれを好む理由と、熱い志が見える気がする。
 「俺の娘とは思えないな」
 自信過剰な父の口癖。どうしようもない娘に呆れながらも、親としての反省も含むのか。
 過保護な父と、私の欠陥。だけどもう、誰も責めなくていいでしょ。過去に向いたエネルギーなんて、何も動かしはしないわ。

 私は、胸がつまると父に相談する。
 嫌なことがあった帰り道。運転しながら、今夜話そうと考えていた。ふと、これではいけない気がして。
 帰宅して父に話す。
 「私は、お父さんじゃない別の人を見つけなければいけないよね。このままじゃダメだ」
 父は言う。
 「そんなことはない」
 「じゃあ例えば、八十歳になっても九十歳になっても、私の悩みを聞いてくれるの?」
 当然のように答える父。
 「俺は聞くよ」
 なんなの、この愛は?
 私のために生きているみたいなエネルギー。
 私のことを世界で一番愛してくれている人。それはこの人ね。
 私と父との、異常な関係性。
 壊したくて、守りたい。

 父のような男性を好きなわけではない。でも思うのは、私はこの父に代わる存在を見つけたいということ。父が永遠ではないから。
 父がくれるエネルギー、私の発するエネルギー。その飽和した中に身を委ねられる安心感。私は次の永遠を探している。
 庭では父がまた、私の車を洗っている。

 仲良しなことと、ビジネスと  l i s a

 最近、自分の価値観をひとつ変えようと思っている。
 「ビジネスにお友達感覚を持ち込んではいけない」
 このうちのある部分には賛成できて、ある部分には賛成できない、と考えている。

 フリーランスになって今年で三年目。一番多く関わってきた人は働く女性。
 近年、女性の起業家が注目されていて、私の住む静岡県でも活動的な女性がたくさんいる。グループに所属していたり、グループそのものを起ち上げていたり、とってもパワフル。そのうちのいくつかを見て、中にも入って、感じたことは、みんな仲いいなぁ、楽しそうだなぁ、バリバリお仕事しているなぁ、行動力あるなぁ、結果も出していて、なんかすごいなぁ。
 でも、世間の目にはいまだに、結果を出していても「女性同士が集まって仲良くお仕事=仲良しクラブ」の図式が多分あって、実際自分の中にもそれはあって、「お友達感覚にならないよう気をつけよう」と思っていた。
 でも、それって……おかしくない?
 雰囲気よく、風通しよく働こうと思ったら、そこの空気感はお友達感覚、仲良しクラブに近いのでは? とふと思ったから。
 そもそも「ならないように」って思っている時点で、「なりたい」自分がいることを感じている。だって、やっぱり仲良く雰囲気よく働きたい。そういう場所・関係にはすごくいいエネルギーが流れていて、そこにいると自分も元気になれる気がするから。

 エネルギーが流れ続けているところは空気がいい。
 雰囲気のいいチームはいい仕事をする。
 そう思っている。
 そして、そのチームメンバーは仲がいいだけでなく、線もきちんと引かれていると思う。
 たとえば、仲が良くても言いづらいお金の話。役割をきっちり分けたり、権利やルールの事を言い合ったり。時には「NO!」と言うし、真剣に話し合う。要は遠慮がありすぎたり馴れ合いの関係になったりしていないか。

 一緒に仕事すればするほど、親近感をもつじゃないですか?
 それに、おしゃべりの中に本音やビジネスチャンスがあったりするから、それをつい否定的にみるんじゃなくて、むしろ好意的にみてもっと仲良くなって、雰囲気もよくしていく……これはつまり、お友達感覚じゃなくて本当の友達になることと同じかも?
 それで仕事もこなせるなら最高!
 理想論だけれどできるかな?
 ま、試してみよう!
 と最近考えていて、今の私の姿勢はこんな感じ。
 「お友達感覚OK! 話しづらいお金の話や役割や権利の話もきっちりする。時には『No!』も言う」

 「仲良しなことと、ビジネスと」について考えてみた。

 褒める、満たす、共有する  磯部 三恵

 今回のお題「エネルギー」で、いざ、エッセイを書こう! と机に向かいました。
 が、ん?! エネルギー?! んん……??
 思わず主人に訊きました。
 「ねぇ、あなたのエネルギーは何?」
 即座に主人は
 「睡眠!」
 即答とは凄い(笑)
 では私のエネルギーは何? 人の体の細胞を刺激し、こころを起動させるエネルギーとは何だろう……そこで出した私の答えは「欲求」です。

 人は、こころを満たす為に行動を選択しています。そのもととなるのが個人の深層にある欲求です。そこで、心理学者アブハム・マズローの『欲求5段階説』に注目しました。
 マズローは欲求を5段階のピラミッド型に分けました。食欲・排出欲などの『生理的欲求』を底辺に、安心・安全に暮らす『安全的欲求』、社会との関係性を求める『帰属的欲求』『承認欲求』と順番に階級が上がり、最高級が『自己実現欲求』です。
 中でも着目したのが、『帰属的欲求』と『承認欲求』です。 
 人は孤独を避けるために、人と関わり、社会との接点を求めます。この帰属的欲求が満たされると、自分の存在を認めて欲しい、価値ある自分でありたい、と承認欲求が湧き上がります。この欲求を満たしたいが為に、行動が起こるのです。私はこの二つの欲求をセットと思っています。
 このセットが満たされたら、どんなに充実感と幸福感をもてるでしょう……ふと、自分に置き換え振り返ると、私は常に自分の存在を置く場所で、両親をはじめ、自分と共にいる人たちの称賛を求めていたように思います。
 こんなことわざがありますね。
 『豚も煽てりゃ、木に登る』
 そう、私はまさしくそのタイプ! 褒められると、俄然、頑張ろう! と思ってしまいます(笑)
 みなさんはいかがですか?
 孤独はイヤですよね。存在を認めてくれる言葉が欲しくなりませんか?
 「頑張ったね」
 「ありがとう」
 そう言われたら嬉しくて、頑張ろう! って思いませんか? 私は思います。
 更に欲求を満たすコツがあります。それは、自分と関わっている人の欲求を満たすことです。その方法は簡単。先程のことわざではないですが「褒める」です。きっと自分に跳ね返り、欲求は満たされ、また頑張ろうとエネルギーになります。
 エネルギーを独り占めはダメ。共有しないといけないということです。

 さて、主人のエネルギーが睡眠。
 ん~生理的欲求かぁ~それってどうゆう事かしら……???



ライター紹介

兼松 明里
(かねまつ あかり)

引き出物プランナー、贈り物コーディネーター


学生時代は畜産を学び、卒業後は製薬会社の研究所で技術職として勤務。その後特許ライセンス業務に就き、妊娠出産を経て現在はまた研究技術職に復帰。趣味の、旅や食べ歩き・お取り寄せをキッカケに自身の結婚式でカタログギフトを自作。その後【引き出物プランナー】【贈り物コーディネーター】として開業。ヒト・モノ・コトとの出会いを求め、家族を巻き添えにし、休みの度に車で走り回っている。

Message
世の中すべてのモノやコトは理由さえあれば
“ギフト”になる可能性をもっている

ブログ
http://ameblo.jp/kokoro-no-tsumeawase/

Instagram
@hikidemonoplanner

伊東 彩乃
(いとう あやの)

中小企業診断士事務所スタッフ


静岡に生まれ、静岡の学校を卒業し、静岡でOLなどを経て、現在は中小企業診断士の事務所に勤務。広報を担当。静岡市七間町を中心に、静岡おまちのイベント・お店・商品・人をブログで紹介する日々。


Message
「自分なんて…」と思うからこそ自分自身を開きたい。
変われることを伝えられる人になりたい。



事務所スタッフブログ

http://ouendan.eshizuoka.jp/

磯部 三恵
(いそべ みえ)

「therapy mirakul 」
女性専用カウンセリング、メンタルケアセラピスト


私は昔、インナーチャイルドに捉われていました。抵抗していくことで、現在の自分、ライフスタイルを獲得しています。女性が自分らしく充実して生きていく、そのために私ができるお手伝いがある! その思いから「ミラクル」をはじめました。


Message
自己の過去から『現在』『未来』は変えられる。
意識づけが変化を生み充実したWoman lifeに繋がる。


ホームページ

http://www.therapymirakul.com

l i s a


ピアノ弾き、音楽クリエイター、図書館司書


Message
わたしはわたし
ひとはひと
みんなそれぞれの人生をちゃんといきている
だからおもしろい✨
を心にとめて


SNS
Instagram / Twitter / note
@lisa_anone_nohi

Her stories #エネルギー

2017年5月26日 初版 2020年3月 第2版 発行 

著  者:
発  行:スタジオ 木の中庭

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Her stories

"私らしさというのを持ちながら、今ここを生きようと変化し続ける女性はとってもハンサム! そのために必要なのは……? たくさんの考え方にふれて自分を知ること、だと思う。"
Her storiesは「多様な考え方とスタイルを知ることこそ自分らしく生きるコツ」をコンセプトに、ライフスタイルも仕事も考え方も異なる女性たちのお話を配信するエッセイマガジンです。ライターが執筆を通して自身の振り返りと発見をし、自分の言葉で伝えていきます。そして、「より自分らしく生きたい」と願う読者に向けて、ハンサムに生きるためのヒント「たくさんの考え方やスタイルを知る」機会を提供することを目的としています。
毎号「言葉」を決めて、そこから連想されることを各自書いていくのですが、同じ言葉なのに思い出したり考えたり感じたりすることはバラバラ。文調も使われる言葉も人それぞれ。それは、考え方の違い、これまで生きてきた背景の違い、感性やセンスの違い‥‥‥その人らしさが出ているからだと思います。それってとっても面白い! と思いませんか?
読んでくださる皆さんが「自分だったらどうだろう?」と想像をめぐらせる、自分を見つめる機会になったならうれしく思います。
自分らしく生きたい人のヒントになることを願って。

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